テイルズオブゼスティリア(ゲーム) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2015年2月2日

評論

1月22日発売の「テイルズオブ」シリーズ20周年作品。その感想である。

まあ色々書きたいところはあるところだが…。
すでにネット上でこの作品における評価がどうなっているのか、それはこのページを見ている人間ならば間違いなく知っていることだろう。
自分の評価も多分にそれらに同調したものではあるものの、ヒロインの扱いがどうとかはすでに言われ尽くしているところなので、システム面に重点を置いて語りたいと思う。そう、このテイルズオブゼスティリア、そういう外野のゴタゴタ抜きに、純粋にゲームとしても色々問題があるのだ。ただ、ロゼというキャラクターについては語りたいところはある。

戦闘システム面での評価。
テイルズシリーズというのは、何を置いてもまずは戦闘の楽しさが最大の特長だと思う。過去にプレイしてハマッたテイルズというとエターニア、リメイク版デスティニーがあるのだが、なぜやりこんだかと言えば戦闘が楽しかったから、ということにほかならない。

だが、自分は3Dになってからのテイルズだとエクシリア2を除いて特別楽しいと思ったことがない。テイルズは2Dで横移動しかできない、制限されているからこその面白さってのがあったと思うのだよな。でもエクシリア2は本当に面白かった。エクシリア2は何が面白いって、リンクアーツだ。リンクアーツとは準秘奥義とでも言うべきもので、パートナーとなっているキャラクターと協力して繰り出す必殺技のこと。エクシリアからあったシステムなのだが、エクシリア2からは主人公が武器を切り替えられるのもあって、このリンクアーツの幅が広がって本当に楽しかった。連続でリンクアーツを繰り出して敵を蹴散らす爽快感が素晴らしかった。3Dテイルズに懐疑的だった自分をうならせてくれた、あのエクシリア2の後となる作品だ。良いところは踏襲しつつもさらに新境地を見せてくれると思っていたのだが…。

ぶっちゃけ、期待外れだった。ゼスティリアでは4連携までしか攻撃が繰り出せない。しかもこれはステップ行動も1動作とみなされる。今回は今までで言う通常攻撃が「特技」となっていて、「特技」は「奥義」、あるいは「天響術」になっている。テイルズをやった人間ならわかるだろうが、例えば虎牙破斬を繰り出すのは×ボタン入力によるものだったが、今回は○ボタン攻撃で出るようになっている。そして×ボタンで出るのはスレイやロゼの人間キャラならば「奥義」、天族キャラならば「天響術」という詠唱が必要な術になっている。特技も奥義(天響術)、どちらもSCというものを消費するということは変わりなく、また特技は1〜4連携目で出せる技が決まっており、これは左スティックにより出し分けられるというものだ。技を厳選したということなのかもしれないがおかげで使える技が少なく面白くない。序盤から終盤まで基本的に同じ技ばかり見ることになるので飽きる。一応、ボタンを押しっぱなしにしていると特定の奥義から「上位奥義」へと連携できるというシステムがあるため、設定できる技以上に使えるということにはなっているのだが、それでもやはり4連携で終わってしまうのだからつまらない。特技は4連携、奥義も4連携、それぞれ別に制限を設定して8まで繋げられても問題なかったはず。それなら上位奥義への連携も含め、なかなか楽しいものになったはずだが。敵のHPも妙に多くて長期戦になるので、こちらの攻撃性能はこの倍あってちょうどよかったはずだ。実際のところスキルにより攻撃回数は増えるのだが、このスキルシステムがパズルのように複雑な上に入手できるのがランダムなので任意のスキルを発動させるなんて難しい。
また、連携はBGというものを消費してさらに継続することができるのだが、このBGは神依化を発動させるのにも必要なものであり、そっちに回したほうが効率がいいので連携のために使う必要性がほとんどない。

何より問題なのはその神依化だ。
L1ボタンを押してパートナーと融合し強力な姿になるというもの。2人の能力値が合体されるものの、使うとパーティメンバーが一人減るためにメリットデメリットがある、という扱いなのだが…。
はっきり言って、デメリットなんてほとんど無いと言える。メリットしかない。単純に能力値が足し算されるので神依化時の能力値上昇は絶大だし、戦闘中のAIがあまり賢くないので、合体して1人の能力が高まったほうが効率がいいことがほとんどなのだ。
特にミクリオというキャラと神依化した場合は遠距離攻撃が可能で、ほとんどの敵はこれを連発しているだけで安全に倒せてしまう。困ったときはこればっかりでほぼ問題なかった。これほど○ボタン連打ばかりのテイルズというのも過去なかったかも。
神依化だと発動が早い上にHP回復力の高い「回復秘技」というものを使えるのも大きい。攻撃、回復どちらをとっても、神依化せずに戦う理由がない。

テイルズシリーズの華とも言える秘奥義。
今回、秘奥義の威力が非常にしょっぱいものになっている。神依化に1必要なBGをBGを3も使うのだが、どう考えても見合っていない。これでとどめを刺すとグレード評価が上がるというくらいしかいいところがない。
こんな威力だとBG2発動でよかったんじゃないかな…。神依化で使えるものはBG4消費になるが、神依化状態だと能力自体が通常よりはるかに底上げされているので、弱点をついた上で発動すればかなりの威力になり、こちらは使う価値があるのだが…。そういう意味でもやはり神依化の存在感が強すぎてバランスが悪すぎる。神依化が4なら通常は2でよかった、絶対。スレイの秘奥義は演出が短めでテンポよくて結構気に入っただけに残念だ。

戦闘以外のシステム面で不満も多い。

今回、過去作品ではおなじみの「TP」という概念がなく、技はほぼ使い放題なのだが、どういうわけかこれの初期値が連続して戦っていくとどんどん減少していき、最終的には0になり「疲労」状態になる。こうなると戦闘直後はSCが回復するまでの間だが少し待つ必要がある。だが、割とあっという間に0になってしまう。
このシステムはもう完全にいらない。テンポが悪いだけだ。何を思ってこんなもの入れたのか本当に理解に苦しむ。

サポートタレント。
各キャラクターのサポートタレントというものが存在するのだが、これが宿屋に泊まると習得するというものになっている。
非常に重要なシステムなのだが、SCシステムである仕様上、宿屋に泊まらなくても割とゴリ押せるものになっているせいで、いくつかこのサポートタレントの習得を逃してしまった。しかもこれは取り返しがつかないようで、後半、いくら宿屋に泊まってもライラの「融合」などは習得しない状態になってしまっている。
追記:これは勘違いだった。サポートタレントはどのタイミングでも習得できる。

スキルシステム。
スキルにはそれぞれ属性やグループが設定されており、それが特定の組み合わせになることで相乗効果が生まれ、ボーナススキルが発動するというもの。
これももう完全に失敗システムだろう。スキルは武器に1〜4つまで設定されているのだが、何が設定されるかは1つ目のスキル除き、ランダムだ。そうなると、任意のスキルを発動させるのなんて困難。適当に装備して、適当に発動したボーナスを享受するのが関の山で、スゴイスキルを発動させてやろう!なんて気には到底ならない。なんかややこしいし、スキル発動しなくてもどうにかなるので、自分のようにスキルシステムなんてほぼ意識しないでクリアまでいったユーザーも多いんじゃないだろうか。本当にややこしいしわずらわしい。こんなのやってられん、となる駄システムだ。戦闘が面白くないがゆえに、自然とそれに関わるこのシステムの存在感も希薄になった、という感がある。
一応、システムを理解すればそれなりに楽しいかもしれないが、スキルを集めるために延々と敵を倒す必要がある。「ノルミン」という収集要素を集めることである程度任意のスキルを入手しやすくなるのものの、そのノルミンも物語を進めないと増えないし、ということで、結局このシステムを最大限活用できるのは終盤になってからになってしまう感じ。とにかく1つ目以外がランダムだってのがもうどうにも…。

その他システム関連不満の羅列。

キャラクターについて。
さて発売から2週間ほど経過した今でも、アマゾンの評価や公式のテイルズチャンネルなどで未だ熱冷めず猛威を振るっている論は「アリーシャの扱いがひどすぎる」ということだろう。
自分もてっきり彼女はパーティに加入するものだと思っていた。それはテレビアニメスペシャルの感想でもわかるとおりだ。「会話で楽しませてくれそう」とか書いてちょっと恥ずかしくなっている。だが彼女は序盤において離脱、そして終盤においてほんの少しだけ復帰、そしてまた離脱となる。扱いだけでも発売直後からネット上で炎上気味だったが、2月12日には彼女の後日談DLCが1300円で配信されるという発表をもって、さらにアマゾンやテイルズチャンネルのユーザーの声は大炎上、いやもはや大爆発とも言える様相を呈した。

確かに、自分が勘違いしたように公式の様々なイメージビジュアルからは彼女がメインヒロインとしか見えなかったのである。だが、実際のところはロゼという見た目地味なキャラクターがヒロインだったという。
これに関して考察すると、これもよく言われているようだが「DLCを売りつけるためにこんな扱いにした」と考えるほかないのだよな。
だって発売前のビジュアル面でアリーシャを前面に押し出してくるということはすなわち公式自身も、「見た目ではロゼよりもアリーシャのほうが魅力的」と認めていることにほかならない。ロゼのほうが可愛いと思ったのならそっちを目立つようにするよね?
だがそのアリーシャをメインに据えないで実際のところ脇役、そしてDLC販売という流れからするに、「みんな大好きアリーシャの後日談を知りたいなら1300円出してね」と言っているに他ならないという結論に達してしまうのだから。この後日談DLC、とてつもない批判があったからなのか結局2月中は無料になったようだが。批判あっての無料で、本来は無料にするつもりがなかったとしたら、結局は大失策だったろう。RPGなんて初動しか売れない。数週間無料にしたら儲けなんて出ないだろうしな。
個人的には、結局無料になったのだし仮に1300円払うことになってもたかが1300円だろう、と思わないこともないのでそこまで批判することはないのだが、それでも「ゲーム性よりも商売を取った」という印象は確実に植え付けられたのは確かである。
ただ、あちこちで取りざたされている「パーティキャラがアリーシャに陰口を〜」みたいなのははっきり言って誇張がすぎると思う。個人的にそんな印象はまったく受けなかった。あえて言えば「仕方ない、しょうがない」という諦念であって、アリーシャへの陰口は明らかに言いすぎだ。
だがアリーシャはなんかいっつも一人ぼっちな上に唯一信頼してる人間に裏切られるので不憫すぎることには違いない。結局、彼女に一番情を持ってるのって、ほぼモブだが家にいるメイドさんなんじゃないだろうか。なんか本当にいつもぽつんと一人でいるんだよなあ。見てて可哀想。アリーシャの家族は何してるんだ?

アリーシャの話より、むしろ自分の場合はロゼというキャラクターにこそ色々言いたいことがある。はっきり言ってアリーシャがどうとか抜きで、このキャラが嫌いだ。最後の最後まで異物感が消えなかった。いやこれも結局は、本来アリーシャがいるべきところにいる、という違和感なのかもしれないが。アリーシャのDLC衣装はこのロゼに引き継がれるのだが、お前じゃねえ引っ込んでろ!と思ったユーザーはどれだけいるのだろうな?
まずこのキャラ、見た目からして「主人公の行く先々で助けてくれるサブキャラ」あたりにしか見えず、どう考えてもメインキャラになるようなもんじゃない。あまつさえ、導師の真の力である神依化まであっけなく発現させてしまう。
それにこのロゼ、どうもパーティ内の会話で何かと出しゃばって会話に入ってくるので鬱陶しい。いつだってパーティの中心にいる。ごり押しだ。さっぱりわからんを表現した「さぱらん」とかいう寒い言葉を連発するし。「ロゼのキャラは嫌いじゃない」って人も多いようだが、自分は嫌いです。テイルズでこんなに嫌いになったキャラは正直いないレベル。信念のある強くしたたかな女性、的なものをやりたかったのかもしれないが、完全に滑ってたという感じ。
第一、はっきり言って性格が悪い。スレイとミクリオの遺跡談義に首突っ込んでは「やっぱ興味ないわ」みたいなチャットがいくつかあるのだが、もう本当に単純に不愉快だった。ムードメーカーで何かと首突っ込む軽いキャラのくせにシリアス担当でもある。「眠りよ、康寧たれ」とかいう薄ら寒い決め台詞も放つ。戦闘勝利時の「とてつもなく、勝利!」とか「限りなく、あまりにも勝利!」とかいう頭悪い台詞も聞くたびに不愉快だ。ああ本当にこいつが嫌いだ。なんでこんなに魅力のないキャラをメインヒロインにしてしまうのだろうか。おまけに、戦闘中AIがバカなせいで戦闘ではアホな挙動をしてしょっちゅう死にもするのでヘイトはさらに加速してしまう。
ロゼはスレイとは恋仲にはまったくならず、ヒロインというよりむしろ主人公のような扱いであり、スレイとロゼのダブル主人公もののようにも見えないこともない。でもそれはエクシリアでやったばっかりだろと。
ミクリオやエドナ、ザビーダあたりのキャラはそこそこ好きになれたので残念。ロゼが出るたびに何か不快になったのが正直なところ。
そういえば、ミクリオが主人公でエドナがヒロインだったら面白いんじゃないかなとかもプレイ中思った。この二人のやり取りは見てて面白いし、お似合いだと思ったのだが。

総評として、戦闘が面白くもないしキャラクターに関しては総合的に見ても平凡、ストーリーに惹かれるところもない、といった感じ。
ヴェスペリアの完全版商法がテイルズを通したバンナムへの批判の定番だったが、それ以上のものが出てしまったようで、ご愁傷様である。

項目別評価

音楽は良かった。特に試練神殿のそれぞれの属性を表したBGMは耳に残るものがあった。ザビーダ戦のBGMも素晴らしかった。シームレス戦闘についてだが、難ありなカメラワークを作る要因にはなっているものの、平坦なバトルフィールドに切り替わるよりはこっちが好きかもしれない。シームレスゆえに一瞬で戦闘に入る。この切り替わりが早さは過去作と比べて間違いなく本作の優れている点だ。  
上の評論では書かなかったが、ストーリーも色々問題あると思う。まず人の負の感情を「穢れ」として、悪いものとして一緒くたにするのがどうにも違和感。潔癖症すぎる印象。あとは、結局ザビーダが持ってたジークフリートって何よ?ラスボスに使う切り札をなんとなく持ってたで済ますなよ?ザビーダはエドナの兄と親友だったの?デゼルとザビーダは過去会ってたの?そういうのはもっと掘り下げようよ。いきなりデゼルが疫病神とか言われても理屈がよくわからないしなんで記憶を失ってたの?メーヴィンと感動の別れみたいになってたけどそもそもそんなに交流なかったよね?ルナールの存在意義はなんだった?いてもいなくてもどうでもいいよねこのキャラ?とか色々。
なんというか全体的に説明不足の掘り下げ不足な印象。おかげでデゼルが死亡時にも何も感動しないし置いてけぼりだった。ただラスボス戦でのジイジに関してはちょっと泣きそうになったかな…。
テイルズはストーリーがひどくても戦闘が面白ければ評価されるシリーズだが、それも致命的なのでどうしようもない。本当に残念なことになった20周年記念作品。

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