ハリケーン・アワー -凡人の感想・ネタバレ-

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評論

2013年に事故死したポール・ウォーカー主演作品。
舞台は2005年に史上最強のハリケーンとして上陸した「カトリーナ」の被害に見舞われたある街の病院。
自分の伴侶と生まれてくる子供を待合室で待っている主人公だが、淡々と、自分の妻は子供を生んだ後に力尽きてしまったことを告げられる。ハリケーンのせいで輸血用の血が足りなかったせいだ。
当初はそれを認められない主人公だが、嫌でも現実と向き合うしかない。妻と引き換えにこの世に生まれた自分の子供は保育器に入れられており、それを見守ることにする主人公。
しかしハリケーンにより病院内の電源がダウンする。保育器がなければ呼吸が出来ない新生児、なんとか保育器を動かそうと奔走。手動の発電機を使うことによって急場をしのぐことになる。しかしこの保育器への給電はたった3分ぶんしかできなくて…。

ここまで語れば分かるかと思うが、主人公はこの3分間という制限時間内に終始縛られることになる。しかも、3分というのは当初の話で、徐々に2分30秒、2分、1分30秒、と、どんどん短くなっていくのだ。正直、この明らかな悪意を持ってるとしか思えない保育器には理不尽さを感じるよりも、笑いが出てしまった。制限時間は保育器の表示パネルに表示されるようになっているのだが、
発電機グルグル→ピッ(2分30秒)→おいうそだろ!短くなってんじゃねーか!(発電機グルグル)→ピッ(2分30秒)→このポンコツが!
みたいなシーンはどうもコントじみていてね。笑うところじゃないんだろうけどね。ある意味保育器すらもメインキャラクターとも言える映画はこれくらいだろう。中に誰か入ってますよね?と突っ込みたくなる。これから保育器を見るたびにこの映画を思い出しそうだ。

この制限時間内で空になりそうな点滴の予備を探したり、屋上でヘリに助けを呼びにいったり、外に止めてある救急車内の無線で連絡を取ろうとしたりと奮闘するのだが、どの行動中でもことごとくこの保育器の制限時間に縛られる。設定している時計アラームの音がなればそれがいかなる行動中でも子供の元に戻られねばならないのだ。これは多分、実際の子育てにも通じる部分があるのだろう。

病院スタッフもいつの間にか誰もいなくなり、肉体も精神も疲弊していく主人公だが、その中に一つの癒しが現れる。病院内に迷いこんできた災害救助犬だ。足にからまっていたロープをほどいてやったところ主人公にこの犬がなつく。
これを相手にしていたり、まだ泣き声すら発しないわが子に対して延々と言葉をかけ続けたりとごまかしながら頑張る主人公だが、さらに苦難が続く。
ハリケーンで荒れた街中には、暴徒、強盗と化した人物が徘徊していたのだ。そしてそれが病院内にも到来する。幸い、命を奪われることはなかったが、序盤で主人公が助けを要請した看護婦がこの強盗に殺されていた。
さらには2人組のヤク中までもが現れる。しかも目的は強盗でなく、相手を問わない殺し。正直、これは相当やばいんじゃないかと見ていてハラハラしたが、一人には興奮剤?だかを注射して過剰摂取させて倒し、もう一人は割とあっさりと銃殺してしまう。何せ主人公は善良なごく普通の男だ。あっさりと無表情で人殺しをするこのシーンでは「おいおいマジで!?」と思ったのだが、この時点で3日近く寝ておらず、またわが子を守るためにあらゆる手段を模索してきた主人公だ。クズ相手に情をかける余裕など微塵もないだろうな、ということで納得はできた。

人間どんなに頑張っても徹夜は3日くらいが限度だろう。ついには主人公は力尽きてしまう。
しかし、強盗が来た際にいつの間にかいなくなっていた災害救助犬が救助をつれてきて、同時にわが子が初めて泣き声を上げ、救助隊がそちらにも気付いて無事ハッピーエンド。

当初、カトリーナの最中という設定なので事実を元にしているのかと思ったのだがどうもそうではなかったと知った。直前に実話を元にしていたローン・サバイバーを見ていたからというのもあるのだが。などと言ったが、別に実話かそうでないかはこの作品の甲乙に関係するところではない。
とにかく全編通してハラハラする。多分、育児をしたことのある人間ならばなおのこと、主人公に感情移入してのめりこむだろう。この作品のテーマの中核はこの辺にあるのかもしれない。俺は仕事してやってるんだからお前は俺を労われ!という亭主関白な駄目旦那への警告が込められているのだ。いや適当言いました。実際の意図は分かりません。
自分は育児は経験していないのだが、十分に楽しめた。閉鎖空間で死力を尽くす、というあたりが「127時間」とかに似てると思った。

項目別評価

果てしなく地味な映画だが、この項目にはない雰囲気を楽しむものなので、合う人には合う、合わない人には合わない、という傾向が大きく出そう。子持ちで、さらに育児経験のある殿方ならより楽しめるはず。

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