トライアングル(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年12月15日

あらすじ・ネタバレ

分かりやすいよう、作中描写されるループに対して「〜周目」と見出しをつけている。これはあくまで「主人公の」ジェス目線から見たものであることに留意。

「怖い夢を見たのよ。現実じゃない」と息子を抱きしめながら諭す女性ジェスのシーンから映画は始まる。
ジェスは友人たちと「トライアングル号」というヨットに乗って海へ遊びに行く予定だった。

同行するのはジェスの恋人の「グレッグ」とジェスの友人の「ヘザー」とその友人の「サリー」、、サリーの夫の「ダウニー」とグレッグの友人「ヴィクター」。これにジェスを合わせた6人でヨットクルージングに出かけたのだった。
出かける前後でジェスの様子がおかしいと感じたグレッグは「変な女だ」とグレッグに漏らしていた。

そしてクルージングの最中で事故が起きる。突然無風になり、助けを呼ぶ女性の声が無線から聞こえてきたのだ。さらに嵐に遭遇して。一同が乗ったトライアングル号は転覆してしまう。これによりヘザーが流されて行方不明になってしまう。他の5人はなんとか転覆した船体に乗ってひとまずは助かった。しかし遭難してしまったのでこのままでは死を待つのみ。

1周目

そこに現れたのは巨大な豪華客船で、転覆したトライアングル号に近づいてきた。助かったと6人はその客船に乗り込むが人の気配がしない。あまりに不可解な船だが6人は探索をする。船内にある写真から、船の名前は「アイオロス」ということがわかった。これはギリシャ神話由来。「アイオロスはギリシャ神話の風の神で、その子シーシュポスは岩を山に押し上げる苦行を永遠に繰り返した」という解説もそこに書いてあった。それは「死神をだましてこの世に居座った罰である」ということをサリーが付け足して解説した。

直後、何者かの気配がし、そこには鍵が落ちていた。それはどういうわけかジェスの持つ鍵であり、あり得ない話だった。ジェスだけは初めて乗り込んだ船なのに既視感を感じていた。

さらに探索を続ける6人。食堂に一人でいたジェスの元に首から血を流したヴィクターが現れ、ジェスの首を絞め始める。わけもわからないジェスだったが、ヴィクターの傷を触ってひるませ脱出する。
直後、今度はどこからか銃声が聞こえる。劇場に行くとグレッグ、サリー、ダウニーの三人がいて、グレッグは誰かに銃で撃たれて死んでしまっていた。ジェス、サリー、ダウニーの三人が言い合いをしているうちに突然銃で撃たれ、サリーとダウニーも死んでしまった。

一人逃げ出したジェス。恐る恐る移動していると背後から覆面をした謎の人物に殴られてしまう。銃を突きつけられて絶体絶命の状態だったがなんとか抜け出すことに成功する。
そして逆に覆面の人物をデッキ上で追い詰めると、「家に帰りたいなら5人を全員殺して!」とジェスに訴えてきた。そしてジェスがその覆面の人物に向かって攻撃、それを回避した拍子に覆面は海に落ちてしまったのだった。

2周目

その後ジェスはレコードが流れ続けている部屋に導かれるように足を踏み入れる。 すると遠くから助けを呼ぶ声が聞こえてきた。海の上で声を上げているのはなんと死んだはずのグレッグ、ヘザー、サリー、ダウニー、ヴィクター、そしてジェスだった。6人は先ほどそうしたのと同じように船に乗りこみ、誰もいない船内を探索し始めるのだった。それはまるで時間がループしているようだった。

「主人公のジェス」は一人、6人から身を隠してその様子を観察していた。やはり言動も行動もさっきと全く同じだった。あるはずのない鍵を落としたのも身を隠していたジェス本人だった。

自分がループした世界にいると理解し始めたジェス。デッキ上から海を見下ろすと海の上にのダウニーの遺体を発見する。そしてデッキで出会ったヴィクターに対して今起きている異常を説明しようとするが、必死に話しているうちにヴィクターを壁から突き出ている突起に押し付けてしまう。こうしてヴィクターは一周目と同じく首に重傷を負った状態になったのだった。

その場から逃げ出したジェスが辿り着いた先にあったのは大量の紙。そこには「彼らが乗ってきたら殺せ」と書いてあった。紙は何枚もあり、世界がループしていることを示唆していた。そして「全員を殺すと再び遭難したトライアングル号が現れる。彼らが乗る前に止めて」という自分の声が幻聴として聞こえてきた。ふと足元を見ると大量のペンダントが下に落ちていた。それはトミーの写真が入ったジェスのもので、これもまたループを詩さしていた。

ペンダントを見て、船から脱出して息子に会う決意を固めたジェスは「みんなを船から降ろす」というために動くようになる。そして食堂で二周目のジェスがヴィクターと会う場面に割って入って、以前とは違う状況になった。一周目のジェス(主人公)は二周目のジェスに対して「私じゃない」と言いながら銃を突きつける。ヴィクターに対して「これで信じてくれるでしょ」と言うが、ヴィクターはすでに瀕死。

前とは状況を変えようとするジェスだったが、劇場でグレッグが殺されるのは止められなかった。だがサリーとダウニー夫妻が殺されることは止めることができた。サリーとダウニーに対して船を降りることを強調するが2人はジェスに戸惑うばかり。その後ジェスがヴィクターのところに戻るとヴィクターは船から落ちてしまっていたようだった。それは「別の」ジェスが行ったものだった。

サリーとダウニー夫妻の元に現れたのは一周目のジェスではなく別の周のジェスだった。彼女はダウニーとサリーを部屋の中に誘い込むと不意打ちでダウニー殺してしまう。サリーも腹部を刺されたが命からがら逃げだす。追いかける主人公のジェス。サリーは無線を使って助けを呼ぶ。それはジェスたちがトライアングル号で聞いたあの無線の内容と同じだった。

サリーは傷を負ったままデッキに逃げていく。そこには大量のサリーの遺体があった。主人公のジェスがデッキから見下ろすとジェスがジェスを殺すシーンを目撃する。それを見届けた後にサリーと話すも、サリーはついに力尽きて死んでしまい、デッキに大量にある遺体がまた1つ増えた。

3周目

「グレッグ、ヴィクター、サリー、ダウニーの4人が全員死ぬとトライアングル号が戻ってくる」ことを理解したジェス。
船の機関室を破壊しようとしても上手くいかず、家に帰れないことに絶望する。結局は一周目で目撃した覆面と同じように、4人が船に乗ること自体を食い止めるため、グレッグたちを殺すのが目的になってしまったのだった。

覆面をかぶったジェスは劇場でグレッグで殺してしまう。その後は一周目と全く同じ展開になる。覆面をかぶったジェスは別のジェスにデッキで追い詰められ、「全員を殺せ」とアドバイスした直後、海に落ちてしまうのだった。

帰宅

海から落ちたジェスが目を覚ますとどこかの浜辺に漂着していた。ヒッチハイクをして家に戻ったジェス。そこには息子のトミーに対して怒鳴り散らす自分と息子のトミーがいた。
ここからのシーンは冒頭と同じようなものだった。ジェスは息子に厳しく当たる自分自身を鈍器で殴り殺した。そして「今のは現実じゃない」と言って息子を抱きしめてなだめた。

ジェスは殺した自分の遺体をどこかに隠すため、トランクに入れてトミーと共に車で出かける。「あなたを殴っていた女はママじゃなかった」などと言ってトミーに諭した。突如車に鳥が激突してくる。その鳥を、捨てようとして崖の下を覗き込むジェス。なんとそこには大量の鳥が捨てられていた。これはまだループの中にいて抜け出せていないことを表していた。

それを見て狼狽しながらも車を走らせたジェス。息子がいる後部座席によそ見をしてトラックと正面衝突が起きてしまう。息子のトミーは死に、また、車のトランクからは撲殺されたジェスの遺体が飛び出してしまっていた。

それを茫然と眺める主人公のジェス。彼女はなぜか全くの無傷だった。背後からタクシー運転手がやってきて「ケガはない?」と話しかける。タクシーに乗るかと運転手が問い、ジェスはそれに答え、再びヨットハーバーへと向かう。到着すると運転手は「ここで待っている。戻ってくるでしょ?」とジェスに問う。ジェスは「戻って来る、必ず。」と言う。

そうして再びジェスたち6人はヨットクルージングに出かけるのだった。

感想・考察・評価

ループものというものは媒体問わず珍しいものではないが、その舞台となるのが「海原を漂う無人の豪華客船」であり、さらに「主人公を除く登場人物たちが死ぬと再び遭難した主人公たちが戻って来る」というのは斬新だ。

視聴後に色々と疑問が浮かぶ作品だが、自分の場合は以下のようなものだろうか。

@に関しては、身も蓋もないことを言ってしまえば展開の都合上ということになるかもしれないが…。よくあるドッペルゲンガーに関する話のように「出会ったら死ぬ」とかではないんで、頑張って協力し合う!なんて展開もちょっとやってみればいいんでは?などと思ってしまう。食道で出会った時には特に何も起きてはいないので、2人以上のジェスの共存が不可能であると断ずることもできない。

Aに関しては、「息子に会いたいから」だろう。ヨットに乗り込む時点でジェスはすでに最愛の息子トミーを事故で亡くしている状態。ループに身を投じればいずれ浜辺に漂着して家に戻ることができるのを知っているので、恐らく息子に会うために、無自覚にループから出る選択をしようとはしないのだろう。

Bに関しては、恐らくそうなのだと思う。注目したいのは、サリーがデッキで死ぬ時のシーン。このときジェスは別の自分が別の自分を撲殺して海に投げ込むのを上から見ていて、これは「主人公のジェス」が経験していない展開だ。被害者としても加害者としても「主人公のジェス」はこれに関わっていないのである。作品内だけを見れば1周目では覆面をした自分を海に落とし、2周目ではなんとか展開を変えようとするも徒労に終わると理解し、3周目では1周目での覆面と全く同じになってしまう、という流れでジェスは変化していくわけだが、このシーンのように「ジェスが別周のジェスを殴り殺して海に投げ入れる」という展開もあるらしい。
この件をヴィクターに話しているのを主人公のジェスが聞いているシーンもあるが、会話内容は違えどやはりヴィクターの首に傷を負わせてしまっているので、恐らく細部は違っていても展開を変えることはできないようになっているのだろう。そういえば、主人公ジェスが食堂で出会い銃を突きつけたもう一人のジェスが逃げ出した後どうしたかは不明だが、あのジェスもあの後どういう行動に出るのかも不明だ。とにかく、ジェス以外のメンバーが死ぬまでの過程に多くのパターンがあるのは確かだ。
しかしどちらにしても結末は変わらないのだろう。ジェスはそのうち絶望して殺人鬼と化して、いずれは自分自身に敗北し、海に落ち、浜辺で目を覚まし、家へ向かい、息子に優しくない自分を殺し、息子と共に交通事故に遭ってしまうに違いない。

Dに関して。終盤も終盤に突如出てくるタクシー運転手は何者なのか?彼の正体を紐解くカギは作中ではアイオロス船内の探索時に現れるギリシャ神話の一節以外には存在しない。すなわち、「風の神アイオロスの息子シーシュポスは死神を騙してこの世に居座ったために岩を山に押し上げる作業を永遠に繰り返すことになった」というものだ。単純に考えればこの運転手は死神かそれに類するものということになるかもしれないが…。
実際のところ、「死神を騙した」という罪がジェスに重なる部分は見当たらず、もはや妄想しなければ腑に落ちない部分に思える。ジェスが犯した罪といえば、あえて挙げるならば「息子に優しくできなかったこと」だろう。

Eは何となく見逃してしまいそうだが、通常あり得ないことだ。トラックと正面衝突して車がひっくり返り、トミーは死んでしまうような事故であるのに、ジェスはこの時かすり傷すら負っていないのだ。息子が死んだのを目の当りにしてもこの時のジェスはただ茫然とするばかりで動揺はしない。肉体的にも精神的にも、どうにもまともな人間の状態には思えない。ループを繰り返すジェスの身体はすでにこの世のものではなく、タクシー運転手(=死の世界の住人か何か)により変化させられてしまっているのかもしれない。

と、いくつか考察してみたが。
この作品、考察しがいはあると思うのだが、完璧に腑に落ちる解釈は不可能と感じた。特に、「死神を騙した罪」というのがてんでジェスには当てはまらないために、なぜループに陥ったのか?タクシー運転手は何者なのか?という部分あたりには強引な解釈、言ってしまえば妄想で補うしか手がないのだ。

ただ、どんな作品にも必ずしも明確な「答え」というものが必要かといえばもちろんそういうわけでもないわけで。謎を謎のままにした作品でも楽しめる部分を楽しめたのならそれはそれで悪くないとも思うのだ。文句がないわけではないが、なかなか面白い作品だったと思う。

人物解説

ジェス

主人公。トミーという息子を持つシングルマザー。自閉症の息子トミーに対しては日常的につらく当たっていたようだが、それは冒頭では伏せられていて、そうとわかるのは終盤、ジェスが家に戻ってきた時。ループしていると理解してもそこから抜け出そうとせず再びクルージングへと出かければ時間をさかのぼり家に戻ってくることができると考えているからか。

グレッグ

ジェスの恋人。トライアングル号の持ち主。お人好し。ジェスを気遣っているが、アイオロス号に乗り込んでからは劇場でジェスに銃殺されるだけの悲しい出番しかない。これは1周目でも2周目でも同じ。

ヘザー

ジェスの良き友人。ヨットクルーにヘザーを誘った。トライアングル号転覆の際に一人だけ行方不明になってしまうので、ジェス除く他の4人と比較すると出番が少ない。ある意味最も報われない人物のような気もする。

サリー

ヘザーの友人。グレッグとは同級生で元恋人。シングルマザーのジェスを疎ましく思っていて、グレッグはサリーとくっついてほしいと思っている。視聴者目線で見るとなんか嫌な人物に見えるが、ジェスのトミーに対する接し方が初めて演出されるシーンを見た後だと、このサリーが言っていたこともあながち…という気にもなる。1周目では劇場で射殺されるが、2周目ではジェスに腹部を刺されてから逃げ出し、無線で助けを呼ぼうとし、最後はデッキで力尽きる。いくら瀕死だからといって、大量の自分の死体に対してほぼ無反応なのは不自然だと思うのだが…。あの死体はジェスしか見えていないという可能性も考えられる、か?

ダウニー

サリーの夫。グレッグの幼馴染。軽い性格。1周目ではサリーもろとも劇場で銃殺され、2周目では殺意モードのジェスに部屋に誘い込まれて首を掻っ切られてからめった刺し。

ヴィクター

グレッグの友人。家出していたところでグレッグと出会ったらしい。1周目では主人公のジェスの前に現れて襲い掛かって来る。2周目ではジェスの話を聞いて一笑に付すが、その時壁の突起で重傷を負い、2人のジェスを目の当りにしてジェスの言っていることが本当だと理解したはずだが、すでに瀕死であり、海に投げ捨てられる。

トミー

ジェスの息子。自閉症らしい。ジェスのよそ見運転により起きた交通事故で死亡する。ジェスがループを繰り返すのは息子に会いたい一心からか。このトミーが騒ぐ様子を気にせずジェスは運転を続けて事故を回避すればループから抜け出せそう、にも思うが多分どうやっても無理なのだろうなあ。

タクシーの運転手

終わりごろ突然現れる謎の人物。事故が起きたことにまるで動じず冷静にジェスと会話をしていて、明らかに普通の人間ではない。船内のアイオロス、シーシュポスの話から連想すればこの男は「死神」かそれに類するものと考えられる。再びクルージングへ行こうとするジェスに「ここでずっと待っている」と言っているのが意味深だが…。

項目別評価

多くを語らない、考察の余地を多く残したミステリー映画。誰かと一緒に見てあれこれ議論すると面白いタイプの映画ではないだろうか。が、個人的には考察の材料となる素材を並べてあれこれ考えても納得の行くものにはならず、腑に落ちさせるには考察どころか妄想の域まで必要だと感じた。ずばり、話を考えた人に答えを教えて欲しいとも思ってしまう。

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