相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年04月20日

評論

4月19日の日曜劇場で地上波初登場となった、相棒の劇場版三作目。
この映画って公開が2014年の春なのだが、2013年の末頃から繰り返しCMを放送していたのをよく覚えている。
しかしそれから公開までは期間が半年近くもあり、そのためCMを流す期間がやたら長かった。CMの中で登場する右京さんの「何をしたんですかあーっ!!」って叫ぶシーンは誇張なしに数十回は見ている。
相棒シリーズは好きだが、結局映画館に見に行くほどのファンでもないので「いやほんとに何したんだろうなあ」とは思っていた。今回地上波放送は見逃せないと楽しみにしていた作品だが。

正直、期待はずれな作品だった。致命的につまらないというわけではないが、テーマがどうにも荒唐無稽すぎる。

東京都に属する太平洋の孤島に滞留し、自主的に軍のトレーニングをしている集団がおり、そのメンバーの一人が馬に蹴られて死亡した、という事件をおなじみのコンビ、杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)が調査にしにいったら実は殺人事件でさらにその背後には陰謀が…、という話だ。
孤島なんて仰々しいロケーションは相棒の舞台としては非常に珍しいものではあるのでその点は新鮮で面白いと思ったのだが、扱うテーマはまた悪い意味で仰々しく、荒唐無稽の域だと思った。

政治がどうとか語るとボロが出そうなのであえてそこには詳しく触れないが、まず相棒シリーズの劇場版というのはなぜこう政治色が強く出てしまうんだろうな、ってのが最初に出る感想。これは年末のテレビスペシャル版でもそうだが、なぜか話を大きくしたがるという。そういうのってまず相棒に合わないと思うのだ。痴情のもつれとか嫉妬とか、そういう人間の負の感情により起きてしまった殺人事件を杉下右京が巧みに解決するのを楽しむのであって、いくら2時間の尺があろうとも別に映画の監督の主張を作品を通してみたいわけじゃない。そんな自己満足なんて別に見ても面白くないし、今回の話で言えば犯人の神室が言う「日本人は平和ボケしている」なんて話を聞いたからと言って「そうだな…まずいよな…」なんて思う頭の軽い人間がそうそういるとは思わない。映画に必要なのはそういう主張を通すことではなく、視聴者を楽しませることだろう。つまりエンターテイメント性。

でも、鑑識課、米沢の劇場版スピンオフとかはうろおぼえながら悪くなかった記憶がある。確かあれは、何かの理由で捜査が打ち切りになりそうになったが主役の2人がしつこく食い下がって諦めず、正義を貫いた、というような話だったような気がする。
別に話を大きくさせずとも、主人公を応援させたくなる話作りにしたりすることが重要だと思うのだよね。相棒の劇場版、テレビスペシャルはどうもテロとか政治犯とか、そういう組織犯罪の話になってしまうため、本来の持ち味を半減させた話作りになってしまっていることが多いような感じを受ける。テロとか自衛隊とかやってみようとしても、どうしてもハリウッドとは予算が一桁違う邦画だとショボい感じになるのもいけない。相棒には動的な話は似合わない。劇場版でも静的な話を一度作ってみてほしい。
あとは、単純にミステリーの王道をやってみたりしても面白そうだが。例えば、どこかの館に招かれてそこで連続殺人が…みたいな金田一のようなコッテコテなのをたまには作ってみても面白いんじゃないかなあなんて。

話は変わるがテレビ版のシーズン13の最終回は色々と物議をかもしたようで。よりによって自分は見逃してしまったのだが、甲斐享が実は過去何度も犯罪を繰り返していたというものだったと聞いてまあ驚いた。見てないけど、よく言われてるように伏線も何も無しにやっちゃダメなオチだな、間違いなく。
しかし近年のドラマシリーズとして相棒は唯一見ていたものなのでシーズン13でシリーズにトドメを刺した、なんてことにはなってほしくないなあ、まだ。

項目別評価

どうしたって凡作以上の評価にはならない作品。しかしそもそも劇場版の相棒ってどれもさほど面白いもんではないのだが。壮大にさせすぎる、政治色強くしすぎるのが劇場版の悪い癖なのでそこ抑えて、テレビ版の落ち着いたノリで一度一本作ってみればいいと思う。

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