神撃のバハムート GENESIS 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレアニメ>神撃のバハムート GENESIS

執筆日2014年12月31日

評価

ソーシャルゲームである「神撃のバハムート」のテレビアニメ作品、それがこの神撃のバハムートGENESISである。
自分自身、ソシャゲというのは全くプレイしない。ていうか実は、スマホすら持ってない、ガラケーしか持ってないとんでもない時代遅れ者である。いやだってスマホって基本料金が今使ってる奴の3倍くらいになっちゃうんだ…。どうせ機能なんて使いこなさないし、別にいいやって。

そんな個人的な事情はここを見ている人間には超どうでもいいだろうだろうから感想・評価だ。
この作品、ニコニコ動画にて最新話無料で放送しており、12月30日に最終回となった。

王道で気持ちのいい展開、そして毎話恐ろしいほどの映像クオリティ。
ボーイミーツガールで男女二人が目的地を目指すというストーリー、飄々とした賞金稼ぎの主人公にそれを追う銭型的ポジションのライバル(親友)、ゾンビやサハギンやスケルトンといったモンスター、実体化して実際に人の目の前に姿を現す神や悪魔、神託により選ばれた聖女、それに疑心を抱き火あぶりにする王、などなど、王道中の王道ともいえる痛快ファンタジーな世界観なのだが、それがとんでもないハイクオリティで毎話描かれ、飽きさせない。とにかく全話通して「見ていて気持ちがいい、安心できる」構成だった。

だがこの作品、ニコニコ動画での再生数やマイリスト数などで言えばまったく芳しくなく、振るわなかった。ニコニコでの配信アニメだと、1話や最終話以外のマイリスト数は1000くらいが普通に人気のアニメの相場だと思うが、この作品はせいぜい500〜600ほどだった。
なんでこんなに面白いのに伸びないのだろうと不思議でしょうがなかった。所詮、現代のアニメといえば萌えとかが重視されてるんだなあ、と若干哀しくなってしまうものがあった。確かにデフォルメされていないリアル路線の絵でしかも主人公がアフロでクズ、そのライバルがリーゼントでやたら睫毛長い堅物、なんてキャラデザだと嫌悪感抱くのも無理はないかもしれないのだが…。もうこれは制作側がわざとやってるんだろうな。多くの人に見てもらおうというわけでなく、自分らが納得するための超クオリティ作品を作るのだという意気込みが伝わるようだ。したがってキャラクターに媚びなど一切必要ない、ということだろう。でもこのメインの2人、最終話ではあまりにもイケメンすぎてびっくりした。
視聴者側に立った売れ線でなく、ベテランが自己満足のために作った、というスタンスは前期アニメのスペースダンディに通じるものもある。あれも落語じみてたりして妙に深みを感じさせるもので面白く、映像も一部物凄いクオリティだったりしたのだが、一般浮けはしない、という感じの作品だった。

この作品の場合、話自体はもう至極真っ当、王道のため、ある程度先が読めてしまう展開であり、はっきり言えば突出した映像美なくしては大きく評価を落としてしまう作品なのは間違いない。だが、逆に言えば王道でも手間をかければ全く陳腐に見えないのだということを証明している。
この作品の存在自体が、原作ソシャゲがどれだけ儲かっているかを雄弁に物語っていると言えるんだろう。ソシャゲには全く縁がないのだが、金と時間をかければこれくらいのクオリティが仕上がるというのなら、儲かってるソシャゲはみんなアニメ作っちゃいなよ、と言いたくなる。それくらいに素晴らしい作品だった。

以下、キャラクターについてあれこれ。

主人公ファバロ。
賞金稼ぎの青年。赤いアフロということで某古典SFアニメの主人公を思わせる。性格は飄々とした三枚目というウェスタン的なキャラだ。クズだと思わせておいて根は全くの善人であり、決めるときは決める、憎いキャラである。
ヒロインであるアーミラを疫病神扱いしているが、それでも長い旅路において彼女に対して決して無視できない感情が蓄積されており…正直、最終話では泣きそうになった。剣の扱いに関しては何気に超一流。いいなあ、こういうキャラ。さんざん上では映像美を強調した評価になってしまったが、結局、この主人公の魅力もこの作品の重要な要素であるのも間違いない。

ファバロと同じく賞金稼ぎの青年、カイザル。
彼の父親はファバロのせいで死んだという誤解を抱えており、7話でそれが解けるまでファバロを仇として追い続ける。しかしファバロとは元親友であり、ファバロはあえてその誤解を解こうともしておらず、まるでカイザルに生きる意味を与えているかのようでもある。ファバロとは全く正反対の堅物剣士だが、彼にもファバロに匹敵するくらいの魅力があり、もう一人の主人公と言っても過言ではない。ファバロにとってのアーミラのように、彼にとってもリタという相方になるキャラがいるが、その彼女とのやり取りも面白い。堅物キャラというと見ていて不快になる場合も多いのだが、彼に関してはまったくそういう感じを受けなかった。暗い過去を抱えながらも性根が曲がっておらず、ひたすらに真っ直ぐで情を重んじているキャラだからだろう。剣の腕はファバロと同等の超一流。ファバロとカイザルの剣戟シーンはとにかく格好いい。

ヒロイン、アーミラ。
姿は美女だが、精神年齢的にはまるで幼児。そして実は神と悪魔のハーフである。1話以前に「神の鍵」という、バハムート復活の鍵を神が住まう天界より盗み出している。序盤は「ヘルヘイム」という場所を目指す彼女がファバロを引っ掻き回しつつ展開していくのが基本となる。無邪気で食いしん坊。
終盤で彼女が信じているものはほとんどが偽りであったことが明らかになり、世界に破滅をもたらす鍵だった彼女は絶望しながらバハムートの中へと取り込まれてしまう。彼女にとってファバロだけが心のよりどころだったんだろうと思うともうね。ラストシーンは12話の積み重ねあってこそだ。

サブヒロインとでも言うべきか、ゾンビ娘、リタ。
3話で登場。200年も前に滅んだとされる村でゾンビを操りながら生活しているネクロマンサー。賞金稼ぎに狙われる賞金首。しかしカイザルとファバロとの接触の際、自分の母親のゾンビに噛み付かれてしまう。そこをカイザルに見逃されたが、なぜかゾンビになても自我を保ち、カイザルについていくことに。200年生きているが魔術によってか不老で、見た目は幼女、いわゆるロリババアであり、ネクロマンサーであり、自分自身もゾンビになってしまったりと属性てんこもりである。ぶっちぎりで年長なのでカイザル、ファバロ、アーミラに対する態度や言動はまるで母親のようでもある。たぶん、女性キャラでは一番人気なのではないだろうか。つっけんどんな態度であるが、親身に接してくれ、自分のために涙を流してくれたカイザルにだけは明らかに心配した様子を見せるのがあざとい。

神でありながらいつも飲んだくれているバッカス。
現実だとローマ神話のワインの神であり、この作品においてもれっきとした神ではあるが、いつも飲んだくれている、賞金稼ぎギルドの頭領という設定だ。賞金稼ぎは彼が作った腕輪を装着しており、賞金首の前で呪文を唱えることでその人物を掌サイズの石版のようなものにしてしまう。神でありながら序盤から中盤にかけては飲んだくれのギャグ要員っぽかったが、最後の最後では、バッカスに付き添う従者のアヒルのハンスともども、大活躍。とぼけているような暢気のような、しかし肝心なところでは決めるという、ファバロともども作品を象徴しているようなキャラである。

項目別評価

とにかく映像は一瞬たりとも崩れるようなところがないほどで追随を許さない。それにファバロとカイザルの戦闘シーンはどれも流れるような剣技で思わず見惚れてしまう。話自体は割とありきたりではあるが、障害を超えながら目的地に徐々に近づいていくのはファンタジー世界のRPGゲームを追体験しているようでもあり安定した面白さがある。

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