ジェラルドのゲーム 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年11月08日

あらすじ・ネタバレ

ジェラルド、ジェシー夫妻はセックスレスの熟年夫婦。それを解消するために小旅行をし、いつもと違うプレイを行う予定だった。都会から離れた別荘へと向かう途中には犬を見かけた。

別荘に着きいざ行為におよぼうとした時、ジェラルドはジェシーに頑丈な手錠をかけて、「叫んで助けを呼べ」などと言い出す。常軌を逸したプレイにジェシーは引いてしまい拒絶する。
するとプレイ前に薬を飲んでいたジェラルドは突如発作を起こし、そのまま死んでしまう。その遺体はベッドの脚側へと転がり落ちて床に横たわってしまった。

手錠をかけられたままのジェシーはベッドの上から全く身動きが出来ない状態。昼下がりから夕方にわたっての数時間助けを呼び続けたが、誰も助けに来てくれるような気配はない。しかもそこに、ここに来るまでに出会った犬がやってきてジェラルドの遺体をかじり始めた。

そして動けないジェシーが見たのは起き上がって話し出すジェラルド。しかしそれは自分が見ている幻覚であるとすぐにジェシーは自覚する。ジェラルドの幻はジェシーを「マウス」と呼んだ。

極限状態の精神の中見るジェラルドの幻と対話するうちに、ジェシーはある原風景を思い出す。
それはジェシーが子供の頃の、皆既日食が世間を騒がせていた頃の話。ある湖へ家族と出かけて皆既日食を楽しんでいたジェシーだったが、そこでジェシーの父親が「自分の上に座ってくれ」と言い出す。言われるままに父親の上に座りながら日食を見るジェシーだったが、父親はなんと自慰?をしだす。
肉親が幼い自分に劣情を催したというこの経験はジェシーのトラウマとなっていた。「マウス」というのはこの父親が自分を呼ぶときに使っていたのだった。

夢か現実の境が分からなくなるジェシーはジェラルドの幻とは別に「怪人」も見るようになっていた。これも「月夜が見せる幻」だと言い聞かせていたジェシーだったが、ジェラルドの幻はあれは本物だと言いジェシーを恐怖させた。

ジェシーはさらに睡眠と覚醒を繰り返し、今度はジェラルドの幻に加えて自分の幻も目の前に現れる。この2人の幻と対話するうちにある脱出策を思いつく。それは水の入ったグラスを割り、その破片で手を切り、血で滑らせて手錠を外すという、行えばただではすまない方法。
しかしついに意を決したジェシーはこれを行う。手の皮、どころか肉までが半ば剥けてしまうほどの重傷を負いながらもなんとか脱出したジェシー。一旦はその傷により気を失うが、目を覚ました後はなんとか車に乗り込み運転。
ついには事故を起こしてしまうが、そこは人家に近い場所。どうにかジェシーは助かったのだった。

後日、あの日見た怪人は幻ではなく現実に存在したレイモンド・A・ジュベールという連続殺人犯だったことをジェシーは知る。すでにジュベールは捕らえられていた。ジュベールは男性にしか興味がなく、女性がゆえにジェシーは命拾いをしたのだった。
そしてジェシーは手紙を書いていた。それは過去の自分、「マウス」に宛てた手紙だった。今のジェシーは誰にも話さなかった父親の件のトラウマを、同じような経験をした人々に対して積極的に話すようにし、力になるような活動を行うようになっていた。

そして自分の父親や夫も「怪物」だったと言うジェシーはそれと決別するため、ジュベールの公判に出て、面と向かい合った。
ジュベールはあの日のジェシーが怯えながら言っていた「あなたは月夜の幻よ」という言葉をニヤつきながら口にしてジェシーを煽るが、「思ったより小さいわね」とジェシーは返した。ジュベールは怖気づくこともないジェシーに気圧されているようだった。
ジェシーは法廷から出ると堂々と歩きだした。その上には幼い頃見た日食の日とは違い燦然と太陽が輝いていた。

感想・評価

SMしてたら手錠かけられたまま夫が死んで脱出できなくなっちゃった!というお話。SMプレイは互いの同意を確認してからやろうね、無理矢理はやめようね!というのが主題。

ではなく、動けなくなった主人公が極限まで追い詰められたことで過去のトラウマと向かい合い、それを解消するというのが話の肝になる。これはもうあの有名な「127時間」とほぼ同じ構成だ。127時間では数日間動けなくなった主人公がああだこうだと過去の自分の所業を反省、ついには腕を切り落とすという行為がある意味「禊」となっているが、この作品でもその点までほぼ同じである。身動きできない状態に絶望しつつ夢うつつの中で子供の頃の父に関するトラウマと向き合い、幻として現れる夫ジェラルドと討論を交わす。そして目をそむけたくなるような手の肉ズル剥けと引き換えに脱出し、それ以降主人公ジェシーは誰にも言わないようにしていた自分の父に関するトラウマを同じキズを持つ人間に話し、励まし、癒やすようになっていった、という結末だ。

夜中に現れる怪人が実は幻でなく本物だったというのも若干無茶ではあるが面白い。その怪人を自分の父、そして夫に重ねて見ていたジェシーだが、裁判所でその怪人を目の前にして「思ったよりも小さいわね」と一蹴、完全にコンプレックスやトラウマを払拭したことを表している。このシーンがあるからこそジェシーの内面がかつてより遥かに強くなったことを強調していて、スカッと終わる。

ジェラルドが死んで犬が入ってきたシーンは色々と察してしまってゾッとするところ。ジェラルドは相当かじられたようだが、ジェシーから遺体がほとんど見えない位置になったのは不幸中の幸いといったところか。仮に顔がずっとこっち向いてたりしたらもう発狂もんだ…。

人物解説

ジェシー

演:カーラ・グギーノ
主人公。レス気味になっている夫ジェラルドとの夜の関係を解消するためにわざわざ二人きりになれるいつもと違う空間、違うプレイで楽しもう!という予定だったのだが、ジェラルドが手錠も用意するなど予想以上にガチだったことにドン引きしプレイを拒否。そして手錠をかけられたままに夫は薬の副作用で死亡してしまったせいで動けなくなってしまう。拘束状態のままに睡眠と覚醒を繰り返しながら内省し、最後には手の肉をそぎ落としてでも脱出する覚悟を決め、なんとか拘束から脱する。その後は自分のトラウマを進んで人に話すようになり、同じような心の傷を持つ人らを援助する仕事をするように。手がずる剥けになったが手紙はその手を使って書いており、なんとか治る見込みはある模様。

ジェラルド

演:ブルース・グリーンウッド
ジェシーの夫。SM、どころか疑似的なレイ○でしか興奮しないような男。一見して紳士然としているが、内面は女性を見下し、サディスティックな面があることをジェシーは薄々感づいていたらしい。ジェシーに拒否され、バイアグラか何かの薬の副作用でそのまま死亡という迷惑すぎる夫。死んだ後もジェシーが見る幻としてジェシーと会話を続ける。幻のジェラルドはジェシーを煽りまくるが、この幻がいなくなった時が一番何かが起きそうで見てて怖いので、出ているとむしろ視聴者としては安心する。

ジェシーとジェラルドが過ごすことになった別荘近くにいる犬。首輪があるため一応飼い犬らしいがなぜか放し飼いされている。ジェシーが高級和牛を渡したおかげで味を占めたせいか肉を欲するようになって拘束されたジェシーの元にまで現れ、ジェラルドの遺体を食べ始める。ジェシーが弱るのも虎視眈々と待っていたようだ。この犬が幻かと思われた怪人から怯えて逃げるシーンがあるので、怪人は幻ではないという伏線になっている。

レイモンド・A・ジュベール

アラバマで墓荒らしをして装飾品を盗んだり遺体に冒涜的行為をしていた怪人。末端肥大症なため巨体。徐々にエスカレートし生きた人間から一部を切り取ろうとする猟奇事件を起こしていた。捕らえられた時点で8件の殺人事件を起こしていた。ジェシーが夜中に見ていた怪人は幻ではなくこのジュベールだった。その興味対象は男性のみだったのでジェシーには何もしなかった。法廷に現れたジェシーに対して「あなたは月夜の幻よ」とジェシーの真似をして煽っていたが「思ったより小さいわね」と返されて愕然とする。

項目別評価

女性版127時間、と考えて間違いではない作品。「夫の遺体」そして「肉を欲する犬」ときたら誰しもが連想してしまうのはおぞましい未来。どうやって脱出するのか?そもそも脱出できるのか?ダメなのか?バッドエンドなのか?とハラハラドキドキして見れること請け合い。オススメ。

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