ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ(アニメ) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2015年6月26日

評論

ついに先日、この1年放映していたアニメのジョジョ3部が終了。全話欠かさず見ていた作品なので感想を書く。

長期連載になったバトル漫画というのはどれも、「このエピソードがピーク」というものがあると思う。そしてそれは物語の終わりよりも中盤であることが多いように思える。印象に残る悪役が出て、バトルが最高潮に盛り上がる、それは物語半ばに出てくることが多いのではないだろうか
90年代ジャンプ漫画で言うと(2000年以降は見ていないのであまり知らない)、ドラゴンボールならフリーザの出るナメック星編、幽遊白書なら戸愚呂の出る暗黒武術大会、るろうに剣心なら志々雄真実の出る京都編、などなど。やはりラスボスに相当するキャラよりもインパクトのあるエピソード、敵役は中盤に出ることが多いのだ。

ジョジョの奇妙な冒険は部に分かれていて、今もジョジョリオンという作品として続いているし、未だ完結していない作品ではあるのだが、仮にこの先10部を超えて連載されても最も印象深いエピソード(部)は何か?となれば必ず3部は筆頭に上がってくるだろう。
「スタンド」という今にも続く設定が初めて生まれ、空条承太郎というジョジョの中でも特に王道で格好良いキャラが主人公を務め、そしてDIOというジョジョの悪役の中では間違いなく最も有名かつ人気があるであろうキャラがラスボスを務めた部、それが3部であるからだ。

3部はリアルタイムでは読んでいないが、中学生の頃には全巻集めて何度も何度も読んだ。原作が終了したのは1992年。2015年にもなってこの作品の完全アニメ化がなされたというのは感慨深い。あとは1999年頃の3部格ゲームなどもはまった身であって、3部には特別な思い入れがある。
3部は90年半ばに一度、OVAとして製作されたが、絵柄から話から、あえて原作からは変えてきているオリジナル性の強いものだったし、全てのエピソードを描いたものではなく3部の後半、エジプト編のみを描いたものだった。ていうかあれはいくらなんでも絵柄が男塾か何かすぎた。

このアニメ化は原作リスペクトでのノーカット完全再現。正直、完全再現すぎて特に言うこともない、というのが全体的な感想だ。1年も通してみていたが、とにかくほとんどのエピソードが原作まんまだったのだから、今更にこの作品についてああだこうだ語ることないな、という感じ。ジョジョ3部は魅力的なキャラとスタンドが登場してとにかく面白い。

まあそんなで終わってもあれなので、アニメならではの要素、筆頭となる「声」についてでも語る。
メインキャラの担当声優はどれもマッチしていて素晴らしい。特に完璧だと思ったのは石塚運昇演じるジョセフだろうか。これはもうこれ以上ないほどのマッチっぷりだったと思う。原作からしてジョセフは何かと騒ぎ立てる、ちょっとうざくてうるさい爺さんな感じだが、もうとにかく完璧だった。ダービー弟との戦いでの実況のうるささとか最高だった。
最初は違和感あったのは平川大輔の花京院。平川大輔という人の担当しているキャラは他にほとんど知らず、映画「ソー」でのロキの吹き替えくらいなのだが、これもまた慣れてくるうちにジョセフと同じくらいに馴染んだ。一見物腰穏やかな紳士であるような、でも実はそうでもなく激情家でもあり変人でもあるような、そんな花京院のキャラクターに合っていて、これも過去のゲームなどで担当した声優のうちの誰よりも合っているキャスティングだったと思う。
小松史法のポルナレフも三宅健太のアブドゥルなども十分、違和感のないものだった。ところで小松史法という人は見ない名前だったが、アニメとかより吹き替えを多くやってきた人のようで。Wikipediaで見たらその数にちょっと驚いた。
そして小野大輔が演じる承太郎。実はアニメ放映前からゲーム「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」でも演じていて、このゲームを購入してずいぶん遊んだので最初から違和感はなかった。高校生離れしているドスの効いた声でのオラオラ、素晴らしい。

それと、アニメ化にあたって少ないながらもオリジナル要素を入れてきていたのだが、これはジョジョの持つちょっと突き放した作風を和らげているのを意識していたというのが見て取れた。例えば飛行機内でスチュワーデスに対して花京院が承太郎を「女性に対して乱暴とはゆるせん奴」とか言ってちょっとたらしこんでるシーンでその直後にアブドゥルが呆然と見てるシーンがあるのだが、これは原作にない。原作では投げっぱなしなのである。でもアブドゥルのシーン追加によってある意味「突っ込み」になってるわけで、こういうちょっとした気遣いもアニメ版には感じられた。それを余計だと思う人間もいるかもしれないが、とにかく原作を穴が空くほど読んだ身としてはちょっとしたオリジナル要素でもニヤっとできて楽しかった。

しかしアニメ化すると違和感バリバリなシーンもあったのも確かだったろうか。というか、思い切って改変してほしいと思ったシーンがあった。
最終決戦の時間停止内の時間の流れが「1秒がなげー!」と思うのはもう原作からしてそうだったからいいのだが、個人的にはヴァニラ・アイス戦のぐるぐる蚊取り線香攻撃の時が一番の違和感。
「あと一周で突っ込んでくる」ってポルナレフが言う場面、もう1周っていうとものすごく円が小さい状況だからあんな時間的余裕なんてあるわけないんだよね…。あそこの演出はポルナレフが思考している間はそれこそ時間が止まっているような演出にすべきだったと思う。

そんな細かい不満もあるにはあるが、最終話を見終わったときには少し泣きそうになった。あのクールな承太郎が涙を浮かべながらポルナレフに元気でな、というシーン。4部でも5部でも6部でも出てくる承太郎だが、涙を見せるような姿はここだけである。原作でも感慨深いシーンであるが、声が付くだけで破壊力が倍増だった。そして原作5部で承太郎が見ていた全員集合の写真を機内で見て微笑む承太郎で物語は締められる。これも原作にないオリジナルだが、これもよくぞ入れてくれた。3部はやはり素晴らしかった。

項目別評価

ついにジョジョ3部がアニメ化ということでこの1年、懐かしさに浸りながら見られた。原作再現を徹底して意識されつつも、要所要所ではオリジナルを入れてきているのがまたアクセントになっていた。
改めてアニメ化されて最初から最後まで見て思ったことは、3部は承太郎たちと共に旅をして楽しむような感覚があって面白いということだ。さわり程度ながらも各地での文化を描いたり、カルチャーショックを受けたりするキャラを見て楽しめる、そういうのも3部の独自性となっている。

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