ドラゴンクエスト5 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレゲーム>ドラゴンクエスト5

執筆日2014年12月25日

評論

12月12日にスマホ版が発売されたドラゴンクエスト5。ちょうどいいので今回はその評価を書く。あまり脈絡なく過去の作品の評価を書くのはどうも気が乗らないものはあるし、何かのきっかけがあるときに書いておきたい。

「ドラゴンクエストシリーズの最高傑作は何か?」
と聞いた場合、おそらく1位候補になるのがドラクエ5だと思う。ドラクエ3と並んでトップ争い。そんな風になるのがドラクエ5だ。と書いて思ったが、3と5以外ではどの作品が競り合ってくるのだろう?割と予想がつかないところではある。7とか2とかはトップには来ないだろうが…4もトップ争いに入るのかな?オンラインの10をやりこんでる場合は他のナンバリングとか目もくれないユーザーも多そうではある。

それはともかく、ドラクエ5の評価が高い理由の一つはやはり「仲間モンスターシステム」だろう。
倒したモンスターが戦闘後に起き上がり、「仲間になりたそうにこちらを見る」、あれである。モンスターといえば倒すべき憎き障害でしかなかった世界に革命を起こしたのがこのシステムだった。これが好評だったからだろう、ドラゴンクエストモンスターズという、仲間モンスターメインの外伝も登場し、そちらも大ヒットを飛ばしたわけだ。こちらは90年代中盤のポケモンのヒットがあってこそ、というのもあるかもしれないが、ドラクエ5でモンスターを仲間にするという下地が既に出来ていたからこそ、ポケモンヒットにスムーズに便乗できた、ということもあるだろうことは想像に難くない。「モンスターを仲間にして戦わせるとかポケモンのパクリじゃん?」とか言われれば「ドラクエ5でポケモンより早くやってたから全パクリってわけじゃないもん!」って言えるしね。本当にそんなやり取りがあったかどうかは知らない。

実際、ドラクエ5をプレイして一番わくわくするのはモンスターを仲間に入れられるようになってからである。
具体的には、青年編で奴隷状態から脱出し、オラクルベリーに到着してモンスターじいさんと出会ってからだ。ドラクエ5のオラクルベリーと聞くと胸が躍るドラクエファンはおそらく多いと思う。ここはモンスターを仲間に入れられるようになるという場所でありまた、カジノを利用すれば序盤でメタルキング装備を入手できるという、ドラクエ5においてはまさに希望にあふれた町、ドラクエ5の魅力を象徴しているかのような町だからだ。恐らく、「ドラクエで好きな町ランキング」のアンケートを取ったら1位になるんじゃないか、そんな町がオラクルベリーなのである。

モンスターを仲間に入れられる確率はあくまでランダムであるので、場合によっては何度も何度も戦うことになるのだが、この確率設定がまた絶妙なところが面白い。スライム、スライムナイトあたりはド定番モンスターで仲間に入れやすいが、しかし安定した強さを持っているので安心して使うことができる。
また、モンスターの成長具体も安定型、早熟型、大器晩成型といくつか分かれており、多くのモンスターにそれなりに活躍の場が生まれ、また特定の時期以降では使いにくくなるというのも面白いところだろう。例えばガップリンは早熟で守備力が高いため最初のうちしばらくは使えるが頭打ちが早いため中盤以降は厳しい、ゴーレムは高いHPや力が魅力的だが、耐性が低いために終盤ではやや厳しい、など。終盤で仲間に入れられるグレイトドラゴン、キラーマシン、はぐれメタル、ギガンテス、ヘルバトラーあたりはそれまでとは別格の強さでなかなか仲間に入らないが、戦闘後に起き上がった時の喜びは格別である。SFC版だとやたらと確率が低く設定されていたらしく、SFC版では確かグレイトドラゴンくらいしか仲間に入れられなかった覚えがあるが…。PS2版ではキラーマシンもヘルバトラーも入れることができた。

そういえば、このドラクエ5は多機種で発売されている作品である。ドラクエ1〜3ほどではないものの、時代を超えて何度もリメイクされている。
1992年のSFC版、2004年のPS2版、2008年のDS版、そして2014年、今月発売されたスマホ版の4機種ということになるか。
この中で注目すべきは、2004年のPS2版、これだ。

なぜかといえば、「完全3Dモデルで表現された初めてのドラクエ」だからであり、また、ドラクエ8以前、旧来のドラクエの形式(主観戦闘、見下ろし型フィールド)では最新、最終作となっているからだ。割と影が薄い気がするが、実は凄く貴重な作品が、このPS2版ドラクエ5なのだ。
2004年といえば全てがポリゴンで表現されるようになった完全3D作品であるドラクエ8が発売されているのだが、実はこれに先駆けてドラクエにおける初の完全3D化をやっているのが、PS2版ドラクエ5だったりする。PS2版ドラクエ5の発売日は3月25日、対してドラクエ8は11月27日となっている。ドラクエ7やPS版ドラクエ4もほぼフルポリゴンだが、あれはキャラクター部分だけドットだったりするし、クオリティ的にちょっと…という感じもあるのはプレイした人間なら分かると思う。1〜7までの旧来のドラクエの形式でありながら、演出面で洗練された3Dモデルでフルポリゴン化をやっているという点、PS2版ドラクエ5は異質な存在なのである。

スマホ版以外の全てのドラクエ5をプレイしているが、このPS2版ドラクエ5は最も素晴らしい出来だったと思う。2004年というとPS2末期時代であり、フルポリゴンのグラフィックは今見るとさほど綺麗なものではないが、それでも、SFC版を知っている人間からすれば美麗になってリメイクされたドラクエ5をプレイするのはそれだけでもう楽しくてしょうがなかった覚えがある。
また、この作品を思うと、上記のような旧来のドラクエの在り方はこの作品をもって終わってしまっているため寂しい、という気持ちが先立つ。後発のDS版のリメイクは携帯機なので、言ってしまえば「劣化版」ということになる。3DS版のドラクエ7でも、PS2版ドラクエ5のグラフィックには及んでいない。だからPS2版ドラクエ5のほうが最新作と言うべきであり、旧世代ドラクエの最終作と呼ぶべき存在となっている。DS版のものは、見た目はドラクエ7やPS版ドラクエ4とさほど変わらない、つまりPS時代のグラフィックだ。後発ながら、演出面では2004年発売のPS2版に大きく水を開けられてしまっているのだ。もはやドラクエが見下ろし型フィールドで主観戦闘に戻るようなことはないだろう。そういう視点からこのPS2版ドラクエ5を見ると、若干感慨深くなってしまう部分もあるのである。
なんでこんな風に感じてしまうのかな、と考えてみたが、ドラクエ7のグラフィックをベースにしたものはPS版ドラクエ4、DS版ドラクエ4、DS版ドラクエ5、DS版ドラクエ6といっぱい出てるのに、このPS2版ドラクエ5においては使いまわしてリメイクとかされていないからだろうな。要するに「もったいない」と考えてしまうのである。携帯機でばかり作品が出たことの悲劇か。このグラを使いまわしでもいいので、例えばPS2でドラクエ3とか出たら当然のようにヒットしただろうな。

その主観戦闘部分だが、このPS2版の戦闘はメッセージ速度を上げると「ものすごくテンポが良い」。ドラクエ8の感想でも書いているが、すさまじく軽快なのだ。間違いなく歴代ドラクエで最高の快適さ。もうプレイして10年立ちそれ以来プレイしていないが、それははっきりと覚えているくらいだ。主観でなくなり、パーティキャラクターのアクションが演出されるようになった今のドラクエでは決して不可能な軽快さ。ぶっちゃけ、アクションなんて見せなくていいからテンポよくしてくれ、と思うところなので、このPS2版のこの点は非常にポイント高い。アクション、演出に凝るようになってテンポが失われているのは果たして進化なのか退化なのか…。まあ言うまでもないところだと思うのだが。ドラクエ9とかはもう最悪のテンポだった。
というわけで、もしドラクエ5をプレイしたことがないのならばできればこのPS2版をお勧めしたいところ。PS2版は要所要所の演出も凝っているし、据え置き機なので当然BGMなど音源も高品質だ。DS版と違って第3の花嫁、デボラがいないのだが、それを差し引いてもPS2版をお勧めしたい。花嫁はビアンカかフローラにすれば問題なし!

次はストーリー部分。
ドラクエ5はストーリー部分も評価の高い作品だと思う。主人公が喋ることがないドラゴンクエストシリーズだが、5は他のナンバリングタイトルと比べると、「情緒的」「哀愁」そんなものを感じ取れる。よくドラクエ史上最も不幸な主人公だと5の主人公は言われるが、プレイしていると確かに、喋らない彼からでもその悲痛が伝わってくるようだし、感情移入してしまうところはある。ドラクエはあくまで冒険を楽しむというスタンスが大きく、あまりキャラクター性にスポットを当てることはない。「この主人公はどういうこと考えて生きてるのかなあ…辛いだろうなあ…」などと勘繰ってしまうようなドラクエ5はある意味異端であるかもしれない。父の仇であるゴンズ、ジャミ、そしてゲマを倒したときにはもう自分のことのように溜飲が下がることだろう。
主人公が成長し、結婚し、子供が出来るという3代に渡る物語だが、人間はこういう時の流れというものに何かセンチになってしまうものでもある。大きな父の背中を見て育ち、その父を目の前で失った幼少時代、10年以上にも渡る辛く長い奴隷時代、伴侶を見つけて結ばれ、ついには子も持つことになる青年時代を経、ついには魔王を倒して真の幸せをつかむ。「幸せになってよかったね…」と、エンディングを迎える頃には切実に思える。こういう感慨は他のどのドラクエにも存在しない。1つの絵本のような流れがあり、綺麗に話がまとまっている。

ついでにBGMにも語ることにする。
戦闘BGM、フィールドBGM、町BGM、ダンジョンBGM、どれをとっても高い水準でまとまっている。はっきり言えばすぎやまこういち氏のピークはここだったんじゃないかなとさえ。個人的に、ドラクエ5までは「イマイチ」と思ってしまうような曲自体がほぼ存在しない。ただ6以降はそう思ってしまう曲がちらほらある。6の通常戦闘なんかが顕著だ。別にドラクエ6以降も嫌いとは言わないが、少なくとも5より上であるとは言い難いものになっているのは確かだ。あらゆる場面でのBGMのクオリティがハイレベルにまとまっているのがドラクエ5だ。SFC版当時、カセットテープのサウンドトラックも購入し、何度も聴いていたくらいだ。

まとめると、ドラクエ5はやっぱりいいドラクエだなあ、という感じである。
全体的にバランスがいい。仲間モンスターシステムという新風を取り入れつつも、過剰な部分がなく、高いレベルで全てがまとまっている。そんな感じだ。ドラクエ6、7とこの後はしばらくやや贅肉のついた、クセの強いナンバリングタイトルが続くので余計際立つというのもあるかもしれない。
リメイク版も合わせると軽く5回ほどはプレイしているためDS版とほとんど同じだというスマホ版をプレイする気には流石にならないが、自分の中でドラクエ5はナンバリングタイトルの中でトップ3に入ってくる作品なのは間違いない。

ドラクエ5主人公

父親のパパスが死んだ直後にさらわれてこきつかわれた奴隷生活は確か14年。その後は結婚してもすぐ嫁がさらわれたり、石化して7年ほど野ざらしで放置されたり、目の前で探していた母親が死んだり。

項目別評価

今更評価って難しいと思うのだが、SFC版をプレイした当時の、という基準にしようと思う。音楽やストーリーに関してはドラクエ最高峰。そして仲間モンスターシステムのインパクトは絶大であった。

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