アルゴ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月13日

あらすじ・ネタバレ

1979年のイランが舞台の物語。1950年にモサデクという人物が首相になり英米が狙っていた石油を国有化し民のものとした。しかし1953年には英米が暗躍しモサデク政権を転覆させた。そしてイランの国王「シャー」と呼ばれる立場にはパーレビという人物が就いた。これも英米の思惑だった。パーレビは西欧文化に傾倒して税の限りをつくした。さらにサヴァクという警察を組織し、暴政を行った。これは保守的なシーア派国民を激怒させた。1879年にはイランの民はこのパーレビを追放する。新たにホメイニ師という、民の味方をする人物が指導者となった。しかしイランはパーレビの時代の禍根により混沌と化した。アメリカは末期がんを患ったパーレビを受け入れた。しかし国民の怒りはパーレビを処刑しなければ収まらない。
1979年11月4日、パーレビの引き渡しを要求するイラン国民は在イラン米国大使館を包囲していた。

一触即発の状況の中、ついアメリカ大使館にイラン民兵が押し入った。 大使館職員はそのほとんどが人質となってしまったが、6人だけ逃げ出してカナダ大使館へと逃げ延びたのだった。しかしそのまま数か月が経過し、カナダ大使館も匿うのは限界に近づいており、大使館を占拠した民兵たちがシュレッダーで処分した名簿を揃えたら6人は公開処刑されると危惧された。

こういう中、アメリカCIAでは大使館の人質救出のために作戦が考えられていた。
主人公ケヴィン・ハーキンスはSF映画のロケハンだと偽装して6人を脱出させるという作戦を提案した。最初はばかげているとされたが、ケヴィンの説得により受け入れられた。
一方、大使館ではイラン人民兵が大使館の数に合わないことに感づいた。一刻も早く救出しなければ民兵に6人が発見され処刑されてしまう。

ケヴィンは知り合いの特殊メイク係のジョンやその知り合いのレスターというプロデューサーと接触して偽装のための映画を創る人材を集めていた。
偽の映画はレスターに「アルゴ」と名付けられ、ポスターを創ったりマスコミを利用したりと、イラン人を騙すために信憑性が補強されていった。レスターとしてはアルゴというタイトルに意味がないらしい。「アルゴ糞食らえ!」というのがケヴィン、ジョン、レスターらの合言葉にもなった。
ケヴィンは国務長官、CIA長官と会い、作戦の最終的な許可を得ようとする。難色を示す二人だったが、他に検討されている作戦も成功率の低いものであるため「この偽映画作戦が現在選べる最もマシでろくでもない作戦です」と説明して説得した。

ついに偽映画作戦が開始。ケヴィンは自らイランへ乗り込む。失敗したら確実に死ぬため息子に電話をかけるが出ないため手紙を残した。
入国審査などでやや疑われながらも突破しついに現地の6人がいる家(カナダ大使テイラーの家)に辿り着いた。
カナダ人の映画クルーに偽装する話をしたら6人に「そんな真似ができない」と猛烈に反論されるケヴィン。会ったばかりのケヴィンに命をかけることなどできないとも言われる。しかしケヴィンは自分の本名や家族構成を明かして信用させようとする。6人は結局作戦に乗るしかないと観念し、自分に与えられた役割を演じることに決めた。
映画を撮影している体であるためバザールに行きロケハンをしている振りをすることになった。出た時デモに囲まれて車をバンバンと叩かれるがなんとか突破した。 バザールでは大使館を占拠している民兵らが一行を密かに撮影していた。そして現地人に囲まれて暴動になりかけたので引き上げることにした。

カナダ大使テイラーの家の家政婦のサハルが応対に出たが「彼らは客人です」と誤魔化した。
ケヴィンたち7人はバザールからは無事戻れた。翌日には出国。改めて6人は自分の役割を確認していたが未だ不安があった。

イラン脱出前夜、ケヴィンに連絡が来る。なんとここにきて作戦は中止だという。デルタフォースが大使館の人質救出作戦をするため、今のタイミングで6人が拘束されるにせよ長くはならない。つまり殺されることはないという甘い見込みによるものだったが、バザールで顔をさらした今、見つかるのは時間の問題で、イラン兵に捕まればたちまちに殺されてしまうとケヴィンは訴える。しかし6人が普通に殺されればまだマシで、ハリウッド作戦が失敗した上で6人が殺されればCIAは世界の笑い者になると上司に言われてしまった。

匿ってくれているカナダ大使テイラーは「君だけ黙って姿を消せ。最初から無茶な作戦だった」と言う。
一方、イラン民兵はバザールで撮影した6人の写真を見て怪しんでいた。
ケヴィンは6人に事実を伝えずホテルに戻って酒を飲んだ。事実を知らぬ6人も最後の景気づけにとパーティをしていた。ケヴィンは偽造した6人のパスポートを見つめて決意の表情を見せる。

そして翌日の脱出決行日。ケヴィンは上司ジャックに電話し「俺が善責任を取る。彼らを連れ出す」と断言して切った。しかしすでに航空券はキャンセルされており、これを戻すにはカーター大統領の承認が必要だった。ジャックは血相を変えて急いでホワイトハウスに連絡するために動く。すでにケヴィンたちは空港に向かっていて急がなければならない。 ケヴィンたちは空港に到着してしまい、空港で予約を確認するがキャンセルされたので「入っていません」と言われる。しかしギリギリのところでカーター大統領の承認を得て、航空券を発券された。

しかしテヘランの空港では入国時と出庫時で対応する白と黄の紙が確認できなければ通れない。6人のものは偽造したもので片方がない。ここで怪しまれてしまう。しかし「文化イスラム指導省」の書類を出したところ承認された。

さらに機に乗る前にパスポートの確認をされた。ここでケヴィン含む7人は疑われてしまう。言葉が通じないので疑われるが、6人のうち一人がペルシャ語は話すことができ、映画の広告や絵コンテを見せて誤魔化すことができた。内容は国民が悪い王を倒すというものだった。しかし検問する男は「確認するまで行かせない」と言い出す。しかし作戦中止後、ジョンやレスターがいる事務所も閉鎖指示が出ていたせいで事務所に誰もいない。CIAが電話しても誰も出ない。
民兵が確認中、新聞を見ると「アルゴ」の記事があった。さらに彼は確認のため無人の事務所に電話をしてしまう。やはり事務所には誰もいない。が、外出していたジョンとレスターがギリギリのところで戻って来て、ジョンが電話に出た。「ケヴィンハーキンスは?」と民兵に聞かれジョンが「海外に出払っている」と答えた。これで確かに実在する事務所、映画だと検問の男は信じ込み、ついにケヴィンたちはギリギリのところで機に乗ることができたのだった。

7人が偽装したアメリカ人だと気付いた民兵らは全速で追いかけてくる。7人がタラップを登って機に乗り込んだ頃、彼らも空港に入り追いかけてきた。7人が乗った機の離陸は「2番目」であるため、少し待つ必要があった。滑走路まで追いかけてきて離陸体制に入った機の横を追いかけてくる。しかしついに機は宙に浮き、カナダへと旅立ったのだった。

それでも機がイラン領空なうちは安心できない。しかしついに「イラン領空を出たのでアルコール類を注文できます」という機内アナウンスが流れ、一同は抱き合って喜んだ。ケヴィンも安堵の表情を浮かべる。アメリカのCIA職員一同も喜び合った。 一方、家政婦をしていたサハルもイラクへと逃亡していた。

この歴史的事件は、アメリカのCIAが関与していると発表すると人質が報復されるため、カナダだけの手柄とされた。 そしてケヴィンはCIAスター勲章というCIAの最高の勲章を授けられることになった。しかし隠密作戦だったため公にはされず、実質的には授与後にすぐはく奪ということだった。
別居している妻と息子がいる家へと向かったケヴィン。妻に「入ってもいいか?」と聞くと彼女は抱きしめてくれた。そして息子と寄り添い寝た。

そしてテロップで歴史が語られる。イランのアメリカ大使館占拠事件において、1981/1/20にすべての人質が解放された。444日もの間彼らは監禁されたのだった。
そしてハリウッド作戦で脱出した6人は全員外務局に戻った。ジョン・チェンバースもまた民間人として最高のCIA勲章を受けた。2001年に死去するまでケヴィンとジョンの親交は続いた。
1997年にはクリントン大統領がアルゴ作戦の機密扱いを解除し、CIAスター勲章はケヴィンに返還された。彼は今はメリーランド州の田舎で家族と共に暮らしているという。

エンドロールではこの件に関わった実際の人物たちの写真画像が流される。
最後に当時のカーター大統領の言葉。「当時は機密だったが、事実を伝えたい衝動に駆られた。トニー・メンデスはCIAの歴史上最も優れた50人のうち1人だ」と称えるものだった。

感想・評価

「政治色強くて雰囲気の堅い映画だなあ」と序盤は観ていた。
しかしケヴィンが「映画を撮影する振りをして救出しましょう」と言い出してからは何だその愉快な作戦!?となり、もう俄然夢中に。これが実話だというのだからビックリだ。

しかし、「実話」で「複数の国が関わっていて」しかも「政治的」な話だとなれば、やはり摩擦が起きない訳がなかったらしい。
この映画、イランから見れば冒頭で語られる歴史自体が間違っている上に事実とは違うような大袈裟な描写がり、カナダから見ればCIAばかりが優秀でカナダは添え物でしかないかのようだ、とか、公開後に物議を醸したとのこと。
観た直後は「なんだこの映画!あまりに面白過ぎる!」とか感動していただけに、この事実を知ってまさに冷や水をかけられたような気分に。「事実を元にした映画」には必ずついて回る話だが、この作品に関しては稀に見るレベルで騒動になってしまったようだ。何せ扱う話がデリケートすぎたのだろう。

そういった事実を知る前から、ラストの空港のシーンで航空券の手続きとか事務所への電話とか飛行機の離陸とか全てがギリギリなので、この辺りは流石に創作だなとは思ったし、完全に脚色なしの映画だとは思ってはいなかった。実際のところ空港では止められることなく割と普通にスルーできたし、もちろん民兵らが滑走路にまでは行って追いかけてきたりするようなことはなかったとか。でもそれを事実通りにやったら拍子抜けもいいとこ。こういう脚色は致し方なしだ。
ただ「アメリカ人絶対殺すマン」にさせられて死に物狂いで追いかけるという事実にはない描写を入れたら、イラン人としては当然面白くはないだろうなあ。その直前に「民が悪い王を倒す」という内容の映画の絵コンテを渡されたからといって民兵がニコニコするシーンを入れるのも、イラン人がただの単細胞みたいだ。

こんな事書いてなんだが、自分は事実を元にした映画を評価する場合、「事実に忠実かどうか」をあまり問題にしたくはないといつも思っている。でもそういう映画をよく見ると「これ事実と同じなのかな?」という考えはどうしてもついて回ってしまうもので、知らなきゃよかったと思う事実と映画の齟齬もよくある。
でも何も知らずに作品を観て感動できたのなら、それでいいはずなんだよなあ。特に、自分が一切かかわりのない事実を扱ったものならば。いちいち平等を気取って客観的に語ることこそわざとらしい。自分の気持ちに正直でいたい。

というわけで、設定からストーリーから展開から、何から何まで単純に面白くて、傑作だと思います。是非見よう。

登場人物解説

ケヴィン・ハーキンス

主人公で人質救出のスペシャリストのCIA職員。妻と息子がヴァージニアにいるが別居状態。CIAだからなのかケヴィン・ハーキンスというのは偽名で、本名はトニー・メンデス。ハリウッド作戦を提案し、自らイランに乗り込んでカナダ大使に匿われた6人を導いた。人質救出作戦が行われることになってからは策戦中止の命令が下されたが、それに逆らってハリウッド作戦を決行。

6人の大使館職員

人質事件勃発時に逃げ出してカナダ大使館に匿ってもらっていた6人。長い間潜伏していたが、そろそろ限界であり、殺されると予感していた。ケヴィンの「ハリウッド作戦」を聞かされた時は「できるわけない!」と反論したが結局は覚悟を決めて演じることにした。

ジョン・チェンバース

映画の特殊メイク係。太っちょ。レスターをケヴィンに紹介した。民兵が事務所に電話した時間一髪で出てケヴィンらは助かった。

レスター

プロデューサー役をやることになった。実際本当にプロデューサー。ジョンとはいつも仲良く一緒に行動している。偽映画に「アルゴ」という名前をつけたのもこの人物。

ジャック

ケヴィンの上司。ケヴィンが作戦を決行しようとしたところで彼を助けるために戦力を尽くした。この人がいなければ7人は確実に死んだ。まさに陰の立役者。

テイラー

カナダ大使館で働くイランのカナダ大使。6人を匿い、ケヴィンに協力もした。サハルを家政婦として雇っていた。カナダ人は役に立っていないなんて批評があったらしい映画だが、この人物がいる為に決してそういうふうには思えない。実際は他の多くのカナダ人も活躍したということだろうか。

サハル

テイラーの家の家政婦。テイラーが匿っていた6人がカナダ人ではないと薄々感づいていた。しかし疑った民兵が一度訪問してきた時には「彼らは客人です」と言って追い払った。ここで正直に言ったらアウトだったろうから、ジャック同様に実は重要人物。

パーレビ

イランの国王の「シャー」だった男。暴政を行っており、国民に激しく憎悪されている。これをアメリカがかばったために大使館でのたてこもり事件が発生した。事件の原因だがこの映画では全く出てこない。

マックス

アルゴの脚本家を担当した男。レスターいわくカス野郎。

項目別評価

脚色がどうとか事実と違うとか抜きにしての純粋に映画だけ見ての評価。話が面白く、ケヴィンがイランに潜入してからは目が離せない。見ていないなら是非見よう。傑作です。

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