コラテラル・ダメージ(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>コラテラル・ダメージ

執筆日:2015年7月13日

評論

アーノルド・シュワルツェネッガー主演、2002年作品。
なかなか有名な作品だしロードショーでも何度もやってるだろうが、不思議と今まで一度も見ていなかった。
タイトルは「仕方のない犠牲」という意味になるらしい。また、2002年作品でしかもテロを扱っている作品ということで2001年の911テロを意識した、プロパガンダ的な意味合いのある作品なのかというと全くそんなことはなく、関係ないようだ。むしろ911テロによって公開を先延ばしにされたという、この作品自体がある種のテロの被害者でもあるようだ。

ストーリー解説。
ロサンゼルスの消防士のゴーディー(アーノルド・シュワルツェネッガー)はある日、テロに巻き込まれて妻子を亡くす。
テロを主導したのはコロンビアにいるテロ組織メンバーのウルフという男だ。彼はコロンビアに軍事支援し干渉してくるアメリカへの対抗としてテロを行ったのだ。そしてコロンビア人にインタビューしたところ(このコロンビア人はただの一般人?そのあたりあまり覚えていない)「アメリカに対しての抵抗だ。消防士家族は気の毒だが仕方の無い犠牲(コラテラル・ダメージ)だ」と言ってしまった。
それに怒り狂ったゴーディーはマスコミ?に殴りこみかけて暴れる。が、取り押さえられる。
そしてアメリカ側としてはテロ組織と抗戦するつもりはなく、和平方向で話を進めるつもりだ。それをゴーディーは許せない。
妻子死亡の際に知り合ったCIAの人間ブラント(イライアス・コティーズ)に相談を持ちかけると、コロンビアに乗り込む方法をこっそり教える。
というわけで、元警察でもFBIとかでもないただの消防士が単身でコロンビアへと潜入するという無茶な復讐劇が幕を開ける。

ただの消防士であるゴーディーがあっさりとテロ組織内部に潜入するというわけにはいかず、現地人女性セリーナ(フランチェスカ・ネリ)とその子供を助けようとしたら現地警察に捕まったり、拘留所が火事になったり、その際脅しをかけて通行証を持つ人間フェリックス(ジョン・レグイザモ)を助けたり、その色々と苦戦しながらもとうとうテロ組織の元へとたどり着く。
爆破工作によりターゲットであるウルフを暗殺しようとするも、その現場にセリーナたち親子がやってきてしまい、それを助けるために暗殺は失敗してしまうことに。そして仇であるウルフの前にゴーディーは差し出されてしまいもはや万事休す。セリーナはウルフの妻であることも明らかになる。セリーナが言うには、どうやらウルフの境遇もかつて妻子を亡くしたというものであって、それでシンパシーを感じたからなのかウルフはゴーディーを殺さずにおいた。また、セリーナの息子は実の息子ではないこともゴーディーは知る。一方ウルフはアメリカへの更なるテロを行うため、ゴーディーがコロンビアに拘束されている間に出発してしまう。

アメリカ政府の手、ブラントたちによりゴーディーは救出されて九死に一生を得るも、すでにウルフがいずれかの場所でテロをたくらんでいるため、予断を許さない状態。セリーナの力を借りてウルフを探し出すことに。
どうやらウルフはある駅を爆破しようとしているとセリーナにより明らかになる。それを事前に知ることができたため一件落着かと思いきやそうはいかなかった。
実はセリーナこそが本命だった。彼女はアメリカに協力すると見せかけておいて、クマのぬいぐるみに爆弾を仕掛けておき、捜査対策室で爆破を決行。事前にそのことに気付いたゴーディーによって死人は出なかったものの、彼女を追ったブラントはあえなく銃殺される。

逃亡するセリーナ。そしてウルフはバイクで彼女を迎えにきていた。クライマックスはゴーディーとウルフ&セリーナの夫婦との対決に。
一度は逃げられたものの、バリケードを操作して脱出経路を潰し、ウルフとセリーナは引き返さざるをえない状況に。2人が戻ってくる間、ゴーディーはガスを充満させておき、セリーナがバイクに乗ったまま銃撃すると大爆発。無惨にも夫婦は死亡、かと思いきや生きていた。最後は肉弾戦だ。セリーナはゴーディーに放り投げられてモニターに突っ込ませ感電死。さらにウルフに対しては一度劣勢になるも油断したところに斧を胴体に振り下ろし勝利。

作品のガワだけ見れば、シュワちゃんが悪の組織に一人で立ち向かうという、ありきたりなB級映画まんまであるのだが、この作品にはそういうものとは決定的に違うものがあると思う。シュワちゃんが演じるゴーディーの経歴だ。彼は本当にただの消防士であって、別にその前は警察にいただとかSWATにいただとかFBIにいただとかそういう強さを裏付ける設定が存在しない。ただの消防士、それなのにやたらめったら強いのである。本当にただ一人でテロ組織まで乗りこんでいってしまう。また、Wikipediaにもあるが、この作品中、ゴーディーは一切の銃器を使わない。代わりに消防士としての知識を利用し、爆破工作を何度か行ったり、また最後のウルフへのとどめのように斧のような原始的武器を使うことになっている。銃器を使わないのに強いということでむしろこっちのほうがすげえ!という気すらする。

とにかく、ただの消防士である主人公が非現実的に強いわけだ。この作品の監督には、「キャスティングがシュワちゃんだからって許されると思ってないか?」と聞いてみたいものがある。それに、CIAのブラントがコロンビア潜入への助言を行うというのもまた非現実的極まりない。ブラントは「本当にテロ組織にたどりつくとは…」といやらしく笑うシーンもあって、元々ゴーディーがどうなってもいいということで適当に送り出したのだろうが、ただの一般人がテロの復讐に旅立つ、というのをなんか作品ではさもありなん、といった感じで普通に受け入れているのが違和感を感じる部分だった。あんたらシュワちゃんだから何かマヒしてるだろ!と。キャスティングありきの作品ですな、何にしても。
ただ、別にそれがそんな悪いこととは思わなかった。だって消防士じゃなくて、軍人とかFBIとかそういう箔のある経歴を持ってる人間が無双するならそれこそただのB級映画なわけだし。一般人がテロ組織に殴りこみ!という滅茶苦茶な設定もたまにはいいよね!というか、作品への印象としてはそんな感じに落ち着いた感じだ。

項目別評価

消防士が単身テロ組織に挑んで周囲がわりかし当然にしてるような雰囲気なのでその辺にかなり違和感がある。
ただむしろ、それがある種の独自性にも思えて新鮮だった。元特殊工作員とかだったらそれはもうありきたりでつまらんだろうし。というわけでストーリーをあえて高くした。消防士ならではの火についての知識を駆使して撃退するというのもまあ面白い。
味方側かと思っていたヒロインに相当する人間が実は黒幕、という点は映画ではちらほらあるものではあるが(ダイハードラストデイとか)、初見の身としては終盤まで予想できなかったのでそれも普通にサプライズとして面白かった。

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