絶対絶望少女 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレゲーム>絶対絶望少女

執筆日2014年12月24日

評論

ダンガンロンパシリーズ、すでにゲームでは初代の感想や小説作品のダンガンロンパ霧切の評価も書いている。
2の感想もいずれ書くかもしれないが、すっ飛ばして外伝であるこの「絶対絶望少女」の評価を書くことにする。

2010年に発売した「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」、そして2012年に発売した正当続編である「スーパーダンガンロンパ2」。これらはその他に例のない「サイコポップ」という独特のコンセプトで人気を確立した。そしてその外伝作品となるのがこの「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」となる。本編作品は「ハイスピード推理アクション」という独特なもので、裁判にて殺人犯を当てるというゲームになっているが、この外伝作品は銃を使って敵を倒していく、アクションアドベンチャーゲームとなっている。

まずストーリー部分についてあれこれ。
主人公は初代作品の主人公である「苗木誠」の妹、「苗木こまる」だ。彼女は1の時点では生死不明だが、この作品の発表をもってその生存が明らかにされたこととなる。そして、彼女のパートナーとなるのは、苗木誠と共に1の事件を生き残った「腐川冬子」。「ジェノサイダー翔」という別人格を持った人物である。
ダンガンロンパシリーズは、時系列的には最初の初代作品時点ですでに、「世界が滅んでいる」。
1の黒幕である「超高校級の絶望」こと江ノ島盾子に魅せられた人間(絶望の伝染)により世界中で破壊、殺戮行為などが行われており、世界は終わったとされているのが、この世界の前提となるわけだ。
これは初代作品においても、スーパーダンガンロンパ2においても、ほぼテキストで説明されるだけに留まっている。「人類史上最大最悪の事件」により「滅んだ世界」が映像として描写されることはほとんど無い。しかしこの外伝作品に初めてそれが明かされることとなる。
…ものだと思っていた。発売される前までは。

本編の2作品と違い、閉鎖空間での出来事というわけではないのだが、実際のところ、この絶対絶望少女においても、あくまで舞台となるのは「塔和シティ」という一区画での話であり、具体的にどういう経緯を経て、世界が滅んだとされるのか、それは明らかにはなっていない。この点、少し拍子抜けしたというか、表現が難しいのだろうな、という感じを持った。
まあ、日本の女子高校生がそこまで悪のカリスマとなって世界中を揺るがす、というのがあまりにも現実味がないというのは、どうしようもないところであろう。1の時点で終了すればそれこそ細かいツッコミをすることはないのだろうが、2、外伝と作品が続くにつれてこの辺の設定がストーリーの足を引っ張っている感じを受ける。
こんなこと言ってると、1で江ノ島盾子が言ったように、「過程とかはどうでもいい、世界は滅んだ」んだから気にしなくていいだろう、って意見もあるかもしれないが、でもどうしても引っかかってしまうものがある。だって世界が滅ぶって相当なことだし。絶望が伝染した、ってだけで日本だけじゃなく世界が滅んでるということなのだが、一体何があったのか。
テロとか大量虐殺とかそういうことが起きたというのはスーパーダンガンロンパ2で少し描写あるものの、何せ世界をすべて巻き込んでという話だ。元々荒唐無稽じみた世界観ではあるのだが、細かく描写するのは難しいのだろうし、これは今後も明かされはしない気もする。江ノ島を崇拝する人間たちは「絶望の残党」などと表現されるのだが、2のエンディング時点でこの勢力は徐々に制圧されつつある、という言及もあるから、次作品ではむしろ平和な世界になっていてもおかしくはないな。

それは置いておいて、別の不満点。
ズバリ、終盤の展開がやや雑というか、ロジック的にどうなのか、という疑問が出た。
具体的には物語のほぼ結末部分。苗木こまるの両親が殺されていたことが明らかになり、それにより苗木こまるは自暴自棄になり、塔和シティのあちこちにいるモノクマヘッドをかぶった子供達の自爆装置をあわや押しそうになる、というシーンだ。これにより、苗木こまるこそが二代目江ノ島盾子となり、また世界中の絶望の残党たちが活気づくことになってしまう!ヤバイ!という話の流れなのだが…。
ぶっちゃけ、モノクマヘッドの力で洗脳されているモブの子供には罪はないし、悪いのはこの場面で目の前にいる敵の黒幕、モナカなのは明らか。ここで自暴自棄になったからと言って自爆スイッチを押す、という展開には少々こじつけがすぎるというか、今の今までは楽しんでいたのに、ここで急激に冷めてしまった。「そうはならんだろ…」と。正直、ストーリーに関しては最後の最後でがっかりさせられたという感じが否めなかった。こまると腐川、二人の成長物語としては好きなだけに、この本筋部分の残念さが際立ってしまったという感じだ。

次にゲーム性について。
主人公の苗木こまるが持つ「ハッキング銃」を敵モノクマに撃ち込んで倒して進んでいくアクションアドベンチャーとなっている。
敵に対して銃を構え、さまざまな効果を発揮する弾を状況に応じて使っていく、というものなのだが、このゲーム性は、極めて平凡というか、はっきり言って退屈と言ってしまえばそうだろう。別に面白いものではない。ボス相手には少し頭を使って戦う必要があり、その解法が分かった瞬間は「なるほど!」と面白さを感じることができたが、基本的には退屈なガンシューティングである。ただ、この作品自体、ゲーム性よりも「あのダンガンロンパシリーズの初代主人公苗木誠の妹である苗木こまるが主人公であり、荒廃した外の世界の概要が明らかになる!」という点が最大の売りであると思うので、ゲーム性についてはそれほどあれこれ言うつもりはない。ダンガンロンパシリーズの最大の魅力はその独特なセンス、世界観にある。それを堪能できればいいのだと、最初から割り切っていたので、つらつらと不満を語るつもりはない。ただ、「モノックマン」というパズル要素が、全編通して少し多すぎるとは思った。あまり周回プレイしたいと思うゲームではないのは確かだろう。

キャラクターについて。ダンガンロンパシリーズははっきり言えば「キャラゲー」である。よってその最大の長所は、キャラクターの魅力、ひいてはその世界観にあると思う。シリアスとコメディの絶妙な配分。個人的にはそれがこのシリーズの最大の特長だと感じる。そしてこの作品においてもそれを如何なく発揮しているという感じ。要所要所で笑わせてくれつつも、無闇にブラック、暴力的、もっと言えば悪趣味な面も覗かせる、紛れも無いダンガンロンパシリーズの血統だ。

主人公の苗木こまるはごくごく平凡な少女だ。そんな彼女が腐川と出会い、敵方である「希望の戦士」との戦いを経て精神的にタフになっていく。捻じ曲がった性格をしている腐川も、こまるとの関わりを経て成長していく。結末部分で腐川が「支えあうのが友達でしょう」的なことを言う。初代ダンガンロンパをプレイしていれば腐川の残念っぷりはよく分かるところであり、彼女が明らかに一皮剥けたこのシーンはなかなか感慨深かった。
敵方となる5人の「希望の戦士」。彼らは容赦なく大人たちを殺害する狂った子供だ。まだ小学生、10歳ほどの年齢なのにだ。そんな彼らだが、実は過去に大きなトラウマを抱えており、ちょっと設定が重い。ちょっととというか滅茶苦茶重い。特に空木信子の設定は「これ大丈夫か?」と思ったくらいだ。その過去ゆえに大人を容赦なく殺戮するという凶行に及んでいるが、現実世界で最近は虐待のニュースとかよく見るのもあり、彼らの境遇は本当に心が痛むところもある。ラストダンジョンにおける彼らの日記を見ると同情を禁じえない。5人のうちリーダーであるモナカだけは同情の余地がほとんど無いドス黒い悪なのだが、彼女は今後なんらかの形で再登場を予見される扱いとなっている。
1の主人公である苗木誠に関しては中盤において通信機ごしに妹のこまると話をするだけの登場であり、全く活躍することはない。これは大体予想していた通りだったので文句はない。
だが、1の生き残りの一人である十神白夜。彼の扱いには少し不満を感じた。彼は作品の舞台である塔和シティに身を置きつつも、序盤からずっと囚われの身であり、活躍の場は皆無。公式に「かませ眼鏡」と言われている彼だが、今回は活躍するのだろうと期待していたから、普通に残念だった。「能力はあるのにかませ」というキャラ付けなのだろうから、それこそ少しは活躍してもいいと思うんだがなあ…。イジリも度が過ぎるとちょっと笑えないという感じだった。

総評として、「大体は期待通りの出来栄えだったのに、ストーリーに最後の最後で拍子抜けさせられた」、という感じ。
そもそも、「世界が終わっている」という前提がある世界だ。あまりに話が大きすぎるために扱いにくい、作りにくい、もてあましている、という感じを受ける。
スーパーダンガンロンパ2自体、1が高い評価を受けたから作ったという作品だ。つまり、初代ダンガンロンパは「今後の展開」を考えられずに作られた、ということになるだろう。言ってしまえば、2以降の話は全て後付けだ。元々はシリーズ化する気がなかったというのは開発者のインタビューにあるので間違いない。確かに、「女子高生のせいで世界が滅んでしまった」というトンデモな世界を扱うのはさぞ難儀であろうと思う。1においては世界が滅んだなんてことは江ノ島の言う通り「そういう結果が重要なのであり過程はどうでもいい」のである。つまり小説や映画でしばしば使われる「マクガフィン」に該当するわけだ。話の展開上では大した問題ではないのである。しかし、シリーズを続けることになってしまったためにここに齟齬が生じている。この絶対絶望少女にもそれは如実に現れているという感じ。
世界が滅んだという大変な状況のはずだが、ミクロ的な描写ばかりで、マクロ的なものが見えてこない。どうも世界全体がぼんやりしていて、実像が見えてこない。語ってほしい重要なところが分からない。そんな印象を受ける。1の生き残りメンバーが未来機関に保護されるまでの経過とか、その未来機関の構造だとか、そういうことを何らかのメディアで語らせればまた色々と印象も違ってくると思うのだが。この辺がノータッチであるため、例えば未来機関がどのように絶望の残党を制圧しているか、とかそういうのをイメージできない。また、絶望の残党の規模とかも全く語られないので、世界が滅んでいる、終わっている、と言われてもピンとこないものがある。これはこの絶対絶望少女の問題ではなく、ダンガンロンパシリーズ自体が抱える問題とも言えるか。

なおこの前、2015年の抱負として、ダンガンロンパシリーズのプロデューサーである寺澤義徳氏から「ダンガンロンパシリーズの今後の展開について2015年に発表できる」という発言があった。続編か、あるいは2のアニメ化とかか、もちろん「ダンガンロンパ3」の存在のことを言っているのならば嬉しい。
スーパーダンガンロンパ2は、初代作品をほとんど全ての点で上回る素晴らしい出来栄えだった。きっと開発側もプレッシャーを感じているだろうが、もはやスパイクチュンソフトの看板タイトルとして定着したシリーズだ。「ダンガンロンパは2で終わっときゃよかった…」なんて後世言われないように、なんとか頑張ってほしい。近年一番期待しているシリーズなので本当に頑張ってほしい。

項目別評価

ダンガンロンパ本編同様、やはりキャラクターと世界観に多くの魅力が詰まっている。ただ、ストーリーに関しては評論の通り、終盤に不満があったのでやや厳しい評価にさせてもらう。メインとなるガンシューティング部分もつまらないというわけでもない。ただし周回するのは趣味の領域。一度プレイすればあとは触らなくなる場合が多いと思う。

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