フューリー 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>フューリー

執筆日:2015年3月3日

評論

PSSTOREで新作表示になっていた頃から見てみたかった映画「フューリー」を視聴。通常のものよりなぜだか知らないが700円と高いレンタル金額にやや戸惑いつつ金を払ったのだった。

ブラッド・ピット主演の戦争映画である。戦争映画というと、自分が見ためぼしいものとしては「プライベート・ライアン」「ブラックホークダウン」そして最近見てレビューも書いた「ローン・サバイバー」になる。知る人ぞ知る、なんてものは見ておらず、誰もが見ている映画だけ見ている人間である。

ストアで購入する際にはもちろん作品概要を見るのであり、それで食指が動くかどうかは重要だ。この作品の場合、「第二次大戦末期、ドイツ軍と比べて性能に劣る戦車しか持たない米軍の一部隊が、ドイツ軍戦車ティーガーに苦戦を強いられ、300人を5人で向かう撃つことに」という感じだ。
300人に対して5人、というシチュエーションはまさにローン・サバイバーで見た数字と一致、評価が274あって平均が4.5という破格の高評価。評価数に対してこのアベレージは信用に足るものだろうと思い、かねてより見たかったのである。

結論から言うと、「少々臭い部分もありながらもいい映画だった」という感じ。特に、戦争ものでは目を逸らされな「味方側の汚い部分」をある程度描写しているのが好感が持てた。そもそもシチュエーションとして第二次大戦末期ということで兵士たちももうアメリカが勝つのは時間の問題という段階なのでアメリカひいきである意味ずるいのであるが、勝者側の占領地での蹂躙というものをある程度描写している点が良かった。これは詳しくは後述。

ブラッド・ピット演じる「ドン」をリーダーとする5人のチームはフューリーという名前がつけられている。
そのフューリー号の副操縦士は物語冒頭で戦死したところであり、新米兵の「ノーマン」が補充としてチームに参加する。ブラピが主役ではあるが、このノーマンも主役と言えるだろう。要するにプライベートライアンのトムハンクスとマッドデイモンの関係とほぼ同じだと思えばいい。
ちなみに他のメンバーは「ボイド」[トリニ」「グレイディ」という面子であり、特にグレイディは品格に欠け、チンピラじみたところがある。
しかし戦争においては綺麗事をぬかす人間こそ悪である。ノーマンは人を撃ち殺したこともなく覚悟もない人間であり、そのために別の戦車で戦死者が出てしまうことも。これに怒ったドンは捕虜にしたドイツ兵をノーマンの手で撃ち殺させる。

さらに、占領した町では女を連れ込んで好きにする行為も横行している。
ドンはノーマンを連れて女性のいる家に入る。そこにいたのは中年女性エルマ、そして別の若い女性エマ。おびえる二人だったが、ドンもノーマンも紳士的に接し(とか言ってもちゃっかりエマとノーマンは致しちゃってるわけだが)、2人は警戒を解く。
だがそこに別のチームの3人がやってきて、グレイディなどは「おいおいカワイコちゃんがいるじゃねーのウッヒッヒ」とばかりにゲスいことをしようとするのだが、ドンに諌められて女性2人は何もされずにすむ。だがその直後、その家にドイツ軍の砲弾が直撃。ノーマンと短いラブロマンスを演じたエマはあえなく死亡、ノーマンは戦争の現実に打ちひしがれるのだった。

その後、任務を受けてフューリー以外の3両の戦車がある十字路の死守のために移動していくが、道中でドイツ軍最強の戦車ティーガーと遭遇する。
装甲が厚く砲弾が通らないこのティーガーの前にあえなくフューリー以外の3両は撃破されてしまう。策によりどうにかこのティーガーを撃破したが無線が壊れ、通信が行えなくなってしまう。

それでも任務のために単機で進むフューリーだったが、任務の目的地となっていた十字路の上で地雷を踏んで移動不可能になる。
そして周囲を見張っていたノーマンがドイツ軍300人の軍勢が迫っていることを告げる。逃げることを提案するメンバーだったが、ドンだけはここに残り任務を遂行する、と決意を露わにする。ノーマンら4人もそれに同調し結局は全員が残り決死の覚悟で5人での迎撃作戦を敢行する。

300人のドイツ兵に対して戦車に篭って戦い奮闘はするのだが、ついには弾が突き、ボイド、トリニ、グレイディらもやられてしまう。
最後に残ったドンとノーマン。ノーマンだけは脱出用のハッチで戦車の真下から逃げ出し、ドンもついに死亡する。戦車の真下に隠れていたノーマン。しかしドイツ兵に見つかってしまうが、どういうわけかこのドイツ兵は見なかったことにして見逃してくれた。

そのまま翌朝になる。戦車内でドンの遺体に抱きつくノーマン。誰かハッチを開ける人間がいる。銃を構えるノーマンだったが味方だった。
生き残った彼を「英雄」と称える仲間。ノーマンは呆然としながら車に乗り込み、大破したフューリー号を見つめ、エンド。

新米兵士が補充兵として入るという展開を知った時点で、「きっとこれは色々と意地悪されたりする話だろうな」とも思ったのだが、あんまりそういう傾向はなかった気がする。むしろ、ノーマンに対してメンバーは存外好意的だなとさえ思った。まあファーストコンタクトではノーマンを散々に扱ってもいるのだが。

そして、ドンとノーマン以外の3人の仲が割と微妙な関係だったりするのが、いい塩梅だと感じた。ドンを指揮官として信頼しているが、だからといってすごく仲がいいというわけでもない。ドンはグレイディのゲスっぽいところに嫌悪感を示し、ツバをはきかけたりもする。

占領地での女性との交流シーンはなんかいきなり臭いロマンスが始まったなと思った。ドイツ人エマはピアノを弾いたノーマンに対し、いきなり好意を示し出したのだが、これは明らかにストックホルム症候群だろうと。いくら紳士的に接してくれたからといってああまでデレるのもまたリアリティに欠ける。だが、にこで後から来た3人のシーンがあったのは良かったと思う。

占領地の女なんて抱いて、乱暴に扱って当然という心理があるのも当時の兵士として当然だろう。リアルな戦争ものでこんな綺麗に敵国の女性とのロマンスで終わってしまっては安っぽすぎる。なので3人が割り込んできて雰囲気ギスギスする展開があるのは人物の人間らしさを演出するのに必要だった。後にグレイディがノーマンに詫びるシーンもあり、品に欠ける人間ではあるが悪人ではないということも伝わり、戦争のえぐさを演出することにもなっている。人間が悪いのではなく、戦争が人の常識を変えてしまう、ということだろう。このシーンに割いている時間が妙に長めではあるが、このシーンが無ければこの映画の評価は少し下がることになったと思う。

構成的にプライベートライアンと似ている。なので新米兵だけ生き残るという点は「やっぱそうなっちゃうかあ…」という感じでちょっとがっかりしたかな。

項目別評価

プライベートライアンと展開が似てるなーと思ったので独自性はあまり感じなかったし、終盤に不満はあったものの、十分に面白かった。
ラストに関してはノーマンも死亡するほうが展開としては好きだった。

凡人の感想・ネタバレ映画>フューリー