ローン・サバイバー -凡人の感想・ネタバレ-

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評論

よくPSSTOREで映画を購入して見るのだが、その映画の出来が良いから悪いかは当然気になるわけで。この映画、評価回数が400回を超えいてしかもアベレージが4以上だったのでさぞ名作なのだろうと2014年10月に見てみた。PSSTOREでこの回数の評価階数の作品ってのはそう多くない。結論から言うとそれが過剰ではない正当な評価だった。

アメリカの精鋭中の精鋭部隊、「シールズ」史上最悪の惨事となった「レッドウイング作戦」を扱った映画。
元はそのメンバーの一人マーカス・ラトラルの手記が原作であり、それを元にしているが、要所要所では映画らしいケレンミを加えられているとのこと。
この作戦についての詳細はウィキペディアでも参照してもらうとして、簡潔に説明するならば、「数百人のタリバンに囲まれたシールズ4人の死力を尽くしたサバイバル」。そして結論を言ってしまうとシールズ側は1人を残して全滅。

ストーリーのあらましはレッドウイング作戦を調べればそれがほとんどそのままなので、省いて見所だけを紹介すると、この映画、とにかく「痛い」。映画の登場人物っていえば、弾にはほぼ当たらない、あるいは当たって即死、というどちらかのシーンが多数なんじゃないかと思う。ところがこの映画の場合、登場人物4人に対して弾が死なない程度に当たりまくる。ロケット弾の爆風に何度も何度もさらされる。さらに、窮地から脱するために崖からジャンプなんてことを2回もやる。多数の銃弾を身に受けた状態でだ。登場人物がこれほどまでに執拗に痛めつけられる映画って、以外と少ないんじゃないかと、見ててハっとした。肩とか足とかに当たるのって例えばアクション映画じゃ黒幕との最終決戦でとか限定が多いから。飛び降りのシーンでは岩に激しく打ち付けられる音がリアルに何度も響き渡り、もうこれ死んだだろ…と思うこと多数。
冒頭でシールズになるための訓練がどれだけ過酷か映像とともに語られるのだが、これはこの満身創痍になる登場人物の伏線となっている。こんな状態になっても最善を尽くそうとする精神力、仲間との繋がり。これらは見ていれば嫌と言うほどに思い知ることになる。崖からの飛び降り直後、もはや瀕死の状況ながらも、RPGを撃つ敵がいれば「RPG!」と叫ぶシーンでは鳥肌が立った。もう4人ともほとんど動けなくなって「もうこれだめだろ…」って時にこのシーンなので痺れた。血ヘドを吐きながらもただ訓練、教えに従い兵士としてやるべきをやる。

こんな血なまぐさい映画ながら、泣き所まで抑えてあるのはまたずるい。
後半、マーカス以外は全員が死亡してしまった状態、マーカスは森の中で泉を発見する。極限状態だったマーカスはこれに飛び込んで乾きを満たすのだが、いつの間にか周囲を現地民に囲まれている。しかしどうも自分に敵対的ではなく、自分たちの村に連れて匿ってくれた。この理由は作中では明らかにならず、スタッフロール後に、実はこの民族に伝わる教えに従っての行動だったと分かる。助けを求める人間はいかなる理由があろうとも助けるという教えだ。
これがフィクションなら都合良すぎるわ!と言いたくなるところだがこれが実話だってんだからまさに事実は小説なりもと言うところか。この民族はタリバン組織とは敵対している。しかしアメリカ人をすら助けるのだから、タリバンの人間が助けを求めたならばきっとそれも助けるのだろう。ちょっと聖人すぎんよ。
エンディングではマーカスとこの現地住民の交流が現在進行形であることが語られるのだが、同じくマーカスを助けてくれた子供についての言及はなかった。この子供は架空なんだろうか?まあ絶体絶命のピンチで子供がナイフを渡す、というシーンでは「ああさすがにこれは創作だな」とは思ったのだが。

実話を元にした映画ってのはそれだけで評価が高くなる傾向にあるけども、この作品はそれ抜きでも、戦場の緊張感と臨場感が半端ないので、そこだけでも十分に見る価値がある。特に音響には相当こだわっているようで、すぐ近くを銃弾が跳ねる音、足や肩に当たって肉がはじけ飛ぶ音、そして上述した崖からの飛び降り時に激しく体を打ち付ける音など、どれもこれもがリアルで思わず息が止まる。これを映画館で見たら多分ポップコーン食べる手も止まっただろう。

そして、まさに主人公マーカスも作品の最後に語っているが、死力の限りを尽くしているこの作品を見ると、生半可なことでは弱音なんて吐くべきではないな、と思わずにはいられない。まあこういう気持ちってのは大抵見た直後だけであって、次の日にはすっかり忘れてしまうものだけども、「なんか今の自分だらけてんなー」「甘えて生きてんなー」とか客観的に見て思う部分があるのならば、見れば少しの間でも喝が入るかもしれないのでお勧めだ。

項目別評価

戦場での危機感がひしひしと伝わってきて息が詰まる。それでも精神的に折れない彼らの姿には感服。映画館で見るべき映画だが、自宅で見るなら可能な限り音響はじめ視聴環境を整えよう。

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