フライト・ゲーム -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年1月18日

評論

リーアム・ニーソン主演のサスペンス作品。
Wikipediaで見るに1981年から活躍しているベテラン俳優ながら、自分がこの人を意識するようになったのは最近。
具体的には「96時間」「96時間リベンジ」を見て、渋いなあ、格好いいなあと思った時からである。その後さらに「CHLOE」も見た。
この人自信も渋格好いいのは確かなのだが、どの作品でもこの人の吹き替えをする石塚運昇氏も最近お気に入りの声優。洋画吹き替えというと未だに大塚明夫、玄田哲章などがイメージされやすいかもしれないが、個人的にはおっさん声優ではこの人がナンバーワン。これからも担当し続けてほしいと思っている。

この作品におけるリーアムの担当するのはビル・マークスという、航空保安官だ。あまり聞きなれない役職だが、一般乗客に混じってテロなどの犯罪行為の抑止、防止に努めるという、アメリカに実在する職業のようだ。

自分はこのリーアム・ニーソンという人に関しては96時間シリーズのイメージが強い、というかこれでしか知らないくらいなのだが、このフライト・ゲームにおけるこの人が担当する役、ビルは、「96時間」でのブライアンとほとんど同じような役柄と言って差し支えないんじゃないかと思う。いや、あちらは特に人間的欠点らしきものはなく、ウィリアムはアルコール依存気味で対人関係の構築に問題があるという点は違うのだが、そんなことよりも「腕っ節が強く」「状況判断能力に優れる」という点に関しては同じなのだ。基本的に落ち着いた物腰なのもまた同様。このリーアム・ニーソンという人のパブリックイメージ自体がそういうものなのかもしれない。この人が小悪党とかやるイメージはないもんな。

物語の解説をする。高空を移動中の機内という密室が舞台のサスペンスということで、タイトルからしているジョディ・フォスター主演の「フライト・プラン」を連想させるものがあるが、まさに内容も似通っている。疑心暗鬼になり主人公が振り回される展開、周囲から頭のおかしい人間だと思われ孤立する展開という点、本当にフライト・プランに似てはいる。ただし、これを先に言ってしまうと、フライト・プランよりは良質なサスペンスだと思う。
主人公ビルは優れた航空保安官であり、任務を遂行するために機に乗るのだが、物語中で事件が起きるまでの挙動がなにやら不審。この時点で何か脛に傷でも持つ人物なのかと視聴者に予想させる。
そして事件が起きる。真夜中の機内で「指定した口座に1億5000万ドル振り込め、でなければ20分後に人が死ぬ」というメールがビルの携帯に届くのだ。

ビルは策を尽くして犯人を見破ろうとする。メールのやり取りをしつつ注意深く周囲を見渡し、間違いなく犯人ではないと確信できた人物、隣の席のジェン(ジュリアン・ムーア)と元々既知である搭乗員のナンシー(ミシェル・ドッカリー)に助力を頼み犯人を見破ろうとする。
そして最初にビルが目をつけた容疑者はビルの同僚、航空保安官のハモンドだ。彼をトイレで問い詰めると「金に困っている」旨告げる。そしてビルと取っ組み合いになり、銃で撃たれそうになったビルは正当防衛でハモンドを殺してしまう。殺すと同時に20分後にセットしておいたアラームが鳴る。なんと殺人はビルが行うこととなってしまうのだ。

ハモンドを殺してしまい狼狽するビル。ハモンドがメールを送ってきているものと思いきや、トイレから出た直後に再びメールが届く。犯人は彼ではなかった。そしてまたも20分後に殺人が起きるという。
引き続き真犯人を探そうとするビル。犯人からのメールで、ハモンドはコカインの運び屋となっていたことがわかる。金に困っているという発言の根拠ははこれのことだったのであった。
検査であるとして乗客の持ち物検査をするビルだったが、どうにも犯人は絞りきれず、また20分が経過してしまう。犯人が「被害者となるのは乗客とは限らない」と言った通り、今度はなんと機長であるデヴィッドがアナフィラキシーショックにより死亡する。
操縦席に入った人物は誰もいないのだが、冒頭でデヴィッドに対してナンシーが飲み物を持ってきている。この時点では彼女が怪しいように思えるのだが…。

2人目の殺人も食い止めることができなかったビル。
さらにどうにかして犯人を突き止めようとする。自分の席の隣の女性ジェンと話していたザックがスマートフォンのプログラマーであるということが分かる。その彼に話を聞くと、「マナーモードを解除する画像を添付してメールを送る」ことで犯人の位置を特定できるという。機内では全員がマナーモードであるはずなので、そのメールを送って音が鳴ったスマホを持っている人物が犯人であるということになるわけだ。
その方法を取ってみるとある白人中年男性チャールズの胸元のスマホから音が鳴る。問い詰めるがどうも彼は犯人ではないようであり、しかも彼はビルの詰問中に隊長を崩し、機長のデヴィッドと同じようにショックで死んでしまう。

3人の殺人もとめることができずすっかり焦燥したビルはトイレに入って一服する。するとその中であることに気付く。トイレの中のティッシュホルダーを取り外したところにある小さな穴から操縦室を覗くことができたのだ。さらには吹き矢のようなものも発見、これで機長デヴィッドを殺したトリックが明らかになる。そうするとトイレに入った人間が怪しい。ある老婆が入った直後にトイレを使ったのは隣の席のジェンだ。彼女を問い詰めたが、しかし彼女は白だった。彼女を信頼したビル。チャールズが持っていた犯人のものと思われるスマホをいじっているといきなり変なスイッチが入り、30分のカウントダウンが開始されてしまう。明らかに爆弾のカウントダウンだった。勘を働かせて、ハモンドが持っていたコカインの中を暴いてみるとまさに爆弾を発見。

この時点になるとビル自身が狂言を言いふらすテロリストであると、乗客からも、国土安全保安省のマレニックからも認識され始めてしまうようになる。テレビでも彼がテロリストであると報道され、彼は全世界から誤解されることに。この時、ビルは過去に幼い娘を急性白血病で失って以来荒れた生活であるということも報道され、またこの時ようやく視聴者としてもビルという男の過去を知ることとなる。
ついにはニューヨークの刑事であるライリーら乗客が結託して彼を取り押さえようとしてしまう。だが、この騒ぎの中でビルは乗客全員に対して声高に言う。「確かに自分は娘を失っており、父親失格、人間失格。しかし決してテロリストなどではない。あなたたちを助けたい」と。この告白により、機内の乗客はビルを信頼し、ようやく彼の味方となってくれることとなる。

ここからは刑事のライリーら乗客の協力を得られるようになる。
さしあたっては爆弾をどうするかというのが最優先事項だ。爆弾は無理に解除しようとすれば爆発するし、しかし外に投げ捨てようとしても内外の気圧差で爆発してしまう。よって解決策としては気圧差を無くすことのみだ。機長デヴィッドに変わって操縦している副操縦士カイルに一気に高度8000フィートまで下げるように懇願する。どうにか聞いてもらえたが、ビルは外ではテロリストと認識されているため、すでに旅客機周囲は戦闘機に囲まれていた。カイルが言うには戦闘機との距離がある程度離れるまでの間は待つ必要があるため、10分経過したら高度を下げるという。

爆弾ははひとまず置き、再び犯人を捜そうとするビル。
マレニックの話を聞くに、乗客の誰かがビルを撮影し、それが外で彼がテロリストであると認識されるようになった主因であった。その撮影者である若者のスマホを取り上げてその映像を見てみると、ビルが一度目星をつけて締め上げた教師トムがチャールズに自分の携帯を胸ポケットに入れる瞬間の映像が。この映像で犯人を確認したビルだったが、その様子を見ていたトムは先手を打って人質を取る。刑事ライリーは銃の弾を取りにビルの席に戻るが、そこでもう一人の犯人、ザックが本性を表す。
2人の犯人と戦うことになるが、どうも犯人はそれぞれで思想が違うようだ。トムは911テロで父親を失ったがために父親を守れなかった保安官という存在に復讐してやればいい、という人間なのに対し、ザックはすでに振り込まれている1億5000万ドルも獲得したいと考えていた。金は自動的に世界中のあちこちに分散される仕組みになっているらしい。高度が下がった時点でザックは脱出するつもりであるが、しかしビルはそんな彼に「脱出したら外の戦闘機にやられるだけだ、だから爆弾をとめろ」と言う。それを聞いて迷いが生じたザックを容赦なくトムは撃つ。
犯人同士の内輪もめでグダグダしているうちに副操縦士のカイルが決断、一気に高度を下げる。すると客席ではその勢いでゴタゴタしビルに銃を突きつけていたトムに隙が生まれる。これを見逃さず、宙に浮き上がった銃をキャッチしビルはトムを射殺する。
さらに生きていたザックと肉弾戦で戦うビル。今度はその最中で爆弾のカウントが0になる。機体に穴が空くがしかし、緊急着陸地となっていたアイスランドにはすでに到着、カイルの力によりなんとか着陸は成功させる。

後はエピローグ。ビルは協力してくれた隣の席のジェンといい感じになり終了である。着陸直前では穴から落ちそうになった幼女を助けたが、これはかつて助けられなかった自分の娘の代替という意味があり、彼の業を払ったという意味合いもあるのだろう。とにもかくにもハッピーエンドだ。

項目別評価

犯人は終盤まで分からないようになっており、またそれが視聴者側としては推理のしようがないものではあるため、「犯人を見破ってやろう」として見るのは無意味である。ただし、それゆえに見た人間が誰しも最後まで退屈させずに見れるようになっている。がっかりするとしたら犯人の動機、トリックなどに着眼した時だろうか。犯人たちは結果として3人の殺人を犯すこととなるのだが、それぞれのトリックが少し無茶すぎると思えるのは確か。展開が偶然頼みすぎるだろ、という点、ほぼ同じ題材を扱ったフライト・プランと同じ批判ができてしまうのは確かだ。しかし、そういう細かい部分を気にさせない吸引力のある展開なので、ハラハラドキドキして見られるとは思う。批判が出るとしても終盤、ネタばらし時だ。犯人が分からず主人公が五里霧中、翻弄され続けるのを見るのが一番楽しいのは間違いないので、ある程度展開が破綻していても楽しめるということだ。あと、リーアム・ニーソンはやっぱり渋い。ジョディ・フォスターのヒステリーじみた姿を見るよりはこっちのほうが見ていて気持ちいいのは確かだろう。

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