ブリッツ -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ブリッツ

執筆日:2015年3月23日

評論

イギリス映画。ジェイソン・ステイサム主演、パディ・コンシダインとの刑事バディもの。
この前もケープタウンという刑事バディものを見たばかりだが、意図せずまたバディものである。

あらすじ解説。
ロンドン警視庁のブラント(ジェイソン・ステイサム)は暴力刑事であり何かと問題を起こしている刑事だ。
休暇を取ったロバーツ警部(マーク・ライアンス)の代わりに警部となったゲイのナッシュ(パディ・コンシダイン)もロンドン警視庁には在籍している。

ある日、女性警官が拳銃で殺害される事件が発生する。
これを皮切りに連続で警官殺人事件が発生。犯人は新聞社へわざとタレ込みを入れて自己を「ブリッツ」と名乗り自己顕示欲を満たす。最初の殺人後も犯人は2件の警官殺人を冒す。
その事件の犯人であるワイス(エイダン・ギレン)へたどり着いたゴロつきも調子に乗っていたら犯人に殺されたりもした。
犯人であるワイスにはたどり着き、ついには確保までしたものの、3件の殺人どれも物証がなく、結局ワイスはすぐに解放されてしまう。だが拘束中、ブラントはワイスをこれでもかと挑発して彼をコケにしていた。

解放されたワイスは自分をコケにしたブラントを殺さなければ気がすまない。
ワイスは警官に変装をして自分が殺したロバーツ警部の葬儀に顔を出し、そこからブラントを尾行して殺害を画策する。だが、実はハメられていたのはワイスのほうだった。駐車場の屋上にて顔を見せたのは追っていたブラントではなくナッシュ。潜んでいたブラントは背後からワイスを殴りつけ、ボコボコにする。さらに銃を向けると、ワイスは「俺はブリッツだ。殺せるわけない」と言うが、ブラントは「お前はブリッツじゃない。だから釈放されたんだろ?」と言って銃殺。法では裁けない悪党を私刑により裁き、物語は終了。

ジェイソン・ステイサムといえばトランスポーターシリーズでの落ち着いた印象が強いため、暴力刑事を演じるこの作品ではギャップを感じた。ケープタウンでのオーランド・ブルームを刑事の癖にクズだ、みたいなこと書いたけど、こっちのブラント刑事のほうがよほど危うい。まず冒頭がこのブラントの暴力シーンから始まるもんだから、これは過去に多くの過剰暴力を行使してきたブラントに怨みを持った人間が犯人で、ブラントにも非があるんだろうな、などと予想したくらいだ。実際のところそういうことはなく、単に自己顕示欲の強い小物が犯人だった、というのが実際のところなのだが。

その小物犯人のワイスについて。彼が新聞社へ名乗った「ブリッツ」とかいう名前が映画のタイトルにもなっているわけだが、別にこの言葉には何の意味もなかったりする。「稲妻」という意味だが、このワイス自身もどういう意味があるのかは一切語らないというね。多分格好いいからという理由で名乗ったんだろう。中学生かよ。いい年したおっさんなのに痛い。
ちなみに彼が犯行に及んだ理由は過去の軽犯罪で逮捕された際に関わった警官であるという何のひねりもない動機だ。でもこれにブラントが気付くのが結構後半になってからだったり…。とっくに身元も素性も知れて犯罪歴も分かってるのに、彼がターゲットとする警官の共通項を発見するのが後半なわけだ。今更そこに気がつくのかよ!と突っ込みたくなった。

物語の本筋と全く関係のない話だが、フォールズという過去に麻薬をやっていた女性警官が自分と親しい少年を殺されたことによるショックでまたジャンキーに戻ってしまう、というパートもあるのだが、彼女関連の話は全部切ってもよかったんじゃないだろうか。フォールズがワイスに狙われた際にもみあってその少年は殺されたわけだが、このフォールズの話に結構な時間を割いている割には本筋にはほぼ関係ない。結局このフォールズの話はなんだったんだろう、と思ってしまった。

そういう何をしたかわからない構成を抜いて語っても、地味。とにかく地味な映画である。犯人の素性が中盤あたりで完全に明らかになってしまうし、しかもその犯人というのが悪役としてはあまりに地味なただのチンピラ、小物だ。あまりにもスケールが小さくて見せ場もなくて拍子抜けする物語だった。
一つ感心したところといえば、序盤、ナッシュがブラントに自分が過去に私刑を行ったことを話すことが伏線になっていたこと。それに、証拠不十分でワイスがブリッツではないと証明されて釈放されたからこそ、その私刑が許される展開に持っていったこと。ただ、最後に犯人をハメるシーンではどの段階でブラントが感づいていてのか分からなかったので、そこが少し気になったかも。

この映画には2人のハゲが登場する。右上がかっこいいハゲ、ジェイソン・ステイサム演じるブラント刑事。
そして左下はかっこ悪いハゲ、タレ込みにより5万ポンドの大金を手に入れながら、直後犯人に殺されてしまうゴロツキだ。ジェイソン・ステイサムは眼光の鋭さがたまりませんな。ゴロツキの人の役者名は調べてもわからなかったけど、見た目にインパクトあるので描いてみた。

項目別評価

暴力的なブラント刑事のキャラクターは結構気に入ったのだが全編通して地味で華のない映画。犯人のワイスが小物すぎてこんなのが敵方かと拍子抜けする部分もあるが、この犯人、ワイス役のエイダン・ギレンという人がいいクズ人間演技しているので、このワイスがあれこれ動いているところを楽しむ映画のような気もする。ただの小物であるのになかなか制裁を下せないのはやきもきするが、最後にこの犯人に制裁を下し溜飲が下がるところで終わるのは良かった。私刑であってもそれまでワイスの救いようのないクズさは十分に見ているのですっきりする締めだ。
ところで結局なんでワイスはブリッツって名乗ったんだろう。やっぱり格好いいから?

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