ギルティギアイグザードサイン(GUILTY GEAR Xrd) -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日2015年2月14日

評論

先に書いたKOF13の評価で書いていたように、ギルティギアXrd SIGNをPS4と共に購入。13日に届いた。さっそくこのゲームに関して評価を書きたい。

まず…とにかくかくにもアニメがスゲー!ってことを声高に言いたい。格ゲーなのに。アニメが超スゴイのである。

とか書いても知らない人にはさっぱりなので解説する。このギルティギアエグザードの家庭用版には、画期的なストーリーモードが存在する。
それは、「全くプレイすることなくただ映像を見るだけのアニメのようなもの」であり、これがなんと実に4時間超えのボリューム。はっきり言ってこれを見るだけでも購入する価値がある。マジで。格ゲーが苦手、やったことない人間でも購入する価値がある。マジで。

自分自身、実のところギルティギアというゲーム自体にはそれほどの思い入れは無い。
1998年にプレイステーションで発売されたものが初代となる作品だが、それよりむしろ、その続編であるギルティギアXがシリーズの原型、土台となっている。ちょうど、初代ギルティギアがストリートファイターT、ギルティギアXがストリートファイターUのようなものだ。
初代はプロトタイプという感じであり、家庭用据え置き機で生まれた作品でありながらアーケードに逆輸入された2作目、その完成度が高く、一世を風靡したのだ。
2000年に「ギルティギアX」が発売された当時、自分はどっぷりゲーセンに漬かっていた時期だった。当時はまだドット打ちで描かれたキャラクターたちが動くのが格ゲーであった時代だった中、ギルティギアXもドット絵には違いないのだがまるでアニメキャラが動いているかのようだった。くっきりとメリハリのついた高解像度、アニメ塗りで表現されたキャラクターたちが動き回り、2D格ゲーの次世代を感じさせるグラフィックであったのはよく覚えてる。
だが、空中ダッシュやロマンキャンセルなどのシステムにあまり馴染めなかった自分としては、ある程度は触ってみたものの、対戦をやり込むようなことはなかったのである。確か2001年か2002年くらいに池袋のゲーセンで一度だけ対戦し、ソルを使って一度だけ勝利したのは記憶にあるのだが…。ギルティギアシリーズで対戦をやったのはこのときだけだったので記憶に残っている。

とはいえ、当時格ゲーにどっぷりだった自分はメインストリームの一つとなっているシリーズを全くプレイしないのもどうかと思い、家庭用だけは購入したのだった。確か「GUILTY GEAR X PLUS」と「GUILTY GEAR XX SLASH」を購入したのだと思う。
だが結局、やはり肌に合わなかったのか、すぐに売ってしまった。現在はどちらも手元に残っていない。

合わない合わない言っておいて、しかもすでに格ゲーをプレイしなくなっている今、なぜ最新作であるこの「Xrd」を購入したかと言えばネットである話を聞いたからだ。

「家庭用Xrdには4時間ものボリュームのアニメのごときものが入っている」

と。
この話を聞くよりも以前、アーケード版が発売されてから、動画サイトなどでこのゲームを見てすでに度肝を抜かれていた。
アニメと見間違うほどであるが3Dポリゴンで表現されているというそのグラフィック。本当にどう見てもアニメ絵だ。ギルティギアXでは「ああ、なるほどアニメっぽいな」くらいの感想だったが、このXrdを見たときには「アニメだこれー!?」、だ。開発であるアークシステムワークスの執念、職人芸によるものか、新世代ギルティギアはとんでもない映像クオリティで登場した。もはやハードスペックがインフレ気味な昨今、リアル路線を行くのではなくこういうアニメ路線への特化というのはある意味革命なんじゃないだろうか。「まるで実写!」みたいな売り文句はPS3時代からよく聞いていたので「あーそうですねリアルですね」くらいの反応になっていたが、3Dポリゴンでありながらアニメ絵、という全く別ベクトルのこの進化には本当に驚かされた。

なお、肌に合わないとは言ってきたが、この作品に関しては、キャラクターに関してはなんだかんだで魅力を感じていたし、ストーリーが気になるというのは昔からあったのだ。それこそギルティギアXの頃からずっとだ。
主人公ソルと因縁があるという「あの男」とは誰なのか、XXのボスであるイノは何者であるのか、あんなマッチョなソルはGEARに改造される前は研究者であったということだが想像つかないぞ?どんな人間だったの?とかそういうことだ。格ゲーとしてやりこむことはないが、続編を出して早く話を進めてくれ!という思いは持っていたのだ。今にして思えばだからこそ、家庭用も購入してたんだろうなあ。でも、旧作にもストーリーモードはあったにせよ、テキストと一枚絵により演出されたあっさりめのものであったし、物語を深く掘り下げるようなものではなかったのだった。もっとこの世界のことを知りたい、と思っていたんだろうな。
だがそんな自分の思いとは裏腹に、ギルティギアXからずっと、このシリーズは「バージョンアップ版」ばかりが発表されてきた。あくまでバージョンアップであるので格ゲーの骨子部分であるキャラクターの性能ばかりがいじられてきただけであり、自分が興味ある「ストーリー部分」に関してはずっと停滞し続けてきた。今調べてみたところ、「X」から一応は話が進んでいる続編「XX」に関しては、「GUILTY GEAR XX #RELOAD」「GUILTY GEAR XX SLASH」「GUILTY GEAR XX Λ CORE」「GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS」「GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS R」と、実に5つもバージョン違いが出ていた。これだけ出てもストーリーは進んでいないのだ。
そんな状態だったので自分の興味もいつしか完全に失せていた。しかし忘れた頃に発売された最新作の映像に目を奪われたのが去年の話。

そして、家庭用版にはこの映像クオリティで何やらアニメが収録されているという話を聞いて興味津々。
だがどうやら公式から緘口令が出されたようでネット上には断片的にしか情報が存在しない。ましてそのアニメが動画サイトなどに上がっているわけもあるわけもない。

というわけで、そのアニメ見たさにこの度PS4と併せてに購入。何を隠そう、格ゲー部分にはほとんど興味ない。ゲーム性に関しては旧世代よりそれほど変わっていないことは知っていたし、あまり自分に向かないゲーム性であることも。だからここからはそのアニメ(=ストーリーモード)について語ることにする。

…とはいえネタバレ禁止なので多くは書けないのが残念だ。
とにかくボリュームもクオリティも素晴らしいのだが、さらに構成が素晴らしかった。断片的に語ると、全体のテーマとしては「世界」というものがある。これはソルの過去やチップのメイに対しての言葉、エルフェルトに関してなど、様々なキャラを通して序盤、中盤と語られるのだが、散りばめた伏線が結末で実を結ぶ。まさかあそこをシンじゃなくソルがああするとは…。語りたいけど語れないのがもどかしい。

それに、まさに自分がこの作品に関して知りたいいろいろな事を語ってくれていたのが嬉しかったというのがある。
上述のように、「あの男」とかいう思わせぶりな設定を遥か昔からもったいぶって語ってくれなかったシリーズだ。それをはじめ、疑問の多くが解けたのが嬉しかったのだ。ストーリーモードではこの世界の年表を見ることもできるようになっている。19世紀から22世紀にいたるまでの変遷が細かく記述されているので分かりやすい。

ギルティギアシリーズは実は格ゲーではない、「GUILTY GEAR 2 OVERTURE」という作品が2007年に発売されている。だが、マイナーなXBOXでの発売であるので存在感が薄い。自分もプレイしていない。なのだが、実はこのGG2において、シリーズのストーリーは大きく進展していたりする。
カイとディズィーが夫婦になっていてしかも子供が生まれていてその子供は5歳児だけど見た目は成人でソルが育てていて…なんて設定になっていると知ったのはこのXrdの存在を調べているうちに知ったのだが、「なるほど…何言ってんだ」と思わざるを得なかった。いつの間にそんな進展にしていたんだと。しかも話が突飛すぎる!

このXrdはそのGG2の後の話であるので色々分からない部分も多かった(ラムレザルとエルフェルト以前のヴァレンタインの話、Dr.パラダイムというキャラのことなど)のだが、「XX」までの話までしか知らない自分であっても、この15年ほど持っていた疑問の多くが解けて、それが本当に嬉しかったのである。
やっぱり物語ってのは、どういう形であれ畳まなきゃいけないのだ。小説でも映画でも、そしてゲームであっても、シリーズ化した以上はそれが作り手の義務だと思うのだ。未完で終わるなんて真似をしたらそれこそ三流以下、評価対象外だ。KOF13の評価でも同じようなこと書いたが、どんなに時間がかかっても完結まで行き着いたシリーズ作品というのはそれだけで拍手を送る価値があると思う。畳まなきゃダメ、絶対。例え格ゲーであっても、風呂敷を広げたなら畳まなきゃダメ、絶対、だ。

このストーリーモード、主要キャラだけじゃなく、プレイアブルとしては今回は登場していないジョニーや、ポチョムキンが仕える大統領ガブリエルなども活躍しているのが良い。しかもそれらのキャラの描き方が素晴らしく、魅力を最大限引き出していると思う。
悪役であるベッドマンに関しても、ただ悪役というだけでなく、何か妹絡みで事情があることを思わせる部分もあり、興味深い。ベッドマンがラムレザルに接するシーンではちょっと泣きそうだった。ただの悪党だと思ってたらなんだよあれは。ちょっとずるいぞ!と思ってしまった。

4時間もの話の中で他にも泣ける部分はいくつかある。どの場面も本当に描き方が上手い。くどすぎず臭すぎず、絶妙だ。それに笑える部分も多く、4時間もの長丁場なのに次が気になってしょうがなくて時間を忘れて最後まで一気視聴してしまったのだった。

ラムレザル・ヴァレンタイン

ラスボスであるラムレザル・ヴァレンタイン。そしてそれに優しく諭すベッドマン。ストーリーモードで一番気に入ったシーンから雑に模写。
ベッドマンは目的には手段を選ばない的なキャラだけれど、あることは絶対に禁止しているようだ。恐らく自分の主義によるもので、それは彼の妹に関係している?謎の多いキャラだが、続編ではきっと色々明かされるだろう。

項目別評価

アニメと3Dを融合した画期的な映像に関しては格闘ゲームの、いやゲーム業界全体としても革命とすら思えるほどのもの。そしてストーリーモードの、ほぼ4時間アニメと言っていい内容のボリュームとクオリティにはただ圧巻、脱帽。誇張でもなんでもなく、このストーリーモードを見るだけで購入する価値がある。自分のようにストーリーを求める人間にはあまりにもドツボすぎる内容だった。15年ほども持ち続けてきたモヤモヤしたものを色々と氷解されてくれた感があって、しかもどのキャラも魅力的に描かれており素晴らしい構成で、このストーリーモードのおかげでソルもカイもシンもラムレザルもエルフェルトもチップもジョニーもメイも、ベッドマンさえも、今まで以上に好きなキャラクターとなった。視聴後には晴れ晴れとした気持ちに。こりゃあ次回作は発売日に買うしかねえ!
BGMの評価も高いのはOPテーマ「HEAVY DAY」が超かっこいいから。実はこれだけは、去年itunesで配信開始直後にダウンロードして繰り返して聞いている。ホント格好いいのでお勧め。

ストーリーモードの話ばかりになってしまったが一応格ゲーとしての評価も。
敷居はきわめて高いと言える。相当に先鋭化しているジャンルなのでどの格ゲーも「敷居が高い」って言ってしまえると思えるのだが、ロマンキャンセルを絡めた連続技、連携の習得や空中ダッシュの入力の精密さなども非常に重要なため、特に高いだろう。今これを書いてるのが、ソルのチャレンジモードにあるDループを1時間半ほどかけてようやく成功させた直後だったり…。なんだあの難易度は。ただ、ロマンキャンセルに関しては入力後に一瞬スローになる演出になっているので以前よりはやりやすいように思った。
あと、そしてこのシリーズに馴染めなかった理由の一つの空中ダッシュだが、マヴカプみたいに空中ダッシュをボタン操作でも出るようにしてくれるともう少しとっつきやすいんだが。

とってつけたような格ゲーの評価は白々しいのでもういいや。
とにかく、ストーリーが気になる。過去のようにバージョンアップを出すのはなるべく控えめにして頂いて、物語を進めてもらいたい。もちろん、今回のようなストーリーモードは必須で、だ。
…格ゲーの評価としては全く参考にならないな、これ。
でも、格ゲーというジャンル自体が半ば初心者お断りと化している土壌であるからこそ、こういうところに力を入れてゲーム性以外からのアプローチでファンを増やすのも一つの手だとつくづく感じた。これだけのクオリティでストーリーモードをお出しされたらもうのめり込むしかないでしょうよ。

凡人の感想・ネタバレゲーム>ギルティギアイグザードサイン(GUILTY GEAR Xrd)