ナチュラル・ボーン・キラーズ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月24日

あらすじ・ネタバレ

ある男と女が酒場にいた。女はジュークボックスの音楽にノリ始める。そこにやってきた警察は女に近寄り口説こうとする。しかし突然男と女は銃を抜き、酒場の客も店員も皆殺しにしてしまう。
この二人はミッキーマロリーというカップルだった。
オープニングが流れる中、二人が楽しそうにドライブをしている映像が流れる。

ミッキーとマロリーの馴れ初めが回想で描かれる。まるでコメディドラマのようなガヤの笑い声が聞こえる演出の中、マロリーは父親のエドから暴言を浴びせられ、尻を触られるなど、虐待を受けていた。
そこに牛肉を持って入ってきたミッキー。一目見てマロリーを見初めた。 ミッキーはマロリーを口説いて出て行った。二人はこれで恋人になった。

ある時ミッキーは車を盗んで捕まった。マロリーはミッキーに面会して「父親があんたを恨んでる。もう会えない」と言う。
ミッキーがいる刑務所に竜巻が発生する。その混乱に紛れてミッキーは脱獄した。

マロリーの元にミッキーが現れる。そして二人でマロリーのエドを殺してしまった。さらにマロリーは「私が虐待されていても助けてくれなかった」と いう恨み言と共に母親も焼き殺してしまう。
これを見ていた弟のケビンに「もう自由よ」とマロリーは言い、ミッキーとマロリーは2人で逃避行を始めた、
これが今に至る二人のいきさつだった。殺人犯として手配されている二人はメキシコに向かって逃避行を続けているのだ。
そんな中で二人は結婚した。橋の上で結婚式を挙げた。

それからの二人は各地で殺人を重ねたという話をニュースが伝える。これはウェインという男が監督が作る番組。12人もの警官がハイウェイ666上で殺されたことを番組は伝えたが、 とんでもない殺人カップルだが、大衆にインタビューすると二人を格好良いと憧れを持つ者も多かった。

モーテルに入ったロッキーとマロリー。
愛し合うミッキーとマロリーだったが、そこらで捕まえた女性も同じ部屋にいた。ミッキーはその女も含めて3○するつもりだったなどと言う。その女を見ていたミッキーに怒ったマロリーは出て行った。出先でマロリーも男を誘惑するが、マロリーだと見抜かれると射殺してしまう。

マロリーが起こした殺人の現場を見に来たある男。ジャック・スカグネティという人物、刑事だった。

二人はなお逃避行を続ける。しかしガソリンが切れてしまい、ロッキーとマロリーはまたも喧嘩し始める。
とある砂漠でインディアンの家を見つけて「たばこをやるからガソリンをくれ」と頼みこんだ。家にはインディアンの男性とその息子がいて、2人を受け入れた。その家の中には蛇がいて、インディアンの男性は何かよくわからないことを言っており、妙な雰囲気だった。

ロッキーは子供の頃親に虐待された頃の夢を見ており、起き上がると夢と現実を混同してインディアンの男性を殺してしまった。
なぜ殺したの!と騒ぐマロリーが不用意に蛇に近づくとガラガラ蛇に噛まれてしまう。続けてミッキーも噛まれた。
毒に冒されたままギャロップという町に辿り着いた。マロリーは殺した者たちの幻覚を見て怯えていた。

刑事スカグネティはモーテルで娼婦と遊んでいた。しかしいきなり娼婦を殺してしまう。このスカグネティも刑事でありながら危険な人間だったのだ。そして彼はミッキー必ず捕まえてやると誓った。

ドラッグストアに来た二人。毒のためフラフラしている。蛇の毒の血清は売り切れていた。
太った店員が一人だけおり、彼はミッキー&マロリーだと気付いて密かに警察を呼んでいた。しかしミッキーはそれに気づいて、店員を射殺してしまう。

ドラッグストアの周囲に警官が集まって来て包囲される。スカグネティ警部にマロリーは拘束され、ミッキーは抵抗する。 スカグネティが抵抗を辞めないとマロリーの乳を切り取ると言うのでミッキーは手を上げて出て来る。
ミッキーはテイザーガンで無力化させられて袋叩きにされる。こうしてついにミッキーとマロリーは刑務所に入れられた。

一年の時が経過。刑務所。スカグネティがミッキーとマロリーに会いに来た。二人は所内でも問題を起こし続け、1年の間に囚人3人、看守5人、医者1人が二人に殺されていた。スカグネティは署長のマクラスキーという男性の案内でミッキー&マロリーの元へと案内された。

その移動中、スカグネティは8才の頃、養母がテキサスで乱射事件を起こしたチャールズホイットマンに射殺されたという話をマクラスキーに話した。そのため悪人を保護するような風潮は嫌いだと言う。

マクラスキーはスカグネティに二人にはロボトミー手術を行い更生させるという話もした。スカグネティにはその護送を頼みたいとマクラスキーは言うが、その時に何でもいいので理由をつけて二人を射殺してしまっては?と提案する。

マロリーの独房を見ると「生まれついてのワル」という歌詞の唄を一人歌っていた。

ミッキーの方にはウェイン・ゲールがスカグネティよりも前に会いに来ていた。
ウェインはミッキーに犯罪者特集をテレビで放送していることを話す。ミッキーを取り上げれば高視聴率間違いなしだとミッキーを説得。生放送でインタビューもすると。番組への出演をミッキーは承諾した。

生放送インタビューでミッキーは子供の頃の話をした。暴力的な父親がいたが、10才の頃死んだ。 なぜ人を簡単に殺せるのかと聞くと誰も殺されるだけの理由があると言った。 52人も殺したがインディアンだけは後悔していて、あれ以来殺しはしていないとも。 そして自分はマロリーといる時だけ「光」で、愛だけが自分の中の悪魔を殺せると語った。

一方スカグネティはマロリーと二人きりで会っていた。女好きのスカグネティはマロリーを気に入っていたのだ。

CM開けのインタビューでマロリーは自分は「生まれついての人殺し(ナチュラル・ボーン・キラー)」だと語った。
この直後刑務所内で囚人たちが盛り上がり暴動が発生した。

マクラスキーがそちらの沈静に向かった時にミッキーは周囲の警備をジョークで油断させ、射殺した。
そしてカメラを回してマロリーのところへ案内するようにウェインたちに命令した。

マロリーはスカグネティを誘惑した。油断したスカグネティを打ちのめすが看守が入ってきて止められる。逆上したスカグネティがマロリーを殺そうとする。
生放送中継が行われる中、ミッキーがマロリーの独房に入って来てスカグネティと銃を突きつけ合う。そこでマロリーが背後から襲いスカグネティの首を掻っ切ってしまう。それを見たウェインは「二人は愛し合っています!」と中継した。

刑務所内の暴動は収まらず、マクラスキーはスカグネティが死に、ミッキーとマロリーが逃げ出したことを知る。刑務所内は戦場になった。ウェインまでも銃を取り半狂乱で乱射する。

マクラスキーらに包囲されてトイレに立てこもるミッキーたち。マロリーは重傷を負った。 マロリーは2人で華々しく死ぬことを提案し、マロリーはいよいよとなったらそうしようと言った。ウェインは狂ってしまい、妻に電話して「今初めて生きがいを感じている。愛人のミンが好きだ」などと言った。

ミッキーとマロリーはウェインを人質にして刑務所から出ようとする。マクラスキーはそれを見送るしかなかった。その直後暴動を起こした囚人たちの群れに飲み込まれてしまった。

こうしてミッキーとマロリーは脱獄した。ウェインはまだ生放送を続け、なおも二人にインタビューする。マロリーはこれからはミッキーと子供を作りたいと言った。
ウェインも殺そうとする二人。ウェインは一緒に刑務所で戦った仲間だろと命乞いをするが、お前は視聴率のことしか考えてないとミッキーは断じた。インディアン殺しを最後に殺しはやめたんだろとウェインは言うがミッキーは「お前で最後にする。カメラだけは壊さず残す」と言う。そして二人揃って何発もウェインに撃ち込み、去って行った。後にはカメラだけが遺されていた。

感想・評価

演出がとても独特な作品。モノクロになったり、緑一色になったり、サブリミナルで血まみれの人物が映ったり、アニメが流れたり、これが最初から最後までずっと続く。見てて疲れるし、そんな演出をされていても意味はよくわからない。

「壁に適当に無茶苦茶にペンキをぶっかけた前衛芸術」という印象がピッタリくるような作品。
ある人間は「これはすげえ!傑作だ!」と言い、またある人間は「何コレ何が凄いの?」と言うような。

凶悪という言葉すら生ぬるい殺人犯二人が好き勝手に人殺しをし、最後にはまんまと脱獄して去るという話なんだから、まずここで人を選ぶのは確か。だが、人殺しを面白おかしく、娯楽のように演出するアナーキーさというのはある種の爽快感があるのも確か。この辺をどう感じるかによって評価は二分されるだろう、多分。
邦画の悪の教典もこういう方向性だ。「映画なんだから、娯楽なんだからこういうのもあり!」と考えられればこういった作品を好意的に見ることもできるんではないかと。

公開当時の90年代半ばではこの映画に影響を受けた模倣犯が各地で発生したとか。90年代半ばのテレビがメディアの主体の時代だったからこそだろうか。今の時代、この作品に影響されるような感性の人間は進んでネットで過激な映像を見て回ってそうだ。「連続殺人犯が好き勝手やってまんまと生き残りもする」という話ならば、悪の教典の方が衝撃的だし、記憶に残る作品だった。…いや、あたかもおんなじような映画のように書いてしまったけどこの2つ作風は全然違うんだけどね。

登場人物解説

ミッキー

演:ウディ・ハレルソン
元々は牛肉の配達をしていた。マロリーの家に配達に来た時マロリーを見初めて恋人になった。マロリーの両親を殺害して二人揃って逃亡。刑務所に入った後はウェインのテレビ番組出演に応じる。しかし生放送中に隙をついて脱獄を図り、まんまとマロリーと共に逃げた。
ミッキーも幼い頃は両親に虐待されていた。シリアルキラー、サイコキラーは幼児期に虐待を受けていることが多いというのは現実も同じ。最終的に53人殺した。一晩泊めてくれたインディアンを殺してしまった時は激しく狼狽えるため、一応、恩義などは感じる性格らしい。作中ではほとんど無差別に殺しているようにしか見えないのだが。「ナチュラル・ボーン・キラー(生まれついての人殺し)」というのはインタビューでのミッキーの発言で、この言葉で刑務所内の囚人たちが大盛り上がりして暴動が発生した。

マロリー

演:ジュリエット・ルイス
ミッキーの恋人。父親に性的虐待を受けていていて苦しんでいた最中でミッキーと出会う。脱獄したミッキーがマロリーに会いに来て、両親を殺して自由になった。ミッキー同様に殺人に躊躇がない。刑務所内での暴動で腹部に重傷を負った様子だったが、あまりそれを気にかけるような様子はなく、無事生存。ラストのインタビューでは今後はミッキーとの子供を作りたい、カナダへ逃亡する、という発言をしている。

ジャック・スカグネティ

演:トム・サイズモア
ミッキー&マロリーを追う刑事だが、娼婦を扼殺するシーンがあり、実は危険な男。マロリーを気に入っていたらしく刑務所でマロリーと二人きりの状態を作って迫るが、隙をついて攻撃され、結局マロリーに殺される。

マクラスキー

演:トミー・リー・ジョーンズ
ミッキーとマロリーを収監した刑務所の所長。ミッキー&マロリーが刑務所内でも8人も殺しをしているので、スカグネティに対して「事故を装って殺してしまっては?」と提案した。しかし刑務所で暴動が起きて二人を逃がしてしまい、その後囚人たちに取り囲まれる。明確な描写はないが恐らく囚人たちに殺されたのだろう。

ウェイン・ゲール

演:ロバート・ダウニー・jr
テレビマン。視聴率のためならば手段を選ばない人間。刑務所で暴動が起きてからは半狂乱になって銃を撃つようになり、ある意味主役の二人よりも目立っている。マーガレットという妻、ミンという愛人を持っている。上司らしき人間と電話中に「あんたの娘と結婚して妊娠させた」と言っているようなのでマーガレットは上司の娘ということか。刑務所内で暴動が起きてからはその妻に電話して「今生きがいを感じている。お前でなくミンを愛している」と言っている。ろくな人間ではないが、見てて一番面白いキャラ。

エド・ウィルソン

演:ロドニー・デンジャーフィールド
マロリーの父親。実の娘のマロリーに対して性的虐待を行っていた。母親はそれを知っていても何もしなかった。ミッキーとマロリーに殺される。マロリーはミッキーと喧嘩した時「そんな物言いじゃまるであたしの父親みたいじゃない」と言っている。

ケビン

マロリーの弟。両親が死んだ後に出てきて茫然としていたが、そんなケビンに対してマロリーは「もう自由よ」と言った。その後は描写されないが、普通に考えればとりあえず児童養護施設行きだろうか。

項目別評価

殺人犯がバッタバッタと殺人を行う様に爽快感を感じられるかどうか。ケバケバしく悪趣味でサブリミナルを多用する演出にハチャメチャストーリー。他にあまり類を見ない毛色の作品。

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