BLAME!劇場映画版アニメ -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>BLAME!劇場映画版アニメ

執筆日:2017年05月24日

あらすじ・ネタバレ

遥か遥か未来の話。都市は勝手に動き続ける「建設者」の手により無限に増殖を続け、今やどこまで広がっているのかわからない。建築者を制御するためには「ネットスフィア」に接続する必要があるのだが、人類に蔓延した「感染」により、生存している人類はその全てがネットスフィアに接続できる権限を失っている。「感染した人類を駆逐する」のが目的である強力な戦闘力を持つ「セーフガード」も存在する。人類の全てが感染者であるためセーフガードは人類にとって恐るべき敵でしかない。その中でも人類は安全な場所を見つけて生き残っている者達もいた。

「づる」という少女、「フサタ」という少年、「タエ」という少女たちは飢餓状態にある村を救うために、自分たち「電基漁師」の大人たちには無断で武装を装着して遠出していた。村には安全な防電装置が張られているためにセーフガードは近づけないが、村から出ればセーフガードたちに襲われる危険があるのだ。やっと見つけた食糧だったがすでに空になっていて徒労に終わる。さらにそこで、づるたちにセーフガードが襲い掛かる。硬い装甲を持つセーフガードの攻撃をまともに受ければ即死は免れず、づるたちの攻撃は限られた数の銛を頭に撃ち込むことでなんとか倒す事が出来る程度。づる、フサタ、タエ以外の人間は殺されてしまい、絶体絶命の危機に現れたのは謎の青年。青年は赤い光を撃ち出す強力な銃を所持しており、「霧亥」と名乗った。

霧亥は今はもう存在しないと思われている、感染していない人間、「ネット端末遺伝子」を持つ人間を探して6000階層も下からやってきたのだという。また霧亥は青い光を持つ装置を身に着けており、それはセーフガードを召喚する監視塔に見つかっても平気な力が備わっていた。
命を助けられたづるたちは霧亥を自分の村へと案内する。食糧不足にあえぐ人々だったが、霧亥が持っていた食料を一つ差し出す。それを水につけた途端、それは膨張して人間が食べることができるパンのようなものへと変質した。霧亥はそこの人間をサーチするがやはりネット端末遺伝子を持つ人間は存在しない。しかし電基漁師の長である「おやっさん」の話によれば、村の真下にある「腐れ祠」と呼ばれる場所に手掛かりがあるかもしれないと話す。霧亥とおやっさんたちはそこへ向かう。

腐れ祠にいたのはボロボロに朽ちたサイボーグの頭で、まだ機能を停止していないそれは自分を「シボ」と名乗る女性のなれの果てだった。シボは塊都という街の科学者で、ネット接続遺伝子がなくても接続できる端末を作ろうとしたが、セーフガードに見つかって現在のような状態になってしまったのだという。助けを呼ぶ信号を出し続けていたのだが、村の人間は幽霊が出ると恐れていたので腐れ祠には近づかかったのだった。そして村にセーフガードが近寄れないのは、シボが生み出した防御装置がこの場所にあったからでもあった。
シボは自分を「自動工場」へ連れていけばネット端末遺伝子と同じ効力を持つ偽装端末を作れるという。そして自動工場では何でも作ることができ、おやっさんたちの村のための食糧(霧亥が持っていたものと同じ物)なども作れるのだという。

こうして霧亥、シボ、そして電基漁師の村のおやっさん、づる、捨造、アツジ、フサタ、タエたちは、村から数日歩けばたどり着ける自動工場へと向かった。
自動工場はかつておやっさんたちも探索したことはあったが、セーフガードに襲われて被害を受けたのだという。シボの力で工場の入り口は開く。内部は正方形の形で数十の区画に仕切られており、各ブロックに作りたいものが一瞬で製造される仕組みのものだった。まずシボは村の人間のために膨大な食糧を生み出す。そして偽装端末も作り出そうとしたとき、無数のセーフガードが工場から生み出されて一斉に襲い掛かってくる。シボはこれに踏みつぶされて朽ちる。数に押されて絶体絶命のピンチになる一同。タエがセーフガードにやられたかと思ったが、腕を折っただけでなんとか生き残っていた。シボは自分の新たなコピーも工場から生み出しており、霧亥、おやっさんたちを救う。霧亥は電力不足で重力子放射線射出装置を撃ったために眠りについてしまう。

そうして命からがらなんとか食糧と偽装端末を持って村に帰ることができた。
霧亥とシボは村の真下、シボが眠っていた腐れ祠の地点で偽装端末を起動させようとする。が、ここでタエが突如おかしな行動に出る。なんと村の真下にある防電装置を上から撃ち抜いて破壊してしまったのだ。タエに思いを寄せるフサタはパニックになるが、タエはなんと姿を変えて上位セーフガードの「サナカン」へと変化してしまう。実は工場でセーフガードに襲われた時、本物のタエはすでに死亡しており、サナカンがその姿を変えていて、電基漁師の村に潜り込んだのだ。霧亥はこれを迎え撃つために上へ戻るが、シボは一人、偽装端末を起動させるために下に向かった。

サナカンにより村人たちは容赦なく殺戮されていく。電基漁師の銛などは全く通じない。霧亥が格闘戦で互角の勝負を見せるも、最終的には重力子放射線射出装置ごと右腕を切断され、制圧される。そこでサナカンも重力子放射線射出装置を構えて霧亥にとどめを刺そうとしたとき捨造が妨害、さらにづるが霧亥の重力子放射線射出装置を霧亥に向かって投げつける。霧亥はそれをキャッチしてサナカンに向かって撃つが、しかしそれはサナカンの手から発する電磁波で防がれてしまう。射出装置を撃つための霧亥の体内電力も尽きてしまい、サナカンはそれを見て勝ち誇る。そしてサナカンは霧亥を殺すことよりも、ネットスフィアに接続しようとするシボを優先して撃つ。シボの体は融解してしまう。
霧亥はその間に自分に複数の「体内充電促進剤」を撃ち込み充電をマックスにする。そして今度は重力子放射線射出装置を最大出力で放つと、サナカンの防御をも貫いて撃破することに成功。
一方ネットスフィアに接続しようとしたシボは、現実(基底現実とBLAME世界では言う)とネットスフィアの間の予備電子界で「統治局」と出会っていた。統治局とはネットスフィアのOSのような存在。すでにシボの体ごと端末が破壊されたためそれは許可されなかった。しかし、統治局は「予備電子界で許された範囲でセーフガードに見つからない安全な場所を教えることはできる」と言い、シボはその場所を知ることができた。

サナカンは倒され、量産型セーフガードも電基漁師たちの手によりすべてが倒された。そして体が融解したシボの腕(に足が生えた物体)だけが霧亥たちの元に現れる。シボの脳は腕部分にあるため助かったのだと言う。そして安全な場所をおやっさんたちに教えた。
その場所へ向かうために電基漁師たちがエレベーターに乗った時、セーフガードが襲い掛かってきた。そして霧亥だけはエレベーターに乗らず、首に装着していたセーフガードの目を欺く装置をづるに渡す。づるは「もう会えないの」と言うと霧亥は「俺はネット端末遺伝子を探している」と言い別れを告げた。これがづるたちの観た霧亥の最後の姿だった。

それから数十年の時が経過する。づるが牽引して発展させた電基漁師の村は平和だった。そこにはシボ(腕)の姿もあった。づるの孫が「今もきっと霧亥はどこかを旅している」と言う。そして都市のどこかにいる霧亥が階段を上り、広大な空間に辿り着いたところで物語は終わる。

感想・評価

最近、URLをhappyonに変更したHuluがどうも調子悪いことがニュースになったりしているが、自分も流石にうんざりして実は別の動画サイトに鞍替えした。ゴッド・ファーザー2と3の感想を最近書いたが、それも動画がギクシャク止まりながらの視聴だったし…。何度も何度も勝手に一時停止される中での3時間映画の視聴というのはストレス半端なかった。

それで変えたのが、Huluとよく比較される「netflix」。Huluと違って実に快適で、一番下のプランだとHuluより安くて、もうこれはこっちでいいなと感じていたのだが、さらに決定的になる事項が。それがこの「BLAME!」だ。なんとNetflixでBLAME!のアニメ独占配信されている!そもそも劇場作品として公開されるなんてことすらも今回知ったのだ。こんなんこっちにするしかないやん!ということでもうHuluは解約してnetflixを契約。

BLAME!は15年ほど前に全巻揃えたが引っ越しを契機に売り払ってしまい、しかし去年電子版で買い直している。テキストが少なすぎるせいで何度読んでもいまいちよくわからない難解なストーリーに頭を悩ませつつも、そのとんでもなく広大でひんやりと冷たくて薄暗くて、でも一回でいいから「ここに行きたい」と思わせるような世界観にやられたクチである。

その世界観をハイクオリティなアニメ映像化してくれたというだけで正直、個人的にはほとんど満足してしまった感がある。ストーリーは実に王道ではあるが、ゆえに特別欠点と言える部分はなく、起承転結が丁寧で分かりやすい。
何より一番驚いたのが「シャキ サク」のアレである。本当に驚いた。原作では「シャキ サク」という音と共に霧亥がかじるよくわからない食糧のアレ。水につけるもんなのおお!?そんな増えるワカメみたいなもんだったのおお!?笑いが止まらなかった。まさかだよ。あれがまさかあんなボーン!って爆発的に膨張する食いモンだったとは…。

それ以外にも、やたら重厚でシリアスなくせに要所要所で笑わせてくれる。主にシボ関連だが。
まず電基漁師たちの村の下に眠っていたシボを霧亥が発見し、目を覚まさせるシーン。ここでなんと霧亥はシボの頭をガシと掴んで壁にボゴオン!ってやる。見るからにボロッボロになっている人相手に壊れたテレビよりも雑な扱いだ。
それとシボを工場に連れていって操作盤のような上に置く時も静かに下ろすのではなく放り投げてドシャア!ってやったり。霧亥は自分を「人間だ」なんてづるたちとの出会いの際に言うのだが、それならもうちょっと人間らしいとこ見せてくれませんかね…。面白いからいいんだけど。
あとは腕に脳とかいう意味不明さも、腕に四本脚が生えて生きているとかも、笑わせに来てるとしか思えない。

演出面で痺れるのは霧亥の眼で行われる主観モニタリング映像。ネット端末遺伝子の有無、現在の電力状況、構成する物質、そういったものが霧亥の主観では常に画面上に表示されているのだが、これが実に格好良い。電力が足りない状況で充電促進剤を撃ち込んで強制的に最大充電状態に持っていき重力子放射線射出装置をぶっ放すシーンは鳥肌もんだ。
その重力子放射線射出装置の射出音も「さあどんな演出になる?」とウキウキしてみていたのだが、「ドブチュンッ!」というような、とても射撃武器の発する効果音には聞こえないもので、異質で別格なとんでもない武器であることがよく強調されていて実に良かった。

もうとにかく、この世界観を高いクオリティでアニメ化してくれるとそれだけでテンション上がってしまうので、是非ともこれに続く映像作品作って欲しい。

2017/6/3追加。霧亥VSサナカン。

登場人物解説

霧亥[キリイ]

声:櫻井孝宏
高度にサイボーグ化されている黒髪の青年。ネット端末遺伝子を持つ人間を探し出すためにおそらく数千年以上も旅を続けている。原作だと序盤は汗かいたり割とよく喋ったり人間的だが、いつしかほとんど喋らなくなった。無口といっても喋る時ははっきり喋るイメージがあったので、今作のようにボソボソ話すのはちょっと個人的には違うかな、とも思った。
原作同様、上位セーフガードと互角の身体能力を持ち、代名詞とも言える第一種臨海不測兵器、「重力子放射線射出装置」をぶっ放してセーフガードを蹴散らす。今回劇場版での設定としてその頑強な肉体は「セーフガードの素体を奪った肉体」であることが明かされる。人間を見つければ真っ先に網膜を捜査するのもなんか必死でおちゃめに思えるから不思議。完全に無感情なわけではなく恩義なども感じないわけではない(子供が栄養失調なのをスキャンで知り食糧を差し出すシーンも)が基本的に自分の目的以外の物事に無頓着。ボロボロ状態のシボの扱いが超雑なことに笑う。
なお、腕はサナカンの一撃(重力子放射線射出装置でもない)で簡単に千切れるのに、頭部に銃口を向けた時は「貫通不可」とサナカンの網膜モニターに表示されるが、これは霧亥の頭部だけ他より凄く固いから、らしい。頭は重力以下略でしか撃ち抜けないようだ。

話が逸れるが、BLAME!が雑誌アフタヌーンで連載していた頃は高橋ツトムの「地雷震」も連載している時期があり、その主人公の「飯田響也」もまた同じような容姿で無口。黒い服を着て序盤は割と喋るというのも共通点。そちらと合わせて、「アフタヌーンの主人公ってのは真っ黒くて無口なんだな」とか偏見を持っていた時がある。

シボ

声:花澤香菜
元々は塊都という町の主任科学者。原作でも塊都の主任科学者。ボロボロの腐乱死体のような姿で放置されていたのも原作通り。しかし電基漁師の村の話で霧亥と出会ったわけではなく、このシボの設定が違うことから、この劇場版アニメのBLAME!は原作とは繋がりのないパラレルワールドであることが明確。17526000時間誰かが自分を見つけてくれるのを待っていてくれたらしい。つまり2000年…。さらっと何言ってんのと思ってしまうところだが、まさにこういう桁違いの時間感覚がBLAME世界の特長。ネット端末遺伝子を疑似的に作り出す実験を行う、という点は同じで、「助けに来たわよ霧亥」という原作リスペクト台詞もある。原作では割と感情の起伏があり、霧亥に泣いて懇願するようなこともあったが、今作では一貫して無表情で、霧亥やセーフガードと同じ無機質な印象が強い。サナカンの重力子放射線射出装置を喰らい融解するが、腕だけになって生存。腕に四本脚が生えた物体が動いていて、しかも話す絵面はおかしい。このシボに関連するシュールな笑いがちりばめられてていい感じ。ラスト、半世紀以上経過した後のづるたちの街が映されるシーンでもよく見ると腕シボがいる。

サナカン

声:早見沙織
ネット端末遺伝子を所持しない人間を排除するのがセーフガードの役割だが(それはほぼ存在しないものなのでつまり人間は全て排除対象)、そのうち特に強力な上位セーフガードの1体がサナカン。美しい女性型。原作だと序盤で敵と登場した後、いつの間にやら味方側として動いているキャラだが、今作では純粋な敵。タエ殺害後にタエに姿を似せて村に潜入。原作だと表情がほとんど変化しないキャラだったはずだが、ニヤッと笑ったり、霧亥と取っ組み合っている時に激昂した表情を見せたりと感情豊かになっている。ぶっちゃけとてもかわいい。その体は「超構造体(メガストラクチャー)」で出来ており、腕から発する電磁波?のようなもので重力子放射線射出装置をも跳ね返す。ちなみにセーフガードの肉体が超構造体で出来ているという設定は原作にはなかったはず。限界までチャージした霧亥の一撃で電磁波のガードをも貫通し破壊される。

シャキサクのアレ

原作1巻で登場した謎の食い物。シャキサクのアレ。原作では霧亥がそのまま食べて、ほおばりながら作業していると敵に襲われるというシュールなシーンになるのだが、どうやら普通の人間には固くて食えるものじゃないらしい。しかし、なんと水に入れると爆発的に膨張してパン生地のような食べ物が大量に生成されるという未来技術の食べ物だったことが判明。「まず水を入れます」→「一切れコレを入れます」→「あら不思議!いっぱい出来上がります!」みたいな図解まで側面に描いてある。結構美味いらしい。未来技術だし、栄養もこれだけで他がいらないくらいに万能に含まれてそう。すごく食べてみたい。

づる

声:雨宮天
電基漁師の村の少女。ヒロインはシボよりはこのづるになるだろう。シボは扱いが雑だし。若いが勇敢。妙な名前。霧亥に憧れのようなものを抱いたのか、工場から帰ってきた時には「村にずっといてほしい」と言う。しかしその時に霧亥は完全に眠っていて聞こえていない…。別れの際にはもう会えないの?と涙を浮かべる。今作、原作と比べて万人受けするデザインになっていて少女キャラのデザインも可愛い。原作にもいるのだが、見た目が全っっったく違う。300%増しくらいで美化されている。

捨造

声:宮野真守
電基漁師の村の青年。づると親しい。電基漁師では最も勇敢で、サナカンに対して頭に撃ち込んだり銃に撃ち込んだりと生身の人間ながら大活躍。最後まで生存する。

フサタ

声:島崎信長
電基漁師の村の青年。だが、捨造やアツジと比べると軟弱気味。タエに恋をしていて、タエがサナカンに姿を変えた時はしばらく茫然としていて完全に足手まといに。その後づるに喝を入れられて正気に戻り戦線復帰する。タエが死んだことを受け入れられずしばらく「タエ、タエ〜〜!!」とか言っているので結構鬱陶しいかもしれない。

タエ

声:洲崎綾
電基漁師の村の少女でづるの親友。妹は病気らしい。づるたちと共に工場に向かうが、誰も見ていないところでサナカンに無惨にも殺されており、さらにそのサナカンが電基漁師の村に潜入するためにタエに姿を変えていた。準ヒロイン的立ち位置だがなかなか末路はむごい。

アツジ

声:梶裕貴
電基漁師の村の青年。見張りをしている。見た目が捨造と似ているので結構紛らわしい。づる、捨造、フサタ同様に生存する。

項目別評価

原作とは繋がりのないパラレルな世界なので原作既読だと少々戸惑うが、まさか今更にBLAME!の劇場版アニメなんてものが見れるとは思ってもいなかったのでただ嬉しい。無限に広がる都市空間という極めて異色な世界観を2017年現在の高クオリティCGアニメで作ってくれたというだけで感激だ。是非とも第二弾、第三弾と別のエピソードを見てみたい。

凡人の感想・ネタバレ映画>BLAME!劇場映画版アニメ