パニッシャー・ウォー・ゾーン(映画) -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>パニッシャー・ウォー・ゾーン

執筆日:2015年7月09日

評論

アメコミヒーローのパニッシャーといえばなかなか有名だろうが、アイアンマンなどといった超有名なものと比べると一段劣る、という感じだろう、きっと。
かく言う自分もその存在は昔から知っており、「私刑を行うダークヒーローである」ということも知ってはいたものの、いずれのメディアでも視聴したことはなく、これがファーストコンタクトだ。

あらすじはこう。
私刑を行うため警察も厄介者としつつも捕まえられない男、パニッシャーことフランク・キャッスル(レイ・スティーブンソン)。
法の合間をくぐって巧みに断罪を避け続ける悪党どもをフランクは日常的に私刑に処していた。
しかしあるマフィアを成敗した時のこと。マフィアのボスの腹心だったドナテッリをいつものように全く躊躇することなく殺したフランクだったが、彼が実はFBIの潜入捜査官だったことを後で知る。
悪には容赦ない裁きを下しつつも、彼はあくまで善なる者を巻き添えにすることは禁じてきたため、この事件を機に引退を決意する。
しかしマフィアのボスだったビリー(ドミニク・ウェスト)はフランクにより顔をズタズタにされつつも生きており、つぎはぎになった自身を「ジグソウ」と名乗る。アメコミ的なヴィランの誕生である。そしてジグソウは自身の金の管理を任せていたドナテッリから金を取り戻したいと考える。それはつまりドナテッリの妻子に危険が及ぶことにもなる。そしてジグソウは自分の弟であり食人も行う狂人、ルーニー・ビン・ジム(ダグ・ハッチソン)を脱獄させ、フランクに復讐する気も満々だ。
ビリーが生きていることはフランクも知るところとなって、情報屋兼武器屋のマイクロ(ウェイン・ナイト)の説得もあり、フランクは引退はビリーを裁いてからだと考える。

一方、FBIにはフランクを捕まえようと息巻く男、ブディアンスキー(コリン・サーモン)がいた。彼は警察のパニッシャー対策部門のソープ(ダッシュ・ミホク)と手を組み、パニッシャーを追う。しかしソープは対策部門という役職につきながらもその実、過去たびたびフランクに手を貸してきた男だった。
熱血なブディアンスキーの手により一時的にフランクは手錠をかけられるが、ちょうど同じ頃、ドナテッリの家をビリーたちが襲っていた。フランクを乗せたままのパトカーで現場に行き、ブディアンスキーだけで突入するが当然のようにピンチに。パトカー内部ではソープとフランクだけになったが、フランクに促されソープは手錠を解く。そしてフランクも突入したことにより形勢は逆転し、ビリーやジムは一時お縄に付く。この際、フランクはドナテッリの妻アンジェラ(ジュリー・ベンツ)とその子グレイス(ステファニー・ジャヌソースカス)を自分のアジトへと保護した。

当然ここで話は終わらない。
ビリーは自分が行うはずだったロシア系マフィア、クリストゥとの取引を警察に教えることを条件として自分の釈放を要求する。そしてまんまと釈放されてしまう。さらにはフランクと繋がりのあるマイクロを狙い、それを元にフランクのアジトまで割れてしまい、アンジェラとグレイスも人質に。そして留守番を任せていた元ギャングのカルロス(カルロス・ゴンザレス・ヴィオ)は殺されてしまう。のマイクロとアンジェラ、その子の3人が同時に人質になってしまう。ビリーはフランク宛に「ホテルで待っている」という書置きをした。

フランクに協力することにしたブディアンスキーはクリストゥの父親を「息子を牢獄にいれた奴に復讐したくないか?」と炊きつけて、ホテルで騒ぎを起こさせる。そしてそのドサクサでフランクも突入し、ビリーとジムの極悪兄弟を成敗するという算段だ。
狂人ジムの猛攻に苦しみつつも追い詰めるが、やはり三人の人質を盾に取られてしまい絶体絶命。ビリーはフランクに対して「マイクロを殺すか、グレイスを殺すか選べ。片方は助けてやる」と言う。ジムがグレイスに銃を突きつけて、ビリーがマイクロに銃を突きつけている状況。マイクロが殊勝にも「自分を撃て」と言うがフランクは躊躇。しかしついには、まずジムの頭を撃ちぬくことを選択。するとビリーがマイクロを射殺。そしてその後は接近したフランクとビリーの取っ組み合い。ここはフランクが圧倒し、ビリーは鉄パイプを右のわき腹から左のわき腹まで貫通させられ、あげく火の中に放り込まれて惨たらしく死亡。

そして結末。ビルから息も絶え絶えに出てきたフランクに対してアンジェラは「夫はパニッシャーは善だと言っていた」と次げる。
フランクに肩を貸して共に歩くソープ。彼は「もう悪党を懲らしめるのなんてやめたらどうだ」と言うが、言ったそばからチンピラに絡まれ金を出せ!と脅される。そんなチンピラをフランクが射殺してスタッフロールへ。

ここから感想。
徹頭徹尾分かりやすいダークヒーローもの。自分がパニッシャーというキャラクターにイメージしていたものほとんどそのままだった。
もちろん、私刑を行うキャラクターであってもあくまで正義の味方であり、自分が行った過失に苦しむといった面もあるからこそ、勧善懲悪ものとして気持ちよく見られるというのもある。冒頭、フランクによってビリーの顔がずたずたにされるのはビリーがガラス粉砕機に落とされるからなのだが、落とした後にニヤッと笑うフランクがたまらない。悪党なんだから容赦なくみんなやっちまえ!という点においてこれほど潔い作品はないので、その辺りの爽快感は抜群だ。

物語の構成がやや強引と思った部分が一つ。
パニッシャーことフランクは6年前に妻子をギャングに理不尽に殺されたからこそ、私刑を行うというキャラクターなのだが、そんな彼の人間性を強調するため、アンジェラとグレイスとの交流シーンがこの親子救出後に描かれる。しかしここが強引。この親子の家を襲撃したビリーとジムは一時フランクの突入によって捕えられることとなるのだが、これはここで殺してないとおかしいだろ、という場面だ。しかしフランクは何を思ったか、ビリーとジムの抹殺よりもアンジェラとグレイスの保護が優先だと考え、二人の極悪人をほっぽって親子を自分のアジトにかくまう、ということになる。そのアジトでフランクが大事に保管している亡き娘の遺品をグレイスが発見し、フランクと心を通わせる、というシーンがあるのでこのための流れなのだろうが…。あそこで殺してればその後マイクロたちが死ぬこともなかったのにね。

あえて不満点を挙げるならその点、というくらいで、全体として非常に楽しめた。深く考えなくとも楽しめる、エンターテイメントあふれる映画だった。

項目別評価

ダークヒーローはかくあるべき、というような、悪党に容赦のないスカっとしたゴア(?)が楽しい映画。
ストーリーは序盤から結末が予見できるような分かりやすいものだが、アクションシーンの迫力もあり退屈させないものがある。
改心したギャングカルロス、マイクロの母親、そしてマイクロなど、助かりそうな味方側キャラクターまで容赦なく死ぬのは結構ショッキングだったが、しかしそれもまた実にこの作品らしい。

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