ソルト(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月19日

あらすじ・ネタバレ

冒頭、CIA諜報員であるイヴリン・ソルトが北朝鮮に捕らえられて拷問されるシーン。本来ならそのまま死ぬことになるはずだったが、北朝鮮のトップへの交渉により彼女は生存することができた。それは彼女の夫マイクが絶対に彼女を救おうとしたためだった。

ソ連から亡命してきたというオルロフという人物がCIAのソルトに「KAプログラム」というものの存在を説明する。それはアメリカに潜入するスパイを育成するものであり、アメリカを崩壊させる日である「Xデー」のためにスパイたちは虎視眈々とアメリカで活動を行っているのだという。
そしてオルロフは最近死去した副大統領の葬儀に行動を起こすであろう人物の話もした。そのスパイの名前はなんとエヴリン・ソルトだという。そんなことをソルトに対して言うので驚くが、ソルトは「そんなことは知らない」と言う。しかしこんな話が出てきた以上、CIAとしてはソルトを二重スパイとして疑わざるをえないためソルトを拘束する。しかし夫マイクの身を案じるソルトも逃げることになった。オルロフも脱走する。

ソルトの上司で同じくCIA諜報員のウインターは逃走するイヴリンをまだ信じていたが、同じくCIAのピーボディは疑っていた。

オルロフの話は事実であり、ソルトは確かにKAプログラムで育成された人間だった。だが夫であり蜘蛛学者としての権威である夫マイクのことは本気で愛しており、そこだけは偽りなかった。ソルトはオルロフに育成されたのだ。だがオルロフが不意に素性をばらすのはソルトにとって予想外だった。

ソルトがマイクを案じて自宅へ戻るとマイクはおらず、さらわれた後だった。CIAが自宅を捜索しに来て間一髪逃げた。飼っていた犬はいたので救出し、同じアパートに住んでいた知り合いの子に預けた。

「Xデー」と呼ばれる、KAプログラムの人間たちがアメリカを転覆させる日は副大統領の葬儀が行われる日だという。
葬儀にソルトは忍び込み、ロシア大統領を射殺してしまう。これによりアメリカとロシアの亀裂は決定的になり、オルロフの思惑通りとなった。ソルトはその後捕まってしまうが、ピーボディを前にして撃つことはなく、わざと捕らえられたのではないかとピーボディは思っていた。

しかし拘束を脱してソルトは再び逃げ出す。
逃げ出したソルトは今度はオルロフと会い、さらにそのまま同じKAプログラムを受けたスパイたちのアジトへと案内された。ここにマイクもいるという。
確かにマイクはいた。が、ソルトが本当にスパイのままか、マイクに情が移っていないのか確認するため、マイクは殺されてしまう。ソルトは表情を変えず「これで満足?」と聞いた。オルロフはこれでソルトが未だロシアのスパイだということを確認した。

しかしこれまで何度もマイクとの思い出が回想で演出されており、マイクはソルトがCIAのスパイだと知っても変わらずソルトを愛してくれた人間だった。ソルトも本当にマイクを愛していた。ソルトは隙をついてオルロフを殺害。さらにそのままその場にいたKAプログラムの人間を全て射殺してしまった。

オルロフを殺害したソルトだが、未だロシアのスパイを装い、アメリカにさらに打撃を与えるため、計画通りホワイトハウスに乗り込む。
ロシアは大統領を殺されたことの報復として核ミサイルの発射準備に入っていた。
ホワイトハウスではこれに対抗するため、大統領が核ミサイルを発射させようとする。

この場にはウインターもいたが、突如ウインターは大統領以外を殺害。ウインターもまたソルト同様にKAプログラムで育った者だった。本当の名前はニコライ・タルコフスキーというものだった。
タルコフスキーは大統領を気絶させ、核ミサイルをイスラム圏に向けて発射しアメリカを崩壊させようとする。大統領を気絶させてタルコフスキーがミサイルを撃とうとする。が、そこにソルトがやってきた。

防弾ガラス越しにソルトとタルコフスキーは会話。ソルトが「中に入れて」と言う。しかしその時テレビニュースで「ロシア大統領は仮死状態になっただけだ」と放送された。ソルトは北朝鮮に潜入した時に蜘蛛の研究員としての知識を身に着けており、蜘蛛の毒をロシア大統領を仮死状態にしたのだった。タルコフスキーはソルトがマイクを本当に愛していたため、心はアメリカの側にあることを知っていた。
タルコフスキーが核ミサイルの発射に手間取っているうちにソルトは強引に中に入る。肉弾戦になるが、そのうちに部隊が入って来てソルトを撃って無力化。

第三者から見ればソルトは相変わらずロシアのスパイ。タルコフスキーは相変わらずウインターとして振る舞い、ソルトは拘留されるところだった。しかしソルトは拘束されている状態でタルコフスキーの首を手錠を使って締め上げ殺害しいた。 ソルトはヘリに乗せられ移送される。

ソルトはピーボディに真実を話す。ピーボディは「ソルトが撃とうと思えば自分を撃てたのに撃たなかった」ことを身をもって知っていたので、不本意ながら、ソルトの言うことは真実だと信じざるを得なかった。しかしピーボディは「例え俺が信じたとしても他の誰も信じないぞ」とソルトに言う。ソルトは「私の全てを奪った奴らを皆殺しにする」と強い決意を見せた。

ソルトは自力で拘束を解いた。それにピーボディも気付いていたが、「行け」と言った。
ソルトはヘリから飛び降りて海に落下。再びソルトは逃げ出し、孤独な戦いを続けるのだった。

感想・評価

カッコよい完璧な女性がクールな顔してカッコよく敵をやっつけていくアクション映画。

「特殊なプログラムで育成させられたロシア人がアメリカに潜んでいてアメリカ転覆を狙っている」というのはちょっと豪快すぎるといか漫画的すぎるというか。非現実的すぎてちょっと受け付けない。

そして主人公ソルトはあくまで夫マイクを思って行動しているのだが、これもね。核ミサイルを撃つとか撃たないとかのとてつもない世界の破滅危機的なのに、超個人的な理由であっちこっち敵に回して動いているのはちょっと印象が悪い。確かにCIA側ではあったし世界の危機は回避したのだが、アメリカ側の人間にも相当の怪我を負わせているし、こんなことアクション映画の主人公に言うのもなんだが「何様のつもりだろうか」と。

それにその主人公ソルトの心境がわかりにくい。
「旧ソ連のスパイ」だが「夫を愛してしまったのでアメリカ側に裏切った」という設定なのだろうが、作中での行動を見るとマイクを殺された時点までは旧ソ連のスパイとして忠実に動いているようにも見えるのだ。そして夫を殺されたから気持ちが変わったようにも見える。しかしロシア大統領を本来殺すはずのところを蜘蛛の毒を撃ち込んで仮死状態にしたり、ピーボディを殺せるのに殺さなかったというのはマイクが死ぬよりも前のこと。だから一貫してアメリカ側だったということになるはず。しかしこれが伝わりにくい。つまりマイクが殺されようと殺されまいとアメリカの味方ということになるのだが、いくら平静を保っているふりをしてもマイクの死で動揺し激怒したのは(何度もマイクとの日々を過ごした回想シーンがあるため)明らかで、マイクを殺されなければ(あの時点では)オルロフたちを皆殺しにしなかった可能性はある。そのためマイクを殺された時点で心変わりしたようにも見えないこともないのだ。この作品の感想を見るとちらほら「主人公に感情移入できない。何を考えてるのかわからない」という意見も見るがこのあたりのせいだろう。この見せ方じゃそう感じるのも致し方ない。簡単に言うと、「主人公の価値観を変えるほど大きい存在だった恋人を主人公は奪われたが、それは主人公の行動には影響を与えない」のである。なんともおかしな話だ。マイクが生きていたとしても、あのシーンの後ではホワイトハウスに潜り込み、やはりタルコフスキーと戦ったのだろう。

あと、アクションシーンも少々迫力にかける。アンジェリーナ・ジョリーがそれほど動けるわけではないのだろう。カメラを大きく動かしてでどうにかごまかしているという印象だ。アンジェリーナ・ジョリーのPVだなこれは。

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のバイオハザードシリーズも、まさにジョヴォヴィッチのPV、ジョヴォヴィッチがどこまでもカッコイイという作品だが、こういう、主人公だけがあまりに強くてほぼ完璧って作品の主人公は若干鼻につくものがある。完璧すぎて強すぎてクールすぎて、ね。そのキャラ自体を「かっこいい!」と思えないと少々厳しい。バイオハザードを頼める人間ならこの作品も楽しめる可能性は高いかもしれない。カッコイイ完璧超人女性が活躍する作品を面白く思える人間でないとこの作品を楽しむのは難しいのではないだろうか。もっと言えばアンジェリーナ・ジョリーが好きな人だけにオススメできる作品。

ところで、ラストはソルトがKAプログラムの残党たちに復讐を誓って逃げるというもので、これほど続編ありきな終わり方もなかなかないが、2010年作品のこのソルト、続編の「ソルト2」は予定はされているものの2018年が明けた現在でも全く音沙汰ないようだ。検索しても「アンジェリーナ・ジョリーが続編の脚本を却下した」という話しか出てこない。もう頓挫したのだろうか。2010年時点でもすでにに三十半ばの彼女、もうすでに40を何歳も越えているが、ビジュアル面でもはや厳しいという理由もあるんじゃないか、なんてのは邪推だろうか。

登場人物解説

イヴリン・ソルト

演:アンジェリーナ・ジョリー
主人公。KAプログラムというもので育成された旧ソ連のスパイ。しかし夫マイクのことは本気で愛していた。CIAからは二重スパイだと思われたが、ロシア大統領へは蜘蛛の毒を撃ち込んだだけで殺すことはしなかった。マイクを殺された後にオルロフ、それにKAプログラムの人間を全て殺害してしまう。主人公ながらロシア側なのか、アメリカ側なのかやや分かりにくいのだが、ロシア大統領はマイクを失う前の時点で殺す気がなかったのだから、一貫して立場はCIA、要するに三重スパイということだろう。

テッド・ウインター

演:リーヴ・シュレイバー
ソルトの上司のCIA諜報員。逃げ出したソルトの理解者としてソルトの身を案じているような風にしているが、実はソルト同様にKAプログラムで育成された男性。本名はタルコフスキー。これはソルトも全く気付かなかった。CIA職員として核ミサイルの操作室までまんまと入り込み、大統領を気絶させてイスラムに核ミサイルを発射しようとするがソルトに阻止される。ソルトに対して「本性を打ち明けたかったが、ソルトにはマイクがいたからしなかった」という旨の発言をしているので、ソルトに気があったということか。

オルロフ

演:ダニエル・オルブリフスキー(
ソ連軍人。アメリカへ潜り込ませるスパイを育成するプログラムである「KAプログラム」で多数のスパイを育てた人物。ソルトが未だに心がロシア側かどうかを確かめるためにソルトの目の前でマイクを殺害した。反応がほとんどないソルトを観て確かにスパイのままだと判断したのだが、ソルトは内心怒りに燃えており、ソルトに殺されてしまった。

マイク

演:アウグスト・ディール
世界的な蜘蛛研究に関する権威。その地位を利用するためにソルトはマイクに近づいて北朝鮮に潜入したのだが、ソルトとマイクは本気で愛し合っていた。しかしオルロフらにより拉致されており、ソルトがKAプログラムの人間が集うアジトへ行った時、ソルトの忠誠を確認するためにソルトの目の前で殺されてしまう。ソルトの回想では何度も登場するが、回想以外だと射殺されるシーンでしか出番がない少々不憫な人。

ピーボディ

演:キウェテル・イジョフォー
ソルトと同僚のCIA諜報員。副大統領の葬儀でロシア大統領を撃ったソルトを捕らえた人物だが、その時ソルトは自分を撃てたのに撃たなかったということに気付いており、そのためにラストシーンでのヘリの中でソルトの話を信じざるをえなかった。ヘリから逃げようとするソルトに「行け」と言って見逃した。続編があれば出番がありそうな人物だが…。あるのか、続編。

項目別評価

設定が非現実的すぎるし、アクションはそれほど良いものではない。細い女性にバッタバッタとなぎ倒される男性たちが接待をしているようにも見えてしまう。かっこいい女性が活躍する作品が好きで、アンジェリーナ・ジョリーが好きな人向け。でも同じ条件ならばこれよりはミスター&ミセス・スミスとか見た方が良い。あっちはもっとずっと面白い。

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