ダンガンロンパ霧切6巻 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ>ダンガンロンパ霧切6巻

執筆日:2018年02月17日

関連作品の感想

ストーリー・ネタバレ

前回はトリプルクラスゼロ探偵のジョニィ・アープと水鏡霊(リコ)がタッグを組んで五月雨結&霧切響子コンビに勝負を申し込み、スナイパーライフルを渡した、というところで終わっている。5巻ネタバレも参照。

最初に第一の「黒の挑戦」の情報が書かれている。

AM6:30

五月雨結と霧切響子はどこかの雪の上で隠れるように身を潜め、五月雨は何らかの標的までの距離や風速などを測り、霧切はそれを聞いてライフルを構え、何かを撃ち抜こうとしていた。

AM4:44

五月雨たちの描写からさかのぼって約二時間前。御鏡霊(リコ)はとある山荘にいた。7人の男女がいるラウンジから離れて別の部屋に行くと、そこにいたのはジョニィ・アープだった。
ジョニィは何かを待っていて、リコは山荘の周囲を見張っている。彼らが何をしているのかというと、「五月雨&霧切コンビとの狙撃勝負」だ。
事情はこうだ。この山荘で起きる「黒の挑戦」に対して、五月雨ら二人とジョニィら二人は部外者として介入する。「最初の殺人が発生する」のを食い止めることができれば五月雨たちの勝ちだし、逆に、狙撃しようとしている霧切をジョニィが狙撃すればジョニィたちの勝ち、という勝負をしているのだ。読者としては後で知ることだが、この勝負は「あくまでライフル銃を使っての勝負だということ」「青→黄→赤の順番で3つの銃弾を使うこと」「ジョニィ側の勝利条件は霧切の髪を結っているリボンを撃ち抜くこと」「3発目の赤い銃弾では相手の殺害を狙ってもいいこと」「3回勝負のうち2回勝った方が勝者」といったルールが課せられている。

ジョニィとリコは何せ000の探偵であるため、この山荘で殺人事件がどうやって起こされるのかはすでに見抜いていた。使用する凶器は「ロープ」となっていたが、山荘の屋根にかかっている巨大なつららにロープは隠されていて、絞殺のためではなくこれで殴打するという方法での殺害を犯人は行うつもりなのだ。だから、殺人を阻止しようとする霧切がスナイプするのはつららだと、2人は予想しており、山荘の外に二人の姿が見えないかリコは探っているのだ。だが、いくらリコが注意深く見渡しても周囲には五月雨と霧切二人の姿はなかった。
そんな時に銃声が響き渡る。相変わらず山荘の周囲にはいないが、ジョニィは見張っているのとは正反対の位置から撃ってきたのだとわかった。五月雨と霧切は、つららを直接狙うのではなく、「木の枝を屋根の上に落とすことでつららを間接的に落とす」という方法を取ったのだ。瞬時にジョニィは霧切が持つライフルのマズルフラッシュから位置を突き止めた。しかし五月雨と霧切二人の目論見通りにつららは落とされた。こうして第一の勝負は五月雨&霧切が勝利した。

だが、その後霧切は自分たちがいた場所の周囲であるものを発見する。「NICE SHOT!!」と書かれた枝だ。ジョニィの仕業だった。つまり、ジョニィは事前に霧切たちがこの場所から狙撃することも見抜いていた上であえて見逃したのだ。1戦目は手を抜かれての勝利だと知った五月雨と霧切は相手の強大さを改めて思い知った。

しかし何はともあれ今回は2人の勝利。ジョニィとリコが去った後の山荘に入ると、すでに犯人は連行されてしまった知る。どうやら霧切と五月雨の勝利がそのまま事件阻止に繋がるらしく、犯人は殺人を起こす間もなくとらえられてしまったのだった。これにより二人は、「逆に負けてしまったらどうなるのか」という不安も覚えるのだった。

二週間前のファミレスにて

山荘での事件から2週間と1日前、五月雨&霧切はジョニィ&リコからファミレスに来るように呼び出しを受けていた。ここでジョニィは上記のような勝負のルール説明を行った。勝負では「黒の挑戦」においては二組とも部外者だが、探偵が黒の挑戦の封筒を開けた時点で手元のタイマーが動き始め、事件が起きたことを察知できる。そして現場に向かい、五月雨&霧切は殺人を阻止し、ジョニィ&リコは阻止されるよりも先に霧切のリボンを撃ち抜くことが勝利条件となる。ジョニィは犯罪被害者救済委員会に所属はしているが、悪辣なところは皆無で一貫して明るい人間でおり、ただ「人生を楽しみたい」ということが行動原理となっていた。

また、リコと話すと彼は「今が探偵としての実力のピークでありこれからは過去以上のものは得られない」とネガティブな想いを抱えていることを打ち明けた。リコはこのゲームが終わったら海外でこの世の謎に挑む勉強をしたいのだとも言った。

射撃訓練

「黒の挑戦」が始まるのは二週間後ということなので、射撃を行う霧切の射撃精度を上げるための訓練を行うことになった。学校の近くにあった射撃場で霧切はジョニィから受け取った狙撃銃「レミントンM700」を使って射撃の反復練習を行っていた。五月雨は狙撃のためのサポートをして、霧切に目標までの距離や風向きなどを教えることになる。霧切の狙撃技術は元々ジョニィに仕込まれたもので、中学女生徒とは思えないほどの腕前だったが、射撃を専門としているジョニィはもちろんその遥か上の腕前。霧切が高確率で当てられるのは300メートルくらいだが、ジョニィは800メートルの距離でも難なく標的に当てるだろうと霧切は予想していた。

そしてこの甲斐あって1つ目の山荘での黒の挑戦では、相手の手加減があったとはいえ勝利することができたのだった。

形代島での黒の挑戦

山荘での事件から3日後に五月雨の元に次の「黒の挑戦」の情報を記す手紙が届いた。
霧切は安全のために五月雨の寮に寝泊まりするようになっていて、2人でこれを見た。すると以下のような情報だった。

今までにないトリックの数に驚くが、これはアガサ・クリスティーの作品「そして誰もいなくなった」を模したものだと霧切は予想した。
島は東北地方のリアス式海岸が特徴的な地域にあるものだった。島は港から3キロ東に位置する。二人はすぐに島へ向かおうとするが、船は夜の間出られないというので一晩はその島の最寄りの港町の旅館で泊まって作戦会議を立てた。
霧切の提案により「関係者が島に向かう前に止める」ことや「五月雨を囮にして霧切が近づく」といった作戦を立てる。

だが次の日の朝、2人が旅館を出発しようとしたとき、銃声が鳴り響き、霧切のリボンを銃弾が貫いた。
なんとジョニィは3キロ以上も離れている形代島から本州に向かって狙いをつけ、霧切のリボンを撃ち抜いたのだった。800メートル程度は軽く撃ち抜くという霧切の予想の遥か上を行く射撃だった。こうして2回戦目は何もできないままに敗北してしまったのだった。

敗北したことで黒の挑戦自体はどういう扱いになるのかと気になって二人は形代島へ向かう。
するとそこにあったのは「顔面が切り取られた体型も服装もそっくりな9つの遺体」だった。そこに現れたのは西湖彩子という女性だった。彼女はこの事件の探偵探偵ナンバーは「950」であり、殺人を表す「9」に関して最上級である「0」ナンバーの凄腕探偵だった。彼女は自分の手柄を取られたくないからと五月雨と霧切には退散するように要求。二人はゼロナンバーの探偵ならば大丈夫だろうとその場を去った。

再び射撃訓練

霧切はジョニィと自分との差を痛感し、考えが甘かったと反省した。ジョニィのように3キロものスナイプをするのは絶対に不可能であるため、遠くからでも見つからないように慎重に動くしかないと判断した。

霧切は五月雨に自分の祖父の霧切不比等が今は日本に帰ってきていて、「新仙帝のことは任せろ」と言っていたことを五月雨に伝えた。
霧切は自分が再び海外へと行く可能性も高いことも伝える。五月雨は「霧切との別れは運命的に約束されている」ような気がしていた。

3つ目の黒の挑戦が開始

その後また五月雨に黒の挑戦の情報が届いた。

そこにはこう記されていた。自分が探偵として呼ばれるのは前2つのものとは違っていたので戸惑う五月雨。霧切は「これは自分たちとジョニィたちと、それに第三勢力の刺客たちの三つ巴の戦い」なのだと見抜いた。凶器は全て銃器であるので明らかにジョニィに合わせられたもの。委員会は霧切らとジョニィらが介入者として黒の挑戦に接触することを拒み、むしろ主役となる「黒の挑戦」を設定したのだ。刺客たちにとっては霧切とジョニィを殺すことが成功条件となっている。
しかし、それは今回は他には被害者となる者がいないことも意味していた。五月雨と霧切が出向く必要性は全くないのだ。そのため二人はジョニィとリコが刺客たちを倒してしまうことに期待していた。

廃遊園地でのジョニィ&リコ

場面は変わって再びジョニィ&リコのコンビ。
二人は五月雨&霧切が期待していたように廃遊園地で刺客らと戦っていた。敵は複数おり、それぞれ1つずつ武器を駆使して襲ってくる。M60、ドラグノフを持った相手は倒したが、遊園地内で、M4とTAC50を持った敵の姿は見えないままに銃撃に見舞われる。車から降りたジョニィは風景に溶け込むギリースーツを着た敵が投げたスローイングナイフを1本、肩に受けてしまう。ジョニィはそのままリコを置いてミラーハウスへと入った。
後からリコが追いかけたが、ミラーハウス内部にいたのは顔がわからないほど壮絶に頭を吹き飛ばされたジョニィの遺体だった。リコは最初は信じられなかったが、確かにジョニィが死んだのだと受け入れた。すぐそばにはギリースーツの人物(女性)も倒れていた。リコは相打ちになったのだと考えたが、油断したところで死んだと思われたギリースーツ女に首を斬りつけられ、さらに外に出たところでM4(アサルトライフル)の銃弾を複数受けてしまった。

リコは五月雨に電話をかける。自分は恐らく死ぬという前置きで遊園地で起きた出来事を伝える。五月雨と霧切はリコを救うためにエデンサイド遊園地へと向かった。

五月雨&霧切が遊園地へ

遊園地へ向かった五月雨と霧切は瀕死になっているリコを遠くから確認した。しかしうかつに入ればリコと同じように銃撃を受けてしまう。まず遊園地の外側を回り込み、ジョニィが死んだというミラーハウスへと向かった。
リコの言う通りジョニィと思われる人物はミラーハウス内で銃弾を受けて頭が吹っ飛び死んでいたが、どこにも銃弾の跡がなかった。
天井には小さい開閉式の穴があったので、観覧車の上からここを通してTAC50(高威力のアンチマテリアルライフル)で狙ったのだと二人は予想したが、観覧車を見て見ると、32あるすべてのゴンドラにはTAC50ではなく、M60が設置されていた。さながら巨大なリボルバーで、これは顔認証で自動的に標的を狙う仕組み。リコはこれにやられたのだった。この観覧車をとりあえず機能停止させた跡、ジョニィを殺したTAC50がどこから飛んできたのかようやく二人は突き止めた。犯人は地下から撃ち、山なり軌道でミラーハウスの中にいるジョニィを撃ち抜いたのだった。

五月雨&霧切が地下にある通路を進んでいくとやはりTAC50を撃った犯人らしき男がいた。ミラーハウスにあった鏡を利用して敵を惑わして無力化させることに成功した。TAC50の男はスローイングナイフの女を嬲って殺していた。

これですべての敵がいなくなったということで二人はリコに近づいたが、実は生きていたスローイングナイフ女が霧切を襲おうとしていた。しかし何者かがその眉間を撃ち抜き、また同時に霧切のリボンもその弾道で撃ち抜いていた。

エピローグ

要するに、ミラーハウス内の死体はジョニィではなく、ジョニィが自分と似た体型の者(観覧車でM40の仕組みを作ったジョシュアという男)を身代わりにして現場を偽装工作していたのだ。その後まんまとジョニィは近くに身を潜め、遊園地を見張り続けていた。そして霧切を救うと同時にリボンを撃ち抜いて勝負にも勝ったというわけだった。ジョニィは五月雨らの前には姿を現さず、そのままどこかに消えてしまっていた。

リコは一命をとりとめ病院で治療を受けた。リコもこれで探偵業からは身を引き、先に言ったように未知の分野の勉強をすると語った。そしてジョニィからの褒美、ゲームの「参加証」としてあるものを渡した。
それはコインロッカーのカギだった。ロッカーの中には封筒があり、ジョニィの「人生はお前次第」というメッセージが封筒に貼られていた。

霧切は五月雨にバレンタインデーのプレゼントとしてチョコレートケーキをサプライズで用意した。喜ぶ五月雨だったが、実は封筒からあるものを手に入れていた。それは「円藤藤吉郎」という人物の名が書かれた名刺。これは1巻で犯罪被害者をスカウトしていた老人の名前。
ここで6巻は終わり。

感想・評価

5巻から11ヵ月の間を置いて刊行された今回のダンガンロンパ霧切6巻。
前回の引きでの予想通り、今回は五月雨&霧切とジョニィ&リコの真っ向対決というものだった。対して、意外にも霧切不比等は全く出番がなく、新仙帝はほんの少しだけ出ただけだった。

今回の特徴はジョニィ&リコ側目線で語られる場面が二度あるということ。一回目は山荘での殺人事件現場において、二回目は廃墟となっている遊園地跡において。今まで五月雨もしくは霧切が事件に関わる場合は一貫してその目線から物語は語られたので、特に一回目の、ジョニィ&リコの予想を超えてきた二人、という構図はなかなか新鮮だった。しかし「なんだ000クラスとか大したことないな」とか思ったところでジョニィの掌の上だったというオチも待っていたわけだが。

今回は今までと違い相手が000クラスのコンビのジョニィ&リコ、つまりラスボスが二人みたいな状態なので、この二人の株を落とさないように、000クラスの威厳を保った上でちゃんと面白い話になるのだろうか?とやや不安だった。「000の探偵って大したことないんじゃ」って印象になってしまうと必然的に同じく000クラス探偵で真にラスボスとなるはずの0新仙帝の格も落ちてしまい、この後への緊張感が薄れてしまうので、ここは重要だった。しかしリコも瀕死の重傷を負ったとはいえ生存したし、ジョニィも五月雨&霧切ペアどころかリコをも出し抜いていて勝ち逃げした、ということでその辺は大丈夫だった。ただ、今回はリコの能力が意図的に落とされているように感じないでもない。ジョニィは容姿の似た者を替え玉とした、ということだが、顔が完全に吹き飛んでしまったとはいえ、リコがこれをジョニィとすっかり思い込んでしまう、というのは今回の話では唯一違和感を感じたところだった。その後にギリースーツを着た刺客に首を斬りつけられるのも、以前はスコップで銃弾をはじくという芸当を行ったリコにしてはうかつでは、という印象がある。ジョニィが3000メートル以上先の島から港にいる霧切のリボンを撃つというとんでもないスナイプを行った時は「そうきたか〜!」と興奮したんだけどなあ。

というか、リコは今回普通に死ぬものだと思っていた。登場した時から「こういうキャラこそダンガンロンパだから殺すんだろう」という印象を持っていたのは確かだったし。ジョニィもリコも今回で死なずに退場となったため、「希望の学園と絶望の高校生」時点でも生存している可能性も高いと思うのだがどうだろう。絶望が広がった世界でもこの二人が死ぬということは普通に考えてなさそうだ。

だがこの作品の主人公の五月雨結に関しては、わかっていたことではあるがそうはいかなそうだ。今回ついに、リコに「このまま犯罪救済委員会に関わると結さんは戻れないところに行ってしまう」と心配されている。それも、自分の予想は当たると豪語しているリコの言葉でだ。

この6巻ではその表紙が今までで最も目を引くものになっている。左手を伸ばす霧切とその先に見えるあの黒い手袋、そして後ろには顔半分だけ見える結お姉さまの笑顔。この6巻と次の7巻の表紙は、ちょうどダンガンロンパゼロの上下巻と同じように対になっているということだろうし、ストーリーは敵方の大物としては新仙帝を残すのみ、というところだ。恐らく次の7巻でこのダンガンロンパ霧切も完結を迎えるはずだ。

結お姉さまに関しては1巻時点ですでに不穏だったし、霧切草での霧切の反応からして二人の離別はもう確定的だった。ついに来るべき時が来るのだろうというところだが、それが具体的にどういう形となるのかが問題だ。
最近、特に4巻以降では、霧切を裏切るような真似を五月雨がするわけはないと思っていた。絆を深めた今、この期に及んで結お姉さまが霧切を裏切るはずがないと。

だが今回ラストでそれは打ち砕かれつつある。結お姉さまが霧切を「裏切る」のか「裏切らない」のか、もうわからなくなった。
「円藤藤吉郎」というのは、1巻の最初の事件を起こす犯人の朝倉の前に現れた犯罪被害者救済員会の人間。彼が朝倉を甘い言葉で誘い、朝倉は復讐を行うことを決意するのだ。五月雨とこのことを結びつけると連想する未来は一つ。五月雨は「犯罪被害者」となり「妹の事件について復讐をするかどうか迫られる」ことになる可能性が俄然高くなったわけだ。今まで折に触れては何かの前置きのように触れられてきた妹の件。ついにこのことでいわば「悪落ち」する可能性が出てきてしまった。思えば1巻時点でこの展開は予想できていたはずだが、今になって、1巻で挿絵付きで描写された円藤の名刺を再び挿絵で描写するとは。明らかに強調的で、1巻のリフレインを意識している。後は新仙帝と対決して終わり!くらいに思ってたのでそっちはノーマークだった。ただ、この名刺は委員会側から進んで接触されたわけではなくジョニィが勝負を楽しませてくれた礼として送ったものだ。そこには「人生はお前次第」というメッセージが添えられていて、つまりジョニィは「復讐するもしないも自分次第」と言っているということだろうし、1巻を連想させる名刺が出てきたからといって必ずしも復讐をするというわけでもないのだが…。でもこの名刺のイラストで6巻の引き、ということはそういうことでまず間違いないだろう。ジョニィのメッセージもネガティブに受け取れば「復讐してもいい」とも取れるわけだし。

ここでダンガンロンパ霧切と同じく北山猛邦氏が手掛ける霧切草でのテキストを引用する。「お姉さんは?」と主人公の松平に車の中で問われて霧切響子は以下のような反応だ。

「尋ねると、急に彼女は黙ってしまった。窓枠に頬杖をつき、目を細めるようにして、外を見つめる。ミラーに映る彼女の表情は、まるで深い海の底にいるように暗く沈んでいた。何か触れてはいけない部分に触れてしまったのだろうか。」

この文章からは単なる死別以上の暗い印象を受ける。やはり五月雨は復讐者になってしまい、非業の死を迎える、と考えるのが自然だ。
しかしそれでも、元々優等生な五月雨が今更に霧切を裏切って復讐に手を染めるとも考えられないという思いも拭いきれないわけで、う〜ん…。改めてじっくりと考察してみる。

結お姉さまがどうなるかを考えるにあたって重要なのは上の5要因などが挙げられる。正直、@がなければ「復讐には乗らない」と言い切っても良いくらいだと思う。もし火傷に関してそんな風にネガティブな想いがないのであれば、恐らくBから考えて「霧切をかばって死ぬ」というのが最も可能性が高くなる。だが、「ただ純粋に霧切を思ってかばって犠牲になった」ということなら、霧切は@のような思いを抱くだろうか?これはやはりA要因により五月雨が復讐者となってしまったため、霧切は自分の手の火傷に関して@のような暗い印象を持っているはずなのだ。具体的にどういう経緯で火傷を負うのかはもちろん分からないが、完全に五月雨を信頼しきっている今の霧切が、いきなり何らかの形で五月雨に裏切られるということがあれば、正常な思考を失っても自然だ。そういう経緯で負う火傷だからこそ、数年後の霧切はそれを自分への戒めとしているのだろう。
対抗できる要因としてCもある。これはトリプルクラスゼロの龍蔵寺のお墨付きとも言える言葉だ。彼は自分の妻子が犯罪者に殺されてから犯罪被害者救済委員会に関わるようになった。その彼に「自分とは違う道」と言われたのだから、はっきり言えば「五月雨は復讐はしない」ということになる。これがあったから、5巻の感想で「危うさは持ち直した印象がある」と書いたわけだし。むしろ五月雨が復讐するのかしないのかという件はこれで決着がついたのではないかとすら思っていたくらいだ。だからこそ今回、ラストで円藤の名刺が出てきたことに意表を突かれたのだし。
Dに関してはよりそれを補強する、と言いたいところだが、6巻と対になる7巻の表紙ではただの笑顔ではなく、「顔の半分ずつで違う顔」である可能性も、ことダンガンロンパにおいては連想しやすい。なにせあの左右非対称の白と黒のクマが作品のマスコットなのだから。ちなみに、ダンガンロンパゼロの上下巻ではまさに、左の上巻表紙がモノクマの白い側、下巻表紙は黒い側と真っ二つに分かれている。こういう表紙にしたのは明らかにこういった予測、疑いを持たせるためのものだろう。これは7巻の発売直前に表紙が公開された時にどうなるか明らかになることだから、どちらの説の後押しになるのかは7巻発売よりも前に自ずと分かることだ。

総合的に考えて、結局「復讐者となって裁きを受ける」のか「霧切をかばって死ぬ」のかどっちになるのかは全く予想がつかないという結論に至った。ほとんどどちらを考えても相殺されて五分五分という印象に落ち着いてしまう。上にも書いたが、1巻の時点で五月雨が復讐者となることは予想はできた。素直に考えればそちらが濃厚だろう。しかし、今の五月雨が妹の復讐を出来るチャンスを手にしたとて、それに飛びつくようには到底思えないのだ。仮に復讐を行う選択をするとしたら、例えば「自分が復讐をしないと霧切に危害が及ぶ」というような特殊な条件を付け加える必要があると思う。メタ的に考えて、1巻で読者の誰もが予想のついた結末、いわば予定調和のような展開をミステリー作品が用意するだろうか?という疑問も湧く。
もう一つ言えば、復讐者になるのか、かばって死ぬのかというのは二択ではなく、この2つは両立しうる。仮に復讐をする決断をしたとしても、五月雨が霧切を一転して軽んじるなどということはまずありえないからだ。
もちろん、全く別の展開である可能性もある。だが2人には離別が待つという、その一点だけは間違いない。

何せミステリー作家が手掛ける作品だ。最終的に待ち受けるのが二人の離別だとしても、その過程はきっと思いもよらないものになるだろう。次巻も期待しています、北山先生。

ダンガンロンパV3をプレイしてこれがダンガンロンパ最終作だと確信したが、真にシリーズが終焉を迎えるのはこのダンガンロンパ霧切が完結した時だろうとも思っていた。完結を迎えた時どういう気持ちになるのかはわからないが、深い寂寥感を感じているのは確かだろうから、待ち遠しくもあり、出来れば終わりを見たくないようでもあり、複雑な気分。もうすでにこの6巻時点で、1巻発売からは小学生が高校生になるくらいには時間が経過していて、作品には深い愛着がわいている。五月雨&霧切コンビの活躍はアニメは無理にしても、あるいはドラマCDとかでもいいんで実現しないだろうか。

登場人物・キャラクター解説

五月雨結

今回の活躍は結お姉さまとしては原点回帰、スタンダードな立ち位置。霧切と常に共に行動し、霧切の思考に必死に追いつこうとしながらトリックを見破ろうと考え、そしていざとなったら自分が霧切の盾になってやろうとする。そしてリコに今回「このままだと結さんは戻ってこられない場所に行ってしまう」と言われてしまう。そしてラストシーンでは犯罪被害者救済委員会のスカウトマン、円藤藤吉郎の連絡先を知ったところで6巻は終わる。霧切草の時点で悲劇は確定だったので、あとはどういう形でそれを迎えるのか、というところだろうが、1巻で円藤藤吉郎が朝倉と会話するシーンを見返してみると、嫌でも「悪落ち」を想像してしまう。6巻の表紙で見える結お姉さまの顔半分の笑顔が悲しいような怖いような。次巻7巻の表紙が6巻と対になっているのだろうが、果たしてちゃんともう半分も笑顔になっているのだろうか?

霧切響子

五月雨同様、今回はお姉さまと共に捜査&行動して立ち向かうといういつもの立ち位置。しかし、今回は珍しくいくつかの判断ミスや見落としをしている。特にジョニィと思われる死体に近づいたのにビーコンが鳴らなかったことに対して違和感を持たなかった、見落としたというのは、確かに霧切さんにしては珍しい、という印象だった。あと今回はスナイパーとしても活躍する。女子中学生と狙撃銃、とか言うと映画のタイトルみたいだ。今回最後にはバレンタインデーのプレゼントとしてお姉さまにケーキをプレゼント。いつも通りリコと親し気にしている場面では嫉妬したりもして、すでに2人の信愛度はマックス。しかし新仙が自分の祖父に化けていたことは未だ黙っているため、すでに知っているお姉さまはそこを若干寂しがっているような描写もある。

御鏡霊(リコ)

今回はジョニィとコンビを組んで行動する12歳の天才美少年探偵。少年、と思い込んでいたが、今回五月雨に「本当はどっちなの?」と聞かれてはぐらかしているので実は女性の可能性もあるようだ。今までは完全無敵の存在だったが、自分のピークは今で後は落ちるだけだと弱音を吐いたり、廃遊園地で重傷を負ったり、ジョニィのたくらみにまんまとはまり見破ることができなかったりと、今までと比べると普通の存在になっている。死を覚悟して五月雨&霧切に連絡したが、結局自分で行った止血措置が適切だったために死ぬことはなかった。今回の一件でジョニィともども物語からは退場となるようだが、別れ際に「結さんはこのまま犯罪休載委員会に関わると戻れないところに行ってしまう」と心配した。

ジョニィ・アープ

リコと共に行動する000クラス探偵。一応は犯罪被害者救済委員会の所属ではあるが、リコ同様にほぼ自由意志のみで活動していて、組織でのポジションはルール違反者を成敗することなどのみで、組織の中核にいるわけではなく、黒の挑戦の運営に関わってもいない。五月雨&霧切にスナイパーライフルを使った3本勝負を持ち掛けた。
超人的な射撃能力を持つという設定ではあったが、3キロ以上離れた島からの狙撃で霧切のリボンを狙い、当ててしまうという完全に人間技ではない芸当を見せつけ、五月雨&霧切を驚かせる。遊園地でミラーハウスに逃げ込み、遅れて入ったリコがジョニィの遺体を発見した。と思ったらそれは髪型や体型が似ている別の人物でジョニィは生きており、霧切が廃遊園地で刺客に殺されそうになった時にどこからか射撃し、その頭もろとも霧切のリボンをも再び撃ち抜いた。こうして3本勝負のうち2本を取って五月雨&霧切に勝利したが、その後は登場はなく、リコと共に退場した。リコを通して五月雨にコインロッカーのカギを渡し、五月雨はそれにより「円藤藤吉郎」への連絡先を入手した。

西湖彩子

今回は3つの事件が描写されたが、そのうちの2つ目の形代島での担当。2つ目の勝負で五月雨&霧切が敗北したためか、島では9の遺体があり、すでに殺人は行われてしまっていたが、そこに遅れて乗り込んできた女性探偵。なんとクラスは「0」で、しかも担当は「殺人」。つまり殺人事件に関しては最上級という存在なのでただ者ではない。「40才になるまでにトリプルゼロになって今までバカにしていた男を見返して大富豪と結婚して…」と聞いてもいないのに語り出す。そのために手柄を取られたくないと考えているため、五月雨と霧切にはさっさと退散しろと言って追い立てた。コンプレックス持ちで俗っぽい中年女性だが凄腕探偵、とかなんか物凄く面白いキャラ付けだが、出番はほんの少しで残念。

ギリースーツ女

廃遊園地でジョニィや霧切の命を狙う刺客。ギリースーツというのは風景に溶け込むための服。周囲が雪なので真っ白いものを着ていた。リコの首を斬りつけた後は、どういう経緯化わからないが地下に潜んでいたTAC50男に暴行されていた。それで死んだと思われたが実は生きていて、瀕死のリコのそばに身を潜めていた。霧切を仕留めることができたはずだったが、遊園地周辺のどこかにいたジョニィに頭を撃ち抜かれて死ぬ。ジョニィとリコ両方にケガを負わせているのでかなりの凄腕。最初は新仙帝が化けているのだと思ったが関係なかった。

凡人の感想・ネタバレ>ダンガンロンパ霧切6巻