エリジウム(映画) -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>エリジウム

執筆日:2015年7月09日

評論

PSストアで100円セールやってたので一挙6つレンタル。最初に感想描いたパニッシャー・ウォー・ゾーンに引き続き今度はこの「エリジウム」だ。以前新作としてストアトップで紹介されていたのを記憶しているが、結局は見なかった作品。サイバーパンクな作品が好きなのでわくわくしながら見た。

まずはあらすじ解説。
2150年代の地球。大気汚染が進んだ地球を脱出したごく一部の特権階級は宇宙空間に浮かぶ「エリジウム」というコロニーに住んでおり、それ以外の残された人類は地球で貧しく暮らしているという、超格差社会になっている設定だ。エリジウムに住む人々の家には例外なく万能治療装置があり、これはあらゆる難病をたちまちに治せる。脳さえ無事ならば外傷すらもあっという間に完治してしまう。
エリジウムへはもちろん限られた人間しか入ることができないのだが、地球に残された貧民は治療装置目的に違法に渡航を試みることもしばしば。しかし、そうすると地球に潜んでいるエージェントが撃墜ミサイルを撃ち(エリジウム側からではなく地球にいる人間がミサイルを撃つのである)、宇宙船を撃墜する処置をとる。また、ドロイドという戦闘用ロボットもエリジウムの治安維持のために警察として動き、容赦なく異分子は排除される。
これを統括するのはジェシカ・デラコート(ジョディ・フォスター)というエリジウムの防衛長官。彼女は綺麗な顔して容赦なく違法移民を殺害する指示を行う冷血女だ。彼女は自分がエリジウムのトップとなることをたくらみ、エリジウム開発者のカーライル(ウィリアム・フィクナー)と共謀、カーライルはエリジウムの設定すべてをリセットするシステムを作り、自身の脳に入れていた。

主人公のマックス(マッド・デイモン)はほとんどスラムのようになっているロサンゼルスで暮らしている。幼い頃、フレイという女性(アリシー・ブラガ)と親しく、子供の口約束ながら、フレイとはエリジウムへ連れていくという約束をしたことがある。
しかし大人になった彼はしがない工場での下働きで糊口を凌ぐ生活をしていた。そして、その仕事の中で上司に無茶な指示をされたがゆえに、大量に放射線を浴びることとなり残り5日の命となってしまう。

命を諦めきれないマックスはエリジウムの医療機器で自分を治療することを決意。スパイダー(ヴァグネル・モーラ)というエリジウムへの密入国を仲介する男に頼み込み、条件付で協力を得る。条件というのは、エリジウムに住む特権階級の脳からデータを盗みこみ(特権階級の人々は頭にジャックがついており、データを脳にアップロード、ダウンロードできる)ということだ。そのターゲットとしてカーライルを狙うマックス。カーライル襲撃の際にはエリジウムのエージェントであるクルーガー(シャールト・コプリー)が妨害に入り、マックスを慕う友人であるフリオ(ディエゴ・ルナ)が死んでしまうものの、なんとかカーライルの脳からマックスの脳へとデータは移行できた。
しかしそのデータはマックスたちが及びもつかない、エリジウムの転覆計画が入ったものであって、それゆえにマックスはジェシカの部下であるクルーガーから執拗に追われる。その最中でフレイとその子供マティルダ(エマ・トレンブレイ)にかくまってもらう。マックスはマティルダが白血病にかかっていることを知ったが、自分ではどうにもできないと二人と別れた。しかしそれを見ていたクルーガーたちはフレイとマティルダをさらってしまう。

一度スパイダーの元へと戻ってそのデータを解析し、価値を知ったマックスはあえてクルーガーの元へと姿を現し、「自分に何かしようとすれば自殺する」と脅しをかけて、エリジウムへと向かうことができた。さらわれたフレイとマティルダも一緒だ。マックスの最終的な目標は、カーライルから奪ったデータを使い、地球人類全てをエリジウムの住民に設定することだ。そうすれば医療機器は誰もが使うことができ、マティルダも助かるのだ。
スパイダーたちもエリジウムに侵入し、マックスと共に進む。しかし立ちはだかるのは戦闘用スーツを着たクルーガー。彼はジェシカを殺し、さらには荒くれ者の仲間たちと共にエリジウムを掌握するつもりなのだ。
クルーガーとの一騎打ちに辛くも勝利したマックスは自身のデータを活かすことのできるコンピュータルームへついに到達する。しかし、マックスの脳のデータをダウンロードしてエリジウムのデータを書き換えるということはマックスの命と引き換えだ。ダウンロードすればマックスは死ぬ。だがもちろん、ここにきてマックスは躊躇することなどはない。最後にフレイとかつての約束のことを話した後ダウンロードを決行。
エリジウムは全ての人類をエリジウム市民とみなし、コンピュータルームに乗り込んできたドロイドもスパイダーを敵とはみなさない。こうしてエリジウムは開かれ、医療装置が大量に地球に送られて地上の人々が救われるシーンなどが流れ、物語は終局。

この上なく分かりやすい貧富による格差を扱った話で、実にアメリカ的なストーリー。第9地区とかそういうのに通じるものがある。
設定だけ見ればなかなか壮大で、2時間映画一本だけで終わってしまうには少しもったいない感じも受けるのだが、最後にはエリジウムの設定自体を変えるという大胆な結末により、主人公は死んでしまうものの大多数の、億単位の地球人類が救われハッピーエンドだ。

見所の一つは近未来サイバーパンクならではの映像的な面白さや演出だろうか。
カーライルの脳のデータを奪うためにはマックスも改造することが必須であるので、序盤、マックスは改造手術を受けてバトルスーツと一体化するのだが、その手術の様がまた痛そう。荒れまくったロサンゼルスの風景もある種壮観。そしてエリジウム内部。円形になっており、外部から見れば建物などがある場所はさかさまになっているようなものなので、重力を制御しているんだなあという感じでSFである。ただ、内部の施設は何度も万能治療装置ばかりが映されるので特に面白いものはなさそうなのだが。

設定周りにいくつか疑問がある映画でもある。まず、エリジウムの保安方法。密入国船に対して地球にいるクルーガーのようなエージェントが直接ミサイルを発射するってのはなかなか無茶苦茶だ。ていうかエリジウム側に武装はないのかよと突っ込みたくなる。
それに、結末として貧しい人々たちにも万能医療機器が送られることでハッピーエンドということなのだが、病気の心配がなくなるのはともかく、この後大変だよね。別に貧富の格差がなくなったわけでは当然ないだろうし、それに医療機器くらい送ってやりゃよかったじゃん…とも思う。
まあこの辺は見終わった後に冷静に考えてみれば、ということなので視聴中はさほど気にならなかった。

総評として、設定周りや展開に少々突っ込みたくなる部分もあるが、映像に金をかけているので、退廃した近未来感がよく演出できているため、見た目に豪華な映画に仕上がっていると思う。視覚的に面白い。細かいところはともかく見終わった後には心地よい気分になれる、良作な娯楽映画だ。100円でなら十分に元が取れた。

項目別評価

荒廃した近未来、バトルスーツ、上流とそれ以外の格差、という日本だと士郎正宗的なサイバーパンク設定。視覚的に面白い近未来装置が満載、映像には非常に金かかっているのが見て取れるのでエンタメ性高い。それに話はストレートで分かりやすい。個人的に、ヒロインと主人公に一定の距離があり、すでにヒロインに子供がおり手遅れなのがいい意味での悲壮感を増していてよかったと思う。二人の間にもはや恋愛などといったものは生まれず手遅れ。それでも過去の約束が果たされるというのがまた何か切なさを増強させているという感じ。

凡人の感想・ネタバレ映画>エリジウム