実写版デビルマン 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>実写版デビルマン

執筆日:2017年06月23日

感想・評価

映画に興味があって、さらにインターネットに費やす時間もそれなりに長い人間ならどうしても辿り着いてしまうであろう話題。
そうだね、クソ映画談義だね。

クソ映画とは何か?と検索してみるとまず筆頭に上がってくるのが今回感想を書く「実写版デビルマン」だ。
恐らくクソ映画としてその存在を2010年前後くらいには自分は知っていたはずなのだが、どういう風にクソなのかは未だに知らず、視聴もまだだった。だが、2017/6/23にとうとう、Netflixにて視聴したのだった。
ネット上の映画通たちが口をそろえてクソクソ言うほどの代物だ。いくら覚悟してもきっと脱力するほどの恐怖の出来となっているのだろうと覚悟して視聴したのだが…。

視聴開始から10分、まだ普通だな。そろそろ酷くなるのかな?
30分。まだか?これからすんごい酷い出来のCGとかが来るのか?
1時間。主役の演技は確かに酷いな。でも少なくともここまで見た限りではそこまで…。
1時間30分。…ここからどういう展開や演出が待っていようと、すでにここまで普通に見れてしまっている以上はクソではないのでは?

そして視聴終了に出た感想。
………言うほどクソじゃないじゃん。

もう一回言うが、実写版デビルマン、ネット上で言われているほどクソじゃありません。

まず前提として自分は原作に関して未読。
だが主人公の不動明の彼女、美樹が無惨に殺され、その後滅びた世界で親友と戦い下半身が無くなり死ぬ。というところだけは知っている。要するにほぼ結末だけは知っているという妙な立場だ。そんな自分だが、少なくともこの映画が「クソ映画」とか「Z級映画」とか呼ばれるのは完全に間違っていると断言したい。だってこれより酷い映画なんて、邦画を多少かじった程度の自分ですらいくつか知っているのだから。
と、書いたところでついでに書くが、自分は邦画を結構バカにしている。単純に見る価値のないつまらないものが多いからだ。このサイトでレビューしている99%以上は洋画だが、そういうことだ。まあ理由はともあれそう思っている人間のレビューということを前提にしておいて読んでもらいたい。

まず自分がきっとここがクソなんだろうな、と予想していたのはCGの出来だ。邦画のCGというのは本当に酷い出来のものが多い。いや、CGを作ろうとしているならまだましだ。
個人的に最悪の邦画の1つに感染列島などが挙がるのだが、あれなんて、演出自体を放棄していたのだ。日本が壊滅的な状態に陥っているというのに、その大局を演出することをサボっていた。おかげでスケール感とかが全く演出できておらず、「本当に日本危ない状態なの?」とか思ってしまうほどだった。だがその点このデビルマンはちゃんとCGを使って演出している。滅んだ世界、ボロボロになったビル群のCGを演出しているし、最後の戦いでの悪魔軍団とデビルマンとの戦いも頑張っている。しかもデビルマンの造形なんか割と格好いいんじゃないの?とか思ってしまうくらいだった。確かに拙い部分はあるとは思うが、ここはむしろ褒められる部分のように思える。デビルマンとは酷い出来の割に金はかけた作品、とか言われてバカにされているのもよく見るのだが、要するにこの金というのはCGにかけたのだろう。

これがクソなんだろうと予想していた次の要素は俳優の演技だ。
これに関しては確かに、まあ酷かった。確かに酷い部分は多い。基本的に棒読み。一番酷いと思ったのは主人公、不動明が、彼女である美紀の父親、牧村啓介に自分が悪魔だということを知られるシーン。
手に浮き出ている模様が悪魔の印であり、それを見られたことに明は動揺するのだが、この時の演技が空を仰ぎながら一言。、「ウワー」
…なんだ今の?一体なんなんだ?今の叫び(のようなもの)は狼狽を表していたのか?それとも何か恥ずかしい思い出でも思い出して悶えたのか?とか少し考えてしまったくらいだ。
確かにこういった棒読みは酷かった。だが元々扱っている作品が、黙示録的な世界の破滅を描くという、根本から荒唐無稽なデビルマンなのだ。この作品では演技力の良し悪しはあんまり関係なく、むしろ上記のCGの頑張りでこちらは打ち消された。そういう印象だった。漫画とかの実写をやめろやめろ言われるのは、結局はCGのヘボさが第一の要因だと思うのだよな、演技がどうとかではなくて。その点、このデビルマンは頑張っているので、演技が下手糞でもそうマイナス要素にはならなかった。無茶な擁護にも見えるかもしれないが、まぎれもなくそう感じたのである。

第三のクソなんだろう予想(なんか変な言い回しだが)は、原作愛の欠如だ。
この点に関しては上で書いた通り、自分は明の彼女の美樹が殺されてその後、明も下半身を無くして死ぬ、という結末だけは知っていた。
少なくともここだけは、ほぼ原作通りと言っていい部分だろう。目を見開いた美樹の生首を明が発見するシーンは普通にショッキングだ。ちなみに「デビルマン 美樹」で画像検索するとこんな感じで真っ先にそのシーンが出るので、作品の代名詞とも言っていいところだろう。何せ実写なので、少なくともここだけは原作よりもショッキングだろう。
永井豪の作風と言えばエログロバイオレンスだ。エロはこの実写版には皆無だ。だが、作品の上映規模云々に関わってしまうところなので欠如するのは当然だろう。しかし、永井豪の作品を扱っておいて、いかにも、例えば美樹も生き残ってのハッピーエンドだったり、そうでなくとも、生首シーンをカットしたりの「グロバイオレンス」部分を切りとった上で結末を改変したりしたら、それこそ最悪の原作愛の欠如と言えるに違いない。だが、少なくとも最も有名であるショッキングな終盤のシーンは実写でえげつなく演出しているのだ。ここを変えたら「原作愛のないクソ映画」言われて然るべきだ。だがそうではない。
ただ重ねて、自分は原作に関しては最後のここ以外知らない。他の「ここを変えたらダメだろうがよお!?」というような原作デビルマンファンがいるのなら、それを否定する術は自分にはない。

というわけで自分的クソ要素予想を3つ挙げたが、どれも許容できるものであって、総合してみると自分にはこの映画をクソ映画呼ばわりすることはできない。というか、むしろ邦画にしては(この言い方自体最初から邦画に期待しておらずハードルが低いからこそのものだが)面白い。特に、大抵において邦画では見られたもんじゃなくなるCGを頑張っていたのがとても評価高い。むしろこのサイトでレビューを書いた邦画の中では一番面白かった。もちろん皮肉ではない。この映画よりは、すでに挙げたが、邦画の悪い部分を煮詰めた作品である「感染列島」、それに人生で唯一、見たことを後悔した「大日本人」の方がよほど酷いと断言する。こんなん、到底クソ映画なんて呼べません。どこかで「デビルマン見るくらいなら死霊の盆踊りを見た方がマシ」なんてのも見たような気がするが、完全に嘘です。半裸の女が踊り続けるだけの映画より酷いなんてことは断じてない。ネットで見かける「デビルマン以下のクソ映画はない説」は嘘なんで騙されないようにしよう。死霊の盆踊りどころか、デビルマンよりはそこらにあるサメ映画の方が大抵はクソです。騙されないようにしよう。

項目別評価

特に主役の演技は酷い。一部本当に酷い。だが、自分にはこの映画を「クソ映画」と断じることはできない。むしろ邦画にしては面白い。CGを頑張って作っているだけ、SF漫画原作実写映画としてはとても良い出来とすら言える。神に誓って逆張りなどではなくそう思う。邦画のダメな部分を集めたという意味では「感染列島」とかの方がよほど酷いと思う。数多い原作ファンの怒りからなのか、原作知名度の高さからなのか、不当にメタクソな評価を受けている作品。だが自分としては、感染列島よりは3倍マシ。大日本人よりは7倍はマシ。そんな評価。ネットの評価なんてそれこそクソの役にも立たねえな!と痛感した。

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