ゼロ・グラヴィティ  -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2016年10月24日

あらすじ・ネタバレ

ライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)たち、スペースシャトル「エクスプローラー」のクルーと共に、宇宙空間にあるハップル望遠鏡の修理作業をしていた。
マットの軽口の相手をしながら作業を行っていたライアンだが、ロシアの衛星がミサイルで破壊され、その破片がこちらに向かってくるという事故に遭遇してしまう。
破片は容赦なくエクスプローラー号を襲い、その際の衝撃でライアンはたった一人、遠くまで吹き飛ばされてしまう。しばらく為すすべもなく宇宙空間を漂流したライアン。誰とも通信することもできずもはや絶望的かと思え、過呼吸も起こしてしまうが、しばらく経過してからマットがライアンの通信に応え、さらには救出してくれて、二人の身体はロープで繋がれた。
二人がエクスプローラー号に戻ると、そこには全滅したクルーたちの遺体が宇宙空間で無惨にも漂っていたのだった。

たった二人の生存者となったライアンとマット。二人は本部のヒューストンに連絡をするが、応答はなかった。
二人は近くにあるISS(国際宇宙ステーション)へと移動し、それに付属しているソユーズ(緊急脱出用の宇宙船)で地球に帰還しようと考えた。
すでにライアンの宇宙服の酸素量は少なくなっていて、マットの宇宙服の燃料もごくわずか。しかしその燃料を利用して報告転換をしつつISSへ向かう。マットはリラックスさせようとライアンに自分の故郷の話などを聞き出す。ここでライアンは、自分には娘がいたものの4歳の時事故で亡くしてしまったことを話す。
だが、ISSも衛星の破片により損傷していて、2つあるソユーズのうち1つはすでにISSの乗組員が使って無くなっていた。もう1つはパラシュートが開いてしまっていたが、これを使って宇宙空間を移動し、近くにある中国の宇宙ステーション「天宮」まで移動することにした。
ISSに接近したものの、ライアンもマットも上手く船体に取りつくことができず、ライアンの足にソユーズのパラシュートがかろうじて絡まり、マットはというとライアンがギリギリでロープを掴んで漂流するのを阻止したのみ。その状態から復帰は不可能だと判断したマットは、自分からライアンと自分を繋ぐロープを切り離し、ライアンは一人で生き残るように諭す。自分が死ぬことが確定してもなおもマットは通信の続く限りライアンを励ましたのだった。

一人生き残ったライアンはISSへ入る。そこで諦めきれずマットに必死に呼びかけるも応答はなく、生存者は自分だけだとヒューストンに一方通信をした。
そうしているうちにISS内部で火災が発生。消し止めようとしたものの炎は広がってしまい、諦めてライアンはソユーズに乗り込んで隔壁を閉じて炎を遮断した。
そしてソユーズを起動させて天宮を目指そうとするが、損傷したソユーズは実は燃料切れを起こしており、起動しなかった。

絶望的な状態ながらも必死にソユーズ内で通信を行うと、通じたのは民間人のアニンガという人物だった。その傍には犬や赤ん坊がいることを声で知ったライアンは地球を懐かしみ、同時に死を覚悟する。アニンガはライアンの心境を知ってか知らずか、赤ん坊のために子守歌を歌い始める。死を覚悟したライアンはそれを聞いたまま目を閉じ、船内の酸素供給を止め、ゆるやかに自殺しようとする。
しかしそこで船のハッチを叩く音が。なんと叩いている人物はマット。「宇宙遊泳の新記録だ」などと言いながら入って来たマットはライアンに対してまだ望みはあると言う。ライアンがふと意識を明瞭にさせるとそこにマットはおらず、それは自分が見ていた幻だったことをライアンは知る。

幻のマットが提案した案というのは、ソユーズが地上着陸する数メートル手前で自動的に噴射されるジェットの反動を利用して宇宙空間を移動するというものだった。
ライアンはこれを使って再び天宮を目指す。目論見通りに移動はでき、消火器を使って宇宙空間を移動しついに天宮へたどり着いたものの、無人となっている天宮は大気圏突入しつつあり、一刻の猶予もない。
ライアンは急いで天宮に付属している、ソユーズと同じタイプの宇宙船「神舟」へ乗り込む。しかし神舟のコントロールパネルに書かれている文字は中国語であり、ライアンには読めなかった。何度か外しながらもあてずっぽうで起動させ、燃え尽きる天宮と共に、ライアンが乗る神舟は大気圏突入、地上へ落下していった。

船内で発火が発生したものの、神舟は無事にどこかの湖へと落下。落下中には通信が回復し、ヒューストンからは「これから向かう」という言葉も聞こえる。着水した後にハッチを開けると水が流れ込んできた。無重力に慣れていたライアンはなかなか外に出ることができず溺れそうになるも、水中で宇宙服を脱ぎ、ついに陸上へと命からがら、這いながらも生還する。地上の重力によりなかなか立つこともできないライアンだったが、生きて地球に帰れたことを喜び笑みを浮かべる。ライアンが力強く立ち上がったところで原題の「Gravity」が表示され、エンドクレジットへ。

感想・評価

2016/10に数か月前地上波放送したものを録画で見た。初視聴はレンタルで、これが二回目の視聴になる。

登場人物は実質二人きり。宇宙でサンドラ・ブロックが遭難し、同伴していたジョージー・クルーニーも早々に死に、たった一人での生存劇を演じるという、実に単純な映画。

巧みなカメラワークや演出により宇宙空間での遭難の恐ろしさの表現が秀逸で、中盤以降は他に誰の出演者もいないまま、ただ一人で演じ続けるサンドラ・ブロックの演技力も注目すべきところだろう。特に、通信が混線し、アニンガという人物と会話をするシーンで犬の鳴き声をしている途中から泣き始めてしまうところは、無事帰りたいという願い、絶望感、諦観がミックスされて伝わってきて素晴らしい演技だと思う。

とまあ、そんなとってつけたようなまっとうな見所の語りはここまで。この映画の大きな注目点となるのは、ジョージ・クルーニー演じるマットだ。

個人的に、ジョージ・クルーニーといえばERきってのプレイボーイというフレーズが忘れられない人物であり、未だに彼を見るたびにこのフレーズが真っ先に浮かんでしまうほどだったりする。ERというのは1996年から2011年まで長期間放映された救急救命室の業務に携わる人物たちの群像劇のテレビドラマだが、日本でも放映されていた。この番組を一時よく見ていたのだが、番組の終わりのスタッフロールでは各人物の紹介が出て、その中にあるのがこの「ERきってのプレイボーイ」というフレーズなのである。ジョージ・クルーニー演じるダグラス・ロスという小児科医の説明文がこれ。(ちなみに、90年代に放映されていたこの作品においても、日本語吹き替えは本作品と同様に小川力也氏)

そしてこの映画でのジョージ・クルーニーは開始から30分強程度で退場してしまうキャラクターでありながらも強烈に印象に残るプレイボーイぶりを見せる。主人公のライアンに対して死の危機だというのによくもまあ、というほどに余裕たっぷりに、俺に惚れてただろ?などというような軽口をたたくのだ。未だに上述したイメージがある自分は、初視聴の際、「プレイボーイだ!ジョージ・クルーニーでプレイボーイだ!ERだ!」とか、よくわからないテンションの上がり方をしてしまってなんかはしゃいでしまった覚えがある。こう書くと意味不明かもしれないが、自分の中にあったイメージが20年近く越しに一致したアハ体験というか、そんな感じ。この20年、オーシャンズシリーズやパーフェクトストームなんかでもジョージ・クルーニーを見てはいたのだが、こんなにプレイボーイ然とした役を演じているのを見たことはなかったということもある。

自分じゃなくても、この映画の見所の一つであり、視聴者を楽しませてくれるのがこのジョージ・クルーニー演じるマットの軽口なのは間違いない。それもまた、ライアンをリラックスさせ、生きる気力を沸かせるためのあえての軽口だというのもよくわかるもんで、男から見てもやだ、かっこいい…と思ってしまう。特に、自分が死ぬことが確定した状況でも自分の目の色に関してのジョークを飛ばしたりして、これもおそらくライアンをリラックスさせるためなのだろうから、聖人の域に達していないかとかすら思ってしまう。冒頭、ハップル望遠鏡での作業中ではマットが同僚に対して何度も自分の過去の経験を面白おかしく話しているらしい描写(その話は聞いたと何度も相手が言う)があるが、この人生の達観ぶりは本当によほどの経験をしてきたのだろうなあ、なんて想像させるものがある。惜しい人を亡くした…。フィクションだけど。

それにしてもこの映画、本来なら絶対に映画館で見るべき作品だと思う。テレビで見ててさえ、映像、音楽、効果音、演出、どれをとっても大画面および3Dでの視聴を意識しているのがよくわかる。アカデミー賞を多数受賞した作品ではあるが、その多くは演出に関するもの。その本領はテレビ画面では決して感じ取ることはできないだろう。
2013年の映画なので言うまでもなく劇場での視聴はもう不可能だが、2016/10現在、プレイステーションVRが登場している。実は自分は購入したのだが、これでイヤホンを使って映画を観るとマジで映画館とそう変わりない状態で楽しむことができるのでお勧め。

ちなみにライアンがソユーズの中で通信するアニンガという人物だが、この人目線のスピンオフ映像をyoutubeで見ることができる。
これは今回の視聴後に知ったのだが、まさかこんな極寒の地にいる人物だったとは…。


最後に、この映画でライアンが移動する経路を図にしてみた。エクスプローラーが事故で壊滅し、ISSまで遊泳、ISSでマットと別れて、ISSから宇宙船ソユーズで天宮。天宮にある宇宙船神舟で地球へ帰還。作中発言から、ISSから天宮は確か数百キロくらいあるらしい。

項目別評価

初視聴はレンタルだったが、目が離せない展開に引き込まれた。孤独な宇宙空間での絶望に息を飲み、ジョージ・クルーニーの軽口を楽しむ作品。ただ、登場人物が実質二人ということで内容は極めてシンプル、それゆえに一度見れば内容を忘れるようなことはほとんどないため、二回目以降はあまり楽しめない映画でもあると思う。

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