ベルセルク(漫画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2017年05月15日

評論

2017年5月現在これを書いているが、テレビアニメのベルセルクの二期が放映され、その影響で久しぶりに連載が再開しているとのこともあって、ある意味これがベルセルクという作品の最後の火、盛り上がりなのではないだろうかとも思えたので、漫画版ベルセルクについての評価ほかを書きたいと思う。基本的に漫画の感想は完結した作品のみ書くことにしているのだが、この作品については例外ということで書く。どうせアニメ2期が終わったら休載入るんだろうし

さて、よく言われる絶対終わらない三大漫画といえば何を浮かべるだろうか。もったいぶらず書くと、HUNTER×HUNTER、BASTARD!、ベルセルクということで異論は少ないところだろう。実際は他にも色々挙がるが、有名どころとしては、だ。そして、終わる可能性が高い順に並べると、おそらく、

HUNTER×HUNTER>ベルセルク>BASTARD!

の順番になる。
ベルセルクがバスタードよりは見込みがあるという理由は、単行本の発刊ペースだ。バスタードはなんと2012年に出た27巻が最終巻であって、5年も音沙汰なし状態。一方ベルセルクはなんだかんだで何年も単行本が出ないという事態には陥ったことがない。まあその理屈で言うとH×Hに関しても同じことが言える(最新33巻は32巻から4年も空いている)のだが、あちらの作者、冨樫義博に関しては、最近の展開を見ていると暗黒大陸編で物語を畳む気なんじゃなかな?という印象も受けるので。2016年7/4発売のジャンプを最後にまた長期休載に入ってしまったのだが、書き溜めては出す、という決して褒められないペースながらもきっと完遂するだろう。冨樫義博という作者に関しては何となくそのあたりは信頼できるような気がするのだ。(根拠は勘のみ)

だが、もうバスタードはダメだろう。未だ着地点すらも見えない状態で、あまつさえ現在は過去に遡ってのストーリー展開になっている。正直、もう終わらない作品に挙げる必要もないと思っている。バスタードとは、終わらなかった作品。もう復活の見込みはないと思っていい作品になってしまったのだ。非常に残念ではある。かつては追っていた作品だったし、超人バトルと黙示録的世界観のファンタジーという取り合わせはなんだかんだで唯一無二だったと思う。残念だが、作者の最近の様子を見るにもうあきらめるしかない。

そしてベルセルクだが、この作品に関しても、バスタードよりもマシだとは思うが、完結は非常に厳しいと言わざるを得ない。冨樫義博や萩原一至がサボって描かないのに対して、ベルセルク作者の三浦健太郎に関しては、完璧主義者だからヤバいのである。冨樫義博のようにネーム段階の原稿を本誌に掲載しろとまでは言わないが、もっと手を抜くべきなのにしない、三浦建太郎、御年50才なのだ。
休載の間もずっと兵隊を描いてました(2007年3月のヤングアニマル巻末より)とかいうパワーのあるコメントを残すのには感服はするが、決して褒められたものではない。これほど魂を込めて1コマ1コマを描いている以上、リソースの適切な配分というものを考えなければ、本当に笑えない事態になりかねない。手を抜くところは抜いてほしいと思う。なんなら、ネームだけでいいから掲載して、単行本が出るのも何年後くらいになってもいいから、完結だけはしてほしい。

作品が終わる終わらないの議論から離れてこの作品を純粋に評価してみると、何が凄いかってその世界のダークファンタジーぶりだろう。ダークファンタジーとは何か!?疫病が蔓延し!終わらない戦争が続き!命が軽く!力なき者は死に!人の力が及ばない化け物が闊歩し!だが鍛え上げた腕力と鉄と火薬と血によってどうにかこうにかそいつらをぶっ殺すことができる!という、そういう感じの世界だ。こういう容赦のない世界だからこそ、主人公ガッツが鍛えに鍛えあげた戦闘力だけで化け物を圧倒していく様に痺れるわけだ。

このダークファンタジーの魅力が十二分に披露されているベルセルクの最高傑作エピソードといえば14巻〜17巻で描かれる「ロストチルドレンの章」だろう。この4巻の間にはこの作品の全ての魅力が詰まっている。このエピソードは以下のような流れだが、あまりにも完璧すぎてため息が出てしまう。そんなレベルで完成度が高い。だがよりによって去年放送のアニメ1期では全力でカットされて涙を禁じえなかった。しかしこのエピソードだけでもOVAででも出すべきと思うレベルで完成度が高いのである。事実、自分はこのロストチルドレンだけ、読み返した回数が他のエピソードとは数十倍も違う。時間を置いて読めば何度でも何度でも読めてしまう傑作エピソードだ。

なんかもう、こんな拙い箇条書きを描いているだけでああ、やっぱいいなあなんて感じ入ってしまうほどにこのエピソードが好きだ。とにもかくにも、あまりにもガッツが恰好良すぎる。肉体的に強く、それ以上に精神的に超人じみて強く、ぶっ壊れてもおかしくないほどの恨みを燻ぶらせながらも、少女には優しく、というね。ほんの少し前にはこの世のものとは思えない憤怒の表情を見せていたのに、ジルとの別れの際、ジルを諭す時の表情は穏やか、作中最も優しい瞳をしながら話しかけている。この時のガッツを見ているとなんだか泣きそうになってくる。何十年何百年経過しても色あせない理想の強さを持った男の姿がここにはある。この頃のガッツより格好良い主人公なんて漫画界に恐らく存在しない。

しかしこの作品を知る人間ならばご存じのように、23巻あたりで魔女っ子のシールケに出会ったことをきっかけにこのベルセルクという作品は大きくその趣を変え、魔法や呪術といったものがその中心に座すようになっていった。もはや己の肉と血と鉄と火薬という原始的武器のみで戦っていたガッツの姿は影を潜めてしまった。そもそもこの物語は「使徒」という超常の力をチートを使って手に入れた、ガッツの言うところの「負け犬」が敵として立ちはだかり続ける話だった。そのためその対比として、人間であるガッツがあくまでも筋力と機転と剣技と精神力だけで切り抜けていく姿が格好良かったのだ。それが薄れてしまったのはやはりどうしても残念に思う。

だがもはやそれをそうマイナスだとか文句を言う段階も10年は過ぎている。とにかくどういう形であれ完結してくれれば喝采しか出ないというところだが。果たして本当に無事完結してくれるのだろうか、ベルセルク。

項目別評価

ガッツは全てのバトル漫画の中でも最も格好いい主人公だと思っている。このキャラだけで点数10にしてもいいくらいには。しかし月並みだが、鉄と血をもってのみ化け物を打ち倒す23巻までのガッツに自分は憧れのようなものを持っていたのであり、狂戦士の甲冑入手以降は魅力が薄れたと言わざるをえない。そのためキャラクターは9に。
そして一筆入魂、すべてのコマを妥協なく描き上げるその完璧主義には感嘆する。が、三浦先生には、物事は天秤にかけて考えなければいけないこともあるということを知ってほしいと切に願う。現在50才、しかしこの作品は60才を過ぎても描ける作品なのかと考えるとそうは思えず、またここ10年の進捗を見るとこれからの10年もただ悲観しか出ない。それでもいちファンとしては無事に完結することをただただ祈るのみだ。

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