鉄拳7 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2016年01月09日

評論

家庭用の鉄拳7が来年発売されるものの現在はアーケード版しか稼働していない状況。最近よくyoutubeで鉄拳7の動画を見るのが趣味になっている(お勧めは高円寺キューブの動画)ので今回、3D格闘ゲーム「鉄拳7」についてあれこれ書きたい。

近年では3D格ゲーの元祖である「バーチヤファイター」シリーズすら途絶したのもあり、もはや生き残っているのは「鉄拳」シリーズ、あるいは「デッドオアアライブ(DOA)」シリーズしか存在しないと言っていい。そしてDOAシリーズは格闘ゲームというよりは女体鑑賞ゲームなのは多くが知るところであるので(ビーチバレー3発売決定おめでとうございます)、腕を競いあって勝負する純粋な3D格闘ゲームなんてのはもはやこの鉄拳シリーズをおいてほかにないと言っていい。

思えば3D格闘ゲームというのは90年代、00年代にはそれなりに数があった。「闘神伝」、「スターグラディエーター」、「ソウルシリーズ」、「サイキックフォース」などだ。しかし今はどの作品ももはや残骸すら見当たらない状況。3D表現という性質上、見た目のごまかしが効かず、また競ってグラフィックの質を向上させていったのもあり、グラフィックの進化についてこれなかったものはどれも必然的に絶滅するしかなかった。そんなジャンルだったような気がする。

しかしその中で現在まで生き残っている鉄拳シリーズは流石、としか言うしかないような、洗練、進化を遂げてきた。もはや今後、鉄拳シリーズほどメジャーになりうる格闘ゲームの出現の可能性は低いだろう。そう言えるくらい、この作品は地道に着実に、システムその他を深めさせてきた。だが、根本的、基本的な部分はシリーズ初期から変わっておらず、それが結局のところ、今も鉄拳が残っている最大の理由だろう。

鉄拳シリーズのとっつきやすさはその操作性やゲーム性にある。それはまずVFシリーズのような「ガードボタンが存在しないこと」、そして直感的に技を覚えることができる「ボタン位置の両手両足対応」、そして「浮かせからのコンボダメージの大きさ」だ
おそらくこの辺がバーチャが先に消え、鉄拳が今も生き残っていることの最大の理由になっていると思う。つまり、バーチャは基本からしてあまりにも難しすぎたのだ。鉄拳は初代のみ、オートガードではなくレバーガード(2D格闘ゲームのように後方にレバーを入れるとガード)になっていて、鉄拳2からオートガードだ。ニュートラル状態でワザを繰り出していないならば自動的にガードしてくれるのである。ボタンガードというものがどれだけ厄介なのかは、VF、あるいはDOAなどをプレイした人間ならわかるだろう。3D格闘ゲームはほとんどがボタンガードだが、鉄拳2以降のオートガードにせよ、初代のレバーガードにせよ、いい意味で3D格ゲーの共通認識にとらわれていない。鉄拳はこの基本、根幹部分がほどよくライト向けであるため、初心者でも比較的入り込みやすい作りになっている。上級者同士の闘いでも、このオートガードシステムのおかげで互いに純粋に上中下段の読み合いに集中でき、洗練された熱い読み合いが展開されることになる。技の覚えやすさに関しても、左手攻撃が左のボタン、右手攻撃が右のボタンというように対応しているために他の3D格ゲーよりも幾分覚えやすい。

立っているだけでどんな上級者が相手だろうが、相手の段位が「鉄拳王」だろうが、とりあえずは上段と中段攻撃はガードできる。そして技が覚えやすく繰り出しやすいため、浮かせ技がまぐれ当たりでもすれば、3〜4割は減る連続攻撃を入れることができる。ここが初心者に優しいのだ。腕前に相当な差があっても、一矢も報いることができない、という状況は起きにくい。段位が上の相手でも、大抵の場合は体力半分くらいは減らせる。これは初心者のモチベーションとして非常に重要なところだ。もちろん、相手にとってもそれは同じなので、パーフェクトを取られることもしょっちゅうだし、結局のところ段位が数段上の相手に連勝できたりするほど甘いはずもない。だが、コンボで大ダメージを与えるという、格ゲーにおいて最も爽快感を得られるものを実戦においても経験しやすいという作りが、プレイヤーのプレイ欲求を煽る。

そして格闘ゲームに限らず、シリーズが続いて着実に年輪を刻んできた作品にはある特殊な補正がかかる。つまり「愛着」「おなじみ」、そういった言葉で表せるものだ。まずは当然、登場するキャラクターに対してだろうが、それに加え、それらが繰り出す技の数々にもそういった感情は及ぶ。鉄拳も、おなじみ度ではストリートファイターの波動拳や昇龍拳に匹敵するものがあり、それらの存在は盤石のものとしてプレイする側を安心させる。
三島家の風神拳、奈落払い、ポールの崩拳などがなんといっても代表的だろうが、その他もろもろ、各キャラの技一つ一つが、長くプレイしてきたファンにとってはおなじみのものであり、それらを繰り出すだけである種の「安心感」を、きっと感じさせてくれる。鉄拳シリーズ以外の3D格闘ゲームがほぼ死滅した今、こういった観点から見ても、鉄拳に追いつけるシリーズはもはや産まれえないのではないだろうか。これは絶対に一朝一夕で根付くものではないのだから。

また、鉄拳は観戦していて非常に楽しいゲームでもある。
自分は2006年ごろまで鉄拳5DRをプレイしていてそれ以降はプレイしていないが、冒頭で書いたように現在はyoutubeで、ゲームセンターが上げている対戦動画を見るのが日々の楽しみだったりする。
やっぱり鉄拳って、技が多彩なのが面白いのだ。これは今の時代にわざわざ言うことでもないが、3D格闘ゲームは2Dよりも技が多い。10倍くらいは多い。それゆえ、赤段位(20段以上の上級者)でも使う技に偏りがあったり、ほとんど使わない技があったりで見てて飽きない。本当にプレイヤーごとに個性があって面白い。2D格闘ゲームよりも、あからさまに個性が出るのだ。滅多に見ない技(例えば一八の鬼神滅裂とか)をここぞという場面で決めたのを見ると思わず「うおーっ!」とか歓声挙がってしまうほどである。本当に、上級者同士の戦いは見ていて飽きない。動画勢万歳だ。

鉄拳7では新たにレイジアーツというシステムが追加されている。これは体力が赤くなって瀕死状態の時に使える必殺技みたいなもの。繰り出すと敵の攻撃を受け止めつつ(ダメージは通常より減る)始動技を繰り出し、それが当たると体力の半分ほどを減らす強烈な攻撃の演出へ移行するというもの。賛否はそれなりにあるものの、おおむね肯定的に受け入れられているようだ。あと、勝負が決まる際に互いに技を繰り出している場合にスローモーションになる演出なども地味だが対戦の盛り上げに一役買ってると思う。

今年、2016年は格闘ゲームに関してはなんといっても「ストリートファイター5」が登場するのであるが、家庭用の鉄拳7もPS4で発売されるだろう(現状まだ発売日未定)。鉄拳シリーズが消えてしまう=3D格闘ゲームが消えると言ってもいい現状、可能な限りその灯火を消さないで維持し続けていってほしいもの。

三島平八

2017/6/1に家庭用が発売、翌日にストーリーモード見てから描いた絵。いつまでも仲良く喧嘩しな的な感じで続いていた親子喧嘩だったが、ガチな結末を迎えて結構ショックだった。このジジイが黙って死ぬとも到底思えないのだが。

項目別評価

3D格闘ゲームという淘汰著しいジャンルにおいて生き残っているということがその完成度の高さの何よりの証明となっている。無論敷居は高いが、やって楽しい、見て楽しい、ロンリーワンでナンバーワンな3D格闘ゲーム。もはや生誕20年超となるシリーズ、今更語ることでもないが個性に溢れた各キャラのキャラ立ちは素晴らしく、またふざけてるのかマジなのかよくわからない世界観やストーリーも魅力的。

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