ダンガンロンパ3 朝日奈黒幕説を全力で否定する

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執筆日:2016/9/07

はじめに

現在放映中の「ダンガンロンパ3 The End of 希望ヶ峰学園」。現在未来編が9話、絶望編が8話終了となり、物語はいよいよ佳境、未来編最新話ではあのキャラもまさかの死亡となり、風雲急を告げる展開となっている。
「未来編の黒幕は誰なのか?」という話題は放映当初から盛んであるのだが、個人的に見過ごせない予想がネット上に蔓延しているので、それに反対する意見を書きたくなったのでここに書くこととする。

その予想とはズバリ、「78期生の朝日奈葵が黒幕である」という意見だ。

もうこれが9月上旬時点で本当に盛んになってて鬱陶しいので、ここで声を大にして否定していきたい。
予防線など張るのも無しだ。とにかく、自分はこの意見に全く同意できないのでこの意見を否定したい。

入れ替わり説を否定する

朝日奈黒幕を推す意見の中で、もしかするとこれが最も多いだろうか?
何やら「朝日奈は雪染や江ノ島と前髪とかが似ているから実は入れ替わっていて…」とかいう意見である。
入れ替わりというからには、完全に別の誰かが声までも朝日奈に成り代わっていてという話だ。

これに関しては、そんなんできたらおかしい。できちゃいけないのである。

ダンガンロンパは超高校級の能力を持つ才能を持つ人物たちが登場するし、電脳世界が舞台だったりと荒唐無稽だったりする世界ではある。
だが、こと変装技術に関してはこれが当てはまらない

最大の理由が、絶望編でもそれなりに目立つ立ち位置となっている「超高校級の詐欺師」の存在だ。
彼はその能力ゆえに本来の自分というものを持たず、誰かの姿を借りてしか生きることができないという性を背負っているが、それを代償にしての変装技術はまさに神業的なもの。太った体系にこだわっている設定があるのであえて体系だけは似ないようになっているのだが、それを除けば、どうやっているかは不明だがとにかく完璧な変装。その彼と同等の変装技術を、易々と他のキャラに持たせてはいけない。それをやってしまっては、超高校級の才能を持つ人物たちの物語であるということの否定になる。世界の地盤から否定することになるのだ。

ダンガンロンパ世界で唯一、彼と同等以上の変装技術を許されている人間はダンガンロンパ霧切に登場するトリプルクラスゼロ探偵、新仙帝だ。作中で霧切響子の祖父の「卯槌棟八郎」に変装し、孫の響子の目すらも欺くほどの変装技術を持っている。体系を似せないポリシーである詐欺師と違いシリアスに、「完全無比の変装」となる。だがこの世界においてトリプルクラスゼロ探偵というのは「世界を滅ぼしかねない」ほどの力を持っているという表現すらされている。正直、ダンロン霧切を読んでこの人物が出てきたときは「いやいやないだろー」と思わざるを得なかったのだが、まあ世界すら動かす力を持つ人間とまで言うんだからそういうのもアリか、とギリギリ納得したものである。

あと、ダンロンファンでもあんまり読んでいないであろうダンロン十神には、新仙と同等の変装をする絶望落ち状態の田中頑蛇夢、澪田唯吹が登場する。だが、澪田はこの変装を解いた直後に「何もかも虚構の世界」という発言をしている。ダンガンロンパ十神中の感想で書いた通り、この変装と発言を決め手として、自分はダンロン十神の世界は最後に全てひっくり返す、嘘っぱちの世界なのだろうと予想している。

というわけで、ダンガンロンパといえども、完璧な変装というのは「本来の自分の名前や姿を失うというほどの代償を持ってこそようやく」あるいは、「世界を動かすほどの力を持つとまで言われる桁違いの人物がようやく」持っている力ということである。安易に彼らを超えるような真似は許されていない。戦刃が江ノ島に変装していたような例もあるのでなおのこと説得力がある。変装に才能がない人間が変装したらそれなりの変装にしかならない。ダンガンロンパゼロででも、「江ノ島を隠す」ことが目的だった松田夜助は変装の才能は特に持っていないからこそ、ただ江ノ島の髪型を変えただけの施ししかできなかったはずである。重ねるが、たとえ荒唐無稽なダンロン世界であっても、声まで変えての完璧な変装というのは「超高校級の詐欺師」か「新仙帝」にしか許されていない。後は別格の存在であるカムクライズルも含むことになるか。

逆に言うと、朝日奈に変装しているのが詐欺師かカムクラだというならば、自分はこの説を否定しない。
ただ、カムクラ、日向はジャバウォック島にいるのが描写されてしまったし、今までの流れから詐欺師だけ2の脳死状態から復活して未来機関に潜りこんでいる、というのも相当に低い可能性だろう。それに詐欺師が化けると絶対太るはずだ。
能力は易々と持たせてはいけない、とは書いたが、松田の能力を基本として記憶操作技術を完成させた江ノ島がいるので詐欺師の能力もコピーして、とか考えられなくはない。が、お化粧技術じゃあるまいし、未来編で江ノ島が生きている前提になる。百歩譲って江ノ島が可能だとしても、さすがに他のキャラには譲れない。何より、未来編9話まで見た限り、姿や声だけでなく、行動や言動、挙動があまりにも朝日奈葵すぎるので考えにくい。

詐欺師でさえ、性格の完全なコピーは不可能なのはシリーズプレイヤーなら知っているところだろう。アニメでの御手洗への変装はともかく、2での十神のなりきりは明らかに、ちょっとダメなところもある本物の十神を知らないがゆえに「詐欺師の想像での理想の十神を体現」してしまって、なり切れていないものだったはずだ。朝日奈のアリバイ保証確認も含め、朝日奈らしい行動を挙げてみる。

振り返れば振り返るほど 怪しい以上に「これは間違いなく朝日奈葵だろう」と思える行動ばかりだ。これらが果たして演技だろうか?到底そうは思えない。確かに、一人だけ十三支部であること、腐川を7話で「腐川さん」と呼び、「響子ちゃん」と呼ぶようになっている霧切とは逆に他人行儀になっていたことなどは引っかからないでもない。が、それ以上に上記の要素により本物だとしか思えない。

個人的に朝日奈黒幕説の中でも特にこの意見を否定したいのだが、それは、これもダンロン十神中の感想に書いた通り、ダンガンロンパ世界は変装トリックに頼り過ぎているきらいがあるからだったりする。戦刃の変装、詐欺師の十神への変装、松田が江ノ島に施した音無の変装、新仙の変装、田中と澪田の変装、アニメでも詐欺師の御手洗への変装…。

例えばルパンなんかも完璧に変装するが、あれは大抵、直後で「ばかもーん!そいつがルパンだ!」となるわけだからいい。何より、推理ものではない。推理を主眼に置いた作品で、そっくりそのまま変装できるというギミックをあんまりガチで、核心に迫るところで使うのは反則だと思うのだ。もう変装は使わないでくれ、という祈りも込めつつこの説の否定は終了する。

弟の死関連動機を否定する

次はこの説。
朝日奈の弟の朝日奈悠太が絶対絶望少女で死んでしまったため、それをきっかけに絶望状態のようになった、というような説だ。未来編8話で朝日奈が弟の件について触れた描写があってからはなおのこと勢いが強まった説だろう。

これに関しては一言で言えば、朝日奈をみくびりすぎだろと。

朝日奈は確かに、「希望の学園と絶望の高校生」で、親友の大神さくらが自殺したことで思い詰め、大神を絶望させるような真似をした自分たちのような人間は生きる価値がない、と苗木たち含め全員の全滅エンドを望んだキャラでもある。直情的ゆえに危うい部分もある。
だが、それはひとえに親友を思えばこその行動であり、決して利己的なものではない。自分だけ弟が死んだのに苗木たちは生きてるなんてずるい…なんてことは絶対に考えないキャラだ。

まして、よく考えてみれば苗木は妹は無事とはいえ両親は絶対絶望少女で死んでいるし、十神家は滅亡しているし、描写がないだけで腐川だってカメムシ以外の親類も全滅していると見ていいだろう。ていうかカメムシももう絶対死んでいる。いやとにかくそういう周りがどうというより、朝日奈はそんなにネチネチした性格ではないはずだということを強調したい。

誰を恨むということでもなく、弟を死なせること自体で自分を責めて思い詰めた、という可能性もない。
まず前提として、78期生の生き残りは、ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生において、苗木の希望が伝染した人間であるということを忘れてはならない。霧切、朝日奈、葉隠、十神、腐川はそういう、ある種の庇護の元にいると思っていい。作中で語られるように、この世界において絶望の力は絶大ではあるが、それは希望もまた同じ。未来編9話で霧切が過剰なほど苗木を称えるシーンがあったが、あれはそういうことを表しているだろう。葉隠が絶対絶望少女の特典小説で葉隠らしからぬ活躍を見せたのもその影響なのは間違いない。十神がダンガンロンパ3では以前と違い、他者を信じるようになっているのもそうだ。腐川ですら、絶対絶望少女の中盤でこまると喧嘩する際には自分がコロシアイ学園生活を乗り越えてきたうえで身に着けた強さがあることをこまるに対して強調する。
朝日奈たち78期生はゲーム中のその時より間違いなく精神的に強い。今更絶望落ちになどならないはずだ。

ただこれに関しても例外を加えると、朝日奈が強制的に絶望状態にさせられたのならばその限りではない
絶望編で、江ノ島は絶望というものを御手洗のアニメの能力を使い、洗脳という形で広めたらしいことが明らかになってきている。これは恐らく個人の意思を超越して強制的に絶望状態にさせるほどの力を持っていると思われるので、江ノ島の眷属により朝日奈が絶望させられた、というならば朝日奈絶望説も否定しない。ただ、9話までの朝日奈の行動どれをとっても素のものであるとしか思えないので、否定はしないが個人的にはそれもないと思っている。

メタ的に否定する

最後はやや身も蓋もない、メタ的な否定をすることにする。

注目したいのはこのアニメダンガンロンパ3が、希望ヶ峰学園シリーズ完結編であるということだ。
2010年に初代が発売され、翌年には続編、さらに2013年には外伝、その間に小説スピンオフが複数出て、舞台劇という意外な展開もし、そして今回このアニメで希望ヶ峰学園というシリーズは完結を迎えることとなる。その魅力的な世界観、キャラクター、意表を突く展開により自分含め数多くのファンを獲得してきた。6年というのは決して短い時間ではない。積み上げてきたものはスパイクチュンソフトにとって何物にも代えがたいものだろう。
そこで、主にゲームとして発表されてきた「希望の学園と絶望の高校生」、「さよなら絶望学園」、「絶対絶望少女」に注目したいのだが、どの作品も明確に、過程はともかくグッドエンディングだ。
「希望」という言葉を胸に、多少強引ながらもグッドエンドに持って行くのがダンガンロンパなのである。

そこで考えたいのだが、仮に、初代の生き残りである最古参キャラの朝日奈が黒幕で、さらに最後には死んだりしてみた日には、気持ちよくシリーズ完結を迎えられるだろうか?

もちろん自分は全力でノーと答える。そんなエンドを迎えた直後に、「さあこれで希望ヶ峰学園シリーズは終わりです!次はNew ダンガンロンパV3として新シリーズにご期待ください!」なんてことになったら、自分は絶対に冷めた目で見てしまうと思う。
企業が商品として出す以上は商売である。商売である以上はシリーズのファンの気持ちを萎えさせてはいけないのは絶対だ。これに関しては未来編9話で死んだ描写の霧切に関しても言えることなのだが、ここまで生存させてきた最古参キャラを完結編で殺すわけがない。今まで気持ちよく各作品終えてきたのに、冷や水をぶっかけることは、商売として許されてはいない。

無論、それで喜ぶ層もおそらく相当数いる。「これがダンガンロンパ!」なんて言って、せっかく6年生きながらえてきたキャラクターが死んだのを喜ぶのかもしれない。だが、少なくとも自分はそんな気持ちには決してならない。小説を読み、手間をかけて考察や感想を書いたりしている自分は間違いなくコアなファンだと思っているが、どのキャラにも(特に78期生)並ならぬ愛着があるし、そんな悲しい結末は見たくない。そして、それは制作側もわかっているはずだ。そう信じたい。

なんか願望のようになってしまったが、とにかく「グッドエンドで終わるのがダンガンロンパ」ということは過去を振り返って確かであり、それは完結編という位置づけにより、盤石になっているだろうということだ。
「外が荒廃していても麦から育ててドーナツを作る」とまで言い、希望を持って閉鎖された学園から出ていった朝日奈が黒幕だったり死んだりしては、そのお約束は反故にされ、ひねくれ者以外には決して受けない、間違った結末と断言したいわけである。

まとめ

主に3つの観点から朝日奈黒幕説は否定はしてきたが、例外も挙げた。

まず、「朝日奈に詐欺師かカムクラが」ならば入れ替わり説も否定しない。
それに、「朝日奈が強制的に絶望状態に洗脳されている」ならば絶望落ちも否定しない。
ということだ。ただ、それも簡単にだが否定した通りである。どちらもないと思っている。

実際、朝日奈は行動や言動の節々に怪しい点があるし、苗木たちと違い、一人だけ十三支部所属だったりするのは怪しいと言えると思う。だが、それは例えば、「2での思わせぶりなカウントダウンのマシン」だったり、「ソニアがいかにも黒幕かと思いきやそうじゃなかったり」したことだったり「黄桜がいかにも怪しいのに単純に霧切のことを思って行動していた」ことと同じ、思わせぶりではないだろうか?ダンガンロンパは本当にこういうミスリードが上手い。受け手がどういう推理をするかを完全に把握しつつ、それを裏切る展開を持ってくるからこそ、特に2の5章などでは高い評価を受け、ファンを獲得してきたはずだ。

あとはあえてここで考察してみたいが、ずばり、未来編の黒幕は誰か?ということだ
個人的には万代だと思っている

これも過去作を振り返って考えてみるが、ダンガンロンパシリーズで速攻で死亡するキャラというのには共通項があるのだ。

まず初代作品だと舞園さやかが該当するだろう。主人公の苗木に協力的で、そのヒロイン然とした姿からはまさか最初に死ぬとは思わない。だがそれをやってのけ、ダンガンロンパとはかくあるものとプレイヤーに知らしめた。
同じく初代には戦刃が化けていた江ノ島が死ぬのもサプライズだ。あまり生き延びる見た目には見えないものの、学級裁判すら行うことなく、例外的にモノクマに殺されるということで特殊な死に方だ。。

2だと、詐欺師が化けていた十神白夜が該当する。どういう理由でか、なぜか太った姿になった78期生のはずの十神が最初の事件で無惨にも死に、前作プレイヤーを困惑させた。

絶対絶望少女だと、朝日奈葵の弟、朝日奈悠太が該当する。初代プレイ済みならば誰もが朝日奈の親族と分かる見た目をしていて、一体どういう形で活躍するのだろう?と思わせての、まさかの10分も登場することなくの爆死である。

これらの共通項というのは、単純に死にはプレイヤーを驚かせるサプライズが必ず存在するということだ。

だが、そこを行くと万代はどうだろう。
最初に死んだのは万代であるが、このまま何もなかったら何のサプライズもない。未来編において登場人物のほとんどが死ぬであろうことは事前に予想されていたろう。ただの死では何のサプライズにもならない。初登場のキャラがいきなり死んだだけになってしまうのである。これは絶対に何か裏がある。ないわけがない。事実、朝日奈黒幕説の声がでかくなっている現状では万代を疑う声などほとんど見ない気がする。これは間違いなく、黒幕は万代である。釘宮声のあんなキャラがあれで終わりのわけねえ!という思いが強いのも否定できないが。

とまあ、黒幕予想はあくまで余談。
とにかく、スパイクチュンソフトがコアなファンの心をわかっている、そう思いたいということで締める。

凡人の感想・ネタバレその他>朝日奈黒幕説を全力で否定する