食戟のソーマ(アニメ) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレアニメ>食戟のソーマ(アニメ)

執筆日2015年6月28日

評論

春のアニメもほとんど終わり、先日ジョジョ3部の感想書いたので引き続きアニメ版「食戟のソーマ」の感想だ。
この作品2クールやるのでまだ折り返し地点であって、感想書くのはまだ早いのだが、それでもおおまかな評価は固まったと判断したので書く。
もう一つ言えば、アニメ見てから原作を見たくなってしまい、アニメでやっていない最近の展開(10〜13巻)あたりも見たので、それもふまえた感じの感想に。というかぶっちゃけアニメだけじゃなく原作含めた評価をここでは書くことにする。

少年ジャンプで連載のこの作品、以前から存在は知っていたのだが、とうの昔にジャンプは読まなくなっていたので今回アニメにて完全に初コンタクトだった。
正直、滅茶苦茶面白いと思った。料理漫画でありながら、少年漫画らしい熱さを持っているし笑えるし、作画の佐伯俊の画力もあいまって、実にエンターテイメント性の高い作品に仕上がってるなと。

何よりこの作品、キャラクター設定と構成が上手いと思う。そしてバトル漫画のように熱い展開でありながら、料理漫画でしか出来ない盛り上げ方、魅せ方をやってのけている点が素晴らしい。特に原作を含め作品を見て思ったのが、作中の力関係、パワーバランスの面白さ。これは料理漫画ならではの面白さがある。「食戟」という、どっちが美味いか?というバトル漫画さながらの、料理でのガチンコ勝負を行うのがメインな作品でありながら、バトル漫画ではできない、料理漫画ならではの妙がある。

主人公の幸平創真は最初から高い実力を持っているのだが、トップクラスというわけではなく、せいぜい上の下というくらいだ。戦績や作中設定からすると、単純な料理の腕の実力は、

遠月学園卒業生(四宮小次郎など)>十傑(薙切えりななど)>葉山アキラ≧幸平創真、黒木場リョウ>タクミ、美作昴、薙切アリス、水戸郁魅、田所恵

というような感じになると思う。十傑より下の実力に関してはたゆっている感じがあるので、明確な不等号を付けるのは間違いかもしれないが、とりあえず暫定として。
ただ、ここが重要だと思うのだが、あくまでこれはテーマが料理であるから、バトル漫画のように「AとBを比べた場合、Aが強い!おしまい!」というようにならない。例えば田所はホスピタリティ、人を和ませる料理を作るという特質があるから、そういう点では他の誰よりも優れているだろうし、主人公の幸平に関しては、アニメではまだやっていない部分だが、飽くなき料理への探求、創意工夫という点では僅差で負けた葉山よりも優れているのも確か。とにかく、「こちらでは負けたもののこちらでは勝っている」という部分を持っているので、漫画のテンションを落ちさせない、白けさせないという強みがあると思う。アニメでもやった四宮と田所の対戦なんかまさにだが、相当な実力差があったとしても、こじつけでもなんでも、それなりに意味のある対戦にすることができる。四宮と田所はドラゴンボールで言うと単純な実力ならラディッツとベジータくらいあるのかもしれないが、対決によって四宮は大きなものを得ることになった。
どのキャラも非凡な料理人であるし、あくまで料理という人の舌、感性で決まるものだから、どのキャラ同士が戦っても、どの対戦カードでも無理なく接戦を演出することができる。「こっちも美味いがこっちの方が美味い!」という形で勝負がつくため、勝敗が決した後も決して完全にはキャラクターの株を落としてしまわない。この点、この作品に限らず料理漫画なら全部かもしれないが、強みだなあと。

それとキャラ造形が上手い。各キャラ個性的ながらもキャラ立ちまくっているし、ツボを抑えている。
主人公幸平創真は近年稀に見る良主人公。料理に対してのプライド、誇りは非常に強く持っているのに、負けてもへこたれず、負けた相手からも貪欲に自分の武器として吸収するという、素直でまっすぐなキャラで、見ていて清清しい。それは本当に稀有な才能だと13巻で父親から評されている。これって実際、現実でもあらゆることで超重要だけどなかなか出来ないことだよなあ。料理の才能は平凡、だけれど飽くなき料理への探求とまっすぐな性根を以って、学園内の天才たちに喰らいつくという、まさに主人公。あまりに主人公すぎる設定。特に10巻〜13巻を読んだから感じたところなのだが、容姿も才能も非凡な葉山や黒木場に比べるともう見た目からして平凡であるのだが、それでも創意工夫によって喰らいつき、ほぼ互角にまで持ち込んだのには痺れた。これから成長していき、ついには学園最強となるのだろうか?

薙切えりな、えりな様は上の通り創真より格上であるから、仮に対戦したら現時点(原作13巻時点でも)薙切が勝つのだろうが、基本的にえりな様は創真に料理以外では振り回されているのでただの嫌味ったらしい高慢ちきなキャラではなく、普段は小物っぽいくせに料理となればやっぱり天才だし、また少女漫画を赤面しながら見るとかいうあざとさ全快のキャラ。
存在自体が癒し系、田所恵はもう存在自体があざとい。さっさと創真とくっつけばいいんじゃないかな、ってキャラだ。誰がヒロインかと言えばえりな様か田所なんだろうが、13巻時点では全く恋愛のれの字もない状態。この作品まだまだ相当に長く続きそうなので、いつかは恋愛に発展するんだろうか?一番最初に創真の父親城一郎が「料理を食わせたい女がいることが料理人として必要」みたいなこと言ってたので、いつかラブコメも演じてくれたら面白いと思う。
他の創真の同級生も魅力的だし、遠月学園OB組も全員がキャラ立ちまくってる。とにかくどのキャラも見ていて面白い。

画力も作品の魅力の一つなのも間違いない。
作画担当の佐伯俊、知る人ぞ知る「そっち」の業界で名を馳せた人なのだが、絵柄は大暮維人とかと同じ系統か。線は緻密で細く、デフォルメのない体系を書くタイプだ。一巻時点でも上手いのだが、連載が続くにつれてますます練り上げられていっていると思う。一巻と最新刊じゃ明らかに上手さが違う。
ただ、この手の絵書く人ってキャリア積むにつれて悪い意味でリアル系に寄っていくこと多い印象があるので(個人的に大暮維人がまさにそう)、この人にはあくまで漫画的な絵からは崩さず、このままの発展を遂げていってほしいと切に願う。なーんか絵上手い漫画家って鼻とか目とか変にリアルに描きたがるようになる印象があるもんで。漫画でいいのよ、漫画で、って言いたくなる。
絵の印象としては似てるな、と思って大暮維人の名前出してみたけど、改めて比べてみたら全く違うな。こっち(佐伯俊)の絵の方が癖が少ない。大暮維人の絵はちょっとモデル体系が行き過ぎて太もも細すぎたり、現実からは乖離してること多い。むしろ、大暮フォロワーとしては「一騎当千」の塩崎雄二って人が筆頭らしいですな。

話がズレた。とにかくそんな高い画力なわけだが、画力を利用した審査員のリアクションもまたギャグとしてエロとして作品の魅力の一つだ。
要するに料理がめっちゃ美味いと男でも女でもなぜか脱げるわけだが、堂島先輩は何かとその鍛え上げられた肉体を無駄に披露してくれるので、そこで爆笑できることが多い。あんたは脱がなくていいよ!と思いつつも笑えるんだからしょうがない。

少年ジャンプでは歴代でも珍しいであろう料理漫画でありながら、大人でも楽しめるエンタメ性あふれるこの作品、おそらく30巻以上くらいには続きそうだが、ジャンプを久しぶりに購読しようかな、と思えるくらいには楽しみな作品となった。そういう意味できっかけになってくれたアニメ版には感謝したい。

項目別評価

今春、意図せずにこれだけじゃなく他に2つくらい少年漫画原作のアニメにはまっていたが、そのうちでも筆頭で楽しんだ作品。
アニメの、というか原作もひっくるめた評価になる。だからアニメ1クール目でやっていないところまで含めた評価。
キャラクターは男子は格好良く、女子は可愛く、アニメは原作の絵柄を再現していてとても見栄えが良い。でもって料理の絵も力入っててみてて腹減ってくるし、作ってみたくすらなる。
何より構成。主人公のスカっとした性格は純粋に魅力的だし、その絶妙な按配の強さ、そして周囲の強豪たちとの絶妙な絡ませ方。その辺が本当に上手い。
主人公、幸平創真の声は近年主人公役やりすぎじゃねってくらいにやってる松岡禎丞。アニメはほどほどに見る感じでそんなに見ないのだが、個人的に最大のハマリ役だと思う。
にしても、ジャンプというよりマガジンっぽい作品だな、色々と。なんかエロい料理漫画ということで、当初はヤングジャンプでやってた華麗なる食卓を思い出したが、あれとは全然毛色が違うか。

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