ハドソン川の奇跡 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ハドソン川の奇跡

執筆日:2018年1月10日

あらすじ・ネタバレ

「ハドソン川の奇跡」として語られるようになる、2009年にカクタス1549便がニューヨークのハドソン川に着水した事故は全世界に大々的に報道された。その機長だったサリー・サレンバーガー機長は何も知らない一般人たちからは英雄詩されていたが、彼自身は機が墜落する悪夢を見るなど、決して心穏やかではなかった。

それというのも、 国家運輸安全委員会(NTSB)が厳しく彼を追及していたからだ。NTSBが墜落の人的被害について調べると言うと「墜落ではなく着水だ」とサリーは言う。そして出発した空港であるラガーディア空港に引き返すのは不可能だったと弁解するのだが、NTSBは空港に戻ることができたはずと言って譲らなかった。
また、マスコミはサリー機長と家族にまとわりついて、サリーもその妻ローリーも休まらない日々が続いていた。

NTSBは複数にわたる聞き取りでサリーを執拗に責める。左エンジンは動いていたという報告が来るがサリーは納得がいかない。サリーからすれば確かにあの時左エンジンも止まっていたのだ。1549便でサリーの隣に座り副操縦士を担当していたジェフ・スカイルズは通常通りの手順なら墜落して死んでいたとサリーを擁護する。しかしシミュレーションをしてみるとラガーディアに引き返せたとNTSBには断言される。これはサリーからすれば操縦席で感じたことと違い過ぎた。 不動産ローンの件で銀行から通知が来て経済面でも圧迫されるサリー。妻ローリーは早く仕事に戻ってほしいと願っているが、1549便の件の決着がつかなければサリーは仕事に戻ることはできない。なかなかそういかないのだった。NTSBがサリーの責任だと言えば仕事を失ってしまうとサリーは危惧する。

ここでは初めて、件の1549便のフライトの回想。
飛行機に鳥が激突しエンジンなどに故障が起きる現象、「バードストライク」が発生し、1549便は両エンジン停止に陥る。管制からはテターボロ空港に着陸しろ、ニューアーク空港も使えると言われる。しかし機長はそれは無理なのでハドソン川に降りると。管制官は川はやめろと願っていた。 管制との通信が途絶えて近くを飛んでいたヘリを介して連絡をとった。管制官は「川に降りて助かるわけがない」と呟いた。

再び現在に戻る。酒場に行くと「ヒーローだ」と知らぬ人間まで称えてくれたが、サリーは自分が間違っていたかもという疑念は消えなかった。

また回想。今度は当時ハドソン川の周辺にいて乗客の救助にあたった人間たちや乗客たちの視点から。
奇跡的に機は着水はできたが、乗客が川に落ちたりと予断を許さない。 2度しかない極寒のハドソン川。一刻も早く救助しないと乗客は凍死してしまう。ニューヨーク沿岸警備隊やヘリによる救助により乗客は次々救助される。 妻ローリーはテレビをつけていなかったので着水を知らなかった。 サリーは乗客の無事を確認しようとしたがあちこちから呼ばれてそれは叶わなかった。しかし同僚に代わりにやってもらったところ、乗員155名すべてが無事だったことがわかり安堵した。

回想が終わり再び現在に戻る。サリーはNTSBが行う公聴会に近々出席しなければならない状況だった。このままではNTSBの言い分が通されてしまうかもしれないと不安を抱いていたサリーだったが、ニュースで言っていた「タイミング」という言葉を聞いて「タイミング次第だ。実際のものとイミュレーションは違う」と言い、サリーはシミュレーションを見たい、公聴会の場でそれを公開したいので手続きを頼むと知人に依頼する。

NTSBが行う運命の公聴会にサリーは出席する。最初にサリーが希望したシミュレーション映像が流れる。 ラガーディアに向かった場合のシミュレーションではは無事着陸した。テターボロ空港の場合でも無事に成功した。 これを身てNTSBは「わかりきったものなのになぜこんなシミュレーションを希望したのか」とあざ笑う。

しかしサリーは「シミュレーションではすべてが迅速な対応であり分析したりする判断をする時間がない。人為的なものが考慮されていない。トラブルが分かり切った上での判断をしているに過ぎない。航空史上稀に見る低高度で両エンジン機能を消失するなんて我々の場合は知らなかった」と反論。そしてシミュレーションを行っている操縦士が何回練習したかと聞いて「17回だ」とNTSBは応えた。それほど試行してようやく成功させることができる程度の成功率でしかなかったのだ。

さらにそこに、トラブルから引き返すまで35秒の無駄な時間を入れてシミュレーションをしてもらった。するとラガーディアへのシミュレーション結果は滑走路までは行ったが墜落に。さらにテターボロの場合は滑走路にすらたどり着けず墜落した。 そして操縦席の音声記録も公聴会で流された。先の回想とは違い、操縦席のサリーとジェフがどういう会話をしていたのか全て流れた。

改めて自分たちのやり取りを聞き、一旦休憩した中、サリーとジェフは互いを称え合った。
再開した公聴会の中で左エンジンが完全に破壊されていたことが証明された。 そしてNTSBの女性は「全ての要因を考慮して、さらにサレンバーガー機長がいなかれば墜落していた」と言う。 しかしサリーは「それは違う。我々やCAのほか、救助隊の人々すべてのおかげだ」と言った。そして副操縦士ジェフに「同じ状況になったら同じ判断をしますか?」と聞かれたところジェフは「そうですね。次は7月の暖かい日に」とジョークを飛ばして公聴会を笑わせた。

エンドロールの中、事故当時の記録写真も映される。そして当時1549便に搭乗していた乗客全員が集まってパーティーをした実際の映像も流された。 最後にはサリーの妻ローリーが「自分たちには多数の手紙などが届いている。感謝している」と乗客たちの前で話す映像も流れる。

感想・評価

下が水なら高いところから落ちても大丈夫だよね!と(多分)誰もが子供の頃は思うところ。しかし実は抵抗の多い水じゃ、高度次第ではコンクリートと変わらないというのも(多分)大人になるにつれて理解していくことだろう。しかし水に落ちて乗員155人全員が生還したという2009年に実際にニューヨークで起きた事故を元にした作品。

作風はドラマティックなものからは遠く、公聴会でのラスト以外ではドライな雰囲気。正しい判断をしたと確信していたサリー・サレンバーガー機長がNTSBの尋問を受けるうちに自信がなくなってきて、それとは裏腹に周囲の人間は自分をヒーローだと祭り挙げて、マスコミはというと連日まとわりついて持ち上げたり、逆にちょっとNTSB同様に批判してみたり忙しくて、心の置き場所を失いつつある男が大都会ニューヨークで孤独に惑う物語だ。

サリーは家族の元にも帰れないため、見ている側も心細くなってしまうが、同僚である副操縦士ジェフだけはサリーの判断のすばらしさを疑っておらず、唯一の味方と言っていい存在。この人物がいなければ本当に参ってしまっていたんじゃないだろうかと思える。公聴会の最後の最後がこのジェフのジョークで締められるというのが小粋。

肝心の墜落シーンの描写は同じ場面でも視点を変えてくりかえし演出される。着水直前から救助までのシーンを管制官の目線で一度見せ、そして公聴会では着水直前の操縦席でのやり取りが完全ノーカット。管制官目線で着水までの過程が描かれる場面では、管制官がうろたえ「着水しての生還など絶対無理だ」と言っているので「これやっぱりラガーディアかテターボロに行った方がよかったんじゃ…」とこちらとしても感じてしまう。しかしサリーの言う「人為的ミス」を考慮した上でのシミュレーションが公聴会で流されてからの完全ノーカットの操縦席音声を聞いて(視聴者としては見えてもいるが)、「やっぱり機長は正しかった!俺は信じてたぞ機長!」とようやく確信に変わる。引っ張り方が上手い。

それにしても、昨日視聴したティアーズ・オブ・ザ・サンの最後に出た「正義が行動しなければ必ず悪が勝つ」という言葉はこの作品にこそ相応しいと感じた。だってシミュレーションを公聴会で生放送するというのを希望したのはサリー機長で、公聴会が始まるギリギリでこれは思いついたわけで、恐らくこれをやらなかればサリー機長は敗色濃厚だった。NTSBを悪と呼ぶのもあれだが、行動しないとやられっぱなしだよ!というのがこの作品から教訓として読み取れないでもない。

登場人物解説

サリー・サレンバーガー機長

演:トム・ハンクス
妻と2人の娘がいる主人公。自分のしたことは間違っていないと思っているがサリーのせいでないと困る人物がいるので困惑し、悪夢を見たり被害妄想に悩まされている。副業としてコンサルタント会社も経営しているが立ち上げたばかりで、ジェフに「サリー一人しかいないのにまるで大企業のようだ」と茶化されてしまうようなもの。仮に操縦士をクビになっていたら経済的に困ることになったのだろう。

ジェフ・スカイルズ副操縦士

演:- アーロン・エッカート
サリーが正しいことをしたと確信していて彼の味方。1549便のフライト時にサリーのコンサルタント会社のサイトを見て「大ほら吹きですね」と茶化した。サリーと違いジョークを言える人物なので公聴会でも笑わせた。

国家運輸安全委員会

略称NTSB。ハドソン川に機を着水させるというサリーの判断はシミュレーションから間違っていたとして責任を追及。最終的な判断は公聴会で決定することになっていた。しかしサリーが直前でシミュレーションを公聴会で生中継するのを希望したのが功を奏し、NTSBの見解は「人為的ミス」を完全排除したもので実際のものとは違うことが証明された。

ローリー

サリーの妻。テレビをつけていなかったので着水時それを知らず、夫からの電話で知った。

項目別評価

最初からずっと機長が悩み不安を抱いている姿が映され続けるが、美談を元にした作品であり、わざわざ映像化しているのだからもちろん気持ち良く終わる。「もしかしたら機長の判断は間違っていたのかも?」という点も、最終的には完全に機長が正しかったことが証明されるので一切後腐れはなくハッピーエンド。映像としては墜落から乗客たちが救出される流れが一番面白い。2009年の「USエアウェイズ1549便不時着水事故」について興味がある人間ならば絶対に観るべき。

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