ムカデ人間 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ムカデ人間

執筆日:2017年11月14日

あらすじ・ネタバレ

リンジーとジェシーはアメリカ人。2人はドイツを旅行していたが乗っていた車のタイヤがパンクしてしまう。その近くにたまたまあった家に助けてくれるよう頼みにいった。家にいたのは怪しげな雰囲気の老人だった。老人は2人に水を差しだしてきて、2人ともそれを飲んでしまう。水には自由を奪う薬が入っていた。

リンジー&ジェシーが目を覚ますとベッドの上だった。さらに見知らぬ日本人男性もベッドに寝かされていた。どうやら彼は2人の女性よりも早く老人に捕らわれていて、どうやらヤクザのようで目を覚ますと凄まじく気炎を上げて老人を罵倒した。彼の名前はカツローという。
老人はヨーゼフ博士と言い、かつてはシャム双生児の分離手術をしていた名医だったらしい。そして彼はリンジー、ジェシー、カツローに対してこれから行う手術を説明し始めた。それは3人の口と臀部を繋ぎ合わせて「ムカデ人間」を作るという恐ろしいものだった。聞いて3人は青ざめる。

リンジーが隙を見て一旦脱出するも、追い詰められて結局は再び捕まってしまう。博士はその罰として最も痛みが激しい真ん中のポジションにリンジーを選ぶことにした。
そしてついに3人に対して手術が行われた。1人目はカツロー、2人目はリンジー、3人目はジェシーである。繋がった3人は四つん這いで移動することしかできない。

リンジーの口はカツローの臀部に、ジェシーの口はリンジーの臀部に縫い合わせられてしまったため、唯一話すことができるのは先頭のカツローである。博士はあたかも犬にするかのようにエサを食わせたり物を取って来させようとするが、カツローは人間としての尊厳を失わずに博士に反抗し続ける。しかしこの状況で必ずやってくる便意はどうすることもできない。カツローは手を合わせて謝りながら出してしまう。リンジーは為す術もなく号泣する。

3人の健康診断をすると、どうやら3人目のジェシーの調子が悪く、死が近いらしい。
そんな時2人の警官が博士の家を訪れる。地下に3人を置いたまま対応するヨーゼフ博士。警官たちは最近近隣で行方不明者が出ているために訪れた。しきりに睡眠薬入りの薬を飲ませようとしたり、地下を見せようとしない博士の様子が怪しいと判断した警官は、逮捕状を持って出直すと言い、一旦は去った。

警官の対応をしている間にカツローは刃物を使って拘束を解いた。そして博士が戻ってきた時に足を刃物で傷つける。博士は立ち上がることができないほどの重傷を負い、博士もまたムカデのように這うことしかできなくなってしまう。力を振り絞って1階まで上がった3人。手術前にリンジーが脱出を図った際、部屋のガラスを破壊したためそこから出ようとしたが、すでにガラスは新たに張り替えられていた。そこに博士が追ってくる。カツローがそれを迎え撃とうとするが、突如カツローは何かを悟ったように「自分は人間でいたい」などと言い、首を掻っ切って自殺してしまった。

博士は這ったままなんとか移動し、再びやってきた警官を迎え討とうとする。プールのある部屋まで移動したところ、そこに1人の警官がやってくる。警官は博士に撃ち殺されてしまう。
もう1人の警官はムカデ人間にされた3人を発見するが博士を見つけるために家の中を捜索する。するとプールの上に浮かぶ相方の死体を発見。近づくと、死角となっていた位置から博士に銃撃され傷を負う。しかし警官も負傷しながら反撃。銃弾は博士の頭を撃ち抜いた。しかし警官も致命傷だった。彼もまた意識を失いプールの中に落ち、死亡してしまうのだった。

一方その頃、先頭のカツローが死んだために動けなくなっているムカデとなった3人。もうすぐ死ぬと博士に診断された最後尾のジェシーも衰弱して死んでしまう。リンジーはどうすることもできないままそれを見届ける。誰もいなくなってしまったヨーゼフ博士の家の中でリンジーの泣き叫ぶ声だけが聞こえていた。

感想・評価

ムカデ人間という問題作のことは映画に興味があればおのずと聞こえてくるもの。どういう映画かはあらかじめ知った上で視聴。最近ホラーやサスペンスばかり見ているが、ある意味では最も見るのを躊躇した映画である。

が、実際のところ演出そのものは控えめだったので思ったよりはソフトな内容だったというのが率直な感想。見る者が何に関して最も戦慄するかと言えば、2人目、3人目に必ず発生する問題である前の者の排泄物を…という点に違いない。しかし、その演出は1回しか行われない上に、排泄物が視覚的に演出されることはない。1人目のカツローが「ごめんよお!」と謝り、リンジーが慟哭するのみである。つまり「見えない」のだ。あーよかったあこんなもんかあ…などと安堵したところだ。

3人が物理的につなげられるという他に類を見ない設定において最悪に見たくない部分であるそれが、そういう感じで割とソフトであるので、後はそれほど目をそむけたくなるシーンというのは存在しない。いや、ラストで真ん中のリンジーのみが生存して放置されるというのはかなりえぐいのだが、とりあえず視覚的にキツイ部分というものは特にない。よって、視聴者が想像するほどには視聴難易度が高いというわけではないと断言する。展開事態は囚われた3人がヨーゼフ博士の隙を見て脱出、反撃、というもので王道だ。ラストは救われないが、現場に向かって2人の警官がずっと戻ってこないとなればせいぜい数時間後くらいには別の警官が来るはずなので、恐らくリンジーだけは助かったものだと思いたい。でも今後の人生まともに生きるのは無理かなー…。トラウマとかそういう次元じゃない。人間としての尊厳を根こそぎ奪われたような心境だろう。

ところでこの映画はそのおぞましい設定や展開を全て吹き飛ばすほどのインパクトのある要素が存在する。ムカデの先頭担当の日本人カツローの存在だ。
なぜ?なぜこういう映画において日本人の、関西弁の、ヤクザを起用し、しかも先頭に設定したのか?それが不思議でならない。ともあれ、連結されても唯一話すことができるこのカツローの言動がいちいち面白く、印象に残る。最初に目を覚ました時に火事場のクソ力じゃあ〜〜!!と言って暴れ出すところは正直笑った。存在そのものがあまりに場違い、異物感甚だしいが、でもこのカツローの存在が物凄いアクセントになっていて、この映画の面白さに一役買ってると思う。例えば先頭が普通に白人男性だったりしたら、このインパクトは存在しなかっただろう。

ということで、設定だけ見ればおぞましいが、目をそむけたくなるようなシーンというのは意外にも存在せず、またカツローのおかげで笑えるポイントもあったりで、案外敷居は低いと思える映画かもしれない。

しかし何やら、本当に恐ろしいのは続編「ムカデ人間2」であるようで…。ムカデ人間1を「こんな映画ぬるいわ!」と評価する人間向けがムカデ人間2らしい。いやー、これ以上の本格的なのはちょっとキツイっす。
ちなみにこのムカデ人間1作目はNetflixで10月に視聴したのだが、11月時点では1も2も公開終了してしまっていた。これで2は見ようにも見れなくなってしまったので少々名残惜しくはある。

人物解説

リンジー

演:アシュリー・C・ウィリアムズ
ドイツをジェニーと共に旅行していたがヨーゼフ博士に囚われてしまう。いったん逃げ出したために最も厳しいポジションである真ん中、ムカデ人間2号に大抜擢。生き残るが前のカツローは自殺して後ろのジェニーは衰弱死。為す術もなく慟哭するところで終わってしまう。状況からして生存できた可能性は高い。

ジェニー

演:アシュリン・イェニー
リンジーと共にドイツ旅行をしていた。ムカデ人間3号にされるが衰弱して結末で死亡してしまう。リンジーがカツローの…を食べてしまうシーンはあるが、このジェニーがリンジーの…を食べた描写はなかったと思う。

カツロー

演:北村昭博
リンジーとジェニーが囚われる以前から博士に捕まっていた日本人男性。ムカデ人間1号、つまり先頭なので唯一口を開くことができる。言動からしてヤクザらしい。ある意味この作品はこのカツローが主役の映画だと言っても間違いない。それだけ台詞にインパクトがある。博士とタイマンの状況になって勝てそうなのに急に悟ったようなことを言って首を掻っ切って死ぬのはちょっと納得がいかない。

ヨーゼフ・ハイター博士

演:ディーター・ラーザー
元々シャム双生児を分離する手術の名医だった。犬を3体連結したが飽き足らず、人間を連結してムカデ人間を創ろうとする。あまり演技が上手い方ではなく、しかも頭に血が上りやすい。行方不明者の捜索をする警官がやってきた時にさあこれを飲め!とか怪しげな水を突き出し執拗に飲ませようとする様に笑った。ちなみに日本語吹き替えは若本規夫なので吹き替えだと余計に笑える。警官に頭を撃ち抜かれて死ぬ。

警官2人

ヨーゼフ博士に捕まり行方不明となった者の捜索のために博士の自宅にやってくる警官2人。片方はプールのある部屋で先制攻撃されて死亡、もう一人は博士と相打ちに。一度ムカデ人間となった3人を見かけながらも放置して博士を追うがそれが仇となり、生き残ったリンジーは放置されることになってしまった。

項目別評価

どんな映画か?と言われると「悪趣味な映画」という以上に「ヤクザの兄ちゃんが忘れられなくなる映画」と答える。視覚的演出はソフト。誰でも、とまでは流石に言えないかもしれないがそこまで見るに堪えないという内容ではないのは確か。この映画にこういう評価を下すのは妙かもしれないが、題材の割には一定の品位はある作品だと思える。怖い物見たさで見るなら1より2がヤバいらしいのでそちらを自己責任で見よう。

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