カールじいさんの空飛ぶ家 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>カールじいさんの空飛ぶ家

執筆日:2014年12月19日

評論

12月19日の金曜ロードショーでやっていたので感想。

トイストーリーなど有名なピクサー・アニメーションスタジオが製作の3DCG映画。よくPSSTOREで映画をレンタルして以前から気になってはいたものの、結局借りることはなかった作品。なんでかと言うと、確かネットでの評判があまり芳しくなかったから、だったような気がする。
今回、視聴を開始したのは21時20分。20分見逃したのだった。どうやら、最初のOPとかが凄い良いシーンだそうなので、「やっちまったあああ!」な感じだったのだけど、その冒頭を見なくても十分なほどに素晴らしい映画と思えた。ネットの評判なんてアテにならんもんですな。このページのURLが「up」なのは原題に沿ったもの。この2文字がよくカールじいさんの空飛ぶ家になったもんだな。

妻に先立たれて偏屈になっていたカール・フレドリクセンじいさんが、妻と夢見た幻の滝、「パラダイス・フォール」を目指す。そこまでの足は家に大量の風船をつけて飛んでいくというまさかの方法だ。飛び立った後にボーイスカウトの少年、ラッセルが入り込んでいてなんやかんやと振り回され続ける。
パラダイス・フォールがある場所(ギアナ高地っぽい高所)にたどり着いてからはロープで自分自身を繋いで飛んで行ってしまわないようにしつつ、遠くに見えるパラダイス・フォールまで歩いていこうとするが、道中では巨大な幻の鳥、ケヴィンやバイリンガル的なものをつけて喋る犬のダグと出会い、さらにカールじいさんは振り回されて…。

あらすじをまとめているだけでもう、「意味がわからん」話だと再確認できた。もう話も、キャラも取り合わせが凄い。まず家に風船つけて飛んでいくという発想自体がイカれてるが、偏屈ジイサンに、空気読めない生意気な子供、奔放な鳥に、喋る犬の組み合わせ。この発想はもうちょっと頭のネジが飛んでないとできないよ。
でも、この狙ったやってる荒唐無稽さがもう単純に、視覚的に面白いと思った。途中、敵方となる伝説の冒険家、マンツが従える犬たちに追われるシーンがあるのだが、もうここの絵面がおかしくて笑った。ケヴィンの上にカールじいさんが乗っていて、ケヴィンは空飛ぶ家を引っ張りつつ犬から逃げ回って、ラッセルはロープに繋がれて宙ぶらりんのまま振りまわされている。もう「何これ」としか言いようがない状況。老人が主人公なのでもっとおとなしい映画と思っていたわけだが、とんだアクロバティックな内容だった。終盤ではメンツの所持する飛行船内部でじいさん同士(カールとメンツ)が激しい格闘戦を繰り広げ、外ではラッセルが犬と文字通りのドッグファイトしたりするし。じいさんとじいさんの最終決戦!ある意味熱い!

そんな、タイトルから受ける印象とはほど遠く全編通して騒がしい映画だが、泣きところも押さえている。カールじいさんが目的地にたどり着いてから亡き妻の遺した本を読んで過去に引きずられることを止めるシーン、家庭問題を抱えるラッセルのところにカールじいさんが来てバッヂを授ける結末のシーンなどでウルっときた。序盤ではただのウザい子供でしかないラッセルに対しての視聴者の印象は、カールじいさんの心の変化とリンクしていると思う。ラッセルはもう余計なことばかりするし怠けるし鳥とか犬を構ってばかりだし、見た目からしても憎たらしいクソガキなのだが、実はラッセルは複雑な家庭問題を抱えている。そのことに同情的なったあたりからカールじいさんの接し方も変わってくる。
ラッセルの容姿は、これは別にもっとかわいくしても問題はなかった、というかむしろその方が嫌悪感抱く人間は間違いなく少なくなるし、商業的にはよかったんじゃないかと思う。ネット上で感想を調べたりはしてないが、この映画に否定的な意見を出すとしたら、このラッセルの存在に対して言及する人は多いんじゃないかと、容易に想像はつく。実際、特に序盤には不快感を抱かない人間のほうが少ないだろう。でもあえて憎たらしい外見にしていることは、もちろん狙いあってのことに違いない。前半あんなに憎たらしいのに、結末部分では「本当によかったね…」と思わずにはいられないからだ。これは見た目が可愛い子供にしてしまっていたら、若干薄れてしまった感動じゃないかと思う。あれ、前半はあんなに鬱陶しかったのに、ラッセルが幸せになって、俺ちょっと泣いてるぞ?ってなるわけだ。上手い。

もっとおとなしめの、情緒的な作品かと思ったが、それに反して異様にドタバタした内容だった。
しかし、それはむしろ想定より面白いという感じで悪い意味ではなく、過去との決別、老境での冒険、といったテーマ性もあり後味も良く、素晴らしい作品だと思う。それだけに冒頭の20分見てみたいなあ…。そのためだけにレンタルするというのはさすがにあれだし、どうしようか。

項目別評価

平凡な冒険活劇と言えばそうなのかもしれないが、老人主人公や鳥、犬といった登場人物の取り合わせのおかげでそうは思わせない独自性がある。クセの強いキャラクターたちだが、終盤になれば彼らに愛着が沸いているはずだ。

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