山田くんと7人の魔女(アニメ) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2015年6月28日

評論

今春、食戟のソーマ、境界のRINNE、そしてこれと、どういうわけかジャンプ、サンデー、マガジンと3大少年漫画のアニメ化作品が面白くて嵌ってしまった。このページはマガジン作品のこれの感想。食戟のソーマ同様、アニメ視聴後に原作も少々読んでしまったのでここでもアニメと原作がちょっと交じり合った感想になる。

最初はなんとなく、どんなタイトルだよどんな内容だよと、タイトルに惹かれて全く予備知識無しで見た。1話で主人公の山田竜とヒロインの白石うららが階段から落ちて入れ替わった時は「まさかの転校生(1987年の映画)かよ!」と思ったのだが、実はそうじゃなかった。入れ替わりの能力はじめ、キスによって発現する魔女の力を持つ7人が発生してしまう高校内での、それらの能力に振り回されつつのドタバタラブコメディというのが実体だ。山田はそれらの能力をコピーする能力を持っているため、イレギュラーとして存在する。

まあまずもちろん、単純に設定が面白いよな、と思った。
普通、ラブコメといったらメインヒロインとのキスなんてのはもう結末ですよね。ラブコメの王道といえば、主人公とメインヒロインがいて、周囲に主人公を思う女子がいたりして、あるいはメインヒロインの方を思う男子がいたりして、そういう障害を越えてなんやかんやあって、最終的に主人公とヒロインが結ばれる。そしてキスしたりしますよね。でもこの作品では最初っから主人公とヒロイン、いや登場するほとんど全ての女子と主人公はキスしまくる。
思春期のナイーブな心情とか色々すっ飛ばして主人公が好きなメインヒロインとでさえ、キスは無条件でする、できるというのは、こういう設定ありなのかと感心した。なんか2013年には実写ドラマ化されたようだが、入れ替わり設定の作品ってのはドラマ化しやすいんだろうか?
この作品の作者は吉河美希という女性作家なのだが、女性だからこその感性だろうな。自分もいい年なので、キャー告られちゃったーだの、キャーキスしちゃったーだのと、ナイーブなラブコメなんて今更見たくもないが、キスありきのラブコメという新しい境地だからこそ興味が沸き、最後まで見てしまった感じ。

各所で言われてることだが、アニメはとにかく詰め込みすぎ、カットしすぎらしい。これはもう初見ですらよく分かるほどの端折りっぷりだったのは理解できた。ただでさえ魔女に関して色々とルールがあって、それありきで登場人物は動くためにそのルールを把握しているのが大前提なのだが、端折っていくもんだからなんか妙に山田はじめ、どのキャラも頭の回転がいいというか物分りがいいというかそんな印象を受けて、展開についていけない部分がチラホラ。正直、端折り云々抜きにしても、アニメより漫画で楽しむべき作品だと思う。とか言うのも何を隠そうアニメ最終回後に原作漫画を買って14巻くらいまで見たからなのだが。

アニメを見た後にその後の原作部分を14巻まで見た。
アニメでやったのは主人公が超常現象研究部に属している間の物語、言い換えれば主人公山田がメインヒロイン白石うららと付き合うまでの物語。原作で言うと11巻までに該当する。
そして12巻以降は生徒会長となった宮村の秘書として生徒会で活動する山田とその周辺がメインとなる。12巻以降も白石は変わらず超研部に入ったままであるので、山田と白石は付き合うことになりながらも、今までよりも物理的な距離は離れてしまい、生徒会の活動として奔走する合間に白石と会ってイチャコラする(古)、というような展開になっている。12巻以降の白石はアニメ部分だと見せない、実に嫉妬深い部分を見せたりしてまたそれが面白い。

ここからは原作の評価になってしまうが、12巻以降のこの作品はラブコメだけでなく、ミステリー要素も加わってきてるのが面白い。
既刊17巻のところ14巻という半端なところまで見た感想だが、新たな魔女と思いきやその実、アニメで登場した7人の魔女が発生する以前から存在していたナンシーの存在や、「魔女が山田のために存在しているようだ」というような、今後重大な伏線になりそうな、山田と腐れ縁の潮の発言など、気になる引きをする作品だな、と。魔女はなんと総勢21人も存在することになるようで、一体どういう着地点になるのか、気になる作品だ。

この作品、特筆すべきはちゃんとラブコメしてる点だろうか。
魔女という荒唐無稽な設定が基幹にありながら、ラブコメを見ているとなんか「ニヤニヤしてしまう」あの感じをちゃんと持っている。そういうのってやっぱり、男子が女子に、女子が男子に嫉妬したりやきもきしたりする部分から感じ取れるのだが、流石に女性作家であるがゆえかその辺の機微は抑えている。白石が14巻で「山田くんは私を一番思ってくれてる」と発言し小田切を牽制するのなんかも、女性作家ならではという感じでよかった。

もう一つ言えば、今春同時にやっていた食戟のソーマ同様、主人公が「気持ちがいい奴」なのも重要か。山田はケンカっ早い不良みたいな扱いではあるものの、びっくりするぐらい常識人で思いやりのあるいい奴だ。しかもメインヒロイン白石にはただただ一途だし。長々と物語に付き合う以上、主人公に好感が持てるって点は基本にして重要だなと。

項目別評価

今春はまっていたジャンプ、マガジン、サンデーの3大少年漫画で連載中のアニメ3つのうちの1つ。
奇を衒った設定ながらも、ラブコメに必要な「見ててニヤニヤしてしまう」ような力は持ってる作品だった。
これほど尺足らずなのが見てとれる作品も珍しいくらいだったが、完結していない作品だし、11巻までを2クール見たらちょっとダレそうでもあるので、結果的によかったんじゃないかなと。

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