シークレット・アイズ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>シークレット・アイズ

執筆日:2018年1月17日

あらすじ・ネタバレ

「現在」は2015年。「13年前」は2002年を指す。何度も入れ替わるのでやや分かりにくいので注意。

2015年、主人公のレイがロサンゼルスにやってきた。レイはかつてはニューヨークのFBI所属だったが現在は民間の警備会社にいる。

レイはクレアという女性検事に会い、さらにジェスというFBI捜査主任の女性に会う。レイはマージンという男を発見したという件をジェスに話した。

このマージンとは何者なのか。2002年の回想。当時レイはニューヨークマンハッタンのFBI所属だったが、検察局との合同調査でテロリストを監視するためロサンゼルスに来ていた。クレアとはここで偶然に出会った。クレアはロサンゼルスで検事補をやっていた。レイはクレアと出会った時から彼女を気に入り、好意を持っていた。

こんな時、レイたちが見張っていたモスク近くのゴミ箱からある女性の死体が見つかった。
現場へ向かってその遺体を見たレイは激しくうろたえる。なんとその女性というのはジェスの娘キャロリンだった。ジェスは遺体に飛びつき激しく泣き叫んだ。マージンというのはこのキャロリン殺しの容疑者だ。

再び現在。「奴はどこにいるの?」とジェスはレイに聞く。レイは、犯人のマージンは今はベックウィズという偽名を使っているとジェスに話した。
レイは13年前から受刑者1900人の顔を毎日見続けて69万人のうちからマージンと同じ顔をしている者を見つけ出したのだという。
レイはこれがかつてのキャロリン殺しの犯人だと確信し、再捜査を希望していた。しかしFBIをやめたので保護観察官と会えないのでクレアに頼み込みに来たのだった。
クレアはレイの「同じ顔だ」という主観だけの証拠など無いに等しいと言うがレイは自白させればいいと答える。
そして被害者の親であるジェスは捜査には加えられないともクレアは言った。しかしレイはかつての同僚のバンピーと内密に捜査することはできることになった。

再び13年前。FBI捜査課が行ったピクニックで撮った写真に怪しい男がいた。レイには見覚えがあったが捜査課の誰も知らないという。
レイはテロ対策班なので暴行殺人に首を突っ込むのは危険だと同僚のシーファートから忠告される。
そしてこの男はレイが見張っていたテロリストと共にモスクにいた男だとわかる。
アバン・ガザらという男が見つかり自白したという。これに会いに行くレイ。
しかしこれは関係のない人間であり、でっちあげて事件を葬り去ろうとされているとレイは知る。
そして写真の男はレイの同僚のシーファートの「情報屋」だったことも知る。男の名前はマージン、通称「パックマン」だと教えられたレイだが、居場所は知らないので自力で見つけろシーファートに言われる。
まずレイはマージンの女友達のストリッパーの家を見張る。そして外出したところを見計らって不法侵入。マージンが描いた漫画を発見した。バンピーがこれを盗んで脱出した。

現在。保護観察官と会ったバンピー。レイが目星をつけた男はベックウィズで間違っていないらしいが、マージンといった名前は全く知らないと言われた。
そしてベックウィズは馬に興味があるので探すなら競馬場がいいとアドバイスを受けた。

現在。ジェスは今更にキャロリンの仇を捜すレイに苦言を呈する。レイはあの日、キャロリンとケーキ屋で会う約束だったという。ジェスの誕生日にケーキを渡すサプライズのため。しかしレイは急用でこれに付き合うことができず、そのためレイは13年間罪悪感に苦しみ続けたのだという。

13年前。レイはアバン・ガザラは犯人ではないとクレアに言う。そこにやってきたジェスは証拠となっている漫画を見て、見せてほしいと言った。
レイはクレアに「ジェスを止められない。ジェスより先に見つける」と言う。

現在。レイとバンピーは競馬場に行ってベックウィズを捜索する。
厩舎に行くとマージンンがいた。警察と見抜いて逃げ出した。ルイスという厩舎で働く若者に「何かあったら電話してくれ」と伝えた。マージンにスコップで殴られて肋骨を折ってしまった。

13年前。クレアの上司である検事のモラレスと会ったレイ。情報屋を見つけようとしているレイに対して「あれはテロリストの情報をくれる重要な人物だ。邪魔をするな」と言われ、キャロリン殺しの件は軽視されてしまう。そこでレイは 「証拠を上げたら必ず起訴しろ」ときつくモラレスに言う。モラレスは約束し、握手も交わした。

現在。クレアは「証拠がないので立件できない。ニューヨークに帰った方がいい」と忠告するがレイは食い下がった。

13年前。バンピーとジェスの力でマージンいきつけの酒場を見つける。漫画に描いてある情報から読み取ってそれを見抜いたのだという。マージンは野球チームのドジャースが大好きで、この酒場はドジャースのメンバーが集まるという。ここでの会話でジェスは「死刑は嫌い。犯人は終身刑でゆっくり朽ちていくべきよ」とレイに語った。
レイとバンピーの二人はドジャースの試合が行われているスタジアムへも足を運び捜査する。そこでマージンを発見する。逃げるマージンを追いここで無理をして飛び降りたバンピーは足を折ってしまう。しかしどうにかマージンを捕まえることができた。
しかしクレアは「証拠がないから無理」と言われる。自白させるというレイ。

マージンに取り調べを行うレイ。しかし白を切るマージン。あくまでテロの情報屋だから逃げたと言い、キャロリンの事は知らないと言い張った。 クレアがやってきて弁護士が来ているから取り調べは中止だと言われる。ここでマージンはクレアの身体を舐めまわすように見た。
これを見たクレアは芝居を打つ。マージンを挑発、バカにした言葉を浴びせたのだ。するとマージンは逆上して「あの女と同じにしてやろうか」と言ってきてクレアに襲い掛かる。それを止めてレイはマージンを何発も殴った。クレアはこれを狙っていた。マージンの自白を取れたのだった。

しかしモラレスから「マージンは暴力を振るわれた。それにテロ対策の情報屋を失うことはできない」と言い、レイとの約束を反故にし、釈放することにしてしまうのだった。
もうマージンを捕まえる口実が消えてしまい、私刑を執行するしかないと考えたレイはジェスとクレアに「奴を殺そう」と言う。しかしジェスは「奴は即死で私は終身刑。虚しいだけだ」と言う。 こうしてマージンは自白までしたにもかかわらず釈放されてしまった。ジェスは娘の事を思い出して怒りを噴出させて目の前にあった鏡を粉砕した。

レイとクレアはまだ証拠のバンを見つけられればと最後の望みをかけていた。
しかし釈放直後にマージンが使ったバンは燃やされてしまい証拠は隠滅される。これはモラレスの仕業だった。テロ対策を優先するモラレスはマージンが犯人である証拠を隠ぺいしたのだった。 これにより事件を追うことは不可能になった。レイはニューヨークに戻ることになってしまい、思い合っていたレイとクレアは離れ離れになった。

現在。クレアとレイは酒を飲み交わしていた。すでにクレアは結婚していた。
レイも一度結婚して離婚していた。「妻は君じゃなかった」と言う。そしてクレアは「鈍い人。私をあの時ニューヨークに連れて帰ってくれなかった」と返す。レイが「あの時検事補を辞められるわけがない」と言うと「だから鈍い」とクレアに返された。
未だマージンを捕まえようとするクレアに「本当に気を付けて」と無事を祈った。

ベックウィズを尾行するレイ。バンピーにも連絡して追うと自動車の解体工場だった。
しかし尾行はバレていてレイは殴られ気絶させられてしまう。
バンピーとシーファートとジェスが駆けつけレイの窮地を救う。しかしシーファートが撃たれてしまい、殉職してしまう。

ジェスはやはり捕まえた男をマージンだと信じなかった。人違いの上にシーファートを死なせてしまったとレイを責める。そしてキャロリンの名前を出したレイに激昂し「二度とあの子の名前を出さないで!」と言う。
レイはクレアの家でクレアと会い、「後はニューヨークに帰っておしまい?」と言う。しかしレイは「まだ終わってない」と言う。 クレアの夫は「ついに連れてきたのか」と言った。レイとは初対面だったが、その言葉だけでどれだけクレアがレイを引きずっていたかがうかがえた。

そこでジェスから連絡が来る。ジェスの家に行くとジェスも再婚していたことをレイは知った。
ここでもジェスはさっき捕まえたのはマージンではないと言う。そしてジェスは事実を話し出す。「13年前、レイが去って一か月後に殺して庭に埋めた」のだと言った。
レイとクレアは驚いたがそのままジェスの話を聞いた。「モラレスは決して捕まえる気はない。私がやらないと娘に顔向けできない」と思った。そして例の酒場で待ち、マージンを殺したのだという。
ジェスの回想。背後から殴ってマージンを殴って気絶させ、それから5発の銃弾を撃ち込んで殺害していたのだった。 これを話した後ジェスはレイに「あのことは終わったこと。忘れて生きて」と言った。

しかしレイは気になってジェスの家へと向かった。
彼女の家へ行くと、なんとそこには牢屋の中にマージンがいた。ジェスは生かさず殺さずマージンを13年間監禁し続けて苦しみを与えていたのだった。 マージンはレイに気付くと近づいて「俺に話しかけろと言ってくれ」とかすれた声で懇願してきた。ジェスは「終身刑にしてやった」とレイに話した。レイは「君にとってもだぞ」と返す。

レイは拳銃を取り出し、その場に置いていった。「マージンを殺してやれ」というジェスに対する意思表示だった。そしてレイはスコップを持ち穴を掘り始める。
穴を掘るレイにジェスは話しかけるが無視して穴を掘り続ける。銃声が鳴り響いた。ジェスはついにマージンを殺したのだった。
一方クレア。ジェスが殺した件を聞いた彼女だったが、キャロリンの事件はもう手をつけず闇に葬ることにしたのだった。
これによりジェスのマージン監禁も、たった今行われた殺害もレイ以外の誰も知らぬこととなった。
穴を掘るレイはジェスと目が合う。ジェスはわずかに笑みを浮かべた。これが結末。エンドロールへ。

感想・評価

メインとなる登場人物3人がそれぞれに葛藤や焦燥、様々な面を見せるため、3人ともに感情移入できる。レイとクレアが本当にあと少しで結ばれていたところ、すでに既婚となっているクレアとレイがも深い情を確認し合うところも、大人の恋愛としてよく描けている。感心したのは一瞬しか出番のないクレアの夫が「ついに連れてきたのか」というだけで、この13年間クレアがどれだけレイのことを思っていたのかを図り知ることができるということ。そしてこれを許容するこの旦那もものすごくよくできてる人間だというのが分かり、クレアは本当に幸せな結婚をしたのだなあというところまでうかがい知ることが出来る。

実はジェスが監禁していたというのは直前まで分からなかった。レイが目星をつけていた人物はもちろんマージンではなかったということだが、シーファートがとばっちり気味で死んでしまったのも哀れだが、レイが13年間毎日受刑者の写真と向き合って一日1900人もの顔を見て照合し続けたというのだから、この途方もない苦労と時間も無駄になったというのも実はなかなか…。ジェスとしてもまさかレイがそれほどマージンに種着しているとは思いもしなかったのだろうけども。

一つ、明確な欠点としてあるのが、「現在と13年前が入れ替わり、しかし登場人物の見た目があまり変わっていないため、今どちらの時代の出来事なのかわかりにくい」ということだ。ジェスやクレアは髪型が違うし、バンピーは現在だと杖をついているという違いはあるのだが、もちろん俳優は同じなので見分けがつきにくい。「あれ今どっち?」となったのが一度や二度じゃなかった。馬の厩舎でマージンにレイが殴られた後のシーンでレイがスマホを使うのだが、それまで2002年の出来事だと思ってたので「2002年にスマホ!?」とかなってしまった。2002年と2015年では以下のような違いがある。

ストーリーや雰囲気が渋く、好みの作品だった。こういう正統派な作品をもっと見たいなあ。

登場人物解説

レイ・カステン

演:キウェテル・イジョフォー
元ニューヨークのテロ対策FBI捜査官の主人公。現在は警備会社にいる。友人の娘のキャロリンが殺されたことで13年前から血眼で犯人を捜し続けている。自分の娘なのかと思うほどキャロリンを殺したマージンを捕まえたがっているが、それは本当ならキャロリンと一緒にケーキ屋に行くはずだったから。約束を守れなかったことを後悔して罪悪感に苛まれていた。13年前一度マージンを確保したのに、テロ対策が優先だということで釈放されて以来、警察に失望して警察を去り、民間警備会社に勤めるようになった。13年間ずっと69万の受刑者の顔を見続けてマージンの整形を見破ったと言い張るが、外れていた。実はジェスがマージンを13年間監禁していることを知り、このまま放っておいたらジェスが本当に終身刑になると考え、無言でジェスにマージンの殺害を促し、自分はそれを埋める穴を掘り始めた。

クレア・スローン

演:ニコール・キッドマン
フィラデルフィアの殺人走査の検事補だった。現在は検事。写真を撮影する時に偶然レイと出会う。レイに何かとアプローチされて両想いになっていたが、キャロリンの件を追求できなくなりレイがニューヨークに戻ることになったため、結局は離れてしまう。13年の間に結婚したが、夫に対してずっとレイのことは話していたらしい。ジェスが「私がマージンを殺した」と告白した後、結局は聞かなかったことにした。レイと違い、実はジェスは殺さずマージンを監禁していることは知らなかった。

ジェシカ・コブ

友人からはジェスの愛称で呼ばれる女性。かつてのレイの同僚。クレア同様に順調に出世、現在はFBI捜査主任。レイが「マージンを見つけた」と言って驚く。しかし実は13年前にマージンが釈放された直後にマージンを監禁して13年間活かさず殺さず、私刑として「終身刑」を課し続けてきた。しかしこれをレイが見つけるとレイは殺害するようにジェスに促し、その通りに銃殺した。最後は満足げに穴を掘るレイに微笑みかける。

バンピー

レイのかつての同僚のFBI。年を取って内勤ばかりなので体力に自信がないと言った。13年前レイと共にマージンを追っていたが、スタジアムで高所から飛び降りたために足を骨折。後遺症になりそれ以降は杖をついている。レイの危機にシーファートと共に駆けつけた。

シーファート

ジェスやバンピー同様にかつてのレイの同僚。13年前から昇進3回した男性。人格的にレイとは折り合いが悪いが、レイを救出するためにバンピーの元にやってきて、ギャングに撃たれて死んでしまう。これは人違いだったというのだからこのシーファートの死はちょっと悲しすぎる。しかも死んだ後にレイに「キャロリンへの償いだ」などまで言われる。レイからは本当に嫌われてたってことなんだろうけど、モラレスならともかく、このシーファートがそこまでレイに言われるのはちょっと不適当だろう。そのぶんジェスが彼を悼んでいるが。

マージン

13年前にジェスの娘のキャロリンを暴行し殺害した犯人。テロリストに関する警察の情報屋でもある。レイ、ジェス、バンピーの力により13年前に捕らえられたが、モラレスが「テロ対策が最優先」として釈放されてしまう。しかし実は直後にジェスにより監禁され続けてきた。発見したレイに「あいつに俺に話しかけてくれるよう言ってくれ」と息も絶え絶えに懇願してきたので、恐らくジェスは監禁以降一度たりともマージンと話さず、生き地獄を味合わせていたのだろう。

ベックウィズ

レイが受刑者の顔を見続けて割り出しマージンだと思い込んでいた人物。人違いだった。この一味の銃弾によりシーファートは倒れる。

モラレス

13年前のクレアの上司。テロリストに関する情報屋であるマージンを重宝しており、例えマージンがキャロリン殺しの犯人でもそれは無視する方針を取った。マージンが使ったバンを燃やしたのもこのモラレス。これによりレイは警察に失望し、辞めた。

項目別評価

レイ、クレア、ジェスのメイン3人の関係性が丁寧でよくできている。地味で渋い話だが奇を衒うことなく実に真っ当に面白いサスペンス。2015年現在と2002年の出来事が何度も入れ替わり描写されるため、かなり気を付けて見ていないとごちゃごちゃになる。じっくり観よう。

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