ドラゴンボールZ 復活の「F」 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレアニメ>ドラゴンボールZ 復活の「F」

執筆日2015年04月18日

評論

「悟空楽勝だったねー」「もっと苦戦するかと思ったー」「超面白かった!」

本日、4月18日にドラゴンボール新作映画「復活のF」を映画館に見に行った。
何を隠そう家族連れにまぎれて独りで見にいったのだが、スタッフロールが流れ、劇場内が明るくなって最初に聞こえてきたのが 、隣にいた家族連れの中の小さい男の子と女の子2人(おそらく兄妹だろうか)の上のような言葉だったのである。決して作ったわけではなく、本当にこう言っていたのであしからず。この3つの言葉のうち最初の2つには同意できるが、最後だけは同意しかねる。残念ながら。

昨日金曜ロードショーにおいてこれの公開に合わせて前作「神と神」の評価を書いたので、興が乗り、いい年した大人が劇場まで足を運んで1800円払ってドラゴンボールの映画を見に行ったのである。笑いたけば笑えばいいさ、という感じであるが、そんなことはどうでもいいとして、色々と言いたいところがある映画だった。

まず総評として、作品の評価を合否で決めるならば、残念ながら「否」となる。
素晴らしい出来だった前作、「神と神」と比べると大きく劣る出来だったと言わざるを得ない。

今作のストーリーはざっくり言えば
「ドラゴンボールの悪役の中で強さはともかく存在感では間違いなく圧倒的頂点であるあのフリーザが、半年のトレーニングを行い悟空にリベンジに来る」
という話である。

フリーザと言えば、それまで戦闘力せいぜい数万くらいまでの領域だった中で「私の戦闘力は53万です」という発言で読者にインパクトを与え、さらに最大3回の変身による大幅パワーアップにより最終的には1億を突破しているキャラ。以降フリーザの強さを超える敵は多数出てくるのだが、当時としては桁外れすぎるその強さはドラゴンボール世界の悪役の象徴としてふさわしい存在。そのキャラを原作で倒されてから25年ほども経過しつつあるような時期に映画の主役として引っ張り出してくるのだからそれはさぞドラゴンボールファンを楽しませてくれるのだろうと思っていた。期待が嫌でも高まるのは、何せ原作者鳥山明が多分に関わっていたがゆえに前作「神と神」の出来が素晴らしかったのが最大の要因だろう。この復活のFも原作者の鳥山明が大きく関わっているのだということも事前に知らされていたし、ならば神と神と同等くらいの出来のものがお出しされるのだろうときっと誰もが思っていたのではないだろうか。

しかし残念ながらそうではなかった。良くても「凡作」程度の出来でしかない。総合的に見てこの評価であり、局所的に見れば最悪と言ってもいい。
というのもこの作品、一言で言えば「フリーザいじめ」の映画なのだ。復活したフリーザの恐ろしさにおののくどころか、フリーザを見ていてやるせなくなってしまう。そんな映画なのだ。

今回、悟空もべジータも、前作「神と神」の話以降からウイスの元で修行を積み、「超サイヤ人ゴッド超サイヤ人(スーパーサイヤジンゴッドスーパーサイヤジン)」というなんとも回文のような、下から読んでも上から読んでもスーパーサイヤジンゴッドスーパーサイヤジンみたいなヘンテコな名前の、前作でなった赤い髪とは対照的な青い髪になる新型超サイヤ人に隠し玉として変身できるようになっている。そして、フリーザは半年の修行により「ゴールデンフリーザ」という金色姿の安易極まりない姿に変身できるようになっている。ネーミングが安易なのはドラゴンボールでおなじみなところであるので別にこれはいい。
肝心の力関係だが、ゴールデンフリーザの方が超サイヤ人ゴッド超サイヤ人よりもやや強い設定だ。にも関わらず、この映画を見ているとまるでフリーザがイジメを受けているような気分にさせられ、見ているこっちが切なくなってしまうようなものとなっている。
なぜそういうことになるのか、箇条書きで要因を書こう。

どうですかこれ。なんと1時間30分ほどの映画で、しかもその映画の主役でこれだけみじめな扱いをフリーザが受けるのですよみなさん!
正直書いていて辛くなってきたレベルだ。

いや、良いところも探せば結構あると思うんだよ、この作品。例えばフリーザが復活してからの宇宙船の中でのフリーザの威厳はちゃんと演出できていると思う。復活した瞬間にフリーザ軍の構成員のスカウターが全部爆発する演出とか良かったと思う。
あとはフリーザ軍の雑兵を相手に相手をする悟飯、ピッコロ、クリリン、天津飯、亀仙人、ジャコたちの戦闘描写も尺を長く取っていて見せ場を作っていて悪くないと思う。亀仙人がいまさらこんな戦えるのかとかいう疑問がわいても、いろいろと大雑把なドラゴンボール世界に突っ込むのは野暮というのは分かっているので笑ってスルーできる。

しかし、上の箇条書きにあるように主役であるはずのフリーザ株を落としまくる演出だけは看過できない。映画の良い部分もそのすべてがかすんでしまう。フリーザが格好いいところって要するに、上の1〜13の中では5の部分にしか存在しないということになるんだよ?これは本当にあんまりすぎる。
個人的に特に酷いと思うのが6だ。時間経過によりパワーダウンしていくことを原作と同じように見抜いた悟空は、なんとこれ以降逃げに徹する。じわじわとフリーザの体力が消耗するのを待つ作戦にうって出てしまう。こんな悟空誰が求めていたのか?いや、悟空がやるのはおかしいとは言わないが、劇場版映画で生粋のサイヤ人、戦闘狂である悟空がする戦法なのかこれは?この辺りから本当にがっかりしながら見ていてね…。もうこの6以降フリーザが盛り返す場面なんてないんだもの。いや、一応悟空はピンチになるんだけどそれも部下のソルベが撃った光線銃によるものだし。
その光線銃ってのも、序盤においてウイスが悟空の弱点として「気を抜いている時は防御力が無くなる」というように指摘をするので、申し訳程度の伏線は一応ある。でも「超サイヤ人3すらはるか後方にある今の時点で光線銃で致命傷ってお前…」と誰しも突っ込まずにはいられないだろう。しかもこれは変身を解いた状態で、というわけではなく、最強形態である超サイヤ人ゴッド超サイヤ人状態で受けたものだ。光線銃ってあれだよ?原作29巻あたりで「戦闘力たったの5…ゴミめ」とか言って未来トランクスに向かってフリーザ軍の雑兵が撃ってたあれみたいな奴だよ多分?ソルベの使ったこれは指輪型っぽい奴で見た目は違うのだが、フリーザが「こんなものでダメージを受ける隙がお前にはあるんですよ!」みたいに言うので威力なんてたかが知れてるのは確かだ。しかしその銃で、もはや魔人ブウすらカスみたいな扱いであろう悟空が致命傷を受けるわけだ。もうなんというか、さすがに言葉が出てこないレベルであきれ返るしかない展開。

悟空とべジータをかっこよく見せつつも、フリーザの株は落とさないという展開がそんなに難しかったのだろうか?そんなことはないだろう。意図的としか思えないような酷いフリーザ下げ展開はカタルシスどころか切なさばかりを増幅させるものだった。昨日の「神と神」放送時の最後に「復活のF」を4分間だけ放映したのだが、その映像はフリーザがやられている場面ばかりだった。もちろんそんなのは映画の売りであるフリーザの真の強さを見せるわけにはいかないからフリーザが攻勢となる前振りとしてそんなシーンばかりを集めたのだと、昨日の放送を見た人間ならきっと思うだろう。だがまさかの、本当にまさかの展開だが、本編もそう変わらないものだった。かつての巨悪フリーザは以前よりもはるかにみじめに、さほど大したことのない敵であるかのように、あっけなく始末されてしまったのである。本当になんなんだろうこれ?

フリーザの扱いだけでなく、べジータの扱いも何気に酷いものだ。今回のべジータは、上の箇条書きで言うところの10のシーン、パワーダウンしたフリーザを一方的にボコボコにするシーンだけでの活躍だ。要するに弱い者イジメしているところしか見せ場がないのだ。
序盤、ウイスとの修行のシーンにおいては悟空と共に同時にウイスに攻撃を仕掛けているシーンがあり、しかしプライドの高い悟空とべジータは決して2人一緒になど戦わないだろうと、ビルスやウイスから評されているのだが、これはつまり最後には2人で戦う前振りかと思うのが自然なはずだろう。なのに本当に戦わないっていうね。1人では勝てない強大な敵に2人で仕掛ける。それはバトルアニメとしちゃ最高に盛り上がるだろうに。メタルクウラ相手に2人で戦ってただろうがお前ら!フリーザこそまた2人同時に戦う相手にこの上なくふさわしいだろうが!と思わずにはいられない。
1人ではかなわない強大な敵となったフリーザにに2人で共闘し撃破。安易っちゃ安易だろうが、それは見せ方、持って行き方、演出により素晴らしいものに仕上げることはできるだろうし、何よりこんな展開よりはどれだけよかったか知れない。

ここで、じゃあどうすれば面白くなったのか自分なりに考えたので恥ずかしげもなく書いてみる。鳥山明はシリアスすぎるのは好きじゃないようなので、ビルス、ウイスが決戦の場にいるのは仕方ないものとし、シリアスにはなりすぎないようにしつつ、かつフリーザを必要以上に貶めない展開、とする場合。

どうだろうこれ。ベタだろうか?ベタで結構、スタミナ切れのパワーダウンからフェードアウトとか光線銃で致命傷なんてわけわからん展開よりはよっぽどこっちの方がマシだ。
書いてて思い出したが、視聴中、1個だけ残っていた仙豆はフリーザに奪われると思ってたんだよなあ。まさか何のひねりもなく悟空が食べるとはこのリハクの目をもってしても…って感じだった。

まあそんな恥ずかしい妄想はいくらしても無駄だ。とにかくこの作品は、
「かつての強敵フリーザがトレーニングして挑んできたけど割とどうにでもなったのでちょっと弱い者イジメした上で地獄に送り返してやりました」

まとめるとそういう映画なのである。
しかし冒頭の通り、子供の純粋な目からは確かに「面白かった」という言葉が出たのも確かであって…。
結局、「アニメ映画なんて、いい年した理屈っぽい大人が見ちゃダメなカテゴリなのかなあ…」なんて悲しいことを考えながら劇場を出、帰路についたのだった。

フリーザの扱いにばかり注目した評論になってしまったので、他にいいところ悪いところをまた箇条書きで書いてみるとする。

良いところ

悪いところ

項目別評価

ドラゴンボールの熱烈なファンである自分からすればドラゴンボールというだけで補正がかかるので点数にすれば結構高くなるが…。
自分は鳥山明という人間はファンがよく話題にするような、例えば戦闘力談義とかそういうのに興味ない、良くも悪くも天真爛漫な原作者なのだと勝手に思っている。世俗抜けした天才肌というか。でもだからこそドラゴンボールのゆるい魅力的な世界観は生まれているのだと思っているから好意的に見ていた。だが、今作に関してはそれが悪い方に出ていると言わざるを得ない。フリーザをギャグっぽく描写するにしても笑えない方向性だし、戦闘力に関しても130万とかいう具体的などこから出てきたのかわからないへんてこりんな数値を出しているのはちょっと無視できない。なんで数字出しちゃったかな。
何より脚本だが、そりゃフリーザが懲らしめられるのは間違いないにせよ、こんなフリーザイジメを見たかったわけじゃ決して無い。特に、「スタミナ切れで形勢が逆転する」というようなバトルものにおいて一番白けるような展開を劇場版での展開として使ったのは擁護しようがない。互いの最強の状態がぶつかりあって勝ってこそのもんだろうよ。バトルものでの爽快感てはさあ。バトル多めに作られてる割にはそのバトルが尻すぼみもはなはだしい。
でも隣の子は楽しかったって言ってたなあ…。俺が間違ってるのかなあ…。
でも実際、休日に一人で映画館でアニメ映画見てるいい年した自分を間違ってないと言い切れるかと問い詰められたら自信ないなあ…。

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