マネー・ショート 華麗なる大逆転 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月18日

あらすじ・ネタバレ

「厄介なのは知らないことではなく知らないのに知っていると思い込むことだ」という言葉が出る。

ナレーションはジャレド・ベネットという、ドイツ銀行の社員が務める。そのベネットが1970年代に不動産担保証券(MBS(モーゲージ債))というものは大革命だったと説明する。

マイケル・バーリというサイモン・キャピタル社のトップが男性の面接をしている。マイケルは昔から人になじめないはぐれ者だったと自分を分析する。しかしそんなマイケルだからこそ、普通とは違う判断をすることになった。

マイケルはMBSを空売りしたいと相談役であり、資産を預かってもいるローレンスに相談する。ローレンスはマイケルを心配しているが、この選択は間違いだとマイケルに忠告する。しかしマイケルは自分が正しいと信じていた。

MBSのCDSを買いたいとゴールドマンサックス社に相談するマイケル。住宅ローンが破たんした時には莫大に儲けられるというもの。現在MBSは堅実な商品で、マイケルが言っているようなことは夢にも思っていないゴールドマンサックス社。マイケルの言う通りの契約をするが、代わりに毎年莫大な保険料を取るというものだった。マイケルは頭のおかしい人間扱いされるが、1億ドル分購入した。別の銀行でも同じように空売りで買った。総額13億。

ジャレド・ベネットも登場。マイケルと同じく空売りを目論んだ。マーク・バウムの会社が彼を招待した。 ベネットがマークたちにサブプライムローンが破たんすることを説明する。CDO(細霧担保証券)を使って儲けると言った。

新興ファンドを立ち上げたのジェイミーチャーリーはサブプライムローン崩壊の話を聞いたが資金不足だった。ベンという、かつて腕利きトレーダーだった人物に力を借りようとした。

2006年。ローレンスがマイケルの元にやってきた。以前通り、君は間違っているというローレンス。マイケルの全資産は5億ドル強だが、CDSの空売りを購入したことで、毎年1億ドル近くの保険料を支払っている。あと5年でマイケルの資産は尽きるが、マイケルは必ず2007年にサブプライムローンが破綻すると言ってはばからない。ローレンスは金を返せと言った。

こんな中、マークはローンを扱っている人物を調べていたところ、現在の住宅ローンはバブルだと確信。ベネットの言った話に乗ることにした。ジェイミーとチャーリーも、CDOの空売りは正しいとベンにお墨付きを貰っていた。しかしこれを空売りするにはISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)に入る必要がある。ベンにISDAに入るために手伝ってくれるよう懇願した。ベンは承諾してくれて、こうしてジェイミーとチャーリーも空売りした。

2007年1月。100万件のローンが滞納されているというのにモーゲージ債の価値が上がっていた。これは市場の原理に反するおかしな状況だった。
マークは格付け機関を訪れた。いい加減な格付けでAAAをつけていたとわかった。
マイケルもこのせいで大損する。ベンとジェイミーとベンもこのことに悩まされていた。
ベネットもマークの社員らに怒号を浴びせられていた。しかしベネットは「格付け機関も銀行もバカだ」と言う。そして国際フォーラムに出ることを提案。

ベンもベネットもベガスで行われる証券化フォーラムへ行くことに。サブプライムローンの関係者が集まるフォーラムだ。 このフォーラムjで空気を読まず「サブプライムの損失が5%でおさまる可能性は0だ」と言った。
フォーラムで業界人に話を聞いて回るジェイミーたち。なぜ今のような状態になっているかわからかなった。

マイケルは不貞腐れていた。しかしまだCDSを維持する姿勢を崩さなかった。債券の価値が下がらないことに「詐欺のシステムの中で僕達は動いている」と言った。自分が間違っているかもとも言い、自信を失いかけていた。

ジェイミーら三人はチャーリーの案でAAトランシェを空売りするということを目論んだ。ベンはこの判断は正しいと言ったが、これが当たれば数万人以上の死者が出る方に賭けたに等しいと言い、ベンは浮かれるジェイミーとチャーリーを諫めた。

マークは銀行家と話して合成CDOというものの存在を知った。この時マークは世界経済は崩壊すると確信したらしい。
合成CDOとは要するに「賭けに勝つほうに賭ける」という連鎖のこと。小さな賭けでも連鎖することで莫大な額になる。

マークは自分も汚い経済システムの中にいると自覚して自嘲した。かつて自殺した兄のことを悔やんだ。「悩んでいる兄に金を渡そうとした」という、つまり深い悩みを抱えた兄に金を渡せば解決するだろうと考えていた以前の自分の浅ましさを恥じ、妻の前で泣いた。

マイケルも思い詰めていた。モーゲージ債に不正があると確証したと投資家に連絡し、資金の引き上げを一時的に禁止するとメールを送った。もちろん投資家たちからは無数の苦情が来たがもちろんマイケルはこれを覚悟しており、耐え忍ぶつもりでいた。

そしてサブプライムローンが崩壊を始める。しかしCDOの価値も相変わらず落ちない。
マイケルも、ジェイミーらも困惑。銀行が不正していると確信する。
しかしついにモーゲージ債が破綻するとマイケルたち以外の人間も判断した。ついにその時が来た。誰もがCDSを欲しがり始めた。

モルガンが抱えた債務は150億ドルだという。これを聞いてマークは絶句した。しかしマークは株を売らず待つことにした。

マイケルはついに空売りで得た13億ドルのCDSを売ることにした。 ベネットも数千万ドルの金を手に入れた。ここでカメラに向かって「気に食わないなら観るな。俺はこの物語の主役じゃない」と言う。

ジェイミーとチャーリーもベンに頼んでCDSを売ってもらい、8000万ドルを獲得した。二人はトレーダーを辞めたベンがなぜ自分たちに協力してくれたのかと今更に質問する。ベンは「大金持ちになりたかったんだろ。叶ったぞ」と返した。

しかしマークだけは空売りで入手したCDSを売らなかった。
その後ベアースタンズが破綻し、リーマンブラザーズも破綻して2008年9月にリーマンショックが発生した。

マイケルは超莫大な利益を上げたがその顔に喜びはない。妻にメールで独白した。「この仕事は大切なものを失わせる」と。マイケルはサイモン・キャピタルを閉鎖することにした。マイケルが得た利益総額は26億ドルだった。

国民たちに知らないように詐欺を行うウォール街の銀行が苦しむまで待っていたマークだったが、公的資金を投入して銀行が救われることになった。/p>

その後銀行や格付け機関から数百人の逮捕者が出た。と語り手のジャレド・ベネットが嘘の説明をしたが、、実際は銀行は公的資金をあまつさえ社員のボーナスにしたという。 クレディ・スイス社の不正会計をしていたカリームという人間だけが逮捕された。しかしこの犯罪は明らかに他の銀行も行っていた。

未だCDSを持つマークは「CDSを売ると銀行連中と同じになる」と言って売らない。しかし側近の説得により売れば10億ドルになるという。ついにマークは売る決意をした。

こうしてリーマンショックは終わった。状況が沈静化した時、5兆ドルの分の年金、不動産価値、401K、貯金、債権が消失していた。
800万が失業し、600万が家を売った。

登場人物たちの顛末。
リーマンショック後、マークは寛大になったという。その側近たちは今もファンドをマンハッタンで経営している。 チャーリーとジェイミーは格付け機関を訴えようとしたが、一笑にに付された。ジェイミーはファンドを経営、チャーリーは結婚した。ベンは妻と共に果樹園でオーガニック野菜を作っている。
マイケルは政府に連絡をとり金融崩壊の兆候になぜ気付いたか教えようとした。しかし返事はなく4回監査にあってFBIの調査を受けた。今、「水」に闘志をし続けているという。
2015年には銀行はハイリスクなデリバティブ商品を売り出した。それは看板を付け替えただけのCDOなのだという。 これが結末。

感想・評価

まず設定だが事実を元にはしているようだが、一部は本人、一部はモデルのいる架空の人物ということになるらしい。登場人物が突如カメラを見てそういった裏話をするというのも変わった演出。

リーマンショックで事前に空売りしていたマイケル、ベネット、マーク、ジェイミー&チャーリーたちそれぞれの周辺を描いた作品。「大逆転」ってタイトルにつくんだから、一度ピンチに陥って落ち込み、そこから見込み通りに事は運び「やったぜえええええ!ヤッホオオオオオ!yeahhhhhhh!」ってなるのかと思ったのだが。

数十億の金が入っても主要人物は何かしんみりしてしまっている。マークが兄のことを思い後悔していることが象徴しているように、作品のにあるのは、陳腐だが「金より大切なものがある」というテーマに思える。

それに登場人物たちは住宅ローンの焦げ付きが始まってからも価値が落ちないという段階で苦悩しまくってるので、「こんな苦難を耐えたならこの人たちは儲かる権利があるなあ」と思えてくる。特にマイケルだが、総資産5億ドルのうち毎年保険料で1億ドル減少していくなんて、まさに想像すらできない境地。胃に穴が空くどころじゃすまなそうだ。ちなみに自分も金関係で胃潰瘍になったことはある程度に神経細いが、多分自分なら誇張なしに死ぬと思う。
観る前は「こんな話をリーマンショック前に映画として公開できたらかっこいいのにな〜後出しかよ〜(・∀・)ニヤニヤ」とか思ってたんだけど、視聴後は到底そんなこと言うつもりにはならなかった。

ところで、MOB、CSD、CDOあれこれと出る専門用語だが、はいよくわかりませんでした。なるほどね〜うんうん。とか頷きながら見てたが、証券に関しての説明はおおざっぱだ。本人役としてマーゴットロビー(女優)、アンソニーボーディン(シェフ)といった有名人を出しておちゃらけながら説明するシーンが入るが、ずいぶんざっくりしている。でも、「空売り」の意味だけ知ってていれば大体はわかる話ではある。
「空売りをしていたごく少数の人間だけが稼いだ」っていうこと以外に「ウォール街の連中が庶民を食い物にして不当な業務を行っている」というのも作品の大きなポイントになるが、このあたりはあまり理解できなかった。つまりこれがなければ2008年ではなく(マイケルが見込んでいたように)2007年時点で大儲けできたということになるのだろうが、素人からすると「それって銀行家は知ってるのにヘッドファンドは知らないもんなんだ」という感想。知らないからこそ、マイケル以外の主要人物は国際フォーラムに参加して情報収集をしたわけだろう。そういうもんなんですね。

登場人物解説

マイケル・バーリ

演:クリスチャン・ベール
医者をやっていて現在は多額の投資を預かりサイモン・キャピタルを運営している変人。左目が義眼で、子供の頃から一人が好きだった。リーマンショックを見抜いていた人物。多くの投資家の金を預かって運用している。リーマンショック後にはファンドを閉鎖して「水」に投資しているらしい。それに政府に対してなぜリーマンショックを予想できたのか教えようとしたが、FBIに何度も捜査されたとか。「そんなこと事前に予想できるわけがない」と疑われたということか。

マーク・バウム

演: スティーヴ・カレル
ユダヤの血を引く。ウォール街のヘッドファンド・manager。仲の良い兄が自殺して以来イライラしている。詐欺を平然と行うウォール街の銀行たちに怒りを燃やす。ジャレドの話に乗ったが、リーマンショックで自分のファンドは大損害を受けた。CDSを売れば損を抑えられるにもかかわらず、銀行にダメージを与えたいということで所持し続けた。しかし公的な援助が銀行に入ったことでそれは不可能だと悟り、ついに売る。作中では常にイライラしている人物だが、リーマンショック後は和らいだらしい。

ジャレド・ベネット

演: ライアン・ゴズリング
ドイツ銀行人。この作品の語り手。語りでは一貫して軽い感じで、視聴者を煽る。マイケル同様、そのうちに住宅ローンが破綻することを予見していた。この話を方々に持ち掛けて大儲けしようとしていて、最終的には数千万ドル、つまり数十億円を獲得。

ジェイミー、チャーリー

新興のファンドを作った若者二人。ジェイミーが知り合ったベンを誘って、マイケルやベネット同様にCDSの空売りを行う。最終的にベネット同様に大金持ちになったが、リーマンショック後に誰もいなくなった証券取引所に入って「大人がいるものだと思ってた」などと言い、どこか虚しい感想を吐いた。

ベン

演:ブラッド・ピット
ジェイミーの知り合い。かつてはトレーダーだったが引退。世界は崩壊するという悲観論者。ジェイミーとチャーリーに協力した理由を聞かれると「大金持ちになりたかったんだろ」と返す。明らかに金に執着がないようなので、ジェイミーとチャーリーに「大金を持っても大したことないだろ?そんなもんより大事なことはある」と言いたいのか?元々トレーダーとしては引退しているため、ジェイミーとチャーリーに協力した後は家族と共にオーガニック野菜を作って生活しているらしい。

ローレンス

演:トレイシー・レッツ
マイケルの相談役であり投資家。マイケルに多大な金を預けていた。そのためマイケルに反発し、そのうち「詐欺師め金返せ」とまで言う。それでもマイケルは意思を曲げなかった。

項目別評価

専門用語だらけで、一応それをわかりやすいように解説はしているが細かい部分まで理解するのは難しい。でも「空売り」の意味だけは知っていれば大筋は理解できる。リーマンショックに興味があるならオススメ。

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