ドラゴンクエストヒーローズ闇竜と世界樹の城 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレゲーム>ドラゴンクエストヒーローズ闇竜と世界樹の城

執筆日2015年02月27日

評論

2月26日発売の「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」の評価だ。
PS3とPS4でのマルチ販売となる。言わずと知れたドラクエと、ライト層に受ける簡単なゲーム性である無双シリーズのコラボレーションだ。

このゲームの情報を最初に見たとき誰しも思うだろう。
「ヒーローズ」とか言ってるけど、要するに「ドラクエ無双でしょ?」と。

PV見れば誰だってそう思う。大量に出現する棒立ち気味のスライムやらドラキーやらを蹴散らしていくキャラクターたちを見てそう思わない人間はおそらく無双シリーズをプレイしたことがないだけだろう。

自分が最後に無双シリーズをプレイしたのは「ワンピース海賊無双2」だった。
あれは前作「ワンピース海賊無双」が敵が少ないだのプレイアブルキャラが少ないだの色々と不満のある内容だったが、2になってその不満点の多くを解消しており、無双シリーズでも屈指の作品とも思える出来だった。
このドラゴンクエストヒーローズも恐らく2、3とシリーズ化するのかもしれない。しかし初代作品の出来はいかばかりか。やはり一作目は試験的なものになりゲーム的にはイマイチなのだろうか。そんな不満を発売まで持っていた。とりあえず少しプレイした感想。

「よくも悪くも無双」

このドラゴンクエストヒーローズは何のことはない。「ドラクエ無双」である。ライト向けゲームであり、間口は広いが底は浅い。そういうゲームだ。
一方的に攻撃し続けていればまずやられるようなことはなく、操作キャラがやられたからといっても即ゲームオーバーにもならずに別キャラクターを操作でき、すぐに世界樹の葉を使って復活させることもできる。戦略と言えば、「マップ上のどの勢力から先に倒すか」を考えるくらいであり、基本的にはボタン連打で闘っていけば敵を殲滅できてしまう、そんなゲームだ。

実際のところ自分は、ドラクエを素材に使う上に無双とあえて冠せずにいたからにはもう少し何か別の要素を期待していた。
だが、何のことはない。これはドラクエ無双だったのだ。
ある程度のゲーム好きの場合、このゲーム性じゃ満足できない場合も多いと思う。まさに自分がそうだが、このゲームのために8000円を出してしまったものの、正直見合わないかもなとも思ってしまうところ。

明らかな欠点として、足の遅さがあると思う。三国無双シリーズのように馬を使っての移動などは出来ず、キャラクタの足が遅めになっている。そのために敵を蹴散らしてのアイテム回収をするときなどが面倒。それに「〜を守れ!」のバトルばかりで、ほとんど受身の戦いばかりなのも爽快感に欠ける。それに、必殺技が範囲、威力共にあまりにも強力すぎる。例えばテリーの必殺技のジゴスパークなどは地平の彼方にいる敵まで(ちょっと誇張だが)届き、殲滅する。多少苦戦してもこれを使えば一気に殲滅できるため、苦戦などするはずもない。

…とまあ、ここまでが「序盤を」プレイした感想だ。

中盤からは、バトルレックスやヘルクラッシャーなど強力なモンスターがわんさか出現し、モンスターを倒して仲間にすることのできる「モンスターコイン」を使わないとクリアが不可能な難易度になってくる。
ここで気付くのだ。「これは無双とタワーディフェンスゲームを合わせたゲームなのだ」と。

このゲーム、魔物の扉というものから延々と敵が出現してきて、そこの番人を倒さないといつまでも増援が出てくるので番人を倒すのが重要事項なのだが、だからといって敵陣に単独突っ込んだりすると守るべき対象が集中攻撃を受けてあえなく失敗となる。とにかく、モンスターコインを上手く使うことが重要なのだ。
そうすると、キャラクターの足が遅いのも納得がいく。スピードが遅いのはこのためなのだ。あまりに早く行動できてしまって、サッと敵陣に切り込み、サッと戻ってくるなんてことが可能になってしまってはゲーム性が破綻してしまう。主人公のアクトがしきりに「作戦」という言葉を使うが、これはまさにこのゲーム性のことを言っているんじゃないかと。ユーザーに考えてプレイしろと言ってるんじゃないかと、そんなメッセージにも思える。
このゲームは無双であって無双じゃない。多数の敵を蹴散らす爽快感は持ちつつも、モンスターコインの使いどころや、どこを攻めるか、どのタイミングで守る対象のところへ戻るかなどの戦略を絶えず考えなければならない。本家無双も陣地を奪われたら負けになったりするミッションは多く、こういう要素は多分にあるが、このゲームのものはそれらよりもずっと高度なものが問われる。とにかく、その場にとどまり応戦してくれる「ディフェンス」タイプのモンスターコインを使わなければクリアは困難なものとなっている。
そして、必殺技が本家無双シリーズよりもはるかに強力なのも納得がいく。後半のステージになるとあまりに敵の攻撃が激しくなるため、この必殺技が切り札となる。これを温存すれば、戦略が多少は破綻していても強引にどうにかなることも多い。絶妙なバランスだといえる。

守りばかりのステージが多いのは確かなのでどうにも気負いながらプレイする事になるのは確かなのだが、守る必要などない、ただ敵を倒すだけの「フリーバトル」を行ってみるとわかる。これは守る必要のある対象などなく、好き勝手に攻められるのでいつもの無双気分でプレイできるのだが、そうするとはっきりいってつまらない。キャラの足が遅く疾走感に欠けるし、危なくなったら逃げようと思えば逃げられるし、回復呪文だってある。遠距離から攻撃することも可能だし、必殺技が強力で負けようもない。緊張感がなくどうも単調になってしまい、つまらないのである。これは本編のような、守りのゲーム性ならではの面白さを秘めたゲームなのだ。

それと、各エリアの最終ステージに待ち受けるボス戦に関しては、もう完全に無双からは離れたものとなっている。ボスごとに攻撃が特徴的なので、それに合わせた戦法を取り、攻撃と回避をしっかり切り替えて戦うことが必要だ。例えばダークソウルであるとか、討鬼伝であるとか、その辺のボス戦に近いものだ。

簡単な序盤をプレイしただけでは「結局無双じゃん!」って感想も出ると思う。
しかし、強敵が四方から襲い掛かってくる中盤以降の困難なステージにこそこのゲームの真髄がある。序盤つまらないと感じてもぜひ後半までプレイしてもらいたいゲームだ。

項目別評価

重ねて、明らかにタワーディフェンスゲームを意識した作りになっていると思う。とにかく守りが重要なゲームだ。上で書いたように中盤以降のストーリーモードはかなり頭を悩ませつつプレイすることになるので、あまり気軽にプレイできるものではなくなってくるかもしれない。1ステージあたりの時間もそれなりにかかるため、ギリギリで失敗になったりするとかなり落胆することもあるかと思う。そういう意味で、何も考えずに戦ってはすぐゲーム失敗となる中盤以降はあまりライト向けとは言えないかも。ただ、高度な戦術が必要、みたいに大げさに語ってしまったものの、「コインを取って防衛対象のそばで使う」という単純な戦術を徹底するだけで相当いけるはずなので、まあ実際のところそう複雑なものでもない。プレイ中焦りまくるのは事実だけどね。
ゲーム性にばかり話がいったが、もちろん、ドラクエの歴代キャラが集うというのはファンには嬉しいところ。PS4版のグラフィックはドラクエシリーズ最高のものなのは間違いない。声がついたのは最初は違和感あったがいずれ慣れる。担当しているのが声優でない主役の二人に関してはやや棒読みではあるがこれもまあ慣れるレベル、だと思う。

版権作品を使った無双とのコラボは思えばガンダムに始まり、近年ではゼルダ、ドラクエまで来たわけだが、ワンピースや北斗の拳など1作目はイマイチなものが多い中、これは破格の出来なのは間違いない。ここからさらに進化した2作目もきっと出るだろう。
一つ不満を言わせてもらうなら、必殺技演出はちょっと長すぎて見慣れると鬱陶しく思えてくるので簡易版に切り替えられてもよかったな、と。

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