インセプション -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2016年10月30日

あらすじ・ネタバレ

ドミニク・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は夢の中に侵入することができる産業スパイ。実業家のサイトウ(渡辺謙)という日本人から「ある男の意識に入り込んで考えを植え付けてほしい」という依頼を受ける。これはインセプションと呼ばれるもので、通常のスパイ業務よりも困難な、人の人生を変えてしまうほどのもの。特定の薬を使って作られた夢の中に侵入するというものだ。学生であるアドリアネ(エレン・ペイジ)はこのような世界があることを知り、興味を持つ。夢の中では「トーテム」という、各人がこれと決めたアイテムを回すと決して止まらず回り続けるという特徴があり、これが現実と夢を見分ける手がかりになる。

サイトウの依頼はコブ、サイトウ、アドリアネの他、アーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)、イームス(トム・ハーディ)、ユスフ(ディリープ・ラオ)で行うことになった。目標は、サイトウが敵視している企業の後継者であるロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー)にインセプションを行い、父親であるモーリス・フィッシャー(ピート・ポスルスウェイト)と夢の中で対話させ、父親の後追いではなく、今後は自分の考えに従い会社を運営させていく決心をさせるということ。これによりサイトウの目的は果たされることになる。無事にこれが達成されたら、自分の力を使い、追われる身となっているコブが自由の身になることを約束した。

だがアドリアネは、コブが亡き妻モル(マリオン・コティヤール)のことがトラウマになっており、モルと夢の中で会っていたことを知る。
コブとモルの夫婦はかつて50年も夢の中で二人で過ごしていて、現実に戻った時モルは現実こそが夢だと信じ、ホテルで投身自殺してしまっていたのだ。モルは飛び降りる前にコブに対しても飛び降りるように促しており、それをしなかったからと、コブの夢の中にいるモルは怒っているのだった。
これを知ったアドリアネはコブに危機感を覚える。インセプション中にこのコブのトラウマが何か悪いことを起こすのではないかと。しかし、この懸念材料は払拭できないまま、ロバートに対してインセプションを行う時が来てしまう。

ロバートへのインセプションは、ロサンゼルスまでの飛行機での10時間フライトの間に行われることになった。
ロバートに薬を飲ませ、コブたち6人も夢の中に入る。インセプション中に侵入する夢の中では、また夢に入ることもできる。1階層の夢よりも2階層の夢の方が現実時間よりも時間の流れが遅く、2階層よりも3階層の方がさらに遅くなる。今回のコブたちのミッションにおいては3階層まで潜ることになる。夢から覚める場合は夢の中で高所から飛び降りることが必要なのだが、これを「キック」という。上の階層でキックする際には合図として音楽を流す決まりにしたのだった。寝ている一同の近くで音楽を流すと、より下の階層にいる人間にもそれが聞こえ、合図となる。

1階層は市街地だった。そこでロバートをタクシーで拾ったコブたちだったが想定外の事件が起きる。突如市街地の中を暴走した列車が突っ込んできて妨害し、さらに銃を持った敵が攻撃してきたのだ。
銃を持った兵たちはロバートがあらかじめ「夢の中でのスパイ工作」に備えて訓練されていたために現れたものだった。廃工場に逃げ込んだものの、サイトウは銃で撃たれて重傷を負う。コブたちは狼狽するが、もう後戻りはできず、作戦はこのまま続行することになる。
強盗を装ってロバートを脅迫し、「金庫の番号を言え」と脅すコブたち。これはロバートの父親モーリスとの確執を解くための工作。夢の中では自由に姿を変えることができるイームスが、ロバートの右腕であるピーター(トム・ベレンジャー)になりきって対話してみるものの父子の溝は思っていた以上に深いということが分かる。
ロバートが生み出した兵士たちに追われ、カーチェイスが始まってしまう。ここで運転手のユスフを残し、コブ、アドリアネ、サイトウ、アーサー、イームスの5人は車の中で再び薬を使い、2階層へと潜った。

2階層目の舞台は高級ホテルだった。階層が変わったことにより重傷だったサイトウは傷が消え復活する。
ここでコブは大胆な作戦に出る。1階層目ではまだこれが夢だと自覚していなかったロバートに対してあえてこれは夢だと自覚させ、「あなたを狙っている者がいる」と言い、ボディガードを装い、ロバートの警戒を解いたのだ。
そしてイームスはまたピーターに化け、ピーターが実はロバートを嵌めようとしている人間だったということに仕立て上げた。そしてピーター(イームス)が「父親の後追いはやめて自分の意思を持て」というように言う。ロバートは徐々にコブたちの思惑通り、考えを変えつつあった。
しかし2階層目でも武装したロバートの兵たちは現れ、襲ってくる。
今度はアーサーのみを兵たちの抵抗戦力として残し、コブ、アドリアネ、サイトウ、イームスの4人が3階層へと潜った。

3階層の舞台は雪山。ロバートが生んだ兵士たちが要塞を守っているが、その内部にロバートの父親モーリス(夢の中なので本人ではない)がいる。これにロバートが会い、父親と対話させることでコブたちの作戦は成功となる。すでに制限時間は迫っており、第1階層では音楽を鳴らし、キックが開始された。第1階層でユスフの運転する車は橋から飛び降りる。これが着水するまで第2階層では数分、第3階層では数十分の猶予がある。車が落下し始めたことで第2階層、アーサーがいるホテルの階層は無重力状態になって移動が困難になってしまう。また、無重力状態であるために、「落下させる」ことがトリガーであるキックを発動させることが困難になってしまった。しかしアーサーは全員をエレベーターに乗せた上で爆弾による衝撃を利用してキックさせる案を思いついたのだった。

3階層ではコブたちの奮闘が続く。サイトウは深い階層に潜ると回復するとはいえ、それは一時的なものにすぎず、徐々に傷口が開いて重傷化してしまう。夢の中で死亡すると「虚無」に落ち、現実に戻っても廃人になってしまう。色々な意味でもはや猶予はない。
コブも、息も絶え絶えなサイトウも、イームスも奮闘しロバートを誘導、いよいよ要塞に入りロバートが父親がいる部屋の中へ入ろうとした時、突如モルが現れ、アーサーを撃ち殺してしまう。これはコブの無意識化にいるモルが現れたもので、最悪の形で作戦は失敗してしまったのだった。しかしアドリアネは「さらに潜ってロバートを見つけ出せばまだ間に合う」と提案。コブもイームスもこれを承知し、さらに深くの4階層へとコブとアドリアネの二人だけで潜ったのだった。

4階層は、かつてコブとモルが50年過ごしていた場所だった。広大な都市だがどの建物も廃墟で無人だった。
ビルを昇っていくとモルがいた。コブは彼女と対話する。ロバートはベランダに囚われていた。
対話によりモルのことを吹っ切ったコブ。アドリアネは一足先に戻ると言い、ロバートと共にビルから飛び降りてキックする。3階層ではイームスの手により要塞の爆破によりキック、2階層ではアーサーの工作によりエレベーターを使ってのキック、そして1階層での車もついに着水し、インセプションからの離脱となった。ロバートは

一方一人遅れたコブ。虚無(=4階層)に落ちてくるサイトウを待って戻るためにサイトウを待った。
気付くと、和風の部屋にコブはおり、サイトウはすでに年老いた老人となって目の前にいた。すでにサイトウは数十年を夢の中で過ごしてしまっていたのだった。だがそのサイトウに対してかつての約束を思い出すように言うコブ。老境著しく反応が鈍いサイトウだったが…。

気が付くとコブたちは現実世界、飛行機内で目を覚ました。サイトウは茫然自失としてしばらく硬直していたが、「インセプションが成功したらコブを自由の身にする」という約束を果たすために電話をかけた。
ロサンゼルスに到着したコブ。サイトウの力により無事にチェックを通過し、その足で最愛の二人の子供のところへ戻った。
コブはかつてモルと暮らしていた家へ到着する。呼びかけると二人の子はこちらを向いた。机の上で回っていたトーテムが倒れようとした瞬間にエンドロールに入る。

感想・評価

10/15にBSでやっていたのを視聴。今回で視聴は二回目となる。

今回二回目だが、初見でその斬新な内容に引き込まれ、もしかしてこの作品傑作では?と思ったのだが、二回目でもやはり面白かった。
夢を自由に作るという荒唐無稽な設定が地盤にありながらも、そこにあるルールがアイデアに溢れているのが面白い。
夢を「設計」すること、その夢には「階層」があること、階層が深くなるごとに現実時間での時間の流れがゆっくりになること、夢の世界で死ぬと「虚無」に落ちるということ。どれも面白い設定であり、特に階層と時間の流れに関しては、1階層でいつまでもゆっくり落ち続ける車や、2階層で一人淡々と工作をするアーサーのシーンを、緊張感あふれる場面であると共に、ある種の「笑いどころ」にもしており、実に絶妙な設定だと思う。「まだ車は落ちてんのかよ!」とか「無重力空間で一人で大変すぎだろう」とか思ってしまう。

それにしても、まんまと騙されて偽りの感動のシーンを演じてしまうロバートは何とも哀れ。父親は本当はそんなこと思ってなかったろうに…。ある意味では陰の主役と言えなくもない彼目線で見ると、本当にまさか騙されているとは思いもよらないだろう。あえてロバートに夢であることを知らせるという大胆なアドリブを含んだコブの騙し技術には感嘆する。

表の物語は「夢に侵入しての産業スパイ工作」というものだが、裏の面としては「コブがトラウマになっている亡き妻モルの幻影を乗り越える物語」でもある。
夢を舞台としたスパイ工作を行うというだけでも単純にアクション映画として並以上に面白い作品だと思うが、コブが無意識に生み出してしまうモルの幻影によりストーリーにハプニング性が加えられ、また最終的にそれを乗り越える展開によりカタルシスもある。

最後のトーテムが回り終わらないうちに映像を切ってしまうのがまた思わせぶりで考察の余地があるところだろうけども、全体を見て、これが夢である展開になる理由がないので、素直にこれは現実として見ていいのだと思う。

項目別評価

自分の映画評価だと滅多に総合で40以上行くことはないがピッタリ40。作られた夢の世界というだけなら仮想世界ものとしてほかに似たものがないでもないが、それを階層式にすること、階層ごとに時間の流れが違うこと、夢ではトーテムが回り続けること、などといった基幹設定が絶妙で、この作品ならでは独創性を持たせており、実に面白い。

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