ティアーズ・オブ・ザ・サン 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月10日

あらすじ・ネタバレ

激しい扮装中のナイジェリア。イスラム教系フラニ族とキリスト教系イボ族の対立が深刻になっている。クーデターを起こしたフラニ族が各地で虐殺し、イボ族は逃げて惑っている。

こんな中、ウォーターズ大尉率いる部隊にリーナ・F・ケンドリック医師という、滞留米国人救出の任務が下される。 パラシュートで降下しての作戦。医師がいる医療センターへ乗り込んだ。

ケンドリック医師に接触すると、患者を見捨ててはいけないというので、歩ける患者と共に数十人でヘリ降下地点まで移動することになる。神父ほか動けない重傷者は医療センターに残った。

女子供がいるので移動が遅れる。やむなく30分休憩を入れていたが 反乱軍のゲリラ小隊が近づいてきた。子供が声を出さないようにヘンドリックス医師に言う大尉。 子供の声が漏れて気づかれてしまうが間一髪で助かる。と、思いきや一人遅れてきた。やむなく大尉がナイフで殺害した。

この時やり過ごした反乱軍たちがケンドリックス医師のいた医療センターに行き、残っていた神父たちを殺害してしまう。

大尉たちは避難民も連れてヘリ降下地点に到着したが、ウォーターズ大尉は「救出するのはケンドリックス医師だけだ」と言ってケンドリックスだけをヘリに乗せる。ケンドリックスは「騙したのねひどでなし!」とウォーターズを罵った。

ヘリから見下ろした時、医療センターは壊滅。すでに反乱軍により皆殺しにされていた。泣き叫ぶケンドリックス医師。 後は離脱すれば任務完了だが、ウォーターズ大尉は置いてきた避難民を見捨てることはできないと考え「引き返そう」と言い出す。降下地点に戻り、取り残された人々の場所と再会。

ウォーターズはヘリに乗れるのは12人のみで「足手まといのものだけ乗れる。残りはカメルーンまで歩く」と言う。 弱い女性や子供たちだけがヘリで脱出した。ケンドリックス医師のほか、ペイシェンスという現地人女性も大尉たちと行動を共にすることになった。
ヘリが到着すると大佐から「避難民ばかりで目標がいない」と連絡がくる。ヘリがナイジェリアに入れなくなったので自力で脱出するしかなくなった。

ここでウォーターズ大尉たちは反乱軍たちが追跡してくることに気付いた。なぜ追ってくるのかわからない。追われる心当たりがあるかケンドリックスに聞くが、知らないという。

途中で反乱軍に虐殺されている村を発見。大尉は見捨ててはおけないと、反乱軍を殲滅する。反乱軍の中には子供もいた。彼らは女の乳房を切り取り子供に乳をあげられないようにするという残虐行為も行っていた。

この時大尉は腕に傷を負った。ヘンドリックスがこれを治療する。「今日はいいことをしたわね」と言うが、大尉は「いいことなんて何年もしていない」と返す。

一晩明けて、追ってきていた反乱軍が寝ずに進軍して一気に追いついてきたことを知る。あまりに無駄のない動きなため、スパイがいると確信する大尉。 ボディチェックをするとケンドリックスの友人であるギデオンという男性が逃げ出す。撃って負傷させてから調べると発信機を持っていた。そして「家族を人質に取られたためスパイをしていた。アーサーを見張っていた」と白状する。 大尉がさらに医療センターにいた男性に迫り「知っていることを吐かないと一人ずつ殺す」と言って迫るとそのアーサーが名乗り出た。

アーサーは殺されたナイジェリア国王の一人息子だった。オケーズ大佐という人物と共に医療センターに紛れ隠れていたのだった。反乱軍が目のカタキにするイボ族の血をひいているため反乱軍は追ってくるのだった。 このことはケンドリックス医師も知っていた。しかし大尉を信用できないため黙っていたのだという。 ギデオンの死体に爆弾トラップを仕掛け反乱軍に手傷を負わせはしたが、大尉たちは数で圧倒的に劣る上、カメルーンの国境近くにも待ち伏せされている。
再びロード大佐と連絡すると「前の王の息子を救出するのは内政干渉にもなる。アーサーとオケーズはお荷物なので引き渡し、避難民を放って帰れ」と言う。しかしウォーターズ大尉はこのままアーサーや救助民を連れて行動すると言った。 部下たちに意見を聞くと反抗する者はおらず、「大尉に従う」と言ってくれた。大尉たち一行は決意を新たに再び移動を開始する。

草むらの中でジーがスナイパーに肩を撃たれてしまう。さらに畳みかけるように攻撃を受け、ケンドリックス意思は負傷。救助民も死者が出た。メンバーの中も通信兵のスローが撃たれて死んでしまう。
敵の攻撃は続き窮地に。ここで再び救援を要請すると、今度は戦闘機が発進した。

しかしその間にさらに追い詰められ、ケンドリックス医師が爆発で気を失い、次々と米兵たちも次々倒れていく。 大尉とジーとドクとレッドは弾が雨のように跳ぶ中、一か所に集まる。そこに空爆機が到着。大尉たちは煙を焚き「煙と林の間にいる敵をやってくれ」と指示を出す。

こうして敵は一掃され4人は満身創痍ながらも生き残った。そこにケンドリックス医師とアーサーが駆け寄る。
敵が一掃されたことでカメルーンへの国境へとゆっくりと入る大尉たち。そんな大尉に「あなたのことは忘れません」とペイシェンスが言う。
ロード大佐がやってきて大尉たちをいたわる。先にヘリで脱出していた子供たちがケンドリックスやペイシェンスに駆け寄るのだった。

ペイシェンスがケンドリックス医師に「いつまでもあなたを愛している」と別れを告げる。
大尉やケンドリックス医師を乗せたヘリが飛び立つ中、避難民たちはそれを見送り、残ったアーサーが「自由を!」と言うと湧いた。 最後にテロップで「善なる人々が行動を怠れば必ず悪が勝利する」という、エドマンド・バーク(イギリスの哲学者)の言葉がテロップで出て終わり。

感想・評価

一言で言うと理想、「理想の米軍」。

「目標は医師と神父と尼僧だけだ!」→「一度ヘリに乗ったが見捨てることはできない。全員連れて帰る」
「襲撃されてる村があるけど助けるなんて任務外ですよ」→「いや見捨ててはいけない」
「全大統領の息子など荷物だ捨てて帰って来い!」→「いや全員連れて帰る」

といった具合に、米軍が完璧にかっこよい存在で非の打ちどころがない。これをどう捉えられるかで評価は決まりそうだ。「青臭くリアリティがない。こんなリーダーの元で働く部下はたまったもんじゃない」か「理想的な正義の兵士!カッコイイ!」か。自分はひねた大人なので前者です。ちょっと悪い意味で格好良すぎますねこれは。

結末に「善なる人々が行動を怠れば必ず悪が勝利する」という哲学者の言葉がテロップで出て終わるが、冷静に考えてみるとこれもね。もろに、「イスラム教フラニ族は悪でキリスト教イボ族は善」て言ってるようなもん。そしてこの作品が世に出た2003年という時期と照らし合わせると…。

「この作品にはアメリカがテロリストであるアルカイダを正義の名の元に叩き潰してやるという意図が込められているんだよ!」

な、なんだってー!!
というのは言い過ぎにしても、いや言い過ぎじゃないかもしれない。2003年といえばモロだ。何せイラク戦争が始まった年だし、すでに前々年の2001年からアメリカの報復、対テロ戦争は始まっている。そしてこの映画ティアーズ・オブ・ザ・サンはイラク戦争の勃発の、ほんの二週間前の公開だ。

ブッシュ大統領の支持率は911直後に90%を記録し、その後は右肩下がりになるものの、イラク戦争勃発直後では一気に50%程度から75%程度まで回復したらしい。(参考サイト)それだけこの時期のアメリカ国民は報復に対して肯定的だったのだろう。この時期に公開する映画としては、もうこの上ない大衆向け戦争映画じゃないだろうか。アメリカとキリスト教は正義!イスラムは悪!と言い切っているに等しいのだから。ナイジェリアの内戦への介入という形でワンクッション置いてそれをぼかしているのも、直接的すぎるのを避けるための手法としてなかなか賢しい。

そんな時代背景も見てしまうとどうしてもまともには観れない映画だし、内容も格好良すぎて不自然と言わざるを得ない。この映画を素晴らしい!と評価する無邪気さは自分にはない。

ただ、カメルーン国境付近でついに反乱軍の軍勢に追いつかれてまさに雨の様に銃弾が飛び交うシーンの緊張感は凄い。主人公のウォーターズ大尉ごと全滅してしまうのか?と思ってしまうほど。ここは無心で見入ってしまったポイントです。

あとストーリー展開で気になったのが、ヒロインのケンドリックス医師が大尉にアーサーのことを黙っていたという点。「追跡されている理由に心当たりは?」と聞かれて「見当もつかないわ」などと言ったが、嘘だった。こうなると無理矢理ヘリに乗せられる場面で人でなしだのなんだのと大尉を罵っていたのがどの口で…と思わざるを得ない。追跡されて追いつかれたら死ぬだけだってのにシラを切ってる場合かと。さんざ「現地人を見捨てることはできない」のようなことを言っておいて、アーサーをかばうために引き連れている他の避難民全員をも危険に巻き込んだわけだ。大尉に正直に言って仮にアーサーとオケーズ大佐が見捨てられることになったとしても、医師としてはより多くの人命が失われることを重視してしかるべきではないだろうか?そもそもそう言ってきかないからこそ大尉たちは避難民を可能な限り助けるように動くようになったわけだし。アーサーが、イボ族の長の血を引いている者が生き残るというのは確かに重要なのかもしれないが、一度ヘリに乗って脱出できたにも関わらずわざわざ戻る決断をした大尉に対して恩を仇で帰す形になった。
…というのも、米軍の格好良さを引き立てる演出といえばそうかもしれない。こんな人物を許容するブルース・ウィリスは格好良いからね!

どこまでもひねた見方になってしまったが、悪い意味で米兵が格好良すぎるというそしりは免れない作品。だが映画としてつまらないということもなく、普通に面白いと言えば面白い。そんな評価。

登場人物解説

ウォーターズ大尉

主人公。ケンドリックス医師の救出に動いた。作中で人物背景は語られないが、虐殺されている村を救った後にケンドリックス医師から「良いことをした」と言われても「良いことなんて何年もしていない」と返すあたり、殺しを行うことに葛藤を持ちながら任務を行っていることはうかがえる。何発も撃たれたがギリギリのところで部下3名と共に生還。

ケンドリックス医師

アメリカ国籍を所持しているナイジェリアで働く医師。国際救済奉仕団所属。70人の患者を見捨てることはできないと言ってウォーターズに反抗。夫も医師だったが、病院で働いていた時に反乱軍に殺されたという。アーサーが紛れ込んでいたことを知っていたがウォーターズには黙っていた。しかしそれゆえに一行は窮地に。

大尉の部下たち

ドク、ジー、スロー、レッド、ゴールド、シルク、レイク、フリーといった名前で呼ばれる、大尉の部下。数は多いが性格は皆落ち着いていて、これといって癖がある者はいない。任務に背く決断ばかり行う大尉に少し苦言を飛ばす者もいたが、ほとんど忠実に黙って動いている。生き残ったのはドク、ジー、レッドの3人のみで、後はカメルーン国境付近で反乱軍に追いつかれてから次々と死亡していく。

ロード大佐

ウォーターズの部隊の司令官。アーサーを連れて歩くのは内政干渉にもなるので切り捨てて逃げてこいと指示するもウォーターズ大尉はそれに背いて全員を救出する道を選んだ。

ペイシェンス

ケンドリックス医師と親しい医療センターの女性。10才の頃からずっといるらしい。子持ちで、子供だけはヘリで先に脱出していた。カメルーンまで脱出できた時には泣きながら大尉に「あなたのことは忘れません」と言った。

ギデオン

反乱軍のスパイ。家族を人質に取られ、アーサーを見張り、反乱軍に位置を知らせる発信機を使って場所を教えていた。銃撃で負傷させられてから大尉に尋問されていたがすぐに死亡。さらに遺体に爆弾トラップを仕掛けて利用された。

アーサー

医療センターに潜んでいた、キリスト教系イボ族の血を引く王族。イスラム教系フラニ族に属する反乱軍はイボ王族の血を絶やすためにギデオンをスパイにしてアーサーを追いかけてきていた。無事生き残り、同じイボ族の同志たちに囲まれ「自由を!」と叫んで鼓舞した。

オケーズ大佐

アーサーと共に医療センターに潜んでいた男。要するにアーサーのボディガード逃走中に反乱軍の攻撃で死亡してしまう。

サディック大佐

反乱軍のリーダー。台詞はほとんどない。執拗に大尉たちを追いかけてくる。しかし米の戦闘機による爆撃で死亡。

項目別評価

理想の米軍を体現した勧善懲悪展開はちょっと青すぎるし、公開された2003年という時勢も考えるとどうしても純粋な目では見れないが、ひねた人間でなければ十分に楽しめると思う。そういうこと抜きにしても終盤で反乱軍に追いつかれての絶体絶命な場面ではハラハラ。

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