葛城事件 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>葛城事件

執筆日:2018年1月27日

あらすじ・ネタバレ

この作品は現在と過去が入れ替わり描写される。

葛城清が自宅の壁にかかれた落書きを消している。なぜそんな落書きが書かれたかというと、清の息子の葛城稔が無差別連続殺人を起こしたからだ。清は落書きを消しながら庭にあった蜜柑の木になっていた蜜柑に手を伸ばした。

裁判所での判決で稔には死刑が言い下された。その瞬間、稔は歪んだ笑いを見せて傍聴席にいる清を見た。

葛城家を星野順子という女性が訪れていた。彼女は清に対して「私は息子さんと結婚します」と言っている。つまり殺人犯と結婚するというのだ。清はそんな順子に世間の奴らに集団リンチを受けているだのなんだのと言っている。順子は死刑廃止論者であり、死刑は絶望の証であり、人間の可能性を根源的に否定するものだと清に語った。
清は「お前なんかに全てを失った俺の気持ちがわかるのか!」と言うと順子も「私も今回のこと(死刑囚と結婚するなどと言ったこと)で本当の家族を失いました」と返した。つまり順子は縁を切られたのだろう。

順子は稔と面会した。結婚したというのに、稔はというと名前すらまだ覚えていなかった。ワッフルを持ってきた順子に対して「そんなものはいらないから金をくれ」と言う稔。星野は「ちょっとずつでもいいので本当の家族になれたら」と別れ際に順子は言うが、稔も清同様に「頭おかしいだろ」と吐き捨てた。

時はさかのぼってかつての葛城家。
この頃は清の妻の葛城伸子、それに清の長男の葛城保もいた。保は働いていたが、稔はアルバイトをやっても長続きせず無職だった。
清は自宅から離れた場所にある、親から引き継いだ金物屋を営んでいた。
稔は「無職だということをあの人(清)には言われたくない。俺は今は自分なりに色々試していて、いつか一発逆転してやる」などと言っていた。

再び現在。清は順子と共にスナックへと足を運んでいた。
清はここでも傍若無人な振る舞いをしていた。順子は稔の話を聞かせてほしいと頼む。スナックにいた他の客と喧嘩して出て行った清。道を歩きながら二人の息子の話をした。「長男の保は従順で良い子だったが、次男の稔は我慢をしらない人間だった。同じ屋根の下で育ってこうも兄弟でちがうのかと愕然とした」と順子に話した。「俺はやるべきことはやってきた」と言い、こうなったのは自分が悪いわけではないということを主張した。

再びかつての回想。稔はコンビニに弁当を買いにいっており、その道すがら、ゴミの分別ができていないことを注意された。
そして長男の保は会社を解雇されたいた。営業の仕事で全く成果を上げることができていなかったのだ。このことは保は誰にも言えなかった。
清は保の家族(保の妻の両親もいる)とそろって外食をしたが、清はたちの悪いクレーマーとなり、店員に暴言を吐いていた。しかしこれに対して保は小声で「いいから」などとは言うものの止めることはできなかった。保には子供もいたが、それは清の家に預けていた。

清たちが帰ると、保の息子がケガをしていた。保の妻のミカは下手をしたら目をケガするところだったと騒ぎ立てた。清は伸子に事情を聞くが、謝るばかりでわからない。そこにやってきた稔に話を聞くと、実はケガをさせたのは稔だった。稔が殴ったのだ。これを知った清は伸子をはたき「お前が稔を甘やかすからだ」と言った。

保はリストラされたことを依然として誰にも言えなかった。一人で講演で昼食を取って時間を潰している様子が映される。

現在。
順子は再び稔に会いに来ていたが、稔はというと「もう両親のことは家族とは思ってない、これには何か意味があるの?」と順子も邪険にする。しかし順子は「私はあなたを愛します」と言った。

回想。
ある朝、清がゴミ捨て場を見ると何かが燃えていた。それを見に行こうとすると稔が家に入って来る。「どこに行っていた?」と聞くと「コンビニ」と稔は答えるが、何も買っていないので妙だと思う。稔がゴミ捨て場に火をつけたのだった。

清は家で寝ている伸子に対していきなり抱き着いた。しかし激しく拒絶されてしまう。伸子は「あなたのこと大嫌い。最初からあなたのこと好きじゃなかった。どうしてここまで来たんだろ」と泣き嘆いた。

このことがあってから伸子、そして稔は姿を消してしまっていた。
そして清が店番をしている金物屋にはリストラされた保がいた。リストラを知らない清は油売っていていいのかと言うが、保はごまかした。仕事がないためヒマな保はいなくなった伸子と稔を捜していたのだった。保はカウンターに座り「誰も客来ない」と言うが「店を継ごうかな」ともいう。しかし清は「ダメだ」と言った。
保は再就職のために面接を受けていた。しかし面接では緊張するばかりで、面接官に「新卒じゃないのに自分の名前も言えないの?」などと馬鹿にされてしまう。
ある日、保はいつものように、務める会社もないので出勤するふりをした。
働く代わりに伸子と稔を捜していた保は、ついに二人の居場所を見つけた。すぐ清に連絡した。

伸子と稔はある安アパートに二人で住んでいた。
保が訪れると二人は食事をしていた。伸子は働いているらしく、清から解放されて楽しげだった。もうすぐ清が来るから逃げるか何かした方がいいと言う保だったが、伸子は「最後の晩餐だ」と言って食事をやめなかった。
保はとんかつを、稔はうな重を食べたいなどと、母と二人の息子は他愛のない話をする。これはこの作品で唯一とも言っていい、穏やかな葛城家での会話だった。

しかしそこに清が訪れてその時間も終わった。
清は大声を出して怒るようなことはなかったが、今の自宅を購入する前はこういうアパートに住んでいたという話をしながら静かな怒りを見せた。
そして稔に対して蹴りを入れはじめ、ついに「お前はもう駄目だ」と言って首を締めて殺そうとした。しかし伸子が泣いて止め、「家に戻るから」と言ったためやめた。
稔は保に対して「俺が死んだらよかったと思ってるだろ」と言うが保は「何言ってんだよ」と返す。そして稔は「まだ生きなきゃいけないのかよ」と呟いた。

保はいつものように出勤するふりをしていた。それを見送る息子が「バイバイ」と言うが、これは別の意味に聞こえるものだった。
いつもの講演で時間を潰していた保。一本の煙草を吸い終わった後公園を出て行った。

場面が切り替わると葬式が行われている。
保は仕事場近くのマンションから飛び降りて自殺したのだ。女性たちが実はとっくにリストラされていたというウワサ話をしていると清が現れ、「悪質なデマは許さない。あれは事故」と言った。
葬式で食事が行われている中、伸子は妙に饒舌に笑い話をしている。現実に耐えられず、伸子はついに気が狂い始めてしまったのだ。
ミカは保を入れるための棺桶が非常に高額なものになっていることについて業者と話していた。それは清が手配したものだった。清はというと保の遺書を渡されていた。それはレシートの裏に「申し訳ない」とだけ書かれたものだった。清は興味なさげに「捨ててください」と言った。その様子を見ていた稔は何が面白かったのか吹き出し笑いをして清に睨まれる。

ミカは伸子を呼び止めて恨みがましく睨みつける。しかし伸子は「一緒に暮らしてきてどうして会社のことわからなかったの?あなたが殺したのよ」と言う。しかしミカは「嘘つき。本当はそんなこと思ってない。何が原因かわかってるでしょ」と伸子に言い返した。つまりミカは元をたどれば清のせいだとミカは言っているのだ。

稔は保の霊前で「だっせえ死に方。一発逆転するから、俺は」と何かを決意していた。

現在。
順子は伸子に会いに来ていた。伸子は完全におかしくなり、精神病院にいた。順子に対しても自分が稔を支えるということを言うが、伸子は興味なさげだった。

過去。
稔は自宅で段ボールを開ける。そこに入っていたのはサバイバルナイフだった。
それを持って出かける稔に対して伸子は「いってらっしゃい」と見送った。
稔は地下鉄の通路で無差別に何人も、サバイバルナイフで刺した。辺りは阿鼻叫喚となった。
一方清。誰も客のいない金物屋で一人、息子が小さかった頃の写真を見ていた。四人みんなが笑顔だった。

現在。
清はいきつけのスナックにいた。しかしそこには奇異の目で見る人々。「俺がいったい何をした!」と叫び、「国民が俺の息子を殺すんだ」などと相変わらず虚勢を張った。スナックのママからは「もう二度と店には来ないで。」と言われ、さらに「家を売り払って静かに余生を暮らしなよ」とアドバイスされる。

今度は20年前の過去。
今の自宅を購入した直後の頃。保も稔も幼い。清は知り合いを家に招いて家を自慢していた。そして家の庭に埋めたみかんの苗木のことも話す。二人の息子が健康に育つように願ってこれを植えたのだという。それを見つめる清の目は穏やかだった。冒頭で清が見ていたのはこれであり、現在はいくつかの実をつける程度には育っている。

現在。
清は順子に対して「稔は死刑にして欲しくない」と言った。あいつは死にたがっているから、死刑にするよりも生かした方があいつにとっての罪滅ぼしになると。

再び順子は稔と面会する。相変わらず、父親の清と似たような物言いで虚勢を張るばかりの稔だった。順子はそんな彼に、昔安アパートに彼氏と住んでいて、暑い夏でもそこでセッ○スをしたという話をした。そんな話でもいつかは笑い話にできるから、生きていればいいいことがあると稔を説得する。対して稔は自分は殺したことに罪悪感なんてない。スクランブル交差点で狂ったイノシシが人を殺して回ったのと同じだと言った。
今まで虚勢ばかりを口にする稔だったが、今度は続けて、今までにない本気の言葉で自分の人生を分析した。「自分は10代20代を無為に過ごし、ナルシストで無気力で努力もできず、聞きかじった言葉で言い訳をする、クソみたいな自己顕示欲におぼれたクソみたいな人間だ」と。稔がそれを言い終わり面会は終わった。最後に稔は順子に対してさようならと別れの言葉を継げた。順子は一人、その場ですすり泣いた。

それぞれの現在。伸子は精神病院で一人たたずみ、ミカは親がいる実家に住むようになっていた。

そして清。彼の元には順子がやってきて、稔の死刑が執行されたという話を清に伝えた。判決から1年での執行だった。順子はもっと稔と交流を続けられれば何かが変わったかも。という話をした。これが最後の挨拶ということで清に会いにきた順子だったが、清は「これで清との関係は終わりか?」と聞き、立ち上がる。そしていきなり順子を押し倒した。順子は必死にそれを引き離す。清は「俺が殺人を犯したら今度は俺と結婚してくれるのか?」と言う。順子は「それでも人間ですか!」と罵倒して家を出て行った。

一人薄暗い家に残された清。伸子、保、稔の名前を呼んだ。もちろん答える者はいない。
家の中の家具を放り投げて当たり散らした後、掃除機を持って庭に出ていく清。
そしてあのみかんの木の下に足場を置き、掃除機のコードを枝に巻き付け、首を吊って自殺しようとする。しかし枝が折れて失敗してしまう。息絶え絶えの清は何事もなかったように家の中に戻り、食いかけのラーメンをすすり始めた。これが結末。

感想・評価

メイン登場人物はDV父親、それに怯える母親、気弱で自殺してしまった長男、真正ダメ人間引きこもりの次男。現代社会の闇を濃縮したような作品。清がラーメンをすすり始めたところでエンドクレジットに入った時は思わず唸ってしまった。

公式サイトのストーリーを見ると「普通の家族が、なぜ崩壊し、無差別殺傷事件を起こした死刑囚を生み出してしまったのか 」とある。そしてNetFlixの作品概要だが、これに対してアンサーを出してしまっている。「平凡な家族がたどった崩壊の一途。窮地に追い込まれ、絶望に嘆く父親はまだ知らない。すべての元凶は自分自身であることを。」という一文だ。そして自殺した保の妻ミカは、伸子に「保が死んだのはあなたの責任よ」と言われた後に「うそつき!どうしてこうなったかほんとはわかってるんでしょう?」と言う。ミカも「清のせいだ」と言っているのだろう。
病巣を抱えた一家が崩壊したのは父親の清が悪い。そういうことなのだろう。そういうことにしたいのだろう。

しかし言うまでもなくこういう父親でなくとも子供が自殺してしまうことはあるし、引きこもりになってしまうことだってある。何せ自殺者は日本で毎年2万人近くいる(1日あたり60人以上)し、ひきこもりの数は50万人以上いるのだから。無論、家庭で暴君のように支配的に振る舞った清が周囲を委縮させたのは間違いない。稔の物言いが清そっくりなのも清のせいだろう。責任の多くがあることは間違いない。だがこの清だけに責任があるというのも間違っているはずだ。
会社をクビになったことを数か月言い出せず自殺した長男保の弱さも、「父親に怯える気弱な性質のため」だ、とでもこじつけるのだろうか?保はすでに家庭を持ち、葛城家の自宅とは別のマンションに別居しているのだ。むしろこんな親父を持ちながらでも、長男保は普通と言えば普通に育ったとも言えるだろう。次男稔が「自分の人生がこうなのは自分ではなく誰かの責任にしたくて」と順子に語るシーンもあるが、これも、本当のところでは「父親のせいというわけではない」と思っていることの裏返しではないだろうか。清が「同じ屋根の下で育ってなぜ兄弟であんなに違うのか」というのも、親は関係なしに子供の気質は決定されるという一面もあるということだろう。

よって、父親清に責任を押し付ける形になっているのは違和感を感じざるを得ない。むしろ「父親に問題がある」という設定は弱くし、もっと「普通の家庭なのになんでこうなったのかなあ」という作品にした方が伝えたいことは伝わるし、多くの視聴者にとって他人事とは思えない、胸に突き刺さるような作品になったのではないだろうか。

それともう一つ。
この作品は小学生8人が宅間守によって殺害された、実際に起きた事件、「附属池田小事件」がモデルになっているらしい。確かに符合する点が多く間違いないのだろうが、「死刑廃止論者と結婚する」という点まで参考にする必要があったのか。

作中では田中麗奈演じる星野順子がこの死刑廃止論者なのだが、明らかに浮いている。実際の宅間守と死刑廃止論者は実際のところ文通を経て結婚したらしい。そして死刑執行された宅間に泣きついたという話もある。彼女が言うには「社会的に問題のある男性に惹かれる」ということらしい。もう古い言葉だが「ダメンズウォーカー」ということか。死刑囚に恋するなど究極的だが、結婚までし、遺体に泣きついたということは少なくともこの女性と宅間は本当に相性が良かったのだろう。宅間は幼少はいじめっ子であったというし、裁判の場ですら被害者を冒涜する言葉を吐き、被害者に対して一切の詫びもなしに刑に処されたことは有名だ。良いようになど評したくないが、今で言う俺様系、あるいはオラオラ系、女性から見て「強い男性」として魅力的に見える部分はあったのかもしれない。

鑑みて、この作品での葛城稔と順子の関係はどうだろう。稔はモデルになった宅間とは違い、家族と会話するという基本的なものからおぼつかず、相当に社会性が欠落している。無職で何をしているか思えば声優を目指しているなどともほざく。匿名掲示板に管をまいて朝から晩までゲームとアニメに興じるのがお似合いな人間だ。宅間とはむしろ正反対なのではないだろうか?男性的な魅力は皆無だ。順子が惹かれる要素が微塵でもあったろうか?もちろんない。
順子は清にも、稔にも「おかしいんじゃないのか」と言われるが、全くその通りで、これでは恐らく現実のその女性以上におかしいのだ。まして、殺人者と結婚するなどと言い出したせいで自分の家族と訣別してしまったことまで順子は明かしている。これでは完全に頭がおかしい人である。
少なくとも現実のその女性は宅間に男性的魅力を感じていたはずだが、この順子はそれなしに、どころか稔とろくに会話も交わさないうちから獄中結婚しているのだ。あまりに不自然。空から降ってきた美少女並みの不自然さである。モデルにするにしてもここは排除し、星野の立場は例えば「女性弁護士」という事じゃダメだったのだろうか。この星野順子は現実には存在しない妖精か何かなんじゃないかと中盤くらいまでは疑っていたほどだ。

良い点を挙げると、ラストシーン。なかなかゾッとしたものがあった。いなくなってしまった妻と二人の子の名前を呼んだ後に自殺しようとして失敗し、再び薄暗い家の中に戻って伸び切っているであろうラーメンを食べ始める。清は星野に「生き続けることこそ稔への最大の罰になるんじゃないか」と話したが、まさにこれが自分の身に降りかかってきたことを象徴しているのだろう。今後もインスタント食品をメインにして清の生活はずっと続いていくのだと思うと戦慄するものがある。超高齢化社会の今後の日本では当たり前の風景になるんだろうなあ、なんて、作品とは関係ないことも思いもした。

日本人ならば胸に刺さるような作品だし、視聴者の心を大きく揺さぶる力はある。
だが設定をもっと整理すればより良作となったのではないだろうか。評価はそんなところだ。

登場人物解説

葛城清

演:三浦友和
葛城家の大黒柱。売れない金物屋を営んでいる。家庭内では支配的で、外食をすれば手ひどいクレーマー。ろくな人間ではないが、息子二人が幼い頃は一軒家を立てた後に息子の健康を願って庭にみかんの苗木を植えることもあるような良き父だった。妻が精神崩壊し、長男は自殺し、次男は死刑になった後たった一人で暮らしていた。星野に「俺が人殺ししたら今度は俺と結婚してくれるのか」と言って襲い掛かり拒絶された後、そのみかんの木で自殺しようとするが失敗。何事もなかったように日常を過ごし始めるシーンで終わるラストは実に絶望的。

葛城伸子

演:南果歩
清の妻。暴君のようにふるまう清に常に怯えている。寝ているところに抱き着かれたが拒絶。その時「あんたが大嫌い」と言う。その後は家を出て稔と共にアパート暮らしをしていた。保の自殺がきっかけで精神崩壊し始め、葬式の場で笑い話をしていた。さらにその後は精神病院行きに。清ばかりが原因のようにされるが、この伸子は全く料理をしない性質のようで、葛城家の食事はピザやラーメンやコンビニ弁当ばかり。少なくとも食事に関しては家事を放棄している。

葛城保

演:新井浩文
清、伸子夫妻の長男。会社務めをしていてミカという妻を持っているが、気弱。リストラになってしまうが、ただでさえ弟の稔が無職の状態で言い出すのは酷と思ったのか、数か月にわたりエア出勤してまだ勤めているように見せかけていた。しかし結局は耐えられなくなり自殺した。レシートに遺書を書いていたが、内容は「申し訳ない」という一文だけだった。葛城家では最もまともな人間だが、伸子同様、清に強く逆らうことは出来なかった。

葛城稔

演:若葉竜也
保の弟。こらえ性がなく自堕落な性格。引きこもりをやっている。「いつか一発逆転する」などと言ってごまかしていた。兄の葬儀でも笑うなど、本当にどうしようもない人間。兄の死をバカにしながらも、行動を起こす大きなきっかけになったようで、大きなサバイバルナイフを持って地下通路の無差別殺人を犯した。星野と獄中結婚して幾度となくやり取りをするが、その会話でも居丈高でゲスな物言いばかり。しかし星野との最後のやり取りではダメな自分を客観視しありったけの言葉で自虐したため、自分を冷静に自己分析することはできていたらしい。清の証言によれば幼い頃から保と違って怠け者でサボり魔だったらしく、果たして一家の崩壊が清のせいとするのは正しいのかそうでないのか。

星野順子

演:田中麗奈
死刑廃止論者の女性。連続殺人を犯した稔と結婚した。清とも交流し、「死刑は人間に絶望する行為だ」と言う。宅間守と獄中結婚したという女性は文通を経て親しくなったというが、この星野はほとんど唐突に稔の前に現れているようで、最初の面会をした時点で稔はこの順子の名前すら憶えていない。駄目人間の清や稔と交流してもくじけなかったが、稔への死刑が執行された後に清に報告に来た際に清に襲われ「それでも人間ですか」と罵声を浴びせて去った。

ミカ

保の妻。3、4歳くらいの男の子、それに生まれたばかりの子の二子を持つ。保が自殺するまでリストラされていることに全く気付かなかったが、伸子にそれを責められた時は「本当は誰のせいかわかってるんでしょ?」と返し、清にこそ原因があることを訴えた。

項目別評価

見た後はきっと落ち込む。心を動かされるのが良い映画だというならば、この作品はそうなのかもしれない。鬱屈した映画を観たいならうってつけ。上で書いたように、「暴君の父親のせいで崩壊した家庭」を描くのではなく「ありふれた家庭なのに崩壊した家庭」を描いた方がテーマがストレートに伝わってきたと思う。

凡人の感想・ネタバレ映画>葛城事件