るろうに剣心 特筆版 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ漫画>るろうに剣心 特筆版

執筆日2016年11月08日

評論

ドラゴンボール、スラムダンク、幽遊白書といった錚錚たる漫画が終わってしまった、「暗黒期」とも呼ばれることもある90年代後半の週刊少年ジャンプ。
その時代を支えたのはどの作品か?と言われればまず間違いなく挙がるのが「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」だろう。
このページでレビューするのは、2012年、実写版るろうに剣心の公開に合わせて、原作者の和月伸宏自らの手により執筆されたセルフリメイク「るろうに剣心-特筆版-」である。キネマ版とも呼ばれるようだ。2014年まで連載された。

ちなみにその時代、よく暗黒期なんて呼ばれてはいるが、「ろくでなしブルース」「封神演義」「BOY」「ダイの大冒険」なんて、これまた十分にそうそうたる面子と言える作品が連載している。これらは確か、どれも漫画の売り上げ上位100位に入っている作品ばかりだ。実際、どこが暗黒期やねんと突っ込みたくはなる。むしろ、自分の場合はるろうに剣心が終わってしまったところでジャンプには興味を無くしたため、この作品の連載終了から真の暗黒時代が始まったイメージがあるのだけどもね。ワンピース、NARUTO、ブリーチと、2000代から2010年代に屋台骨となる作品がよりにもよってどれも肌に合わない作品だったため、余計にそういうイメージがある。

閑話休題、とにかくここでは2012〜2013にジャンプSQで連載された「るろうに剣心-特筆版-」のレビューをするのだった。
この作品は単行本にしてたった二巻、実写劇場版一作目が公開された2012年に始まり、三作目が公開される2014年よりも前、2013年に終わっている。長々と連載したわけではなく、ブームに乗せ、実写版の後押し、加速装置的なものとして連載されたということになる。90年代のオリジナル版が5年にわたる連載、単行本にして28巻であるのだから、当たり前だがオリジナル版とは違ったストーリーとなっている。

とはいえ全く違うというわけではなく、簡単に言えば、オリジナル版の序盤の強敵である鵜堂刃衛をラスボスに据えつつ、オリジナル版の「東京編」「京都編」「人誅編」を超圧縮した構成となっている。剣心や左之助といったメインキャラクター個人に目を向けると、強くてニューゲームしていると考えればわかりやすいだろうか。以下に今作の特徴を挙げてみる。

ここから感想。
流石に28巻を超圧縮させたということで様々な点で無茶を感じさせるのであるが、何せリメイク元となっている素材が良いので、やっぱ面白いなあ、というのが正直な感想。また、こういう形で15年も経て原作者自身がリブートというのはあまり漫画では例を知らないので、「あの頃のあのキャラにまた出会えた」という、レアな体験をしたという、それがまた面白さを加速させているんだろうと思う。

たださすがに圧縮しすぎなところがあり、詰め込みすぎと思える部分も多々。そのせいで展開が分かりにくくなっている部分もそこそこあると思う。
それと、オリジナル版では悲壮や感傷を感じさせた部分が淡泊になっているのも違和感を感じる要因か。
例えば剣心が人斬りという後ろ暗い過去を持っていることにもあまり悲壮感を感じさせない。これは斎藤の回想として描かれる幕末で、剣心と斎藤がギャグのようなやり取りをしつつ戦っていること、それに剣心と薫との出会い、オリジナル版では剣心が薫に「人斬りの過去は知られたくなかった」と悲し気に言っているのだが、それがカットされていることなども大きいだろう。ラストバトルの刃衛との戦いでも、オリジナル版では薫が窒息死するまでの勝負という緊迫感があったが、この特筆版では「心臓刺したと思ったら刺せていませんでした!」なんて落ちで、ちょっと拍子抜けである。

しかしオリジナル版とは技の上下関係が逆転しているのとか、最初から二重の極みが出てきたりするのが新鮮で「えー使えんのー?」って気持ちになってびっくりできたし、迫力のバトル描写はそれだけで面白い。割と厳しい評価が多いこのキネマ版だが、自分は充分楽しめたし、懐かしい気持ちに浸ることもでき、購入して損はない作品だった。

項目別評価

戦闘シーンでの迫力、剣撃の重さを感じさせる描写にはいささかも劣化はなく、少年誌でのバトル漫画として教科書的とすらも思える。15年近くも経過すれば当然絵柄にも変化はあるが、「洗練」と言えるものだと思う。
特にオリジナル版を愛した人間からは評価が低い傾向にあるようだが、たった二巻ですっぱり終わっているし、違いを楽しむという意味でむしろ自分はかなり楽しんだので高評価になった。

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