マイノリティ・リポート(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年12月26日

あらすじ・ネタバレ

舞台は2050年代のアメリカワシントンDC。この時代では殺人は予知能力を持つ3人の「プリコグ」と呼ばれる超能力者によって予見され、ここ6年もの間殺人件数は0だった。主人公の刑事ジョン・アンダートンはその予知から殺人現場を割り出し、急行して阻止するという仕事を行っていた。冒頭では妻に浮気された夫が突発的に殺人を行うという事件をギリギリのところで食い止めるという、ジョンが行った一連の仕事の様子が描かれる。プリコグが予見した後は殺される人間と殺す人間の名前が書かれた玉が装置から出てくるが、これは赤色ならば衝動的な犯行、茶色ならば計画的犯行という区別がなされている。浮気現場を見た男の殺人の場合は赤色となる。この時代では実際に犯罪を起こさなくとも、プリコグたちが予知した時点で犯罪者となるのだ。

ジョンは忠実に任務を遂行する男だったが、ある事件により心に深い傷を負ってもいた。それは溺愛する息子ショーンを誘拐されたという経験。この事件の後から妻とは別居状態にもなっていて、ジョンもまた犯罪の被害者だった。この件のストレスから逃げるためにジョンは人知れずスラムの麻薬売人の元へ通い、購入していた。

プリコグは3人一組で機能していて、基本的に眠った状態で特殊なプールの中に浮かんでいる。三人のうち2人は双子の男で、もう一人はアガサという女性。殺人を予見するとこの3人の頭脳にビジョンが浮かびスクリーンに現場の映像が映し出され、それを元にジョンたちが調査する。プリコグの維持管理はウォリーという男が行っている。。
ある時、ジョンが業務を行う現場に司法省のダニー・ウィットワーという男が査察にやってきた。プリコグのシステムを調査に来たのだった。その最中でプリコグの一人アガサが「あれが見える?」と言ってジョンに抱き着いてきた。ジョンはその時、アガサが見たビジョンである溺死したらしい女性の姿を見た。

これが気になったジョンは収容所にやってきた。犯罪を「起こすはずだった」犯罪者は収容所に眠ったまま収容される。収容所を管理するギデオンという男に頼み、「溺死した白人女性」が被害者になるはずだった事件の犯人を絞り込んでもらったところ、一件見つかった。それは「身元不明の男がアン・ライブリーという女性を溺死させて殺そうとする」という内容だった。さらにジョンは「この事件においてアガサが見たビジョン」を見たいと頼んだが、なぜかそのデータは喪失していた。3人のプリコグが見た予知ビジョンは全て保存されているはずなのでこれは不可解なことだった。また、もちろん事件は予知されただけで発生はしていないためアン・ライブリーは生きているはずだが、彼女は行方不明になっていた。

ジョンは自分の上司で局長であるラマー・バージェスにこの話をした。ラマーはジョンが麻薬を使っていることも知っていたが、それは息子を失った悲しみによるものであるため、寛容に見逃していた。ラマーはウィットワーが薬物検査などをすることを心配していたがジョンは大丈夫だと返した。

ジョンはその後もいつも通り仕事を続けていたが、ここで彼の運命を変える事件が発生する。なんとプリコグの予知した未来ビジョンにジョン自身が映り込んだのだ。ビジョンの中のジョンは「じゃあな、リオ・クロウ」といって銃弾を撃ち込みそのクロウという男を殺害していた。そのリオ・クロウとジョンの名前が書かれた玉も装置から出てきた。ジョンはリオ・クロウという男とは面識がないが、こうして予知された以上、ジョンは犯罪者ということになる。この映像を見たウォリーは「あんたには優しくしてもらってるから10分経ってから警報を鳴らす」と言った。こうしてジョンは終われる身となった。

逃げるジョンの前にウィットワーが現れてジョンが薬物を行っていた証拠を突きつける。ウィットワーはジョンの部屋を探っていたのだ。ジョンはウィットワーが未来予知システムをいじってああいう映像を作り出してジョンをはめようとしているとも考えた。このことをジョンはラマーに報告。ラマーは逃げるなと言うがジョンはプリコグのシステムを作り出したアイリス・ハイネマンという女性博士に会うと言って逃走を続ける。
かつての部下たちにも追われ、ウィットワーにも追われながら自動車工場に辿り着き、奮闘の末、組み上がった直後の車に乗って逃げ出した。

ハイネマン博士の家へとたどり着くと博士が作り出した猛毒のツタに絡まれてジョンは毒に蝕まれたが、博士は解毒薬を飲ませてくれた。そしてプリコグのシステムについて尋ねると「稀に3人のうち1人だけ違うビジョンを見ることがある」という、ジョンが知らない話をした。それは「マイノリティ・リポート」と呼ばれる例外的な事例のことだった。博士は潔白を証明するならマイノリティ・リポートを見つけ出すしかないとジョンに助言をしたのだった。そしてそれはプリコグのうち最も優秀なアガサの頭脳にだけあるのだという。自分一人でアガサがいる場所まで潜入するのは至難の業だが、それでもジョンはそうするほかないのだった。

その後ジョンは自分がかつて捕まえた闇医者エディ・ソロモンの元を訪ねた。この時代、あらゆる場所で網膜によるチェックが行われるため、これを躱すためには目を別人のものにすることが必要なためだ。
両眼を別人のものにした後安定するまで包帯を取ることはできないのだが、まだ動けないジョンの元にも警察の捜査が入るが、ギリギリのところで包帯を取ることができ、網膜走査されてもジョンだとバレずになんとかこれをやり過ごすことができた。

ジョンはソロモンから「30分だけ容姿を変える薬」ももらっていた。これと、手術で取り出した自分の眼球を使ってかつての職場に潜入してついにアガサの元に辿り着く。ウォリーは協力してくれたがウィットワーもやってきた。プリコグが入っているプールの水を抜き、ジョンはアガサと共に逃げ出した。

ジョンはアガサの脳からマイノリティ・リポートを取り出すために技術者の元へ向かった。それはルーファス・T・ライリーというハッキングの前科がある男。このライリーの手を借りてアガサの脳内にアクセスする。だが「ジョンのマイノリティ・リポートは存在しない」とアガサは言う。そしてそこには湖畔でアン・ライブリーが溺死する映像があった。これは収容所で見たものと同じに見えた。後に分かるが、これはそれとは微妙に違っていた。

ウィットワーもライリーの居場所を突き止めたため、再びジョンとアガサは逃走を図る。アガサの予知能力おかげでなんとか追っ手をまくことはできたが、いよいよジョンがリオ・クロウを殺す予定時間が迫ってきた。アガサは心配するが、ジョンは全く知らない男を自分が殺すはずがないと断言。何が起こるのか見るためにあえて現場に向かった。

ジョンがリオ・クロウを殺すのはとあるホテルだった。そこに予定時間直前にジョンが到達。するとその部屋のベッドの上には大量の子供の写真があった。そしてなんと誘拐されたジョンの息子ショーンの写真も。ここでジョンは理解した。ショーンを誘拐した犯人を目の前にしたら自分はそいつを殺さずにはいられないことを自覚していたからだ。だから予知は間違っていないと認めた。

ジョンは激昂してクロウにつかみかかり銃口を突きつけ、ついに予定時間がやってきた。が、そこでジョンは必死に憎しみを抑えて銃口を引かずに耐えた。こうしてプリコグの予言は外れた、かに見えた。
なんとここでリオ・クロウが「頼まれて誘拐犯を演じていたこと」を話し出す。リオ・クロウは誰かに「ジョンに殺されれば家族に金をやる」と持ち掛けられたためこんなことをしていたのだという。クロウからすればジョンは自分を殺してくれないと困ることになる。ジョンが「じゃあな、クロウ」と言って去ろうとした瞬間、クロウに無理矢理引き金を引かせられ、結局は予言の通りにジョンがクロウを撃ち殺す形になってしまったのだった。

ウィットワーはその現場にやってきたが、ベッドの上に大量の写真がわざとらしく置いてあったことから、これは誰かがジョンをはめるために仕組んだことだと推測した。
そしてウィットワーはジョンがライリーの力を借りてアガサの頭脳から取り出した映像(録画して残されていた)にも違和感があることを見抜いていた。これをラマー局長の前で説明する。

プリコグは予知した未来は何度か重複して見ることがあり、これは「エコー」と呼ばれる。エコーは不要な重複データなので消されてしまう。そのため予知された事件が事前に阻止された後、それと全く同じ手口で殺人を行った場合、それはエコーだとみなされてデータ消去されてしまうということだ。つまり、アン・ライブリーは未遂で終わった殺人事件の直後に本当に殺されてしまっていたということだ。収容所で見れるライブリー殺害映像とアガサの脳内にあったライブリー殺害映像は微妙に違っていたが、これは阻止された事件と実際にライブリーが殺された事件それぞれの映像であったからであった。
これをウィットワーがラマー局長に説明した直後、ラマーはウィットワーに突如発砲する。事件の黒幕はラマーだったのだ。この時点ではアガサがジョンに連れていかれているためにプリコグのシステムが起動せず、ラマーがウィットワーを殺すのも誰も知り得なかった。

ジョンは別居している妻ララに匿って貰うためにララの元、つまりかつての我が家へやってきた。
そこでようやく、「自分がアン・ライブリーの事件に疑念を抱いたためにはめられた」ということに気付いた。
そしてアガサの話により、アン・ライブリーがアガサの母であることを知る。
だがここで周囲を包囲され、ついにジョンは捕まってしまい、他の犯罪者と同じく眠ったまま収容所に収容されることとなった。。

その後ララはラマーと会い、アン・ライブリーとは誰なのかを問う。そこでついラマーは「アン・ライブリーが溺死した女性であること」を口走ってしまい、ララに疑われることになった。「このことは後日話そう」と言うラマー。おそらくララの殺害も決意したのだった。ララはここでラマーが黒幕であると確信した。
ララはジョンから受けとったジョンの「本当の」眼球を持って収容所へ入り込み、ギデオンにジョンと話をさせるように頼んだ。

ジョンやウィットワーのような邪魔者を消し、ワシントンだけでなく「全米」の犯罪予防局の局長となったラマーはパーティに出席していたが、そこでジョンから電話が入る。ジョンは淡々とラマーの意図を説明して見せた。アガサの母であるアン・ライブリーは予知能力を持った娘を取り戻そうとしたため、ラマーは殺害を計画したというのが真相だったのだった。アガサの脳内にあったアン・ライブリー殺害の様子はパーティ会場で放送された。

プールにアガサが戻り、再び機能するようになった予知システムがラマーがジョンを殺すのを予知していた。バルコニーにジョンを追い詰めたラマーがジョンを撃ち殺すビジョンも。
その通りにラマーはジョンをバルコニーに追い詰める。「自分を殺せばシステムは続く。しかし未来は自分がしたように変える事もできる」とラマーに言うジョン。そして「許してくれジョン」と言いながらラマーはジョンではなく自分を撃ち、自殺した。これは予知とは違っていた。

これにより予知システムは不完全なものとみなされ、2054年6月に廃止された。収容された囚人たちは無条件で解放され、一部の人間には監視がつけられた。プリコグの3人たちもシステムから解放され、3人で穏やかに日々を過ごすようになったのだった。このプリコグの3人が住む島を遠くから映す映像が流れる中でエンドロール。

感想・評価

非常に有名な作品だが昔一度見たきりで内容を覚えていない作品。今回腰を据えて見てみた。

未来予知システム、それに利用されているプリコグ、それを手に入れるために殺人を犯していたラマー局長、そしてそのもみ消された殺人の存在を知ったために無実の罪を着せられ狙われた主人公ジョン、すべての要素が最終的には繋がる。2時間20分超とやや長めの作品だが、それを感じさせないSF大作。「こんなに面白いんのになんで内容を忘れてしまっていたのか」とまで思ったほどに見入ってしまった。

シリアスな作品ではあるがそこかしこに笑えるポイントがあるのも素晴らしい。特にジョンが自動車工場で逃げるシーンでくみ上げられる自動車の中に入り込んでしまったシーンが笑えた。コンベアの上を流れていく車をウィットワーたち追っ手が「どうなった!?」って面持ちで見つめると、車内でジョンがスッと起き上がるシーンがシュールすぎて爆笑した。そのままその車を運転していくし。後は警察がジョンを捕まえようとする時に使う謎装置「嘔吐棒」で誤って同士討ちしてゲロ吐くのも笑った。

ストーリーに関してはおおまかな筋は通ってはいるものの若干「おかしい」と感じられる部分はある。
特に物語の核心である「ラマーは直前にあった手口と同じ方法でアン・ライブリーを殺していたため、直前の事件にカムフラージュされて気づかれなかった」という点だが、いくら真似をしたとて、これだってプリコグたちが予知しないのはおかしくないかと。「被害者がアン・ライブリーである事件が二連続で予知される」のが普通じゃないかと。装置から加害者「ラマー・バージェス」の名前が書かれた玉が出てこなかったのだろうか?同じ事件の映像が連続してプリコグのビジョンとして現れる「エコー」というものがあることの説明はあったが、それとこれとは話が別のはずだ。まあ、出てきた玉はラマーがなんとか言ってごまかし、もみ消したのかなあ。一瞬でもいいからそういうラマーの回想描写でも入れればよかったのに。
そこには目を瞑るとしても、ビジョンの中でラマーの顔が映らない保証なんてどこにもないはずだとも思える。最初から覆面でも被っての犯行だというならともかくそうでもないしなあ。

…と、一通り突っ込んだらスッキリした。何もこれが致命的な欠陥だなどと言うつもりはないのだ。総合的には滅茶苦茶面白かったのだから。設定や展開の面白さから、多少の矛盾点は気にならない程度にはのめり込むことができる良質なアクション映画には違いなく、十分にオススメできる作品。

登場人物解説

ジョン・アンダートン

演:トム・クルーズ
主人公。プリコグの未来予知を駆使して捜査を行う、犯罪予防局に所属の刑事。息子ショーンが誘拐されたという過去を持ち、未だにトラウマとなっている。しかしこれが理由で今の仕事をしている。アン・ライブリーの事件に感づいたことでラマー局長の仕組んだ罠にかかる。リオ・クロウは犯人ではなかったため、結局ショーンを誘拐した犯人は誰なのか不明のまま。

ラマー・バージェス

演:マックス・フォン・シドー
犯罪予防局の局長。ジョンとは親しく、ジョンの妻のララとも交流があるが、黒幕。優れた予知能力を持っていたアガサを利用しようとしていたが、アガサの母のアン・ライブリーがそれを渋ったために殺害を計画した。まず人を雇って殺させようとしてそれを阻止した直後、本当にアン・ライブリーを殺した。

ダニー・ウィットワー

演:コリン・ファレル
司法省所属の男性。犯罪予防局が使っているプリコグの予知システムの確実性を確かめるため査察に来た。ジョンの部屋に忍び込んでジョンが薬物を使っていることを突き止める。そして逃走したジョンを刑事と共に追うことに。ジョンは当初このウィットワーがジョンをはめたと思い込んでいた。リオ・クロウ殺害現場を見て「これは意図的に作られた状況だ」と確信し、アン・ライブリー殺害のビジョンは2種類あることも見抜くが、それを説明していた相手はよりによって黒幕のラマー。その場でラマーに射殺されてしまう。

アガサ

演:サマンサ・モートン
犯罪予防局が使っている予知システムに必要な予知能力者「プリコグ」のうち一人。あと二人は双子の男性だがアガサのみ最も能力が優れているため、このアガサが欠けるとシステムは機能しない。実はラマーに殺されたアン・ライブリーの子供。プリコグは、ハイネマン博士によれば「薬物(ニューロイン)中毒の患者が生んだ子供の中の多くは12歳まで生きられなかったが、例外的に生き延びた子供が予知能力を持っていた」らしい。

リオ・クロウ

ジョンが近い未来に殺すことになってしまった人物。しかしジョンからすればまったく知らない人物なので、ジョンは「自分が殺すわけない」と考えていた。ジョンの息子のショーンを誘拐した犯人かと思われたが、実は「ジョンに殺されるよう演じる」ようにラマーに雇われただけの人間だった。元々刑務所に入っていた人間だが、ジョンに殺されれば家族に金が入ることを望んでいたので、詳しい事情はわからないが犯罪者であっても家族思いであることは確か。最後には無理矢理ジョンに引き金を引かせて自分を撃ち殺させる。

ララ

演:キャスリン・モリス
ジョンの妻だがショーン誘拐事件後は別居中。とはいえ夫婦仲は悪いわけではない。夫の上司であるラマーとも親しい。ジョンが収監された後にはジョンの目玉を持って収容所に乗り込んで管理人のギデオンを脅す。ジョンの妻ゆえか良い度胸。

アン・ライブリー

アガサの母親。元々薬物中毒だったが、そこから脱した上で娘を大切に育てようと考えていたが、アガサの予知能力を必要とするラマーの手により殺害されてしまう。

項目別評価

細かい粗は少なくないが、総合的にはそれを感じさせない出来。未来予知を使った捜査とそれを逆手に取ったトリック、今見ると若干古いが面白いギミックあふれる未来観、ほどよくちりばめられたコメディ要素。非常にバランスよく仕上がっている。近未来SFアクション映画として傑作と言ってさしつかえない。

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