クリムゾン・ピーク -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>クリムゾン・ピーク

執筆日:2018年5月06日

簡単なあらすじ・ネタバレ

主人公イーディスは幽霊を見ることができる力のある女性。彼女が幼い頃死去した母の幽霊とも出会っていて、イーディスの母はイーディスに「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という謎の言葉を残していた。
14年後、イーディスは粘土採掘機への投資を募っているトーマスという男性と出会って惹かれた。しかしイーディスの父のカーターはトーマスを不審に思い、人を使って身辺調査をさせた。しかし直後にカーターは謎の死を遂げる。

イーディスはトーマスと結婚し、トーマス、そしてその姉のルシールが住んでいる館へと移り住むことになった。だがその館でイーディスは真っ赤なおぞましい姿の幽霊をたびたび目撃するのだった。館がある場所は「クリムゾン・ピーク」と呼ばれる場所であり、かつてイーディスの母の霊が警告をしたものだった。

イーディスは館で生活するうちに怖ろしい事実を知ることになる。トーマスとルシールの姉弟は実は金づるを求めて世界各地を点々としている結婚詐欺師であり、さらに結婚相手は殺害していたのだった。姉弟は自分たちの実の母も殺害していた。トーマスはイーディスの前にはエノーラという女性と結婚しており、館に現れるのはその霊だったのだった。カーターを密かに殺したのもルシールだった。
一方、イーディスの幼馴染のアランもこのことを知り、イーディスを助けに向かったのだった。

事実を知り逃げようとするイーディスだったが、姉弟に知られてしまう。アランがその場にやってきたが、ルシールに刺されて重傷になる。
しかし弟のトーマスは前々から姉のルシールの言いなりになっていることに嫌気がさしており、イーディスを殺すことには否定的だった。ついにはトーマスとルシールは仲違いをし、ルシールは自分の言うことを聞かないトーマスを殺してしまう。そしてイーディスをも殺そうともするが、イーディスはルシールを鈍器で殴り殺して勝利した。アランも瀕死ながら生きており、イーディスは彼と共に、住人のいなくなってしまった館を去った。

詳細なあらすじ・ネタバレ

20世紀初頭。主人公のイーディスは資本家の娘で、幽霊を見ることができる体質だった。幼い頃に彼女の母が死んだ時にもその幽霊を見ていて、イーディスの母の霊は「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という謎の警告をイーディスに遺した。

14年の時が流れ、ニューヨーク州のバッファロー。イーディスの父カーターに粘土採掘機への投資の話を持ってきたトーマスという青年が現れた。イーディスはトーマスに惹かれるようになるが、カーターはトーマスがどこかキナ臭いものを感じ取ったため、人を使ってその身辺を調査させたのだった。

その調査結果が出ると、カーターはトーマスを呼び出して「お前の正体を黙っていてやるし投資はしてやるが、代わりに娘のことを振って忘れろ」と言った。トーマスはその通りにしたが、その直後にカーターは謎の人物に殺されてしまったのだった。

父を失ったイーディスは悲しみに暮れたが、トーマスとの恋路を邪魔する父がいなくなったということでもあり、イーディスとトーマスは結婚した。
そしてトーマスの館へとイーディスは移り住んだのだった。トーマスにはルシールという姉もおり、イーディス、トーマス、ルシールの三人の同居生活が始まった。

しかし姉弟が住む館は古めかしく不気味であり、また、ルシールはどこか狂気的な性格を垣間見せることもあり、イーディスは不審に思うようになっていった。
トーマスはというと自分が投資している粘土採掘機に熱心だった。そんなトーマスがある日「クリムゾン・ピーク」という言葉を口にしたためイーディスは驚く。館の周辺は真っ赤な粘土に覆われているため、雪解けの時期に雪を真っ赤に染める。その現象をクリムゾン・ピークと呼ぶのだった。
また、イーディスは館でルシール、トーマス姉弟と生活を続けるうち、なぜか体調が徐々に悪くなっていき、吐血をするようにもなっていたのだった。

一方、イーディスの幼馴染で医者のアランはカーターが調査させた結果を見て、トーマスは以前に何人もの女性と結婚しては離婚しているという経歴の持ち主だったことを知っていた。

イーディスは館で蓄音機を見つける。それはエノーラ・ショッティという女性が話したものだった。その内容は「姉弟は金目的で結婚しており、その後証拠隠滅のため結婚相手も殺している。食事には毒が盛られている」というものだった。
館の地下室にはエノーラの遺体が粘土の中に隠されており、館に現れる幽霊の正体はこのエノーラだった。

姉弟の企みに気付いたイーディスは逃げようとする。その中でまた赤粘土まみれのエノーラの幽霊が現れる。彼女が指さす方向へと進むと、実の姉弟であるはずのルシールとトーマスが愛し合っている現場を目撃してしまう。ルシールは昔からトーマスに歪んだ愛情を向けており、トーマスはそんな姉の言いなりになっているという構図だった。投資家を見つけては殺害するという犯行を繰り返していたのも主犯はルシールであり、トーマスはそれに嫌気が指していたのであった。そのためトーマスは逃げようとするイーディスの味方になるが、ルシールはというと決してイーディスを逃がすまいとする。

そんな時アランが館に到着してイーディスを連れ出そうとする。アランはトーマスとルシールの正体をイーディスに話すが、やはりルシールは真実を知る者は殺そうとするスタンスであり、アランの腋の下あたりに深々と凶器を突き立てる。さらにトーマスがトドメを刺そうとするが、トーマスはすでに人を殺す気はなく、あえて急所を外してアランを刺して殺さないように努めた。
イーディスとアランは地下室に逃げ込む。その間にトーマスとルシールは仲違いをし、ついにはルシールは深く愛しているはずの弟のトーマスを殺してしまう。そしてルシールはその勢いでイーディスとアランも殺そうとする。

重傷のアランを隠し、イーディスは1対1でルシールと対決する。すでに外は雪が真っ赤に血のように染まり、まさにクリムゾン・ピークと言うに相応しい状態だった。その最中、ルシールはたった今殺したばかりのトーマスの霊を見て驚き、その隙を突かれてイーディスは鈍器でルシールを殴る。一度は起き上がるルシールだったが再度イーディスに殴られて絶命。

こうして呪われた姉弟は二人とも死に、イーディスは重傷のアランを連れて館を去るのだった。

感想・評価

19世紀〜20世紀初頭くらいの時代を扱ったゴシックホラーというのは雰囲気が重要だが、この作品はその点ほとんど完璧。いわくつきの古めかしい館というのに加え、血を彷彿とさせる赤土でおおわれている土地というのが素晴らしい。こういう現象、実際にあり得るのだろうか。もしあるとしたらその周辺になんか絶対に住みたくはないが。昼間に見る分にはいいかもなあ…。

あと幽霊の造形。真っ赤な赤土まみれの、幽霊というか、赤く変色したゾンビっぽくもあるような造形。上の動画でも解説があるが、これはかなりこだわったらしいが、それだけの価値はあったと思う。床から出てきてイーディスに向かって突撃してくるシーンがあるがここの危機感が半端じゃない。捕まったら絶対殺される!という感じ。しかしこの幽霊、イーディスに敵意があったというわけではないのだが。

そこでこの作品の何より面白いのが、幽霊以上に危険な要素としてシャープ姉弟という存在を置いたことだ。
大抵の幽霊映画では当たり前だが幽霊が主人公にとっての脅威だ。幽霊ばかりにスポットが当たってしまうのが普通だ。
だが、この作品では幽霊よりも、用無しになった金づるを殺そうとするシャープ姉弟が危険であり、幽霊一辺倒ではない。「幽霊より怖いのは人間だ」なんてよく言うが、幽霊映画に関しては大体はこの論理はあてはまらないわけで、「どの場面で幽霊がわッ!と出てくるのか?」ばかりが焦点になってしまう。だからこの作品のように最終的には主人公とそれに敵対する人間の1対1で決着するという流れは斬新で面白い。

ということで、雰囲気や話が非常にツボ。今まで見た洋画ホラーでは一番面白かった。

人物解説

イーディス・カッシング

演:ミア・ワシコウスカ
幽霊を見ることができる主人公。幼い頃に母を亡くした。その母が「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という警告を残したことを覚えていた。トーマスと出会い惹かれたが、父親カーターの思惑により仲が引き裂かれそうになる。しかしカーターがルシールによって殺されてしまったため障害がなくなり、シャープ姉弟の館に住むようになる。館に住むうちに、館に現れる幽霊やシャープ姉弟の正体を知る。

トーマス・シャープ

演:トム・ヒドルストン
粘土掘削機への投資話をカーターに持ち掛けてきたが一蹴されてしまう。そのための熱意は本物だが、実は姉のルシールともども、金づる目的に世界各地で結婚と殺人を繰り返してきた結婚詐欺師だった。さらに実の姉のルシールとは肉体関係もあるという歪んだ関係だった。元々姉の言いなりになって殺人を繰り返していることにうしろめたさを感じていて、さらにイーディスのことは純粋に愛してもいたため、ルシールと仲違い、ルシールに殺されてしまった。その後幽霊としてルシールの前に現れてルシールを惑わす。マイティ・ソーシリーズのロキとして有名なトム・ヒドルストンが演じているだけに、そのうさん臭さといったら満点である。

ルシール・シャープ

演:ジェシカ・チャステイン
トーマスの姉。しかし邪悪な心の持ち主であり、トーマスに対しては姉弟愛ではなく男女の情を持って愛し合ってしまっていた。そのため実の母からも「けだもの」呼ばわりされたが、その母をも殺してしまっていた。その後は金目的のためにトーマスと共謀して殺人をくりかえしていた。トーマス姉弟を恨む幽霊が出る館に住んでいながら、イーディスとは違って幽霊を見ることができないために幽霊を信じていなかった。しかし自分の手でトーマスを殺した後にはトーマスの幽霊を見、直後にイーディスに頭を殴られる。一度は復活するがもう一回殴られて今度こそ死ぬ。このシーンは少々ギャグっぽい。

アラン・マクマイケル

演:チャーリー・ハナム
イーディスの幼馴染で医者。イーディスのことを思っていたがイーディスはトーマスに心奪われてしまった。カーター亡き後に遅れてシャープ姉弟の正体に気付いてイーディスを救出しに行くがトーマスに刃物で刺されてしまう。しかしこれ以上殺人を繰り返したくなかったトーマスはアランが死んだように見せかけるためあえて急所を外してアランを刺した。イーディスがルシールと戦っている間重傷の身で待ち続け、なんとか生存。

カーター・カッシング

演:ジム・ビーヴァー
イーディスの父親。人を使ってトーマスとルシールの身辺調査をし、その正体を知ったために娘のイーディスに近づかないようにと考えたが、ルシールに殺されてしまった。

イーディスの母

イーディスが幼い頃に死去した母。イーディスに「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という警告を残した。なぜそんな回りくどいのか。というかそんな警告が出来たということは、このイーディスの母の霊は予知能力のようなものを持っていたということになる。ならいっそ「シャープ姉弟に気を付けなさい」とでも言えばよかったのになあ。予知能力を持った幽霊、って何気に斬新なような気もする。

項目別評価

映画「クリムゾン・ピーク」評価

幽霊だけでなく金目的の罪人姉弟を絡めた物語であるため一辺倒の恐怖ではなく、味のあるストーリーになっている。幽霊の造形も良い。雰囲気重視のゴシック・ホラーとしては非常に高いレベルの出来。ウーマン・イン・ブラックとかが好きならばオススメ。

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