ザ・デッド インディア 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ザ・デッド インディア

執筆日:2017年01月02日

その他ゾンビ映画の感想

あらすじ・ネタバレ

冒頭、ある男がインドでふらふらと歩いている。この男が原因で、人口12億人を誇るインドにおいてゾンビがはびこるパンデミックが起こることになる。

主人公のニコラスはアメリカからインドにやってきたアメリカ人電気技師だ。彼はムンバイから数百キロも離れた場所で仕事をしていた。
一方、ニコラスの恋人であるイシャニはインド人。彼女はムンバイにいる。ニコラスがイシャニに電話をすると彼女は妊娠したという事実を打ち明けてくる。それに驚きつつも喜ぶニコラス。しかしイシャニは周囲が騒がしいことをニコラスに伝える。冒頭の男が原因ですでにゾンビパンデミックが発生していたのだ。ニコラスも、周囲にいる人間が人間を襲う場面を目の当りにし、これはただごとではないと危険を察知。イシャニには家に立てこもるように伝え、自分は数百キロ離れたムンバイへ彼女を救出することを決心した。
しかしイシャニの父親は「アメリカ人はインド人など捨ててしまう」と言いニコラスには強い反発を覚えており、イシャニが妊娠までしていると知るとイシャニに手を上げて激怒する。しかしとにかく、イシャニも父親も自宅に籠城することになった。しかしイシャニの母はすでにゾンビに噛まれており、苦しんでいた。

ニコラスは出発しようとするが、すでに同僚はゾンビに殺されていて、死んだはずにもかかわらずニコラスに襲いかかる。銃で武装したニコラスはそれをまず倒してから電動グライダー(?)のようなもので旅立つ。しかし途中で落下して木に引っかかり気を失ってしまう。

ニコラスは子供の悲鳴で目を覚ます。子供はジャベドという天涯孤独の男児だった。ジャベドを救出して「連れていくことはできない」と言うニコラスだが、ジャベドは「ムンバイに行くまでの近道を知っている、役に立てる」と言ってくる。そうしてニコラスはジャベドを連れてムンバイへと向かうことになった。

道中、絶え間なく襲い掛かるゾンビによりたびたび危険に陥りながらもニコラスとジャベドは協力し進んでいく。ある遺跡で休んでいた時、ニコラスはジャベドから「政略結婚を拒み愛する女性と共に死んだ王の墓を発くとそこには何もなかった」という旨の伝説を聞く。また、ニコラスはジャベドに対して「以前の恋人が妊娠した時、それを受け止める覚悟がなく逃げ出してしまった」という過去を持っていることを明かした。

ムンバイの近くまで来た時、救助の軍用ヘリが二人を発見して降りてくる。しかし遅れたニコラスはそれに乗ることはできず、ジャベドだけがそれに乗りムンバイへと向かった。ジャベドは「ムンバイ近郊の砦で待っているから見つけて」とニコラスに言い残した。

一方イシャニはというと未だ籠城を続けている。しかしついに母が力尽きる。イシャニの父がそれを悲しみながらも看取るも、イシャニ母はゾンビとして復活。イシャニ父は首を噛まれてしまう。
ついにムンバイへたどり着いたニコラス。急いでイシャニの家へ向かうも、すでに周辺はゾンビだらけだが、それをかきわけイシャニの元へとたどり着き抱き合う二人。それまで反発していたイシャニ父だったが、この状態で娘を救出に来たことでその想いは本物だと考えたのか、すでに妻に噛まれてゾンビ化を待つだけの自分は残り、彼を置いてニコラスとイシャニは二人で逃げた。

約束通り、ジャベドを探しにイシャニと共に砦へ向かうニコラス。
そこには逃げ集った人々たちがいた。ジャベドを探し出すことができ、もうすぐここに軍の救出が来るという話も聞いていたが、突如空爆が始まってしまう。三人はそれにより地下に閉じ込められてしまう。
ニコラスの脳裏には、道中ジャベドから聞いた、「駆け落ちした王の墓を暴くとそこには何もなかった」という伝説が浮かんでいた。ここで終幕。

感想・評価

2017新年一発目の映画感想はゾンビ映画だ。正月2日に「久しぶりにPSSTOREで買うかー」と適当に新着映画の概要を見て漁っていたらこれが目に留まった。なぜかといえば、たった一件の評価が★1つの最低評価を下していたからという理由だ。、「たった一件の評価しかなく、それが最低評価」というのはこのての評価であまり見たことがない。これはよほどの理由があるのではないか?ということで惹きつけられたのである。そしてその理由は映画の最後の最後で知ることになるのだが…。あと、視聴後に知ったのけれども、「ゾンビ大陸 アフリカン」という映画の続編らしい。

主人公がゆきずりの子供を連れて恋人のところへ救出に向かう、というゾンビ映画。
この作品ならではの特徴がいくつかあると思うので、3つほど挙げつつ感想を。

まず何と言ってもゾンビパンデミックの場所がインドである、ということだろう。ゾンビ映画ってーと大体においてアメリカとかインフラ整った場所の都市部であることが王道なので、そこを外してきている。何せタイトルにもインディアと付けてるし、キャッチコピーも「12億人のゾンビ」的なもの。人口が多いインドでゾンビが大量発生するとヤバいぞ!ということだ。確かワールドウォーZでもアジアが舞台となったことはあったが、あれは全体のうちの1場面にすぎなかった。この映画は全編通して南アジアのインドだ。
実際、その「世界二位の人口を誇るインド」であることを意識してなのか、主人公と相棒となる子供ジャベドがムンバイを目指す道中、ほとんど絶えることなくゾンビがそこら中を徘徊している。主人公ニコラスの初期位置がかなり田舎っぽいので、ムンバイまでの道中もほとんど何もない田舎というか荒野というか、僻地のような場所がずっと続くのだが、ゾンビは絶えない。「どこにこんなに潜んでるんだよ」と思いそうになっても、「あ、はい人口12億でしたね」と思い直せるので、説得力はある。

そして次に、ゾンビの挙動だ。ゾンビ映画では第一に注目されるところだろう、きっと。
この映画のゾンビは賢者タイムか?とか思ってしまうほどに抑揚がない。例え獲物を目の前にしてもほとんど表情を変えることなく、ごくごく小さくなった瞳孔で睨め付けてくる。これが恐ろしい。ノロノロと歩き、至近距離ですらも口を開けギャーっと襲い掛かることもない。主人公ニコラスが、掴まれたとしても振り払うシーンが何度もあるので、力そのものはかなり弱いようなのだが、そのあまりにもゾンビらしくない挙動が不気味さを助長させ、逆に恐ろしい存在であることを強調している。これを象徴するのが、ムンバイへの道半ばでニコラスとジャベドが睡眠をとる場面。とある屋内で鍵をかけて二人は眠ることにするのだが、扉の間からそのギョロついた目で睨んでくる。しかも無表情で。大抵のゾンビ映画なら、この場面だとまず扉をガチャガチャやってこじ開けようとするだろう。なのに、これのゾンビは扉の隙間から覗くだけという。逆にゾッとしたシーンだった。

最後に、バッドエンドであるということ。冒頭で、「PSSTOREでの視聴者が一点評価をつけた理由が最後にわかった」と書いたが、ズバリこれだろうと思う。後味の悪いバッドエンドで映画が終わっているからおそらく一点つけたんだろう。ニコラスが頑張って数百キロも離れた場所にいる恋人の元へ駆けつけた挙句の結末としては、実際あまりに救われないので、ハッピーエンドを期待して視聴してのこれでは、充分な理由にはなりえる。

有名どころだと「ドーンオブザデッド」もバッドエンドかもしれないが、あれはまあ、「最後の希望の場所もゾンビだらけだった」というのが分かることも含めてのゾンビエンターテイメントだと思うので、ある種の爽快さはある。だが、この作品は生き埋めになった主人公が前非を悔い、「これが運命か」と悟ったかのように観念したところで終わってしまうので、実にバッドエンド色が強い。

だが、ただバッドエンドかというとそうでもないと思う。スタッフロール直前、最後に流れるのはジャベドが語った神話の一説。要約すると「愛する女性と共に死んだ王の墓を発くとそこには何もなかった」という話だが、最後にこれをもってきたメッセージは何なのか?自分もはっきりしたことは言えないが、少なくともネガティブな意味合いはないような気はした。何せ以前、自分の甲斐性がないがゆえに恋人に中絶をさせてしまった、という後悔が原動力になっているようにも思えるニコラスだ。今回はただ純粋に恋人のためを思い、一心不乱に500キロも離れたムンバイへと恋人のイシャニ助けに来たのである。説法を行っているらしいイシャニの父が、このパンデミックについて「我々のカルマが招いたことだ」のような事を中盤で言うが、少なくとも、ニコラスの「以前の恋人に中絶させてしまった」というカルマは今回の行動により払われたのではないか?そんな考えに自分は至った。まあどちらにせよ、三人とも助かるとは思えない終わり方ではあるので、救いがあるとしてもそんな精神的なものでしかないのだが…。
この辺りはある程度視聴者の想像や解釈に投げているところがあるので、これをどう捉えられるかで、この映画に対する評価は大きく変わってきそうだ。自分はこんな風にポジティブにとらえてみたが、もちろんネガティブに考える人が多くても致し方なしだし、そちらの方がきっと多いんじゃないかと思う。生存者にかまわず爆撃が開始されたというあの結末の後に都合よく助けが来るとは到底思えない。精神論で何を言おうが、肉体が死んでしまってはね…。何にせよ、結末は不幸だとしても、一言で言えばニコラスの贖罪の物語なのではないか?そんな風に自分は感じたのだった。

項目別評価

メッセージ性のあるゾンビ映画、ということになりそうだが、ともあれ終わり方はどう見てもバッドエンドなので楽しい気分になる作品ではない。ということでエンターテインメントは低めに。ゾンビの強さとしては、夜明けのゾンビよりは強いかな…?程度ののろのろゾンビで力も弱いが、あまりに落ち着いたその挙動が逆に見てて恐ろしい。個人的に、大げさにグワーっとかかってくるタイプよりは怖かった。

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