君の名は。 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>君の名は。

執筆日:2018年1月04日

感想・評価

2018年1月3日の地上波放送で初視聴した「君の名は。」。このサイトは基本的にネタバレとあらすじを掲載しているが、ここ数年で一番有名な映画なのでその必要はないと考え、感想・評価とヒットした理由を考えてみることにする。あといつも通り項目別評価も。

というわけでまず感想。
新海誠監督の作品というと「雲のむこう、約束の場所」と「秒速5センチメートル」は観た。ただし「前者は飛行機に乗ってなんやかんやしていた」という記憶しかないのだが。後者に関しては、ラストシーンは何度も見返したくらいには印象に残るものだった。
そんな「新海誠のにわか」程度な自分だが、この作品を観て、ひねくれものの自分でも「これはヒットするわ。納得だわ。」という率直な意見が出た。だって物凄くストレートで素直だから。「知る人ぞ知る」や「玄人好みの」ようなものではなく「大衆に大ヒットした」作品というのは往々にしてそういうものだ。

17才という最も若く活力に満ち溢れた男女の、飾り気のない素直な感情を、美しい映像と音楽に乗せて送る。っていう物凄く素直な作品。2000年前後からアニメ漫画の世界ではちょっと斜に構えたものが一定の立ち位置を獲得してきたが、もはやそれも飽きられたという状態の今、結局普遍的なものは「素直」なもんなんだろうなと、思い知らされるような気持ちになった。「けものフレンズ」がヒットしたのにも同じようなものを感じたが、素直で単純で邪なところがないものが最も受けがいいし、心に響くんじゃないのかと、それを感じさせるものがあった。

秒速〜に関しては台詞回しが若干臭すぎるのが受け付けなかったのだが、今作ではより明るくキャッチーになり、嫌悪感を抱かせるようなものではなく、また登場人物の誰もが良い人ばかりなのも重要だ。瀧の友人も、三葉の友人も好感の持てるキャラばかりで、苦痛になるところは全くない。

そして映像美。秒速〜のラストシーンで誰もいなくなった踏切で散る花びらが映されるシーンがなんとも切なくて何度も見返したのだが、今回は約100分の時間の中であれと同等以上の美しい映像美がこれでもかと演出される。三葉の家の日本庭園や、彗星の落下跡、それらとは対照的な都会の喧騒、そして光の尾を引きながら落下する彗星。どれもこれもが美しい。ぶっちゃけ、話を無視して映像を観ているだけでもかなり楽しい。仮に全く同じ話だとして、背景美術に手を抜いたらまずこれほどのヒットはしていないだろう。ストーリー、挿入歌など全てに対してこれがマッチしている。

で、やっぱり重要なことなのがグッドエンドであること。
秒速〜を見た人間なら必ず、ラスト付近には既視感を覚えるだろう。そしてラストの二人の「君の名前は?」という台詞と共にタイトルが浮かぶところで「やっぱりこれ真の秒速5センチメートルじゃん!?」となるはずだ。瀧と三葉が最後に会ってから5年もの歳月が流れている。「そんだけ時間が経過すれば心も離れるわ」とリアルにドライに描いたのが「秒速5センチメートル」だが、5年経っても、言ってしまえば「ご都合主義的に」互いに思い合っていたのが「君の名は。」ということになる。秒速5センチメートルと言えば主人公とヒロインが最終的には離れてしまう物語であり、精神にダメージを与えてくる作品として有名なはずだが、それだけに秒速〜を見た人間にとっては、何年ごしかで心を癒されたような思いがするに違いない。言うまでもなく別の物語なのだが、同じ監督の作品で雰囲気が同じなだけにその思いは避けられないはずだ。そうなるとよけいに「やっぱ物語はグッドエンドだよな!」という想いを喚起させることになる。仮に最後の最期で瀧が声をかけずに終わってしまう物語だったら興行収入は数分の一以下だったに違いない。

とにかくこの作品は清々しいほどに素直でストレートだ。相当なひねくれものの自分ですらこの作品には好感を持った。しかしそれゆえか「キャッチーすぎる」「売り線」だのという批判を当時受けたらしく、それに対して新海監督が「ヒットしたのは偶然のようであってそんなこと言われるのは心外だ」と反論したらしい。
実際、売り線を100%作れるなら企業はそれだけ作ってりゃいいよなという話だ。まして少子高齢化により多くの業界が縮小し苦戦を余儀なくされる中、売れ線の作品を簡単に創れるのならそれだけ作ってりゃいい。

「素直」だなどと、評価するにしても簡潔がすぎたかもしれないが、ストレートな話ばかり作ってれば必ず売れるわけでもないだろう、もちろん。この作品の場合、色々な歯車が奇跡的にかみ合ってのものなのかもしれない。まして監督自身が「偶然だ」と言っているのならそうだろう。しかし売れる「要素」をまず用意するだけの布陣を整えるのだって色々な意味での力量がいるだろうし、用意されたとして万人がそれを最も適切な、理想形に組み立てられるわけではない。これを成すことができたのは監督はじめ多くのスタッフの手腕によるものに違いない。それは賞賛されるべきだ。自宅のテレビに録画しておいたので、今後何度か見直してみたい。

ヒットした理由を解析する

上の感想評価と被る部分は多いが、なぜこの作品がヒットを飛ばしたのか。それを2018年にもなってしたり顔でしてみる。

強烈な掴み

冒頭、三葉(中身は瀧)が目を覚まして何をするかといえば自分の胸をガン見してさらに裸で自分の姿を確認して驚く、という場面で。ある意味これは卑怯とも言えるが、物語の導入としては強烈きわまりないだろう。特に男にとっては。自分の姿が女になって「え〜!?////」なんて展開もそれはもう擦り切れるほど使われたものだろうが、それでも強いもんは強い。これまでもこれからも。この冒頭を見た時点で入れ替わりによる苦闘の日々がすでに予感され、目が離せなくなる。

映像美

どのシーンをとっても背景が美しい。観ているだけで楽しいほどに。ストーリーに関して混乱するところがあり、自分もどういう理屈でそうなっているのか、よくわからないところはあったが、100分作品でたっぷりこの映像美を堪能できるため、多少ストーリーに粗があっても気にならず最後まで観ることができる。映画を2回見直すということはよほどのことがないかぎりしないが、昨日録画しておいたので今(1月4日)にでもまた見たいと思ってしまうほどだ。まして映画館の大スクリーンでとなれば、複数回見たくなっても全くおかしくない。

登場人物が魅力的

あらゆる創作において基本だろうが、これを抑えている。瀧はごく平凡で少々がさつだが憧れの先輩の前では赤面してしどろもどろになったりする、三葉やその家族を思いやる気持ちもある好青年。嫌味な部分はない。三葉も都会に憧れる平凡で優しい地方の女子高生で、同様だ。そしてこの二人のそれぞれの友人もどれも非常に良いヤツぞろい。悪く言えばどれもクセがなすぎるとも言えるが、この素直な作品においてはそれでいいのだろう。妙な人間を出しても異物感を覚えるだけだ。絵、ストーリー、BGM、人物、これらはそれぞれの相性が重要だ。この作品は実に破綻なく調和している。

秒速5センチメートルの呪縛を解いたラスト

これは上に感想に書いた通りだ。ラストに関してはまるで秒速5センチメートルのifの物語のようだ。秒速〜を見てへこんだ、ダメージを受けた(といってもそれはいい変えれば作品を観て間道したということなので必ずしも悪い意味ではないのだろうが)人間にとっては「こういうのが見たかったよ!これでいいんだよ!」と思わせるような結末。大団円!グッドエンド!文句なし!そういう作品の後味が、同監督作品「秒速5センチメートル」によってより増幅されている。秒速〜だって君の名は。には及ばないが相当なヒット作であり、当然観た人間は多い。そういう人間が絶賛する声がネットその他で多く挙がりトレンドになった、バズッた、というのは想像に難くない。

項目別評価

特に後半の過去への行き来に関しては強引に納得するしかないような気もしたり、彗星の落下描写から見て少々離れたところから避難しただけで死亡者0人というのは疑問符が出たが、そういう些末なことは気にさせないほどの映像美、素直で王道なストーリー展開。総合点では38となったが、自分はスタンスとして映画にそんな高尚なものは求めておらず、エンタメ性が高ければそれでいいと思っているので、ほとんど文句はない出来。超ヒットを飛ばしたのも納得だった。

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