かぐや姫の物語 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年3月14日

評論

3月13日の金曜ロードショーで地上波放送された「かぐや姫の物語」。その感想である。

製作はスタジオジブリ。ちょっと前にアカデミーにノミネートされていたものの受賞は逃した、と話題になったばかりの本作品。実は今日の今日まで放映することを知らなかった。知ったのは放送30分前である。
公開されたのは2013年、その当時、独特のタッチで描かれた映像が話題となったものの、個人的には興味がない作品だったので詳しく批評を調べたりはしなかった。ただ、少なくとも大ヒットした!ジブリ作品の歴史にまた輝かしい栄光が刻まれた!みたいな評判は聞かなかったので、多分無難な出来で、かぐや姫なんて題材を扱っている以上はあまりエンタメ性はない地味目な作品なんだろうと自己完結していたのである。

そして今日、見てみた感想だが、「うん、かぐや姫だね」という言葉がまず出てくる。2時間超えの長編大作だが、細かい部分はさておき話自体は竹取物語であってそれ以上でもそれ以下でもない。

一応、本作品の独自の要素として、「かぐや姫の幼少時代」が描かれているという点があるようだ。これは本作品のオリジナルであって、かぐや姫が老夫婦の家で養われるようになってから成長して求婚されるまでの間の物語として、竹取物語にはない話として付け加えていることになる。
ただ、これが入っているからといって物語の大筋に変化があったりはしない。「捨丸」というオリジナルキャラクターが、かぐや姫の幼少時の遊び相手、もっと言えば恋愛対象として設定されているものの、彼と幸せになったりはしない。彼とは幼少時に離れ離れになり、月からの使者が来る直前で再会を果たすものの、その時すでに捨丸は家庭を築いている。ひと時の幻として彼と恋に落ちるものの(捨丸の立場としちゃ完全に浮気なのでどうかと思うが)最後には原典同様にかぐや姫が月に帰ってしまい、はっきり言うとバッドエンドである。
かぐや姫の教育係や世話係に当たる人物もオリジナルキャラクターではあるが、これらのキャラクターは話を賑わすための脇役として独自に加えられているだけであって、決してこれらの人物により竹取物語の話自体が変動するようなことはないのである。

物語の大筋は、日本人なら万人が知り、また学生時代には必ず国語、古典の授業で題材として扱う、あの「竹取物語」そのもの。独特のタッチで、2時間以上にもわたり物語を紡いではいるものの、内容としては紛れもなく竹取物語。決して話を改変したりはしていない。求婚してきた男たちに無理難題を出して退けるくだりや、最後には人間たちの反抗もむなしく月の住民たちに連れ去られてしまう結末、紛れも無くかぐや姫であり、それ以上のものではない。

何やらこの作品8年もの年月と50億円以上の製作費をかけられたものだというのだが、それで出来上がったのがただ原典をほとんどなぞっただけのかぐや姫だとは。少々拍子抜けしたという感じは否めない。別に月からの使者を頑張って撃退するとかそういう話を期待してたわけじゃないんだけども。そんだけ手間かけてこれでいいのか?という疑問が噴出してしまう。

ただ、だからといって別に面白くないわけじゃない、というか、普通に面白い。話のあらましは知っていたものの、改めて話を丁寧に見せられると、「かぐや姫、竹取物語って面白いな!」と感心してしまった。だから凄く楽しんで見れた。
でもこれって、「かぐや姫の物語」というスタジオジブリ作品を見て面白いと言ってるんじゃなくて、「竹取物語」を面白いって感じてるんだよな…。映像は確かに独特のもので見てて面白いのだけれども、見慣れていくとそれほど新鮮さも感じなくなってしまうのも事実であって。いや、面白いんだけどさ。

項目別評価

話は…かぐや姫だよね。かぐや姫。竹取物語でかぐや姫。流石は日本最古かつ超超有名な昔話だ!面白い!という感じ。
筆で描いたようなタッチの独特の絵はなかなか見ごたえがあるのは確かなんだけども、独特ではあっても、良くも悪くも昔話にあわせたタッチで派手でなくそれほど目を引くってものでもないし、2時間以上も見ていると慣れてしまうというか、面白みを感じることも割りとすぐ無くなってしまうというか。
しかし、2時間超の長さだからこそかぐや姫の心の変遷を細かく描いており、かぐや姫に感情移入できる作りになっている。原典の竹取物語は、かぐや姫の心情がそっけなく表現されているのに対してこの作品のかぐや姫は感情豊かで愛嬌がある。原典のかぐや姫って、地上から月に帰ることについて、育ての親である二人にはすまないと言いつつもほとんど諦観しきっていて、ちょっとすました印象がある。竹取物語というものに触れるのは学生時代に古典の授業で学んだきりだが、おそらく間違ってないと思う。(とか言いつつ凄くあいまいな記憶なので適当言ってるかもしれない)
それと比べればこの作品のかぐや姫は地上との別れを惜しみ、地上を汚らわしいと言った月の民に対して怒りを露わにするなど、思考が地上側に寄っていてくれて愛すべきキャラクターであるので、それゆえに原典の話の面白さに+αしていると思えた。やっぱ地上側の人間としては、せめてかぐや姫にこれでもかと惜しんでほしいよ。

面白かった、のだが、視聴後の気分はあまりすっきりしたものではない。というのも問題はそもそもかぐや姫って物語がバッドエンドじみた話であるということだ。結局結末としてかぐや姫は月に帰ってしまう。彼女が振り返り青い地球を見つめて悲しみの涙を流すシーンでスタッフロールに入ってしまうもんだから、「確かにかぐや姫はそういう話だけども!そうだけども!」と、知ってはいたもののモヤモヤと行き場のない感情が渦巻いた。どうせ映像化するならグッドエンドの題材、いっそ桃太郎でもよかったんじゃないかな、なんて。

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