ケープタウン(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ケープタウン(映画)

執筆日:2015年3月13日

評論

オーランド・ブルームとフォレスト・ウィテカー主演。ジャンルはクライム映画。麻薬組織に立ち向かう2人の刑事が主役だ。バディものである。
オーランド・ブルームは誰もが知っているだろうし自分も当然知っているが、フォレスト・ウィテカーというと自分が見た映画の中で出演しているのは初代スピーシーズくらいだった。

まずタイトルのケープタウンとは、南アフリカにある都市ケープタウンのことだ。自分が見てきた映画なんてのは大抵アメリカ舞台のものが多いのもで、まず南アフリカが舞台というところに惹かれた。暗黒大陸とすら呼ばれるアフリカの麻薬組織が相手だ。これはさぞバイオレンスな香りがするぜ!という感じで視聴してみたのだが。

その予感は当たっていた。当たりまくっていた。いや、予感以上にバイオレンスでアナーキーな映画だったという感じだ。タイトルがケープタウンという舞台そのままであること自体、考えさせるものがある。ケープタウン(はこんなにやばいぜ!)と言いたいのかもしれない。一部で有名なコピペで有名なヨハネスブルクがあるのも南アフリカ共和国である。この映画を見たら誰しもが南アフリカへは近づかないと思うであろう。そこらのアメリカを舞台にしたアクション映画とは一味違う情け容赦ないダーティーさが売りの映画だ。

2人の主人公たちからして、清廉潔白な人間というわけでもなく、色々と傷を持っている人間だ。
まずオーランドブルーム演じるブライアンは酒と女に溺れているクズ野郎だ。妻とは離婚しており、しょっちゅう女を連れ込んでとっかえひっかえしているような男。離婚した元妻や息子のところに行っても散々憎まれ口を叩き、容赦なく嫌われ罵倒されている。主人公にしては必要以上にクズ野郎である。ただそんなアウトロー気味な刑事なのでここぞという時の戦闘能力には定評がある。

フォレスト・ウィテカー演じる警部アリは人格自体は非常に温厚。しかし彼はズールー人という黒人民族の血を持ち、幼い頃に人種差別ゆえに白人の犬にアソコを噛み千切られて男性としての機能を持たないという人間。そんな彼だが、定期的に娼婦の元へと足を運び、女の体を撫ぜるだけ、というような奇妙な方法で代替的な性的満足を得ているという人間だ。彼は全編通してどこか悲壮感を漂わせながらも正義に殉じているのだが…。

すごくざっくり物語を解説。
ある日、素手で殴殺された女性の遺体が見つかる。その事件を調べていき、ある海岸沿いに集まっているチンピラのところへ行くと、激昂したチンピラたちに攻撃され、アリとブライアンの同僚であるダンが腕を切断&首を掻っ切られるという形で無惨にも殺されてしまう。

さらに追求していくうちに、どうやらあのチンピラどもはただのチンピラではなく、その背後に見える強烈な麻薬を扱う組織の姿が見えてくる。麻薬は単に興奮状態になるだけでなく、きわめて暴力的にもなる危険なものだ。
そしてさらに捜査を続けるうちにアリやブライアンの近親者にも危険が及ぶ。
アリが愛する母親は事件に首を突っ込んだがゆえにあえなく殺されてしまう。
ブライアンの元妻のところにも組織が。ブライアンの機転により元妻はどうにかこうにか助かった。

母親を殺されたアリは、かつての温厚な姿から一転、ただ母親を殺した人間への復讐のみを考える、一切の情を捨てた殺人マシーンと化す。ブライアンはそれを諌めようとするもアリは止まらない。ショットガンを持ったまま組織のボスの屋敷へと乗り込む。なし崩し的にブライアンもそれのサポートをすることになった。
微塵も容赦なくアリは部下は皆殺しにし、彼がもらした組織の人間もブライアンが抑えたが、真の黒幕というべき、麻薬を開発した博士だけが逃げ出す。それをアリが徒歩で追いかけ続け、ついに砂漠のど真ん中でその博士を追い詰め、馬乗りになって撲殺してしまう。しかしその後、彼が見渡したのは荒涼たる砂漠のみ。
ブライアンが駆けつけたときには力尽き息絶えていたのだった。屋敷で腕に銃撃を受けていたアリも出血多量状態になっていたのだ。

エピローグとして、ブライアンがアリの墓石を注文した後、自分の父親の墓石を注文するというシーンがある。これは荒れた生活をしていたブライアンが過去の自分と決別したということを表すシーンとなっている。

というような話。とにかく全編通して情け容赦のない暴力が吹き荒れる。麻薬組織というと、現実でもそれ絡みでメキシコでよく数百人の遺体が発見とか聞いて戦慄することが多いが、まさにそういう世界を描いている感じだ。人の命が軽いのなんの。悪の組織だけが死ぬのではなく、そこらの一般市民や、映画では保護されがちな女性もよく死ぬ。

タイトルのケープタウンというのは、ケープタウン(に存在する問題)、と続くのだろう。具体的には人種差別問題。
麻薬組織のボスのキャットという人物が、博士を追い詰めようとしているアリに殺される直前に「敵は俺じゃなくて博士だろ?」と吐き捨てるのだが、この台詞にテーマが集約されている気がする。この博士というのは白人であるのだが、組織のボスのキャットはアリと同じ人種の人間だ。だが、そもそも事件の始まりとなった薬を作ったのは白人であるこの博士なのである。割を食っているのはあくまで現地人。白人のせいで男性機能を失ったという、アリのやたらと重い設定も不必要に設定したわけでなく、直接的でないにせよ、この人種問題が作品の中心にあるのだと、2回視聴してみて思ったのだった。

項目別評価

痛快爽快アクションなんてものではなく、南アフリカという舞台ならではの荒廃感を醸し出しまくっているし、最後には主人公アリも死んでしまう。それでもブライアンは前向きに生きることを決意するものの、大団円からは程遠くいわゆるビターエンドだ。有名どころでは「セブン」あたりに近い。グロ描写もなかなか容赦ないので、ある程度精神的に大人な人間向けの映画。しかしこの作品ならではの色を出すことには成功していると思うし、印象に残る映画だった。

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