1922(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>1922(映画)

執筆日:2017年11月07日

あらすじ・ネタバレ

主人公、ウィルフレッドという男がどこかのホテルで手紙を書いている。それは過去の罪の告白だった。
ウィルフレッドは1922年、100エーカーの土地を所有していた。しかし妻のアルレットはこれに反対し、土地を売却し、それを分けてウィルフレッドと離婚する気になっていた。ウィルフレッドはそんなアルレットが疎ましかった。
また二人の息子であるヘンリーの親権も自分がもらっていくとアルレットは言う。ヘンリーにはシャノンという恋人がおり、親権をアルレットが持った場合はシャノンとも引き離されてしまうことになる。「シャノンと離れたくないならアルレットを殺すしかない」と言い、ウィルフレッドはヘンリーにアルレット殺害計画の共犯になるように誘う。ヘンリーもそれを承諾してしまう。

そしてついにウィルフレッドとヘンリーはアルレットの殺害を決行する。激しく抵抗するアルレットだったが、ウィルフレッドがナイフで首を掻っ切りアルレットは即死した。その遺体は家のそばにある井戸の中へ捨てた。翌日にウィルフレッドが井戸を覗くとそこには恨めしそうに天を見上げるアルレットの遺体、そしてそれをかじる大量のネズミが。ネズミはアルレットの口の中にも侵入しており、ウィルフレッドを戦慄させた。

アルレットが消えたことにより、アルレットの弁護士や保安官が家にやってきたが、ウィルフレッドは井戸に牛を落として偽装工作をしてごまかし、保安官を上手くだますことができた。こうしてアルレット殺害は誰にも気づかれなかった。
しかしそれから奇妙なことが起きる。ウィルフレッドが世話している乳牛が夜中に叫んでいるのだ。見に行くと牛がネズミにかじられていたのだった。ネズミは排水管のような場所を通ってきたようだが、それがどこに繋がっているかと考えるとアルレットを遺棄したあの井戸だった。ウィルフレッドはその排水管を封鎖した。

しかしアルレットを殺害してから少し時間が経過するとヘンリーがシャノンを妊娠させてしまい、駆け落ちしたいなどと言い出した。バカなことはするなと言うウィルフレッドだったが、ヘンリーは言うことなど聞かず本当にシャノンと駆け落ちをしてしまう。

1人きりになったウィルフレッドは貧困にあえぎ、冬の間も寒さに震えながら過ごしていた。そんな時に妻アルレットの怨霊が現れる。ウィルフレッドに対して「ヘンリーはシャノンと共に強盗をしたあげくに死んだ」ということを教えた。ウィルフレッドはアルレットに「お前にしたように私の首を掻っ切って殺してくれ」と懇願するが、もっと苦しんでもらうと言うアルレットの霊だった。

アルレットが言った通りヘンリーとシャノンは強盗をしたあげくに死んでいて、その遺体がウィルフレッドの元へと届けられた。遺体の顔面はネズミにかじられたために酷く損傷しており、穴だらけで見るも無残な姿だった。

真に孤独になったウィルフレッドの生活はますます困窮し、妻を殺してまで守ったはずだった土地も結局は全て売り払うことになってしまった。それも買い叩かれて二束三文にしかならなかった。
その金を使って生活をしていたウィルフレッド。職についたこともあったがそこでもネズミが着いて回ってきた。

そして1930年。妻アルレットを殺してから8年の時が経過していた。
手紙を書いていたウィルフレッドの部屋にはいつの間にかネズミが充満していた。そして部屋にたたずむのは3人の霊。アルレット、ヘンリー、シャノン。息子ヘンリーが「父さん、すぐに終わる」と言ってナイフを取り出したところで物語は終わる。

感想・評価

自分の牧場を手放したくないがために妻を殺し、呪われた男の顛末を描いた作品。
時代背景が1922年と100年近く前、主人公も貧乏な農家ということで現代劇にあるような喧噪とは無縁、そこはかとない侘しさが作品全体から漂っている。それがなんだか心地よかった。

高く評価したいのが作品のメインビジュアル。1922 映画で検索すると出るが、主人公がトウモロコシ畑を背後に左手を血に染めて佇んでいるというもの。この不穏と、どこか寂寥も覚えさせる絵面にやられて視聴を決意したクチだ。見た瞬間まさに圧倒された。「1922」というタイトルとこの図が実にマッチしている。「100年近く昔の過去に何か恐ろしいことがあった」ということを言葉無しで伝えてくる、パワーのある絵面だと思うのだ。

そして何より評価したいのが演出。この作品、簡単に言えば「お化け屋敷的な驚かし方」はほぼ排除している。ホラー映画を観ていれば誰しも思うところだろうが、音で驚かすと言うのは絶対ダメというわけではないが基本的は邪道だ。そんなもんビックリするに決まっている。あんまりそればかりやられるとぶん殴んぞこの野郎!とか思ってしまうくらい、恐怖より怒りが先に来てしまうこともしばしばだ。だがこの作品はこれをやらない。静かであるがゆえにじわじわと迫り来る恐怖。
例えば孤独に冬を震えて過ごすウィルフレッドの元に初めて妻のアルレットの怨霊が現れるシーンがあるのだが、ここでは扉が強風でバタンバタンと開閉を繰り返す時に扉の向こうにアルレットが突如現れるという演出。なかなか心臓に悪いショッキングなものなのだが、ここですら効果音のようなものは入れていない。大抵、ここでアルレットが見えた瞬間ドギャーン!と音入れてくるだろう。実際かなりびっくりしたが、「あ、効果音はないのね」とついつい感心してしまったシーンである。

ホラー的には一番恐ろしいのはウィルフレッドがアルレットを殺害した翌日に井戸を覗くシーンだろうか。
偶然なのか、いやあるいは「動いた」のか知らないが、アルレットが恨めし気に上をにらんでいて、さらにその口からネズミが出てくるのである。思わずヒイイイ!っと声が出てしまいそうなシーンであり、また井戸覗くシーンあったらどうしよう…とか尻込んだほどである。だがその後ウィルフレッドはその妻の遺体の上に牛を落とすという豪快な作戦を取り、さらにその上に土をかぶせたためにその遺体が見えることはもうなかった。ここは牛可哀想と思うと共に若干笑ってしまうところである。

というわけで、あくまで「静」の演出による恐怖を駆使した作品であるので、そういう作品が好きならお勧め。

人物解説

ウィルフレッド

演:トーマス・ジェーン
主人公。演じるは「ミスト」で有名なトーマス・ジェーン。1922年100エーカーの土地を守るために妻のアルレットを殺し、それ以来妻とネズミに呪われる。この作品は1930年に過去の罪の懺悔を手紙に書き記すウィルフレッドという形で描かれる。自分がもうすぐにでも呪い殺されることを悟り、自分の遺体を発見することになる警察などに宛てたということだろう。アルレット殺害後、息子は出ていった上に妻を殺してまで守った土地も結局は売ってしまった。エンドロール直前には妻、息子、息子の恋人の3人がウィルフレッドの前に現れて息子が刃物を持って「すぐに終わる」と言い、そこで物語は終わる。自分が妻にそうしたように、恐らく首をかっきられて息子の霊に殺されたのだろう。

アルレット

演:モリー・パーカー
農家には全く興味がなく、下品な物言いで息子の恋人をバカにしたりもするウィルフレッドの妻。父親の土地とウィルフレッドの土地ごと売却して離婚する目論見だったがウィルフレッドに首を掻っ切られて殺害される。その後はネズミを伴った悪霊と化してウィルフレッドの元に現れ、呪詛の言葉を吐き続けた。井戸の中に投げ込まれた翌日、偶然?にもウィルフレッドを見上げるような体勢になっているのが今作一番のホラーだ。

ヘンリー

演:ディラン・シュミット
ウィルフレッドの息子。父のアルレット殺しに加担する。恋人をバカにしたことが母殺しの共犯となる決め手だった。そして恋人を妊娠させて恋に暴走、家出して強盗を繰り返した挙句に野垂死ぬ。殺しに賛同した自分を棚に上げて後から母殺しの件で父ウィルフレッドを責めるゴミ野郎。優しげな顔して実は一番腐ってる。ネズミの呪いはヘンリーにも降りかかり、凍死したあと遺体をかじられ酷く損傷し眼球もない状態で父のウィルフレッドの元へと帰ってきた。

シャノン

演:ケイトリン・バーナード
ヘンリーの恋人。家出したヘンリーと共に行動。ヘンリーの子を身ごもりつつ二人で強盗したあげくに銃で撃たれて死亡。最期には腹にいる子を案じていたがもちろん子供も死んだ。後を追って凍死したヘンリー同様にネズミにかじられ穴だらけの遺体となった。アルレット、ヘンリー同様、ラストシーンでウィルフレッドを迎えに来ている。

ネズミ

ウィルフレッドの農場の井戸に巣食っていた。アルレットの死後はアルレットと共にウィルフレッドの呪いとなり、どこに移動してもついてくる。手紙を書くウィルフレッドの部屋にもカベを壊して入ってきて、結末ではおびただしい数になって部屋を占領していた。

項目別評価

おぞましいホラー映画だが音で驚かすという邪道を全く行っていないのがかなりポイント高い。一人の人間の罪と罰についてしんみり考えさせられるシックな作風。かなーり好みの作品となった。

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