リミット(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年10月31日

ストーリー・ネタバレ

ポール・コンロイ(ライアン・レイノルズ)は真っ暗な閉鎖空間で目を覚ました。口にはさるぐつわ、腕は縛られて拘束されている状況。
どうにか拘束を外したポールは妻のリンダがいる自宅にかけたが留守電。911に通話する。自分はイラクのバクーバでCRT社の社員としてトラック運転手をしており、その時にテロ組織に襲撃を受けて生き埋めにされたということを伝える。しかし相手側の女性はここはオハイオ州の局だという。呑気なことを言っているのでポールは通話を切り、今度は通話案内にかける。FBIにつなげとポールは言うが、どこのFBI?などと聞いてくるので、どこでもいいと怒鳴りつけるポール。するとFBIのハリスという男が出た。しかし社会保障番号がどうだとの話しているうちに圏外になってしまい通話が切れる。今度は自分の会社であるCRTにかける。人事担当のダヴェンポートに繋がるも、また電波が届くなり切れてしまう。半ば発狂するポール。

しばらく真っ暗状態に。落ち着きを取り戻して冷静に考えてみて、携帯に残されている番号にリダイヤルしてみるとなんと自分をこの状況にした犯人らしき人物が出た。そしてその犯人は9時までに500万ドル用意しろと無理難題をつきつけてきた。
今度は知人の女性であるドナにかける。ドナは電話に出たが、ポールが国務省の番号を調べろと言っても邪険にして切ってしまう。このクソッタレ!と暴れるポールだったが、落ち着いてもう一度かけ、今度はドナからちゃんと国務省の番号を教えてもらった。

国務省にかけるとブラウニング女性と話ができた。そこで彼女がなぜかポールの名前を知っていた。どうやらCRT側が国務省へ連絡を入れていたらしい。ポールの番号を教えろとブラウニングに言われる。非通知になっていてむこうではわからないらしい。彼女と話しているとある番号を教えられる。ダン・ブレナーというテロ人質対策の責任者の番号だ。
彼に電話をかける。ブレナーはすでにポール救出のために動き出していると言い、色々とアドバイスをくれた。一度切って今度は犯人と話す。アメリカはテロの要求には応えないとポールは言うものの、犯人は当然折れない。500万がでないなら100万でいいと要求を緩めてきた。そして足元にあるメモを読めと指示をしてきた。

足元を見るには狭い棺の中で体の向きを変えなければならない。悪戦苦闘してどうにか向きをかえると足元には袋があった。中には光る棒のライト、そしてもう一つは懐中電灯。さらにメモが入っていてそこには指示が書いてあるが、ポールは無視してその紙を丸めてしまった。また自宅にかけるが留守電になっているままだ。

またダン・ブレナーにかける。進展はなく、さらにブレナーはポールに対してアルジャジーラなどのマスコミに知られたくないため人質声明ビデオは撮るなとポールに言ってきた。ポールがブレナーに「今までこういうことがあったか?何人助かった?」と聞くとブレナーは「多くはない」と答えた。さらにポールが「今まで助かった人物の名前を教えろ。それを聞けばあんたを信用する」と言うとブレナーは「マーク・ホワイトという26才の医学生がいる」と答えた。ポールはわざわざそのマークホワイトという人物名を棺の天井に書いたのだった。不安障害持ちであることをポールは白状するとブレナーは落ち着けと言う。10分後にまたかけろと言うブレナー。

ポールは持っていた薬を飲み、これまた持っていたスキットルに入っているウイスキー?でそれを流し込む。いよいよもって自分は助からないと思ったのか、携帯のバッテリーが少なくなっているにもかかわらず、ポールはある場所に電話をする。それはアメリカのある介護施設。そこにはポールの母親のメリアンがいた。電話をつないでもらったが、彼女は重度の認知症であるようで、ポールをもはや息子だとも認識していない様子。最後の最後までろくな会話すらできずに終わってしまい、通話後にポールは涙する。
そこに画像メールが送られてきた。見ると、そこには拘束された女性。それを見て慌てたポール。どうやら彼女はポールと一緒に捕らわれたポールの同僚であるらしい。犯人に電話をして「彼女、パメラには子供が2人いる!」などといって殺害をとめようとする。しかたなくポールはついに人質声明ビデオを指示された通りに撮影して犯人に送った。

少し間が空き、なんと蛇がポールのズボンの中から這い出してきた。それをどうにか排除しようとしたポールだったが、狭い棺の中で出火してしまう。さらにあわやスキットルからこぼれたウイスキーが火に到達するところだったが、寸前で砂をかけて火を消して、蛇は小さい棺の穴から出ていき、事なきをえた。

その後、携帯をいじっていたらちょうど言語選択らしいページを開き(今まではアラビア語表示設定になっていたのでポールはうまく携帯を扱えていない)、英語設定にしてようやく携帯を自由に使えるように。これによりこの携帯の番号も調べることができたので、自宅に電話して(また留守電)この番号を調べてもらうようにリンダに言付けをした。
また映像ファイルが送られてきた。見ると、パメラが殺害されてしまった映像だった。それを見て嘔吐するポール。

ブレナー・ブレナーから電話がかかってくる。人質となったのを示す映像を犯人に送ったのをブレナーにとがめられるものの、ポールはそんなのは知ったことではなく、パメラを見殺しにしたことを責めるのだった。しかし、ブレナーはポールを警護していた兵士に話を聞いたなどと言うのでそれなりに進展はあるらしい。
そうしているうちに激しい振動が起き、棺の天井に亀裂が入り、砂が入り込んできてしまった。急いで衣服をつめて応急処置。
さらに今度はCRT社から電話が来る。相手は人事担当のダヴェンポートだ。何の話かと聞いてみると、これから録音するなどと言い神妙な様子。何やら会社側の免責条項の確認をして、半ば強引にポールにイエスと言わせたがっているようだ。つまりCRT社は責任逃れをするつもりだ。ポールはパメラと不適切な性的関係にあったということを理由に、今朝時点でポールをCRT社から解雇したことにするのだという。毒づくポールだったが構わず話を進め、生き埋めになりながらポールは無職となったのだった。

いよいよ絶望的な状況になってきたポール。ブレナーから電話がかかってくる。何やら犯人は死んだのだという。先ほどの激しい振動は爆撃によるもので、あれで犯人は死に、そうなるとポールが埋められている場所もわからない状況となってしまったのだと。もはやポールは死を覚悟しており、それほど激昂することもなくブレナーとの通話を切った。
その後、一人で遺書代わりに携帯に向かって話し始めた。たった700ドルの貯金は妻に託すことや服は息子に譲ることなど。もはや完全に死を受け入れている状態だ。そうしている間にもどんどん天井から砂が入ってくる。

しかしなんと死んだと思われた犯人から連絡が。さらには犯人はポールの自宅の住所を言い、「金を払わなければ家族を殺す」というような脅しも入れてくる。さらに「5分以内に指を切った動画を撮って送れ」とも。
ポールはあわてて自宅のリンダへ電話するがまたも留守電である。息子と共に逃げろと留守電には入れる。ブレナーに電話するがこちらも留守電。

もはや棺の中の半分ほどが埋まった状態でポールは棺が開かれる幻影を見る。しかし電話がかかってきているのは現実だった。ブレナーからだ。出ると「アメリカ人が埋められた場所を知っているというシーア派ゲリラから場所を聞いた」と言い、すぐ近くにいると言ってきた。もう3分ほどで着くという。そしてこの話の途中でリンダからも電話がかかってくる。ついに会話できた妻リンダ。彼女はひどく狼狽しているが、ポールが「もう助けが来る」と言うと泣きながらも安心した様子だった。再度ブレナーと会話する。彼はいよいよ棺を掘り出しているらしいが、ポールの近くでそんな様子は聞こえない。そして最後にブレナーからの言葉、「すまないポール。この棺の中にいるのはマーク・ホワイトだ…」。ポールは茫然としたまま完全に砂に埋もれ、「すまないポール、許してくれ」というブレナーの言葉で終幕。
妙に陽気なエンドクレジットの最後には棺の天井が写され、「マーク・ホワイト」の文字が一瞬見える。

感想・評価

なんと1時間30分の全てで回想ですらも存在せず全ての映像がポールの閉じ込められた棺の中のみ。閉鎖空間、ワン・シチュエーションものの映画は今や1ジャンルとして定着しているが、主人公以外全く登場しないというのは見たことがないのでなかなか衝撃的だった。「127時間」と似ているかもしれないがあちらは回想はあったし。

この作品、少し調べてみると結構評価は二分されている感じだ。途中で飽きるくだらない映画、あるいは設定がガバガバすぎるだ断じる人間もいれば、素晴らしいワン・シチュエーション作品だと絶賛している人間も少なくない。自分はどちらかというと後者である。理不尽に絶体絶命なポールに感情移入して共に苦しむことができれば、きっと最初から最後まで目が離せない。また、ブレナーが嘘をついていたこと、「マーク・ホワイト」という人物が何だったのか?などと考えてみると結構考察のしがいもある作品。

おそらく全映画の中でも主人公の行動可能範囲としては随一の狭さを誇るであろう今作、事前に閉鎖空間ものであることは知っていたのだが、結局最後まで、携帯画面を通したパメラの殺害シーン以外では、一切外の世界が寸分たりとも映されない徹底っぷりに感服した。少しでも映したら一気に緊張感が抜けていってしまう映画であることは間違いない。例えば最近1と2を連続して見た「ソウ」シリーズも、映画の方向性としてはこういうように外界は全く写さないのが正解なんじゃないかなあとも思った。そうするとやっぱり絶望感、閉塞感が全く違ってくると思うのだよな。「CUBE」は少なくとも初代はここが徹底しているのであの異常な空間が際立っているわけだし。

話が逸れた。別に他の映画を引き合いにする気はなく、純粋にこの作品の感想をつらつらと書きたい。
まず、主人公のポールはただのトラック運転手だが、状況のわりには随分落ち着いている。あの状況だと大概の人間は、閉所恐怖症でなくとも発狂しかねないところだと思うのだが、畳みかける絶望的状況にも最後までよく抗った方だと思う。というか、むしろ常人離れしていると言っていいんじゃないだろうか。あの状況だと30分と持たず正気を失う人間も少なくはないのではないかとも思えるが、最後の最後まである程度の正気は残し、FBIのブレナーなどにはジョーク交じりの苦言を飛ばしたりも。頑張った。とても頑張ったのだがダメだった。バッドエンドで終わるのは残念であるが、「マーク・ホワイト」が実はおそらくは死亡していたことが明らかになり、ポールの命運も尽きるのと同時に終幕になることがなんとも言えない絶妙な味わいとなっている映画なので、そこはしょうがない。

ポールの電話相手としてはテロ人質対策のブレナー、犯人、ポールの会社の人事担当アラン、ポールの知り合いの女性ドナ、認知症のポールの母親メリアン、最後の最後でようやく話せる妻リンダ、と数えてみると意外と多い。それぞれの人物についての印象など。

まとめてみると、まあ犯人が悪い奴なのは当然として、CRTの人事担当アラン・ダヴェンポートの別の意味での非道っぷりが際立っている。なんでこの状況でそんなにポールをいじめるのか、彼が何をしたというのか。浮気をしたとしてもこの状況での通知はあんまりじゃないか。700ドルしか貯金がない彼をそんなに追い詰めなくてもいいじゃないか。そう思ってしまうところだが、淡々と事務的にポールを解雇する。鬼かアンタは。やっぱりこれは暗にアメリカ批判みたいな意思を感じ取れるよなあ。
徹頭徹尾絶望的な状況ばかりがポールに押し付けられているが、ラスト直前のブレナーの「助けに来た!」という連絡を聞いたときには「あれ?本当に助かる?」なんてちょっと思ってしまうところであり、全体を通して希望と絶望の緩急が上手い。そして「マーク・ホワイト」という、作中で姿も声すらも出ない26才の男性がキーワードになっているというのが意味深であり、想像力をそそる。何か言葉にはしにくいモヤモヤしたものを視聴者に残しつつも、視聴者はこの映画を見た同士を探し、語り合いたくなってしまう、そういう力はある映画じゃないだろうか。ていうか今の自分がそれである。

その他突っ込みどころとしては、空気、だろうか。最初から最後まで劇中では数時間以上は経過しているわけだが、あの状況だと本当にあれだけ空気が持つのだろうか。あとは携帯の充電、ジッポのオイルも。この重大な3つの消費要素のどれもが結局最後の最後まで途絶えることがなかったのが意外である。特に携帯のバッテリー1個状態からの粘りがすごい。きっと、充電が切れて発狂、なんてのはあまりに予定調和なのであえて最後までもたせたんだろうな。でも映画のキャッチフレーズとして「空気はあと90分」とか見たような気がするが…。

項目別評価

個人的にはかなり好みの作品だったので高得点になったが、間違っても万人向けではない。特に「物語はハッピーエンドでなきゃ!」って人は見てはいけない。最初から最後まで棺以外の映像を、回想ですらも出さなかったことを褒め称えたい。色々と説明不足なまま終わるので、想像力たくましい人にお勧め。

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