オール・ユー・ニード・イズ・キル -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2014年11月14日 修正:2018年5月27日

あらすじ・ネタバレ

近未来の地球。ギタイという宇宙からの侵略者が現れ、人類は苦戦を強いられていた。
主人公のウィリアムは軍の報道官だった。しかしある時ブリガム将軍から危険な戦地へと向かうように命令される。しかし危険な仕事に赴きたくないウィリアムはブリガム将軍を脅迫するような言動をしてしまい、それが将軍の逆鱗に触れ、ただの一兵卒として前線に送り込まれてしまうことになった。

ウィリアムが配属されたのはJ分隊という部隊で、ファレウ曹長がリーダーの部隊だった。あらくれ者たちが揃う最前線の部隊、軟弱なウィリアムがなじめるような現場ではなく、ウィリアムは翻弄されるまま、無数のギタイたちがうごめく最前線へと向かうことになってしまう。

最前線では無数のギタイたちがうごめき、兵士たちは使い捨てのように次々に命を落としていく。ウィリアムは前線で「ヴェルダンの女神」などと呼ばれる女性戦士リタと出会う。しかしリタもまたあえなくギタイにより殺されてしまう。ウィリアムもギタイに襲われて命を失うが、その直前、ウィリアムの攻撃がギタイを貫いており、その血を浴びた。
ウィリアムが気づいた次の瞬間、そこは兵士の駐屯地であり、時間はウィリアムがファレウ曹長に出会う時だった。どういうわけかウィリアムは死んでおらず、時間が巻き戻っていたのだ。

前線に出撃するまでのJ分隊の台詞なども全く同じであり、完全に時間が巻き戻っていることに気付くウィリアム。戦場に出た後、以前とは別の動きをすると別の未来へと派生するが、どちらにせよ無数のギタイがいる戦場ではどうにもならず、ウィリアムは死んでしまう。だが死ぬたびにファレウ曹長と出会うその瞬間に何度でも戻されるのだった。

何回かやり直しを行っているうち、戦場で出会ったリタが「私に会いに来て」と言い残すという展開に遭遇したウィリアム。撒き戻った後にその通りにしてリタに会いに行く。
リタから話を聞くと、リタも以前は今のウィリアムと同様に死ぬたびに時間が巻き戻るという体質になったことがあるのだという。英雄視されるほどの戦功を立てることができたのはその能力のためだった。
ウィリアムがそうなったのは、最初に死んだ時に青いギタイの血を浴びたからだということがわかった。だが、この能力は輸血して血が入れ替わると失ってしまうのだという。
青いギタイはアルファと呼ばれるもので、618万のうちに1体しかいないという、非常に稀にしか存在しないものだった。リタの協力者であるカーター博士によれば、オメガと呼ばれるギタイの親玉を倒すことができれば全てのギタイは機能を失い、人類は勝利できるのだという。
そして時間戻り、タイムリープの能力を身に着けたウィリアムがするべきことは戦場で生き残ることだということで、リタの付き添いでウィリアムは猛特訓を始める。

また、タイムリープの能力を身に着けたウィリアムは時折、ビジョン(幻覚)を見ることがあった。それはオメガの居場所であるとされる。そこはドイツのダムであったが、そこに辿り着くためには何度も死んでいる最前線を突破する必要があった。数百回以上の死亡を繰り返した上でようやく最前線を突破する。
前線を越えた後、ウィリアムとリタはしばらく車で移動してヘリがある場所まで到達する。ここは視聴者目線だとあたかもウィリアムが初めてここまで到達したように見えるが、実はウィリアムはすでに何度もここまで到達しており、そしてリタはヘリが飛び立つ前にどうやっても死ぬ運命だった。これまでの交流でウィリアムはリタに対して恋心を抱いており、彼女を死なせたくはないと考えていた。だがリタはそれを聞いてもなお、ウィリアムがダムに到達するための必要な犠牲だとして自分が死ぬことも厭わなかった。しかし死んだリタを茫然と眺めるうちに結局ウィリアムも殺されてしまう。
そしてリタを死なせたくないウィリアムは、リタと会うことなく最前線を突破する道を選ぶ。すでに幾多の戦いの経験を持つウィリアムは歴戦の戦士となっており、執念によりついにたった一人で最前線を突破することができたのだった。

ダムに到着したが、そこにはオメガはいなかった。代わりにウィリアムを仕留めようとするギタイがいた。もはや万事休すと判断したウィリアムは自殺してタイムリープしようとするがギタイがそれを阻止してくる。だが機転を利かせてわざと溺死することに成功したウィリアム。結局、ウィリアムが見たドイツのダムのビジョンはオメガがウィリアムをおびき寄せて血を抜いてタイムリープの能力を消すための偽の情報だったということだった。

撒き戻った先でリタとカーター博士にこのことを説明するウィリアム。
もはやオメガを探し出す手立てはないとも思われたが、カーター博士は「アルファに使うとオメガの波長を受信する」という機械を持っていた。つまり現在アルファの能力を持っているウィリアムにこれを使えばオメガの居場所が分かるかもしれないのだという。しかしこの機械に必要な部品が欠けており、それはロンドンにいるブリガム将軍が所持しているのだという。

将軍の元に辿り着くのにも何度もやり直したウィリアムはリタを誘導して警備に捕まらないように立ち回り、ついに将軍の前に辿り着く。将軍はタイムリープの話など信じないが、絶対に知り得ないはずの情報をウィリアムが口にしたので渋々将軍は話を信じ、ついに必要な部品をウィリアムに渡す。
上手くいったかに思われたが、将軍は警備に連絡しており、ウィリアムとリタは追われる身となる。その最中でウィリアムは博士の開発した機械を使う。するとオメガの居場所はパリのルーブル美術館だと分かる。
だがついに追っ手に捕まってしまう二人。目を覚ますとウィリアムは治療を受けた後だった、輸血もしてしまったせいでウィリアムはタイムリープの能力を失ってしまうのだった。リタのおかげで脱出はできたものの、これからはタイムリープの力なしでギタイに立ち向かうことになってしまう。

オメガの場所がパリだと分かったがこれからは一発勝負で失敗はできない。
ウィリアムはJ分隊のメンバーに協力を依頼する。最初はウィリアムを信用していない分隊メンバーだったが、無数に死に戻りを繰り返しているウィリアムはJ分隊のメンバーのプライベートや秘密も知っていた。それを知った分隊メンバーたちはウィリアムの話を信じるしかない。こうしてウィリアム、リタ、それにJ分隊メンバーたちはオメガを倒すべくパリに向かった。

パリはすでにギタイにより壊滅させられていた。輸送機に乗り込み美術館向けて突撃する。
しかしJ分隊メンバーたちは1人、また1人と死んでいく。ウィリアムとリタがルーブル美術館のガラスピラミッドの地下へと潜入する。ついにオメガを前にするが、ここでついにリタもウィリアムを先へ行かせるために命を落とす。
地下の水中にいるオメガに向かって行くウィリアム。身体を貫かれるも、直前で手りゅう弾を落としており、これを飲みこんでしまったオメガは爆発四散した。そしてこの時、オメガの血が死にゆくウィリアムの体に触れて混ざる。

ウィリアムが気づくとそこはギタイに人類が勝利したという世界だった。
人類は勝利に湧き、J分隊のメンバーたちも生存していた。
ウィリアムが会いに行ったのはリタ。彼女はこの時間軸だとウィリアムを知らない。だがリタは最初に出会った時のように「何の用?」とウィリアムに聞く。それを聞いてウィリアムは笑った。

評論

2014年11月13日、PSSTOREでレンタルが開始されたのでさっそく見た。
原作はラノベである作品だが、以前、小畑健の漫画版を少しだけ見て面白かったので是非とも見たいと思っていた作品。

まずラノベ原作のハリウッドってのがこの作品初らしいですな。この作品を語る上では真っ先に上げられる部分。
ラノベって言えば昔で言うところのジュブナイル的位置づけなのかもしれないが、アニメ、漫画っぽいキャラクターが登場するジャンルであって、その稚拙な文章とかがよくネタにされたりと割と嘲笑の的になりやすいのであって、ラノベ→ハリウッドってのは、確かに飛躍が感じられる。まあでも特筆されてしかるべき部分だろう。こういう例が生まれたことにより、ラノベってものの社会的地位のようなものが上がったのは確かじゃないだろうか。アホほど金かけるハリウッド映画の原作に使われ、しかも主演がトム・クルーズだ。実際凄いよね。
しかし、ラノベがどうこうと色眼鏡で見る必要などまったくなく、見てみればむしろ今までなぜこういう発想がなかったのか?と疑問に思うほどに単純にSFとして面白い映画だった。

いくら死んでもやり直せる主人公が無限コンテニューしつつ地球侵略してきたエイリアン攻略の糸口を探し続けるというストーリー。ゲーム、特にアクションゲームをやったことがある人間なら、見れば必ず「スーパーマリオ」などのゲームを連想させるつくりになっている。原作小説は2004年に発売と割と古く、見てもいないが、マリオはじめ、死んでもコンテニューできるゲームから着想を得ているのはもう間違いないだろう。この設定だけでもう面白い。
最初は戸惑っていたものの、当たり前のように相棒となるヒロインに殺されることにすら慣れてしまう主人公。あまりにも酷いと言えば酷い話ではあるが、これが笑いの演出にも使われているので殺伐としているだけでもない。死んだ瞬間にまた直前に戻されるシーンを何度も続けてテンポよく見せられれば笑うしかない。

そのヒロインも過去にタイムリープ能力を持っていたのだが、現在は失っているという設定。ここは原作とは違うらしい。ヒロインのリタという女性はエミリー・ブラントという女優が演じているが、これがまたセクシー。映画に関してはミーハー、それ以下の知識しかないのでこの人のことは知らなかったが、少なくともこの作品では筋肉質ながらも十分に魅力的だ。主人公が暗にヒロインに○ックスを迫ろうとしつつも一蹴されるシーンでは吹いた。

何度も何度もコンテニューを繰り返して主人公の精神は疲弊していくが、それでも終わりなくコンテニューし続け、挑み続ける。
当初の目標となっていたドイツのダムはフェイクだった。捜し求めた敵の親玉がいる位置はパリのルーブル美術館の地下であると突き止める。
そこへ向かう道中で、タイムリープ能力を失い、コンテニューなしの一発勝負となってしまうものの、味方、ヒロイン、ついには自分も犠牲にして親玉をしとめ、全エイリアンは停止。そして死の直前にまたタイムリープ能力を得た主人公はエイリアンに人類が勝利したifの世界へと飛び、そこでヒロインと出会って大団円。

いくつか都合よい部分はあるものの、欠点という欠点はなく、エンターテイメント作品としては満点に近いのではないだろうか。ここまで掛け値なしに面白いSF作品って少ないと思う。それもこれも、死んでも記憶を引き継いだまま何度でもやり直せるという、ハリウッド映画としては前例のない設定があまりに面白いから、ということにつきる。最近では宇宙での遭難というあまり前例のない(自分が知らないだけかもしれないが)テーマを扱った「ゼロ・グラビティ」でも思ったことだが、コロンブスの卵ってやつか。ありそうでなかったことでも、最初にやるのって凄いことだ。本当に一度きりしか使えない設定だからもうこれの後追いはできないな。あまりにも特徴的なので、続編もパクリもできない、唯一無二の設定だ。

主人公は冒頭時点では臆病で弱気な、はっきり言ってしまえば小物なのだが、まず、もう50歳も過ぎたトム・クルーズが今更こんな役を演じるということに驚いた。ぶっちゃけ、客寄せという意味ではトム・クルーズはいいかもしれないが、最適な配役かというとそうではないと思う。原作では20くらいの若者らしいし、それをハリウッドに落としこむにせよ、ちょっと50歳のトム・クルーズが相応しいとは思えない部分はある。
ただ、これは無理矢理難癖をつけた場合に出てくる批判、という程度であって、個人的にはトム・クルーズは嫌いじゃないし、序盤限定とはいえ、「格好悪い」役を今の時期にやったということには好感を持った。
分かりやすいエイリアンとの戦争、主人公の成長、ヒロインとのラブストーリー、そして守られる平和。必要なものはすべて揃っており、SF映画の傑作として確実に候補に上がってくる作品だと思う。

登場人物解説

ウィリアム・ケイジ

演:トム・クルーズ
吹替:森川智之
元々は軍の報道官であり、階級は少佐。軍属でありながら戦う能力はないなどと言う。保身ばかり考えるヘタレ。しかしそれがブリガム将軍の逆鱗に触れ、二等兵として最前線のJ分隊に送り込まれる。成す術もなく死ぬはずだったが、618万に1体しか存在しないというアルファ・ギタイ(ギタイ全体としては神経伝達系に相当する)の血を浴び、タイムリープ能力を持つ。そしてリタと共に訓練をして無数の経験を積んだことで別人のような歴戦の戦士となった。

リタ・ヴラタスキ

演:エミリー・ブラント
吹替:東條加那子
筋肉美が目を引くヒロイン。かつて多大な戦果を収めており、「ヴェルダンの女神」とも呼ばれている。かつてウィリアムと同じくタイムリープ能力を持っていたが、輸血して血が入れ替わってしまったことで能力は失ってしまった。戦場で出会ったウィリアムに対して自分に会いに来るように言い、それからウィリアムと協力してギタイと戦うことになる。ドイツのダムを目指すルートではどうやっても死んでしまう未来であり、それを知ってもなおリタがウィリアムを送り出そうとするのは感動的。しかしそもそもそれはオメガ・ギタイの流したフェイクだったので、感動もちょっと台無しな感じがある。というか、ウィリアムがリタに会わないで一人で頑張るルートでもリタは普通に戦場で死んでるんじゃ?と思うのだがその辺どうなのだろう。

カーター博士

演:ノア・テイラー
吹替:隈本吉成
リタの協力者であり、ウィリアムとリタ以外では唯一、ギタイのタイムリープ能力を信じている人物。アルファに突き刺すことでオメガの電波を受信するという機械を開発しており、これによりオメガの真の居場所を見つけることができた。

ブリガム将軍

演:ブレンダン・グリーソン
吹替:勝部演之
報道官であるウィリアムに戦場へ行くように指示した人物。しかしウィリアムがこれを固辞し、あまつさえ自分を脅すような発言もしたため激怒。ウィリアムを二等兵に降格させ、最前線のJ分隊へと送り込んでしまった。また、ウィリアムとリタがやってきてカーター博士が開発した機械の部品を要求した時には、表面上はウィリアムの言うことを信じたようだったが、その裏では警備を呼んで二人を捕らえようとした。そしてこれによりウィリアムはタイムリープ能力を失ってしまった。

ファレウ曹長

演:ビル・パクストン
吹替:大塚芳忠
最前線に飛ばされたウィリアムが所属するJ分隊の上官。ウィリアムが死んでタイムリープすると必ずこのファレウ曹長との出会いのシーンから始まる。ウィリアムが訓練中に逃げ出して車に轢かれて死ぬシーンで「なんというアホだ」と言うシーンは今作名場面に違いない。

項目別評価

初見では本当に色々と楽しませてくれる作品だった。ギャグを交えながら死に戻る様は本人からすればシャレにならなくとも見ていれば笑うしかない。ストーリーもややこじつけながら大団円なのは良かった。

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