Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

執筆日:2018年1月7日

あらすじ・ネタバレ

この作品はホームズが「隠居している現在」と「30年前のケルモットという男の依頼を受けた時」と「現在より少し前、ホームズが認知症軽減のため梅崎という男のの案内で日本へ行った時」の3つの時間軸が何度も入れ替わり演出される。作中の通りの流れを書くと混乱するので、それぞれを分けて掲載。

現在

93才の老齢になった名探偵ホームズは35年前から田舎で隠居していた。日本に山椒を買いにいっていたが、久しぶりに我が家に帰ってきた。
家には家政婦のマンロー、それにその息子のロジャーが住んでいた。ホームズは趣味として養蜂をしており、ハチが好きなロジャーもそれを手伝っていた。しかし以前よりミツバチの数が減っていることに気付いたホームズだった。またホームズは認知症を患っており、それに効くという山椒を二本まで調達しに行っていたのだった。

ホームズの功績は小説になっていたが、それらの作品はかつての相棒ワトソンが書いたものだった。しかし最近、ホームズはかつて受けたある依頼を自ら書き記していた。それは相棒のワトソンが結婚してホームズの元から去った直後に受けた、ケルモットという男性からの依頼だった。
兄の遺品整理をしていた時に初めてワトソンの小説を読んだのだが、それは自分が記憶している内容と違っていた。作品の中では毒を使った夫への殺害計画を立てていたという話なのだが、ホームズとしてそんなチャチなものではないはずだった。。その事案を最後にホームズは引退したことは覚えているのだが、なぜ引退したのか、どういう依頼だったのか詳細には思い出せない。認知症と戦いながら、なんとか思い出しながら自ら筆を執っていた。

またこの頃、日本で山椒を買った時に世話になった梅崎から手紙が来ていた。彼はもおう手紙は出さないと別れ際に言っていたが、母が死んだという内容だった。

しかし山椒も効き目はなく、日々さらに認知症は衰えるばかり。家政婦のマンローは「安い給料で介護までする気はない」と年老いたホームズを嫌っていた。そして近々、離れた地にいる姉の元へロジャーと共に移住したいと考えていた。
しかしその息子のロジャーはホームズを慕ってくれていて、ロジャーとの交流により、ふとしたことからケルモットの依頼の件を思い出すことができた。

しかしある時立ち眩みで倒れてからはさらに弱ってしまい、いよいよ書く気力も失ってきた。しかし、棚に隠されていたケルモットの妻、アンの手袋をロジャーが見つけたのがきっかけでついに最後まで書き切ることができた。

それをロジャーに伝えようと思ったある日の朝。ロジャーがハチに刺されて気を失っていた。ロジャーは病院に運ばれた。
マンローは元々、ホームズが世話していたミツバチを疎んでおり、碇を爆発させて水をかけて殺そうとした。しかしホームズはある事実に気付いていた。ミツバチならば刺した箇所に針が残るのだがロジャーにはそれがなかったのだ。ミツバチを殺そうとするマンローを制止してホームズが向かった先は、スズメバチの巣だった。最近ミツバチの数が減っていたのはスズメバチに襲われていたからであり、それに気づいたロジャーはスズメバチと戦ってしまい、刺されたのだった。

病院で待つホームズとマンロー。ホームズは「マンローとロジャーに家も土地も譲るが、代わりに近くにいてくれ」と言った。ロジャーの容体は安定し、無事回復した。

ケルモットの依頼を全て思い出したことで、日本の梅崎の件のことも思い出したホームズ。梅崎い手紙を返した。

死ぬ前にやるべきことをやったホームズとロジャーに言うホームズ。最後には草原で自分が親しかった者の墓石ということで小さい石を置き、日本式に拝んだ。

過去

かつてホームズがロンドンのベーカー街に住んでいた頃の話。助手のワトソンは結婚して去り、ワトソンの書いた小説のおかげでホームズの家を訪れる人間が多数いた。しかしワトソンが作品で書いた住所は嘘のものだったため、ホームズはそれを相手にすることはなかった。しかし、そんな中でホームズの家を突き止め依頼を持ってきた人物がいた。それはケルモットという男。

ケルモットの依頼はこうだった。「二人の子供を流産した妻のアンに、それを紛らわせるためアルモニカという楽器のレッスンをさせたのだが、それ以来妻は死んだ子供を呼ぶような時があり、おかしくなってしまった。アルモニカのレッスンをしているマダム・シルマーという女性が何か吹き込んでいるのに違いないから調べてほしい」というもの。

ホームズはアンがつけている香水を聞くと、「それならばアンが居た所には残り香がある」と考えた。しかしマダム・シルマーの家にはそれがなかったのでアンはそこにはいないとわかっていた。

マダム・シルマーの家のすぐ近くでアンを見つけたホームズはそれを追跡する。そして話しかけた。ホームズが追跡の間、アンは毒薬を買ったり、偽のサインを書いたり、相続について確認したり、怪しい男と話したり、いかにも「夫を金目的で殺そうとしている妻」だったがそれはフェイクだった。アンは夫がホームズに依頼をしたことを知っており、追跡にも気付いていた。そのため、わざとそんな風に見せかけていたのだが、ホームズは彼女の本当の目的が分かっていた。それは「流産した二人の子供の墓石を作って自分もその中に入る」ということだった。アンは自分のことを理解してくれない夫には失望しきっており、孤独だった。しかしホームズはただ家に帰るよう促すことしかできなかった。

その少し後、新聞に自殺した女性のことが描かれていた。アンだった。
ホームズは確かにケルモットの依頼に対して真実を突き止めたのだが、それはアンを幸せにするものではなかった。このことがホームズに引退を決意させたのだった。

現在から少し前の日本

隠居したホームズは認知症をやわらげるという山椒を手に入れるために日本へ行った。かねてより梅崎という日本人と文通しており、彼の案内で山椒を手に入れるてはずだった。梅崎はホームズのファンで本も持っていると言っていた。梅崎は自分の自宅に招き、歓迎してくれた。

ホームズが一刻も早く山椒が欲しいのには理由があった。現在取り組んでいるケルモットの依頼を文章として書き記すためだ。もう30年も前のことなので認知症のホームズにはそれが難しかった。イギリスで養蜂をしているのもミツバチが生み出すローヤルゼリーが痴呆に効くらしいからだった。

日本の墓を見学し、手を合わせ拝む姿を見たホームズ。その後山椒を見つけることもできた。
しかしホームズはあることを見抜いた。梅崎が自分を日本に呼んだのには何か別の理由があるということだ。彼が持っていたという本は貸出されたものであったので、自分のファンであることは嘘だとホームズは見抜いたのだ。

すると梅崎は真実を語り出した。実は彼の父親はイギリスの外交官であり、ホームズの助言により日本に帰ることをやめ、イギリスに残ることにしたのだった。しかしそれゆえ梅崎の母は父を失うことになった。その恨み言をホームズに言いたかったのだった。しかしホームズはというと、梅崎の父親など知らないと返した。
梅崎は別れ際にもう手紙を出すことはないと言い、また、山椒に効果があったなら教えてほしいとも言った。

ホームズが思い出せなかったのは、その当時アンのことで失意に陥っていたからだった。しかしアンのことを思い出し、ケルモットの依頼の件をすべて書き終えてからは梅崎の父のことも思い出した。ホームズは梅崎へ手紙を帰したのだった。

感想・評価

まず面白いのが「ホームズの作品を扱った世界でホームズが生きている」ということ。ホームズがホームズの小説を読んだりホームズの映画を見たりって。ホームズ映画を観る為にホームズ本人が映画館前で大衆の列に加わって待っている絵面は思わず吹いてしまった。

肝心の内容だが、うん、実に深みがあって面白い。上のあらすじネタバレの通り3つの時間軸が折り重なってそれぞれがソフトに関係しあうものになっているので構造が複雑で、なかなかどういう映画かと言われると一言では難しいのだが。

「93才の老人が少年との交流の中、自分を引退に追い込んだ30年前の依頼と向き合い、思い出し、書き記し、連鎖して思い出した知り合いの日本人の息子とのわだかまりも解いた」という…なんかダメだ。説明が下手糞すぎる。

とにかくいい映画ではあるわけですよ。凄くいい映画です。ただその説明が難しい。3つの時間軸が少しずつ関係しあって、跡はほとんど死にゆくだけのホームズの心を前向きにしたというね。何がどう関係し合ったのかというと、言葉にしはしにくくてぼんやりとして抽象的なわけだけど、30年前の依頼に関してホームズの中で決着がつき、そのおかげもあってマンローとロジャーに財産を譲る気になったのだろうし、梅崎に手紙を出す気にもなった、という。「過去のわだかまりに決着をつける話」。これが一番簡潔でわかりやすいか。

ストーリーも深みがあって素晴らしいと思ったのだが、老ホームズとロジャーとの交流がね。なんか本当に微笑ましくて、観ていてふと涙が出そうになってしまいそうに。
ホームズ役のイアン・マッケランはロードオブザリングのガンダルフ、エックスメンのマグニートーだったのかと視聴後に調べて知った。この人まだ80手前なのだが、メイクによるものなのか本当に93才にしか見えない。だからこの作品中にホームズ死んじゃうのかとハラハラしてしまった。そんな状態だからこそ、マンローと違い敬い、慕ってくれるロジャーが「ええ子や…」って、泣きそうになってしまう。この二人の交流を観ているだけでなかなかほんわかするのでここも見所だ。

3つの時間が遡って入り混じって途切れ途切れで描写されるので、初見時は話の流れが分かりにくいが、中盤、終盤になっていくにつれて「あれはそういうことか」と分かるようになっていく仕組み。ホームズに詳しい人からすると「こんなホームズは観たくなかった」という意見もあるようだけど、深みがあり情緒的で素晴らしい映画。オススメ。

登場人物解説

ホームズ

演:イアン・マッケラン
引退して家政婦と住むことにした探偵。認知症になりかけている93才。ケルモットの依頼の事件がどうなったのか思い出せず、映画を観ても自分が記憶しているものと違っているため気になりだした。認知症のせいで思い出せなくなくなっていたが、なんとか思い出そうとして書き記しそうとしているというのがこの映画の内容。全てを思い出した後は日本で世話になった梅崎の父のことも思い出し手紙を出した。

ロジャー

演:- マイロ・パーカー
マンローの息子。マンローが嫌悪するホームズを鼓舞する。この作品の清涼剤。ミツバチが好きだがスズメバチの怖さはよくわかっていなかったようだ。ミツバチを守るためスズメバチと格闘し意識不明に。

マンロー

演: ローラ・リニー
ホームズと共に住む家政婦。ロジャーのため年老いたホームズから離れて姉の元へ行きたいと考えている。息子に「地も読めないくせに」と暴言を吐かれるシーンもある。ホームズの家政婦をやめて姉の元へ行きたいと考えていた。息子のロジャーには靴磨きの仕事をしてほしいと思っていた。夫は兵士だったが初出撃で死んだらしく、そのため地味でも堅実な仕事を息子にはしてほしいと考えているということだろう。貧乏がゆえの余裕のなさだったので、ロジャーがハチに刺された跡の病院でホームズに家も土地も譲ると言われてからはおそらくホームズに対しての当たりも和らいだのだろう。結局は金かと考えるとちょっとモヤモヤするものもあるが。

梅崎

演:真田広之
ホームズが日本で世話になる男性。山椒をエサにしてホームズ日本に呼び寄せてホームズに恨み言を言った。父親はイギリスの外交官をやっていたが、ホームズの言葉により日本へ帰る事を拒否した。ホームズと別れる際に手紙は出さないと言ったが、母が死んだ件を書き記して再び手紙を出したらしい。

ケルモット

演:パトリック・ケネディ
ホームズへの最後の依頼の依頼者。アンという妻も持つ。妻がいつまでも流産した子供のことを引きずっているのに困っていて、アルモニカという楽器のレッスンをさせたが、今度はそのレッスンの宣誓であるマダム・シルマーが妻に何か吹き込んでいると考えるなど、妻であるアンの心を理解することができず、それがアンを失望させ、最終的にはアンの自死を招いてしまった。

アン

演: ハティ・モラハン
ケルモットの妻。流産して精神的におかしくなったと夫に思われていた。流産した二人の子のための墓を作ろうとしていた。しかしそれを理解してくれない夫には失望しており、ホームズに真実を突き止められてからは自死を選んだ。真実を突き止めたことで人を不幸にしてしまったことによりホームズは引退した。そしてホームズはこの時「孤独でも共に生きていこう」と言えなかったことを悔やんでいる。

項目別評価

隠居している現在、ケルモットの依頼を受けた過去、梅崎と出会った少し前の話、3つの時間軸が緻密に絡み合って、それぞれに関係し合っている構成で、情緒的で深みのある物語となっている。老人と少年が交流し、互いを思いやる姿を観ているのは純粋にほっこりする。ホームズを知らなくても楽しめるはず。

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